1957年制作の映画『渚にて』の原作者が、ネビル・シュートだったことを、本書のあとがきで初めて知りました。
評者は、’60年代初めに観たこの映画の内容は鮮明に記憶しています(核戦争後の世界終末を描いています)。
映画のテーマ曲の「ワルチング・マチルダ」(オーストラリアの第二の国歌とさえいわれている)は、今でも唄うことが出来ます(ニュージーランドのスキー場でオーストラリア人グループから教えてもらったからです)。
さて、本書『パイド・パイパー』(原題 Pied Piper)は、第二次世界大戦下の1940年4月に、70歳のイギリス老人ハワードは、スイス国境近くの東北にあるジュラの山奥シドートンのホテルに、フライ・フィッシングを楽しむため滞在する。
息子を戦争で失くした失意のなかでなんとか国家のために働こうと思っても歳で働き場所さえなく、まだフランスまでドイツは侵攻しないだろうと思い、いっそ空気の良い何度も行ったことのあるシドートンへ行こうと旅立ったのです。
しかし、戦争は急展開し、ドイツ軍はベルギー国境を越え英仏軍はダンケルクから撤退する。
これを知ったハワードは帰国を決意すします。
その時、フランスで知り合った夫妻から2人の子供をイギリスへ連れて行って欲しいと頼まれ断りきれず引き受けてしまいます。
ハワードは、ホテルのメイドの姪が一人加わり3人の子供と共にイギリスを目指し、苦難が待ち構えることも覚悟しながら出発しました。
著者は、ハワードが無事イギリスへ帰国したあと、会員クラブのオーナーとドイツ空軍の空襲最中に、クラブのロビーで語り合うことからこの物語を語り始めています(読者は、結末を知りながら読みすすむことになりますが、ハラハラしながら読ませてくれるのは、著者ならではのストーリーテリングの上手さでしょう)。
ドイツ軍に占領されたフランスから子連れの老人がイギリス目指しての逃避行は、次から次へと障害が立ちはだかります。
あげく、最後の最後には、子供の数が6人までにもなってしまった。
クライブ・カッスラー描くような活劇など微塵もないストーリーですが、淡々と語る子連れの老人の苦難の逃避行に読者はどっぷり引き込まれてしまいます。
まだ、イギリスはドイツ空軍による爆撃を受けていた1942年に、著者ネビル・シュートがこのような物語を書上げたことに驚いてしまいました。
それも、航空機会社を経営しながら息抜きで書き上げたのだから、その稀有な才能に感じ入る他ありません。
ネビル・シュートの他作品も読んでみようと思いながら『パイド・パイパー』という面白い本に出会い、久しぶりに楽しく読み終えました。
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パイド・パイパー - 自由への越境 (創元推理文庫) 文庫 – 2002/2/22
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フランスの田舎道でパンクのため立ち往生したバスは、ドイツ軍の機銃掃射を受けて動けなくなった。これから先は歩くしかない。老イギリス人は、やむなくむずかる子供たちの手を引いた。故国を目差して! 戦火広がるフランスを、機知と人間の善意を頼りに、徒手空拳の身でひたすらイギリス目差して進む老人と子供たち。感動の冒険小説。
- 本の長さ368ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2002/2/22
- ISBN-10448861602X
- ISBN-13978-4488616021
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2002/2/22)
- 発売日 : 2002/2/22
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 368ページ
- ISBN-10 : 448861602X
- ISBN-13 : 978-4488616021
- Amazon 売れ筋ランキング: - 264,313位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 968位創元推理文庫
- - 1,369位SF・ホラー・ファンタジー (本)
- - 2,257位英米文学研究
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5 星
子どもへの大人の気持ち
なかなか読み進められず、時間がかかった。ハワードとニコラの会話が、短い言葉のやりとりだけで胸が詰まってしまって。子どもを思う大人たちの気持ちのまっすぐさはどの国でも同じ。
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2019年11月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年9月29日に日本でレビュー済み
戦渦における、人間力にあふれるお爺さん、
と子供たちのロードムービー的作品
創元推理文庫?となってますが推理要素はあんまないです
でも良作なのでそこは問題なし
※端折りすぎた箇所編集
と子供たちのロードムービー的作品
創元推理文庫?となってますが推理要素はあんまないです
でも良作なのでそこは問題なし
※端折りすぎた箇所編集
2020年8月19日に日本でレビュー済み
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アマゾンの紹介で何気なく、どうかなと?と思って図書館でまず読みました。
速攻注文買いです。TV映画になったと解説で読み、
検索したらなんとyoutubeで字幕なしですが、本を片手に観ています。英語の勉強にもなりそうです。
今・3回目読んでます。
速攻注文買いです。TV映画になったと解説で読み、
検索したらなんとyoutubeで字幕なしですが、本を片手に観ています。英語の勉強にもなりそうです。
今・3回目読んでます。
2018年6月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一口で言えば戦時下での「脱出劇」。
激しい戦闘シーンやヒーロー的活躍も無い。
一人の英国紳士(70歳)ハワードが複数の子供をつれてフランスからイギリスに脱出する。
当然そこには幾多の困難や試練が襲いかかってくる。
スリルとドキドキ感に引きずる込まれる。先が気になる。
その対極で、忍耐と寛容の精神で子供達を救いたいと願うハワードの淡々とした行動力に胸を打たれる。
「日の名残り」の執事・スティーブンスを思い浮かべてしっまた。
英国紳士として一本筋の通った人間性は日本人の私にも深く心に浸みる。
私も70歳が近い。かくありたい。
激しい戦闘シーンやヒーロー的活躍も無い。
一人の英国紳士(70歳)ハワードが複数の子供をつれてフランスからイギリスに脱出する。
当然そこには幾多の困難や試練が襲いかかってくる。
スリルとドキドキ感に引きずる込まれる。先が気になる。
その対極で、忍耐と寛容の精神で子供達を救いたいと願うハワードの淡々とした行動力に胸を打たれる。
「日の名残り」の執事・スティーブンスを思い浮かべてしっまた。
英国紳士として一本筋の通った人間性は日本人の私にも深く心に浸みる。
私も70歳が近い。かくありたい。
2021年9月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
戦争があっという間に広がってゆくのがよくわかりました。ただ、子ども連れの旅は、こんなもんじゃないはず。電車、バス、ファミレス……平時でさえ、みなさん小さいお子さんに苦労されてますよ!
2019年10月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なかなか読み進められず、時間がかかった。ハワードとニコラの会話が、短い言葉のやりとりだけで胸が詰まってしまって。子どもを思う大人たちの気持ちのまっすぐさはどの国でも同じ。
なかなか読み進められず、時間がかかった。ハワードとニコラの会話が、短い言葉のやりとりだけで胸が詰まってしまって。子どもを思う大人たちの気持ちのまっすぐさはどの国でも同じ。
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2013年7月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
はらはら ドキドキせずに、暖かい気持ちのまま読み続けられる本でした。戦争のない平和な世界であってほしいと思います。
2016年9月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
30年以上前に「渚にて」を読んだのですが, マイナーなSF作家だとばかり思っていました.
本書を読んで認識が新たになりました.
「善」を感じますね.
本書を読んで認識が新たになりました.
「善」を感じますね.