1951年に発表されたSF作品ときくと、半世紀以上も前のSF的発想など時代の流れから古びてしまい古典的な存在意味しかもたないんじゃないか、などと想像しがちですが、本書からそういった古さは全く感じません。
それは、取り上げられたテーマの普遍性やジョン・ウィンダムの持つ文学的才能の高さにあるように思います。
翻訳も、こなれた日本語で読みやすく好感が持てます。
また、破滅ものの映画(特に生き残った少数の人間がサバイブするシリアスなゾンビ系映画)の原型を、本作に見ることができます。
世界中で観測された流星群を見た人類すべてが盲人になってしまった世界。
そこに原因不明の感染病と人を襲う植物という三重苦により電気水道といったインフラは停止し、町は荒廃し世界は破滅に向かっていく。
安全で確実に思えた世界があっさりと失われてしまうという現実に直面する、少数の目が見える人たち。
主人公ウィリアムは偶然流星群を見ることなく失明しなかった少数の人間の一人。
彼はこの世界を次のように受け入れます。
「事態を受け入れて、折り合いをつけることを学ばなければならない。これを乗り越えて、自分の人生を生きるために闘わないと、生き残るものなんてひとりもいなくなる。生き抜けるのは、その闘いから逃げないほど心を強靭にできる者だけなんだ」
たとえば所有者がいなくなった店舗に残された食料を回収する際には
「自分たちのことを泥棒ではなく、むしろ、不本意な相続人だと思うようにしなければいけない」
と考える。
その後の、目の見える少人数の人々が、各地でそれぞれグループをつくり、考え方が一致しないグループ間の対立が生まれるなどといった展開は、まさにアメリカのゾンビドラマ「ウォーキングデッド」が本作を踏襲しています。
「仲間がいれば目的が生まれ、目的は病的な恐怖を寄せ付けずにおく役に立つ」のです。
まさに真の孤独ほど恐ろしいものはありません。
本作は『食人植物の恐怖』という副題がついていますが、そこから想像されるB級パニック小説とは段違いの圧倒的なレベルの高さと文学的魅力を感じます。
「子供たちが希望と野心を持てるよう」な世界をつくろうとする希望を感じさせる後半も好感が持てます。
傑作。
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トリフィド時代 (食人植物の恐怖)【新訳版】 (創元SF文庫) 文庫 – 2018/7/30
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地球が緑色の大流星群の中を通過し、翌朝、流星を見た者は一人残らず視力を失ってしまう。狂乱と混沌が全世界を覆った。今や流星を見なかったわずかな人々だけが文明の担い手だった。しかも折も折、植物油採取のために栽培されていたトリフィドという三本足の動く植物が野放しになり、人類を襲いはじめたのだ! 英国SFの不滅の金字塔。
- 本の長さ414ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2018/7/30
- 寸法10.6 x 1.8 x 15 cm
- ISBN-104488610048
- ISBN-13978-4488610043
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- 出版社 : 東京創元社 (2018/7/30)
- 発売日 : 2018/7/30
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 414ページ
- ISBN-10 : 4488610048
- ISBN-13 : 978-4488610043
- 寸法 : 10.6 x 1.8 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 239,904位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 143位創元SF文庫
- - 1,290位SF・ホラー・ファンタジー (本)
- カスタマーレビュー:
-
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上位レビュー、対象国: 日本
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2019年3月21日に日本でレビュー済み
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2023年11月17日に日本でレビュー済み
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新訳になったことと、文字が大きくなり、全体に読みやすくなったことが良かった。
2018年8月13日に日本でレビュー済み
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イギリスを舞台にした『ウォーキング・デッド』みたいな文明崩壊を描いた小説です。
ゾンビは出てこないのですが、それを補強するガジェット群が面白いので、ゾンビ好きな人にとっては必読の書でしょう。
でも、あえて分類するなら【ゆっくり歩くゾンビ】でしょうね(笑)。
ゾンビ感染と違って初めは「目が見えなくなる」という物凄い地味な段階からスタートするので、主人公が目覚めたあとに都市がゆっくりゆっくり崩壊していく残酷描写がふんだんに楽しめます。不謹慎かもしれませんが、これは好きな人にはたまらないシーンなので。
自分は『ウォーキング・デッド』のライト層のファンなのでこの分野にあんまり詳しくないのですが・・・・・・リックが昏睡から目覚めたら病院に誰もいなくて世界が崩壊していたというのは『28日後…』へのオマージュだと思っていたのにこの作品が原初のようですね。
イギリス。
何気に同じイギリス作家バーネットの『秘密の花園』の冒頭も、インドで金持ち家族が使用人含めて腸チフスで全滅して屋敷の奥深くからヒロインが救出されるスジなので・・・・・・なんか、あるんでしょうね(何が?)
