「その他の外国文学」に分類されながらも、自らが発見した優れた文学作品を母国ニッポンに紹介してくれる裏方職人「翻訳者」男女9名が本書に登場する。
言語名称と国名が一致する「ノルウェー語」「タイ語」「ポルトガル語」「チェコ語」は話者の地域が摑みやすいが、「ヘブライ語」「チベット語」「ベンガル語」「マヤ語」「バスク語」はどこの国・地域で話されているものやら、瞬時にイメージしにくい。
「神」との対話に相応しい荘厳な音の響きと当時流行ったフリオ・イグレシアスの歌に惹かれて、法学の徒には珍しく第二外国語にスペイン(西)語を選択した私だが、巻き舌での「rr」(エルㇽレ)の発音に難儀した記憶以外に何も身に付かず終わった。
外国語大学・学部に学び、本格的に大学院で言語研究に勤しみ、辞書や学習教材が乏しい中で留学や研鑽を積み、五感フル稼働で惚れ込んだ外国語を体得した方々は、文学好きが嵩じて翻訳者に転身した経緯があるにしろ、腰の据わり方からしてまるで違う。
「外国文学を読むって、その土地に根差した価値観みたいなものをじかに知ることができる」(チベット語翻訳者、星泉さん)。暦に夏・雨季・秋・晩秋・冬・春の「六季」を持つ「ベンガル人は季節感が好きなんですよ」(ベンガル語翻訳者、丹羽京子さん)。
外国の言葉を学ぶことは、その国を、そこに住む人々をより良く知る事なんだ。文学、芸術、文化、歴史、宗教、風習、考え方の相違点や類似点を知る事にも繋がる。「原文で使われていることばを使いつつ、表現、単語を並べ替えて組み合わせて、新しい日本語にする。もうほとんど創作だなと感じますね」(マヤ語翻訳者、吉田栄人さん)。
西欧のいずれの言語とも似ていないため「悪魔ですら習得をあきらめた言語」と揶揄されるルーツ不明なバスク語の文学作品の翻訳を手掛けて、「マイノリティのひとたち自身が語ることを聞いたり読んだりすることがすごく重要」と気付いたバスク語翻訳者、金子奈美さん。
裏方仕事に生きがいを感じる翻訳者の皆さんのお蔭で、世界で10番目前後の話者人口を抱える日本語で世界の文学作品が幅広く読める「翻訳大国ニッポン」が支えられている事実に、ただ感謝しかない。
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「その他の外国文学」の翻訳者 単行本(ソフトカバー) – 2022/2/19
白水社編集部
(編集)
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「その他」の側から世界を見る
翻訳大国日本。多くの外国文学が翻訳され、読まれている。その中には日本では学習者が少なく、「その他」とくくられる言語によるものも含まれる。
しかし、「その他」だといって存在感が小さいわけではない。インディペンデントな文学賞として知られる「日本翻訳大賞」の第1回大賞の2作品は、韓国語とチェコ語による作品だった。いずれも「その他」に分類される作品が、読者からも、翻訳者からも多くの評価を得たこと自体が、このカテゴリーの奥深さのあらわれではないだろうか。
では、「その他」を生み出しているのはどのような翻訳者たちなのか?
日本では馴染みの薄い言語による文学を、熱意をもって紹介してきた9人の翻訳者が、その言語との出会いや学習方法、翻訳の工夫、そして文学観を語るインタビュー集。
序文・斎藤真理子
鴨志田聡子(ヘブライ語)
星泉(チベット語)
丹羽京子(ベンガル語)
吉田栄人(マヤ語)
青木順子(ノルウェー語)
金子奈美(バスク語)
福冨渉(タイ語)
木下眞穂(ポルトガル語)
阿部賢一(チェコ語)
翻訳大国日本。多くの外国文学が翻訳され、読まれている。その中には日本では学習者が少なく、「その他」とくくられる言語によるものも含まれる。
しかし、「その他」だといって存在感が小さいわけではない。インディペンデントな文学賞として知られる「日本翻訳大賞」の第1回大賞の2作品は、韓国語とチェコ語による作品だった。いずれも「その他」に分類される作品が、読者からも、翻訳者からも多くの評価を得たこと自体が、このカテゴリーの奥深さのあらわれではないだろうか。
では、「その他」を生み出しているのはどのような翻訳者たちなのか?
