90歳の「語り手」の女性の、少女時代から現在までの足跡を語る一代記。
牧歌的なトナカイ遊牧民の生活が色鮮やかに描かれますが、章ごとに差し挟まれるインターミッションで、実はこの物語が遠い過去のものではなく全て20世紀の出来事だと思い知らされます。
全ての人にとって激動の時代。外側からじわじわと押し寄せてきた変化が、「少数」民族であるエヴェンキ族をいかにして飲み込んでいったのか。それを内側から克明に描き出しています。
本作、よく『百年の孤独』と比せられますが、マジックリアリズムと呼ぶにはいささか民族誌的色彩が強いです。
そして80年間の一代記を、どこか大幅に端折ることもなく、端的にリズミカルに描き出す「語り手」の手腕には驚嘆します。こんな頭の切れる90歳がいてたまるか。
……ただ、かつてオホーツク海の周りで繁栄した北方民族の歴史に思いを寄せ、現在に残る彼らの口承文芸の豊かさを鑑みれば、なるほどこの物語はしかるべきものなのだとつくづく痛感します。
読後感、月並みな表現をすれば「ものすごいユーカラかイマカンを徹夜で聴いた気分」。
間違いなくおすすめです。
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アルグン川の右岸 (EXLIBRIS) 単行本 – 2014/4/6
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トナカイとともに山で生きるエヴェンキ族。民族の灯火が消えようとしている今、最後の酋長の妻が九十年の激動の人生を振り返る。
- 本の長さ365ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2014/4/6
- ISBN-104560090335
- ISBN-13978-4560090336
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商品の説明
著者について
1964年生まれ。中国の作家。「霧の月」(原題「霧月牛欄」)、「年越し風呂」(原題「清水洗塵」)で第一回・第二回の魯迅文学賞短編小説賞を受賞。「世界中のすべての夜」(原題「世界上所有的夜晩」)で三度目の魯迅文学賞の中編小説賞を受け、「アルグン川の右岸」で第七回茅盾〈マオトン〉文学賞を受賞。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2014/4/6)
- 発売日 : 2014/4/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 365ページ
- ISBN-10 : 4560090335
- ISBN-13 : 978-4560090336
- Amazon 売れ筋ランキング: - 672,546位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2018年9月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年12月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
図書館で借りて読みましたが、ずっと手元に置いて読み返すだろうと思い、購入しました。
2014年6月28日に日本でレビュー済み
作者は中国の女流現代作家 遅子建(チー・ズ・ジェン)
歴史上、例えば、「モヒカン族の最後」「イシ 最後のインディアン」などで部族が滅びる話は過去の物として読んでいた。
しかし、これは今、現在の事である。
部族の酋長の妻が滅び離散した、自分の家族の思い出を語っているものだが、作家の手によって、物語になったものだ。
年老いた妻の記憶は、過去を遡って、鮮明に鮮やかに部族の盛んだった頃、つまり自分も若く生き生きとした娘だった頃を詳細に語っている。
その話が詳細で鮮明であればあるだけ、部族が滅び離散してしまった現実の過酷さは胸を打つ。
そうして、これはエヴェンキ族のみならず、ウィグル族や中国の漢民族以外の周辺地域の少数民族共通に起こっている事だと後書きにある。
この事が、中国政府にのみ責任があるのだと言わせない、現代社会の問題が、年老いた部族の長の妻の語りの中から聞こえてくる声がする。
最近の中国の作品は、戦後の混乱が落ち着きながらも、まだ先の見通しが見えない状況を、作品を通して
伝えていこうとするような物が多くなった。
過酷なこの数十年の時間を作家はどう生き延びてきたか、そういう重厚な作品が出てくる予感がする。
この作品は映画化されているらしいが、日本での公開はされていないらしい。機会があれば観てみたい。
中国辺境の作品では「砂漠の物語 郭雪波 松瀬七織訳 福音館書店」もおすすめ
児童書の出版社から出ているので、あまり知られていないが短編集で中国奥地の砂漠での暮らしや人間の葛藤を描いて秀逸
自然の中では人間はどれほど無力か、何が大切かを考えさせる。
歴史上、例えば、「モヒカン族の最後」「イシ 最後のインディアン」などで部族が滅びる話は過去の物として読んでいた。
しかし、これは今、現在の事である。
部族の酋長の妻が滅び離散した、自分の家族の思い出を語っているものだが、作家の手によって、物語になったものだ。
年老いた妻の記憶は、過去を遡って、鮮明に鮮やかに部族の盛んだった頃、つまり自分も若く生き生きとした娘だった頃を詳細に語っている。
その話が詳細で鮮明であればあるだけ、部族が滅び離散してしまった現実の過酷さは胸を打つ。
そうして、これはエヴェンキ族のみならず、ウィグル族や中国の漢民族以外の周辺地域の少数民族共通に起こっている事だと後書きにある。
この事が、中国政府にのみ責任があるのだと言わせない、現代社会の問題が、年老いた部族の長の妻の語りの中から聞こえてくる声がする。
最近の中国の作品は、戦後の混乱が落ち着きながらも、まだ先の見通しが見えない状況を、作品を通して
伝えていこうとするような物が多くなった。
過酷なこの数十年の時間を作家はどう生き延びてきたか、そういう重厚な作品が出てくる予感がする。
この作品は映画化されているらしいが、日本での公開はされていないらしい。機会があれば観てみたい。
中国辺境の作品では「砂漠の物語 郭雪波 松瀬七織訳 福音館書店」もおすすめ
児童書の出版社から出ているので、あまり知られていないが短編集で中国奥地の砂漠での暮らしや人間の葛藤を描いて秀逸
自然の中では人間はどれほど無力か、何が大切かを考えさせる。