『28日後…』の監督はこの作品の大ファンだそうで、これは普通にオマージュだそうです(あとがき参照)。
特筆するべきは「イギリスを舞台にしたカタストロフィ」というところでしょうか。
ゾンビ映画の本場、アメリカのカタストロフィ系作品といえばウォーキングデッドみたいに「やっぱり現実は絶望しかないんだ・・・・・・」みたいな感じであれよあれよというまにどん底に落ちつつも、頼れる仲間が増えていってドンパチやる、「なんとか持ちこたえてやるぜ!」みたいな作風に落ち着いていくのですが、イギリスはちょっと違う感じですね。
『トリフィド時代』は文明の崩壊に直面して主人公が出逢う人々が、それぞれ封建主義や博愛主義、共産主義のような思想を戯画化したキャラクターと交流していきます。
この流れに沿って行くと、アメリカだと絶対にロクな目にあわないキャラが結構がんばります。
それも納得できる理由で。
行動よりも先に論理が働くというか・・・・・・偏見なのかもしれませんが、あまり見慣れない展開が仕掛けてあって驚くと思いますよ。
そういえば『28日後…』にもそういうシーンはいっぱいあって、たとえば悪役の軍少佐に逆らったために処刑された軍曹も「少佐はイカれてる!」と何度も主張してました。
「感染は島から海を越えて渡っていけば弱くなる」「海の向こうじゃみんな対策を練ってる」とか。
これアメリカだと真っ先に小馬鹿にされるし、オチがわからない段階だと「何をのんきなことを」と思ってしまうんですが、よくよく冷静に考えてみるとそうなんですよね。
「ウワーッ!!」と突き進む物語をもう少し上から俯瞰して描いているような感じ。
どうなんですかね、『パンドラの少女』も読んでない僕が言うのも変ですが。
おススメですね!!
ゾンビは出てこないのですが、それを補強するガジェット群が面白いので、ゾンビ好きな人にとっては必読の書でしょう。
でも、あえて分類するなら【ゆっくり歩くゾンビ】でしょうね(笑)。
ゾンビ感染と違って初めは「目が見えなくなる」という物凄い地味な段階からスタートするので、主人公が目覚めたあとに都市がゆっくりゆっくり崩壊していく残酷描写がふんだんに楽しめます。不謹慎かもしれませんが、これは好きな人にはたまらないシーンなので。
自分は『ウォーキング・デッド』のライト層のファンなのでこの分野にあんまり詳しくないのですが・・・・・・リックが昏睡から目覚めたら病院に誰もいなくて世界が崩壊していたというのは『28日後…』へのオマージュだと思っていたのにこの作品が原初のようですね。
イギリス。
何気に同じイギリス作家バーネットの『秘密の花園』の冒頭も、インドで金持ち家族が使用人含めて腸チフスで全滅して屋敷の奥深くからヒロインが救出されるスジなので・・・・・・なんか、あるんでしょうね(何が?)
『28日後…』の監督はこの作品の大ファンだそうで、これは普通にオマージュだそうです(あとがき参照)。
特筆するべきは「イギリスを舞台にしたカタストロフィ」というところでしょうか。
ゾンビ映画の本場、アメリカのカタストロフィ系作品といえばウォーキングデッドみたいに「やっぱり現実は絶望しかないんだ・・・・・・」みたいな感じであれよあれよというまにどん底に落ちつつも、頼れる仲間が増えていってドンパチやる、「なんとか持ちこたえてやるぜ!」みたいな作風に落ち着いていくのですが、イギリスはちょっと違う感じですね。
『トリフィド時代』は文明の崩壊に直面して主人公が出逢う人々が、それぞれ封建主義や博愛主義、共産主義のような思想を戯画化したキャラクターと交流していきます。
この流れに沿って行くと、アメリカだと絶対にロクな目にあわないキャラが結構がんばります。
それも納得できる理由で。
行動よりも先に論理が働くというか・・・・・・偏見なのかもしれませんが、あまり見慣れない展開が仕掛けてあって驚くと思いますよ。
そういえば『28日後…』にもそういうシーンはいっぱいあって、たとえば悪役の軍少佐に逆らったために処刑された軍曹も「少佐はイカれてる!」と何度も主張してました。
「感染は島から海を越えて渡っていけば弱くなる」「海の向こうじゃみんな対策を練ってる」とか。
これアメリカだと真っ先に小馬鹿にされるし、オチがわからない段階だと「何をのんきなことを」と思ってしまうんですが、よくよく冷静に考えてみるとそうなんですよね。
「ウワーッ!!」と突き進む物語をもう少し上から俯瞰して描いているような感じ。
どうなんですかね、『パンドラの少女』も読んでない僕が言うのも変ですが。
おススメですね!!