日本では馴染みの薄い言語による文学を、熱意をもって紹介してきた9人の翻訳者が、その言語との出会いや学習方法、翻訳の工夫、そして文学観を語るインタビュー集。
序文・斎藤真理子
鴨志田聡子(ヘブライ語)
星泉(チベット語)
丹羽京子(ベンガル語)
吉田栄人(マヤ語)
青木順子(ノルウェー語)
金子奈美(バスク語)
福冨渉(タイ語)
木下眞穂(ポルトガル語)
阿部賢一(チェコ語)
- 本の長さ228ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2022/2/19
- 寸法13 x 2 x 19 cm
- ISBN-104560098883
- ISBN-13978-4560098882
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商品の説明
著者について
【著・訳・編者紹介】
白水社編集部 編
序文・斎藤真理子
鴨志田聡子(ヘブライ語)
星泉(チベット語)
丹羽京子(ベンガル語)
吉田栄人(マヤ語)
青木順子(ノルウェー語)
金子奈美(バスク語)
福冨渉(タイ語)
木下眞穂(ポルトガル語)
阿部賢一(チェコ語)
白水社編集部 編
序文・斎藤真理子
鴨志田聡子(ヘブライ語)
星泉(チベット語)
丹羽京子(ベンガル語)
吉田栄人(マヤ語)
青木順子(ノルウェー語)
金子奈美(バスク語)
福冨渉(タイ語)
木下眞穂(ポルトガル語)
阿部賢一(チェコ語)
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2022/2/19)
- 発売日 : 2022/2/19
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 228ページ
- ISBN-10 : 4560098883
- ISBN-13 : 978-4560098882
- 寸法 : 13 x 2 x 19 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 154,820位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 54位その他の外国文学作品
- - 144位論文集・講演集・対談集
- - 28,089位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年7月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2022年5月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
マイナー言語と呼ばれる言葉が気になる一人です。とても興味深く読みました。英語一辺倒の言語状況ではありますが、文化相対主義的にも、あらゆる言語の等感覚を持ちたい方には面白く読める1冊です。
2022年4月25日に日本でレビュー済み
「最大手のインターネット書店」が「その他の外国文学」と名付けているジャンルで懸命に従事している9人の翻訳者たちにインタビューした記事をまとめた一冊です。その9人が専門とする言語は、ヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、タイ語、ポルトガル語、チェコ語です。
いわゆるマイナー言語と思われがちなこれらの外国語のうち、実のところベンガル語などは話者人口が2億を超えるというのですから、日本語のほうがよほどマイナーな言語です。しかし日本市場における商品性の面ではどうしても劣勢を強いられているこうした外国語は、当然のことながら学習の道のりも、そして食っていけるかどうかの点でも翻訳者たちに多くの試練を課すことになります。
学習の道のりの面では日本語の辞書や学習書が望めない中で英語など別の外国語を介してなんとか身につけていく涙ぐましい努力がなされていますし、食っていけるかどうかの面では大学の研究職につくなどして生活の安定を図った上で翻訳に従事している現実があることがよくわかります。
この書が取り上げた文学のうち、私が手にしたことがあるのはわずかに一冊のみ。金子奈美氏が訳したバスク語小説キルメン・ウリベ『 ムシェ 小さな英雄の物語 』です。この書を読んだときに私はレビューにこう書きました。「抑制のきいた、平明さと品格を兼ね備えた見事な和文に移し替えられています。極東日本にバスク語のこれほどの翻訳者がいたとは驚きです。」
金子氏もまた、教材の限られた環境下でバスク語と苦闘し、バスク語話者とメールでやり取りしながら語彙や表現を積み重ねていったといいます。自らバスク語で書いて、それを相手に読んでもらって反応を得る――アウトプットとインプットが一度にできる手段として有効だったようです。
