表題作を数頁読んだだけで、たちまち物語のなかに引き込まれ、ほとんど一気に読破してしまった。
物語の力強さにこれほど惹かれたのは久しぶりのことだった。
蜂飼耳や小池昌代といった、優れた短篇の書き手たちが勧めていただけに、著者二冊目の短篇集とは思えない手練の円熟味を感じさせる作品だった。トレヴァーやマクガハンと同じくキーガンの場合も、アイルランドの作家らしく、語り口自体はとてもドライで、ときにぶっきらぼうですらあるのに、人間を見つめる犀利な視線のなかにもかすかな温もりを感じることができる。だから、意地悪で哀しい話が多いにも関わらず、読後感は思いのほか爽やかで、いやな後味を残すこともない。
人物の心理をくどくどと描写するかわりに、それを空や海、窓から射しこむ光といった自然の隠喩によって巧みに表現する。
犬や馬と一緒に田舎で(おそらく独りで)暮らしているという著者の最大の特色だろう。
収録された八篇の作品は、どれもお勧めだが、とくに「青い野を歩く」「森番の娘」「波打ち際で」がよかった。
「降伏」という短い作品で、それまでいけ好かない嫌な人物に思えた主人公が、終盤近く、ある決意を胸に自転車で野を駆ける瞬間、一転して彼が魅力的な人間に映るところもおかしかった。
ジョイスの『ダブリナーズ』、トレヴァーやマラマッドの短篇が好きな人には、とくにお勧めしたい。
著者のその他の作品も、いち早く翻訳されることを心待ちにしている。
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青い野を歩く (EXLIBRIS) 単行本 – 2009/12/1
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- 本の長さ225ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2009/12/1
- ISBN-104560090068
- ISBN-13978-4560090060
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商品の説明
出版社からのコメント
封建的で、因習に縛られる男たち、内なる衝動に突き動かされ、息苦しい日常の外へ飛び出そうとする女たち--「ケルト文化」が今も息づくアイルランドの田舎を舞台に、「人間の臭みと神話が融合した世界」を描いた短篇集。
* * *
「青い野を歩く」
結婚の儀式を執り行った神父は、花嫁と過去に特別な関係にあった。花嫁の真珠が糸から抜け落ちる。神父は真珠を拾いあげ、手に彼女の温もりを感じる。思いを胸に秘め、神に問いかけながら、早春の夜、野を横切る。
「森番の娘」
森で働くディーガンは、妻マーサとむなしい結婚生活を送っている。知的障害のある息子、その出生に疑念を抱いている娘とも、うまくいかない。ある雨の日、ディーガンは森で迷った猟犬を拾い、娘の誕生日にプレゼントする。
「クイックン・ツリーの夜」
足を洗った水を外に捨てずに置くと、悪いことが家に入ってくる......。迷信深く、赤ん坊を亡くした経験があるマーガレット、雌ヤギと寝起きする隣人のスタック、ふたりの間にクイックン・ツリー(生命を与える木)の魔法がかかる。
* * *
小池昌代氏が「ぞっとするほどの、透明な悲哀を抽出する。放心した。素晴らしい小説だ」と絶賛する、珠玉の8篇。
* * *
「青い野を歩く」
結婚の儀式を執り行った神父は、花嫁と過去に特別な関係にあった。花嫁の真珠が糸から抜け落ちる。神父は真珠を拾いあげ、手に彼女の温もりを感じる。思いを胸に秘め、神に問いかけながら、早春の夜、野を横切る。
「森番の娘」
森で働くディーガンは、妻マーサとむなしい結婚生活を送っている。知的障害のある息子、その出生に疑念を抱いている娘とも、うまくいかない。ある雨の日、ディーガンは森で迷った猟犬を拾い、娘の誕生日にプレゼントする。
「クイックン・ツリーの夜」
足を洗った水を外に捨てずに置くと、悪いことが家に入ってくる......。迷信深く、赤ん坊を亡くした経験があるマーガレット、雌ヤギと寝起きする隣人のスタック、ふたりの間にクイックン・ツリー(生命を与える木)の魔法がかかる。
* * *
小池昌代氏が「ぞっとするほどの、透明な悲哀を抽出する。放心した。素晴らしい小説だ」と絶賛する、珠玉の8篇。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2009/12/1)
- 発売日 : 2009/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 225ページ
