良い本ですね。
教科書兼ワークブック。
スタンダードな教科書は難しいという人に何を薦めたら良いか悩むのですが、この本、素晴らしく良いですね。きちんと勉強したいけど初めの本として程度は易しく、だけど入門にありがちな変な比喩やごまかしはいらない、と考えている人にこの本以外の選択肢があるのかな、と思えるくらいです。
簡単な数学操作にアレルギーがないなら当分は（ずっと？）この本を薦めることになりそうです。Σ計算なんか本当に手取り足取り。入門として過不足のない数学的な内容だと思います。計算させて確認させるスタイルも良いです（統計が苦手な人ほどやっていない！）。長く読まれるには理由があるのですね。意欲のある方なら標準的な教科書のひとつと思われる「統計学入門（東京大学出版会）」などにスムーズに繋がるでしょう。
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良いなと思った点
①本書全体を通して「確率変数が分布する」ことに重点を置いて解説されている。
②各章の初めに、前章の内容がコンパクトにまとめられていること。学習の流れがとても良い。
③全体的に、レイアウト、字体、図、などがとても見やすい。意外とこれ大事だと思いました。
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統計がさっぱりという人にほぼ共通して「確率変数が分布する」という意味が理解できていません。わかってるよと言っていてもおそらくわかっていません。
例えば、推定や検定の理解とは、標本分布の理解のことですが、標本平均や標本分散が「分布する」という説明に下線まで引いて強調されているのはとても良いですね。引用です。
「つまり標本平均Xは分布をする」
「χ2は独特の分布をする」
「分布をしなければ統計分析の役には立たない。分布をするから統計分析の方法として使えるのである。」
おっしゃるとおり。
注目しているある確率変数が特定の分布をしていることがわかりさえすれば、あとは必要とする範囲で積分して確率を評価する（実際は数表を参照する）だけですから、推定も検定も基本的には以上の作業がほぼ全て。この流れが良く分かるように記述されています。
（目的としている確率変数がどんな分布をしているかを知るには数理統計学の知識が要ります。暗記をするなと書いてあるのに暗記を要求する、という批評は的外れ。そりゃあ入門書で全て導出は無理です。例えば、確率変数X, Y, 分散V(X)に対して、V(aX)やV(X+Y)といった計算は説明されていません。従って標本平均の分散が1/nに縮小することなどは説明抜きに出てきます。この辺りがこの本が設定している数学的レベルの境目です。すっきりしなければ「統計学入門（東京大学出版会）」や適当な数理統計学の教科書を併読すべし。）
統計学の考え方は丁寧に解説されています。きちんと勉強したい人の初めの教科書として強くお勧めします。名著。
（欠点は特別見つかりませんが、索引がないのは残念。本文の内容が素晴らしいだけにつけて欲しかった。あと140p「母集団が正規分布でも、正規分布でなくても標本平均Xの分布は正規分布をする。」という記述。ここだけ読むとまずいです。図を含めて本文を読み進めれば誤解はないのですが、修正は無理なのでしょうね。しかし本当にそれぐらい。全体的に素晴らしい入門書です。）
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