ぜひ姉妹編として、今度は日本の出版社がなぜ、どういう基準で「その他の外国文学」を選んで邦訳を出そうとするのか、編集の世界に生きる人々の話を聞き取り取材して一冊にしてもらえればと思います。出版とは《文化×ビジネス》の業種ですから、ある程度の利益が見込めなければ成立しないはず。編集者など出版人の声を通して、日本における外国文学の未来を見ることができるでしょう。興趣が尽きない出版業界の実態が明らかになるものと期待しています。
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いわゆるマイナー言語と思われがちなこれらの外国語のうち、実のところベンガル語などは話者人口が2億を超えるというのですから、日本語のほうがよほどマイナーな言語です。しかし日本市場における商品性の面ではどうしても劣勢を強いられているこうした外国語は、当然のことながら学習の道のりも、そして食っていけるかどうかの点でも翻訳者たちに多くの試練を課すことになります。
学習の道のりの面では日本語の辞書や学習書が望めない中で英語など別の外国語を介してなんとか身につけていく涙ぐましい努力がなされていますし、食っていけるかどうかの面では大学の研究職につくなどして生活の安定を図った上で翻訳に従事している現実があることがよくわかります。
この書が取り上げた文学のうち、私が手にしたことがあるのはわずかに一冊のみ。金子奈美氏が訳したバスク語小説キルメン・ウリベ『 ムシェ 小さな英雄の物語 』です。この書を読んだときに私はレビューにこう書きました。「抑制のきいた、平明さと品格を兼ね備えた見事な和文に移し替えられています。極東日本にバスク語のこれほどの翻訳者がいたとは驚きです。」
金子氏もまた、教材の限られた環境下でバスク語と苦闘し、バスク語話者とメールでやり取りしながら語彙や表現を積み重ねていったといいます。自らバスク語で書いて、それを相手に読んでもらって反応を得る――アウトプットとインプットが一度にできる手段として有効だったようです。
ぜひ姉妹編として、今度は日本の出版社がなぜ、どういう基準で「その他の外国文学」を選んで邦訳を出そうとするのか、編集の世界に生きる人々の話を聞き取り取材して一冊にしてもらえればと思います。出版とは《文化×ビジネス》の業種ですから、ある程度の利益が見込めなければ成立しないはず。編集者など出版人の声を通して、日本における外国文学の未来を見ることができるでしょう。興趣が尽きない出版業界の実態が明らかになるものと期待しています。
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2022年6月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私たちが様々な言語の作品を楽しめるのも、言語やその言語を話す人々の文化に興味を持ち、伝えようとしてくれる翻訳家がいるから。「その他」と括られてしまう聞きなれない言語ではあるけれど、取り上げられている9人の翻訳家の言語との出会いや翻訳家になるまでの道のりはドラマに満ちています。各章末にある参考文献は、それぞれの翻訳家の仕事だけではなく、翻訳観がわかる書籍、文化や言語を知るための情報も紹介されています。これから翻訳を始めたい人、世界文学をもっと読みたい人におすすめ。
2022年3月21日に日本でレビュー済み
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白水社の本は買いたくても、値段の点で予約を諦めてしまうことが少なくないが(仕方ないですね)、本書は白水社本としてはお安いほうの本で、題名も魅力的なのに、なぜか近刊の時点で見落としてしまい、気がつくと、増刷のニュースが出ていた。
あわてて注文すると、増刷の本が届いた。2月28日第一刷発行、3月15日第二刷発行。すごいなあ。
『その他の外国文学』の翻訳者の自伝的エッセイが9編収録されている。なぜか10編ではない。面白い面白い。白水社本にしては珍しく、すらすら読めてしまった。(普通はUブックスで数日間、文庫クセジュは約一週間または途中挫折が多い)。
9編とは、ヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、タイ語、ポルトガル語、チェコ語。
出会い、好きになった理由、現地体験、努力、決断、キャリア形成、翻訳業界の内情・・。
9編とも同じぐらい面白かったので、ベスト3選びは止めておく。
1編だけ選ぶと、星泉さんのチベット語。母がチベット語研究者で、父もチベット語を話すという日本では稀有なる家庭に生まれる。本人はチベット語に進むつもりはなかったのに、両親の名代で知人のチベットの結婚式に出席させられ、チベットの魅力の虜になってしまう。母親に嵌められ、チベットに釣られてしまった・・。
あわてて注文すると、増刷の本が届いた。2月28日第一刷発行、3月15日第二刷発行。すごいなあ。
