本書「上級マクロ編」は著者の「経済入門塾マクロ編」の続編です。「マクロ編」や「ミクロ編」のレビューで多くの方指摘されているように、このシリーズは本当に分かりやすいです。
まず、私は文系の非経済系学部生で、数学は高校時代から苦手な典型的な私立文系タイプの学生なのですが、その私でも上級編も含めて、このシリーズは理解できました。(中谷氏や井堀氏、マンキューやスティグリッツなどのマクロの教科書は、前者はレベル的に、後者は分量的に私にはきつかったです。そんな私でもこのシリーズはいけました。ですから、経済学を最低限勉強してみたいけど苦手だ、という方本当にお勧めですよ。)
1大事な事は繰り返し説明
2数式の展開を省略しない
3前提、仮定、定義を重視し、繰り返してくれる
こういった点が分かりやすさに繋がっているかと思います。
また、私は上記のように非経済系学部なのですが、最低限の常識的な経済学の理論については勉強しておきたいと思い、幾つかの参考書を使って経済学を勉強しているのですが、本書の特徴は分かりやすさだけでなく、説明の論理的一貫性にもあると思います。
例えば、本書『上級マクロ編』の範囲に労働市場分析がありますが、労働の限界生産性が逓減するとの仮定の下、名目賃金の下方硬直性の仮定と合わせる事で、Yの増加がPの上昇に繋がる事をきれいに説明できています。つまり、労働市場が不完全雇用水準で均衡している場合、労働者錯覚モデルでは、
物価の上昇→実質賃金が低下→労働需要が増加→非自発的失業の解消=完全雇用
と他の参考書では説明される事が多いのですが、これでは先に物価だけを上昇させる事で完全雇用を実現するという話に見えかねません。しかし、財政政策の発動による有効需要創出も非自発的失業の解消に繋がるとされるわけですし、勉強の流れも物価と利子率一定の45度線分析、利子率は考慮するが物価は一定のISLM分析をやってから労働市場分析、ADAS分析と至るので、財政政策の発動によるYの増加がPの上昇と完全雇用に繋がるという流れで説明できた方が、すっきりします。
この点、本書では古典派の第一公準を使って、名目賃金が一定(少なくとも下方硬直的)であれば、労働の限界生産性は逓減するために、需要の拡大に合わせて企業が生産量を増やそうとすれば、Pを上げざるを得ないという流れで説明されており、とても分かりやすかったです。労働市場の縦軸も、実質賃金でとって労働者(労働供給)の期待物価と現実の物価のズレから説明する場合よりも、名目賃金でまとめてしまって、企業(労働需要)の労働の限界生産性のグラフを付記しておく方が、数学が苦手な人には分かりやすいかと思います。
詳しくは本シリーズを実際に使って見なければ分からないかと思いますが、とにかく分かりやすい上に、各論点の繋がりが見えやすくてぶつ切りの断片的な知識になりにくいのが良いです。
ただ、経済学部の友人曰く、ミクロ・マクロ両方の上級編含めて教養レベル、難関論点編もやってようやく「一応経済学部卒」と名乗れるくらいでしかないらしいです…。どの分野もそうですが、経済学の道も長く険しいのですね…

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試験攻略新経済学入門塾 3 上級マクロ編 単行本 – 2007/10/1
石川 秀樹
(著)
- 本の長さ296ページ
- 言語日本語
- 出版社中央経済グループパブリッシング
- 発売日2007/10/1
- ISBN-104502659401
- ISBN-13978-4502659409
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登録情報
- 出版社 : 中央経済グループパブリッシング (2007/10/1)
- 発売日 : 2007/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 296ページ
- ISBN-10 : 4502659401
- ISBN-13 : 978-4502659409
- Amazon 売れ筋ランキング: - 694,471位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 213位マクロ経済学 (本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年4月8日に日本でレビュー済み
2008年1月8日に日本でレビュー済み
経済学の入門書というと、書店に行けばそれこそ「入門」「わかりやすい」と銘打つ表紙が百花繚乱の如く並んでいるものの、経済学を平易に平易に語ろうとするあまり、気がついたら単なる「経済ニュースの解説書」と化している事例は枚挙に暇がない(細野某のシリーズとか)。これを「実学でござい」とうそぶくのは勝手だが、学問としての経済理論を学ばんとする向きにとっては、紛らわしい上に不愉快千万。
そんな欲求不満に正面から応えてくれるのがこの「経済学入門塾」シリーズ。サブタイトルこそ「試験攻略」と一見表層的だが、初学者が陥りがちな論点をことごとく押さえた構成はむしろ本質的ですらある。まさに入門書の名に偽り無し。経済学を一から学ぶ大学生、経済学から永らく遠ざかっていた社会人にとっては、第1冊目として文句無くオススメ。新版では、2色刷りとなり読み易さが向上したほか、演習問題も新たに追加された。なお本書攻略後は、速やかに他の定評ある基本書に移るが賢明。
上級マスター編は、国際マクロ経済学などを収録。実は証券アナリスト試験対策用の隠れた名著である。
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2007年11月21日に日本でレビュー済み
マクロ経済でも国際経済は、国際収支や為替レートが出ているのでややこしくなるのですが、具体例と直感的な説明も交えながら、わかりやすく説明してくれます。AD-ASやマネタリスト・リアルビジネスサイクルなども、物価伸縮的かどうか、情報が完全かどうかで整理しており、すっきり整理させてくれます。私の場合、この本で上級論点が理解できるようになり、経済学は苦手克服から得意科目に変わりました。
2022年5月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この度は、迅速に、ご対応いただきありがとうございます。とても、奇麗な状態の商品でした。
大切に使用していきたいと思います。本当に、ありがとうございました。
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