- ISBN-10 : 4560090068
- ISBN-13 : 978-4560090060
- Amazon 売れ筋ランキング: - 298,220位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年2月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年2月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アイルランドの荒涼とした自然のなかで暮らす人々の孤独な魂の悲哀を淡々と描く短編集。文体には詩のような味わいがあり、ときに物語は寓話のような雰囲気を帯びる。異国の物語を読む喜びがここにある。
2010年1月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
母国アイルランドの自然をこよなく愛し執筆活動に勤しむ新進女流文芸作家キーガンの評価が高い第二短編集。本書に収録された全8編に登場する主人公達は皆人間嫌いで口数少なく孤独を愛する雰囲気を漂わせていますが、そうかと言って徹底的に暗い性格ではなくユーモアや希望も心に併せ持っていて自然に愛しさを覚える魅力的な人々です。著者はそんな無感情な人々がふと垣間見せる真実の心情を情感込めて描き出し読む者の胸を強く揺さぶり心の奥深くに訴え掛けます。
『別れの贈りもの』故郷を出てアメリカへと旅立つ日の朝、娘は家族との良い悪い両方の思い出を振り切って終始冷静に振舞うが最後の瞬間に感情が溢れ出す。『青い野を歩く』神父が務めた結婚式の花嫁は嘗て深く愛し合っていた女性だった。彼は自問し神と対話しながらひとり夜の野原を歩く。『長く苦しい死』ドイツのノーベル文学賞作家ハインリッヒ・ベルの家に一事滞在する女流作家が不愉快な男の訪問客を帰した後、構想が湧き暗い想像力を膨らませる。『褐色の馬』男やもめのブレイディは苦い失敗の思い出を心中に宿し毎晩褐色の馬と美しい女の夢を見る。『森番の娘』森で働く夫に不満を抱きつつ仕方なく暮らす妻が、知的障害のある息子と秘密の事情で生まれた娘との四人生活の中である決心をするのだが、やがて一家に大事件が起きる。『波打ち際で』再婚した母と富豪の継父の両親に海辺のレストランで二十一歳の誕生日を祝って貰った若者が海で亡き祖母の特別な思い出に浸る。『降伏』厳格で無骨な巡査部長は密かに女性の問題で悩んでいたが、結論が出ると心の痛みを遣り過ごしまた別の道へと歩み始める。『クイックン・ツリーの夜』迷信深く赤ん坊を亡くした悲しい過去を持つ変な娘マーガレットと、雌ヤギと暮らす変わり者の男スタックがクイックン・ツリー(別名ナナカマド)の魔法で結ばれるが、やがて二人にまるでお伽噺の様な運命が訪れるのだった。
『別れの贈りもの』故郷を出てアメリカへと旅立つ日の朝、娘は家族との良い悪い両方の思い出を振り切って終始冷静に振舞うが最後の瞬間に感情が溢れ出す。『青い野を歩く』神父が務めた結婚式の花嫁は嘗て深く愛し合っていた女性だった。彼は自問し神と対話しながらひとり夜の野原を歩く。『長く苦しい死』ドイツのノーベル文学賞作家ハインリッヒ・ベルの家に一事滞在する女流作家が不愉快な男の訪問客を帰した後、構想が湧き暗い想像力を膨らませる。『褐色の馬』男やもめのブレイディは苦い失敗の思い出を心中に宿し毎晩褐色の馬と美しい女の夢を見る。『森番の娘』森で働く夫に不満を抱きつつ仕方なく暮らす妻が、知的障害のある息子と秘密の事情で生まれた娘との四人生活の中である決心をするのだが、やがて一家に大事件が起きる。『波打ち際で』再婚した母と富豪の継父の両親に海辺のレストランで二十一歳の誕生日を祝って貰った若者が海で亡き祖母の特別な思い出に浸る。『降伏』厳格で無骨な巡査部長は密かに女性の問題で悩んでいたが、結論が出ると心の痛みを遣り過ごしまた別の道へと歩み始める。『クイックン・ツリーの夜』迷信深く赤ん坊を亡くした悲しい過去を持つ変な娘マーガレットと、雌ヤギと暮らす変わり者の男スタックがクイックン・ツリー(別名ナナカマド)の魔法で結ばれるが、やがて二人にまるでお伽噺の様な運命が訪れるのだった。
2023年2月3日に日本でレビュー済み
シックな装丁に惹かれて手にとり読み始めた。しかし、さらりと父親からの性的虐待、生まれたばかりの猟犬を溺死させる母親の笑顔 なんだこれは。さらりと書いて読者を置いてけぼりにするのが好きな作者は時に見受けるが私は好かない。ひとりよがりで、ケレン味をばら巻いて喜ぶようなねじれて自己愛の強い女性作家を読む時間はない。