『その他の外国文学』の翻訳者の自伝的エッセイが9編収録されている。なぜか10編ではない。面白い面白い。白水社本にしては珍しく、すらすら読めてしまった。(普通はUブックスで数日間、文庫クセジュは約一週間または途中挫折が多い)。
9編とは、ヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、タイ語、ポルトガル語、チェコ語。
出会い、好きになった理由、現地体験、努力、決断、キャリア形成、翻訳業界の内情・・。
9編とも同じぐらい面白かったので、ベスト3選びは止めておく。
1編だけ選ぶと、星泉さんのチベット語。母がチベット語研究者で、父もチベット語を話すという日本では稀有なる家庭に生まれる。本人はチベット語に進むつもりはなかったのに、両親の名代で知人のチベットの結婚式に出席させられ、チベットの魅力の虜になってしまう。母親に嵌められ、チベットに釣られてしまった・・。
2022年5月4日に日本でレビュー済み
9人の外国語翻訳者へのインタビュー集。翻訳者へのインタビューと言うだけで興味をそそられるが、さらに特徴的なのは、この9人が日本ではマイナーなヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、タイ語、ポルトガル語、チェコ語といった言語を専門としているところである。
言語、文字、文化があればストーリーや小説というものが発生するのは当然だし、現代社会であれば出版が存在するだろうということは頭では分かる。マヤ語とかにも小説がある、と言われると「え? あぁ、それはそうか」とうなずくことはできる。日本では知名度の低い言語でも、世界中の話者数でカウントすると日本語どころではなく大勢の人間が活用している場合もある。スポーツでいうと「クリケット」みたいな感じ(クリケットは英国連邦を中心に、インドなどでもポピュラーなスポーツで、世界の競技人口はサッカーに次いで第二位とされている)。そしてマイナーな分野の話は常に面白い。ニッチなだけに始めて聞く話が多いからだと思う。
マイナー(日本における)言語の翻訳者の語りを構造的にとらえると、様々な“あるある”が存在するようだが、この書籍では帯にある「教材がない。辞書がない。仲間が少ない。」などの困難に直面した各翻訳者の苦労と、それを乗り越えてきた工夫がセットになってもれなく紹介されている。
「道なき荒野を行く」「踏み出したその一足が道となる」といった、ある種の冒険譚と捉えて読んでみると、より広い読者に汎用的に共感できるようになるのではないかと感じた。文化の多様性や翻訳の技術的、社会的な側面が語られている書籍ではあるが、それぞれの翻訳者が経験したベンチャー的な立身の物語として読めるのが、この書籍の強い魅力になっている。
多くの翻訳者が留学を経験していて、そこでの苦労と克服、その後につながる出会いが語られているのが感動的。僕はどちらかというとそういうナラティブを楽しんだ。各翻訳者が言語習得のために並ならぬ努力をしている点もこの書籍に品位を与えていると思う。一生懸命やる、という美徳を忘れてはならない。
例えば、複数の翻訳者が、キャリアの初期に出版などのあてもないうちから、やむにやまれぬ気持ちを持って「これを訳したい!」という個人的な思い入れから、主体的に翻訳を進めている点が素晴らしい。「でも、やる」という気持ち。また、自分の翻訳したい書籍の著者に対して、つてなどないところから体当たりでコンタクトをとっていくというケースもこの書籍の中ではよく見られる。そういう熱意が実を結んでいるのも希望を感じるし、人との出会いを大切にすることから、福音が得られるという事実は、やはり感動的だと思う。コロナ禍だからこそ、そういう側面が輝いて見えるのかもしれない。
別の言語を学ぶことは、未知なるものへの挑戦でもある。そして、そこには「他者理解」への希求がある。ゆえにその行為はヒューマニズムを携える。さらに翻訳という行為の持つ不完全性(異なる言語間のトランスレーションは文法の違いや単語の違いなどで完全と言うことはあり得ない)、から翻訳者はテキストに応じて創作者にならねばならぬこともある。そこの距離感をどう捉えるかについて煩悶し、自問自答して、落としどころを見付けていく手探り感のようなものも、答えのない世界に向き合っている人たちから読者が学べる部分だと思う。
ここで紹介されている各翻訳者の来歴やモチベーションは様々だが、一様にフロンティアスピリットに溢れた人たちだと感じた。文学好きや翻訳者を目指す人たちはもちろんだが、自力で生き抜く術を手探りで身につけた先人たちのストーリーとして、先行きの分からぬ未来に直面している、10代後半~20代前半の若い人たちにお勧めしたい一冊。
なお、この書籍は白水社のWebマガジン「Webふらんす」に連載されていたものに、加筆修正して書籍化したもの。
言語、文字、文化があればストーリーや小説というものが発生するのは当然だし、現代社会であれば出版が存在するだろうということは頭では分かる。マヤ語とかにも小説がある、と言われると「え? あぁ、それはそうか」とうなずくことはできる。日本では知名度の低い言語でも、世界中の話者数でカウントすると日本語どころではなく大勢の人間が活用している場合もある。スポーツでいうと「クリケット」みたいな感じ(クリケットは英国連邦を中心に、インドなどでもポピュラーなスポーツで、世界の競技人口はサッカーに次いで第二位とされている)。そしてマイナーな分野の話は常に面白い。ニッチなだけに始めて聞く話が多いからだと思う。
マイナー(日本における)言語の翻訳者の語りを構造的にとらえると、様々な“あるある”が存在するようだが、この書籍では帯にある「教材がない。辞書がない。仲間が少ない。」などの困難に直面した各翻訳者の苦労と、それを乗り越えてきた工夫がセットになってもれなく紹介されている。
「道なき荒野を行く」「踏み出したその一足が道となる」といった、ある種の冒険譚と捉えて読んでみると、より広い読者に汎用的に共感できるようになるのではないかと感じた。文化の多様性や翻訳の技術的、社会的な側面が語られている書籍ではあるが、それぞれの翻訳者が経験したベンチャー的な立身の物語として読めるのが、この書籍の強い魅力になっている。
多くの翻訳者が留学を経験していて、そこでの苦労と克服、その後につながる出会いが語られているのが感動的。僕はどちらかというとそういうナラティブを楽しんだ。各翻訳者が言語習得のために並ならぬ努力をしている点もこの書籍に品位を与えていると思う。一生懸命やる、という美徳を忘れてはならない。
例えば、複数の翻訳者が、キャリアの初期に出版などのあてもないうちから、やむにやまれぬ気持ちを持って「これを訳したい!」という個人的な思い入れから、主体的に翻訳を進めている点が素晴らしい。「でも、やる」という気持ち。また、自分の翻訳したい書籍の著者に対して、つてなどないところから体当たりでコンタクトをとっていくというケースもこの書籍の中ではよく見られる。そういう熱意が実を結んでいるのも希望を感じるし、人との出会いを大切にすることから、福音が得られるという事実は、やはり感動的だと思う。コロナ禍だからこそ、そういう側面が輝いて見えるのかもしれない。
別の言語を学ぶことは、未知なるものへの挑戦でもある。そして、そこには「他者理解」への希求がある。ゆえにその行為はヒューマニズムを携える。さらに翻訳という行為の持つ不完全性(異なる言語間のトランスレーションは文法の違いや単語の違いなどで完全と言うことはあり得ない)、から翻訳者はテキストに応じて創作者にならねばならぬこともある。そこの距離感をどう捉えるかについて煩悶し、自問自答して、落としどころを見付けていく手探り感のようなものも、答えのない世界に向き合っている人たちから読者が学べる部分だと思う。
ここで紹介されている各翻訳者の来歴やモチベーションは様々だが、一様にフロンティアスピリットに溢れた人たちだと感じた。文学好きや翻訳者を目指す人たちはもちろんだが、自力で生き抜く術を手探りで身につけた先人たちのストーリーとして、先行きの分からぬ未来に直面している、10代後半~20代前半の若い人たちにお勧めしたい一冊。
なお、この書籍は白水社のWebマガジン「Webふらんす」に連載されていたものに、加筆修正して書籍化したもの。
2022年5月20日に日本でレビュー済み
理論、理屈よりもある人の行為や物語の方が心に残ることが多いと思います。
本書ではヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、
タイ語、ポルトガル語、チェコ語に取り組む人の物語が紹介されています。
その人々の動機や情熱から学べることはたくさんあります。着眼点や興味を抱いた
きっかけが心に残りました。
本書ではヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、
タイ語、ポルトガル語、チェコ語に取り組む人の物語が紹介されています。
その人々の動機や情熱から学べることはたくさんあります。着眼点や興味を抱いた
きっかけが心に残りました。
2022年5月14日に日本でレビュー済み
北欧ミステリーを読み始めた時に、英米以外の文化や価値観を知ることができてとっても面白かった!
で、この本はニッチな翻訳を手掛ける方々の、なぜその言語を学ぼうとしたのか?翻訳者となった経緯、そして翻訳の苦労工夫などが書かれた本です。
面白い!
面白い!
そして、読みたい本が増えて本当に困ってしまいました。
で、この本はニッチな翻訳を手掛ける方々の、なぜその言語を学ぼうとしたのか?翻訳者となった経緯、そして翻訳の苦労工夫などが書かれた本です。
面白い!
面白い!
そして、読みたい本が増えて本当に困ってしまいました。