2018年8月13日に日本でレビュー済み
目の前に3冊の「トリフィド時代」があります。14歳の時に読んだ初代。1994年の復刊フェアで買った表紙が異なる第23版。そして、今回の新訳版。多分10回以上は読んだ大好きなSF小説です。
原因不明の発光現象によって人類の大部分が視力を失ってしまった世界に、採油を目的に栽培されていた食虫植物が大発生して文明が崩壊する中で、たまたま視力を保っていた主人公が文明を再建しようとする様々な人たちと出会い、変わっていく物語です。
主人公が混乱の中で出会ったジョゼラはシリアスSF史上最強のヒロインですが、終盤に登場するスーザンも未来のヒロインの資格十分。(続編ってどんな話なのだろう。急に読みたくなってきた。)
今回はすぐに読むつもりはなかったのだけれど、買って帰った日にちょっと読み始めたところが、止まらなくなって一気に読了。ストーリーは完全に頭に入っているのですが、途中やめできませんでした。
活字がちょっと大きくなっているので読み易い。でも、総頁数はほとんど変わりません。計算してみたらちょうど1割ほど文字数が減っている勘定になります。でも、ストーリーが省略されている感じはありませんでした。うまく調整したということでしょうか?
旧訳版にあった差別用語や不適切な用語、ヒロシマの日を間違えている注釈、さらに直訳風の「おお、ビル。」のようなクラシックな表現が改まっています。いくら歴史的な傑作とは言え、翻訳が時代とずれてしまうと内容まで批判されるような気がするので、これは評価できます。若い人たちにもなじみやすいと良いのですが。
一方、何か所か気になる個所があったので比べてみると、前訳の方がわかり易かったのではと思えるような部分もあります。デュラントさんに関わる部分が多い気がするのは気のせいでしょうか?
また、表現をわざと復古調にしているのかなと思われるような部分もありました。今回の解説からは消えてしまいましたが、原文の“格調の高い文体”を意識したのかな。
ところで、今回読んでいて気になったのは、主人公達もロンドンも第二次世界大戦の被害を感じさせないことです。本書が英米で出版された1951年と言えば戦争終結からまだ6年。日本ではまだまだ敗戦の傷跡が残っていた頃ではないでしょうか?ロンドンもナチスドイツのV2号で相当な被害があったと聞いていたのですが、そういう廃墟を一度見ていると“終末”に対する印象も違うような気がするのですがその気配はありません。物語の時制を20年程度の近未来に設定して、わざとその影響を排除したのでしょうか?“原爆”ははっきり意識しているので、その差が気になりました。
巻末の解説は、今回の翻訳者中村融氏が、23版の解説に書いた文章を一部修正して掲載してあります。時代の要請によるものか、関連する映像作品についてかなり細かく取り上げてあるのはうれしいですが、本書に関する評価が旧来の価値観からホラー的要素を再評価しようとする形に変わっています。ちょっと悲しい。
原因不明の発光現象によって人類の大部分が視力を失ってしまった世界に、採油を目的に栽培されていた食虫植物が大発生して文明が崩壊する中で、たまたま視力を保っていた主人公が文明を再建しようとする様々な人たちと出会い、変わっていく物語です。
主人公が混乱の中で出会ったジョゼラはシリアスSF史上最強のヒロインですが、終盤に登場するスーザンも未来のヒロインの資格十分。(続編ってどんな話なのだろう。急に読みたくなってきた。)
今回はすぐに読むつもりはなかったのだけれど、買って帰った日にちょっと読み始めたところが、止まらなくなって一気に読了。ストーリーは完全に頭に入っているのですが、途中やめできませんでした。
活字がちょっと大きくなっているので読み易い。でも、総頁数はほとんど変わりません。計算してみたらちょうど1割ほど文字数が減っている勘定になります。でも、ストーリーが省略されている感じはありませんでした。うまく調整したということでしょうか?
旧訳版にあった差別用語や不適切な用語、ヒロシマの日を間違えている注釈、さらに直訳風の「おお、ビル。」のようなクラシックな表現が改まっています。いくら歴史的な傑作とは言え、翻訳が時代とずれてしまうと内容まで批判されるような気がするので、これは評価できます。若い人たちにもなじみやすいと良いのですが。
一方、何か所か気になる個所があったので比べてみると、前訳の方がわかり易かったのではと思えるような部分もあります。デュラントさんに関わる部分が多い気がするのは気のせいでしょうか?
また、表現をわざと復古調にしているのかなと思われるような部分もありました。今回の解説からは消えてしまいましたが、原文の“格調の高い文体”を意識したのかな。
ところで、今回読んでいて気になったのは、主人公達もロンドンも第二次世界大戦の被害を感じさせないことです。本書が英米で出版された1951年と言えば戦争終結からまだ6年。日本ではまだまだ敗戦の傷跡が残っていた頃ではないでしょうか?ロンドンもナチスドイツのV2号で相当な被害があったと聞いていたのですが、そういう廃墟を一度見ていると“終末”に対する印象も違うような気がするのですがその気配はありません。物語の時制を20年程度の近未来に設定して、わざとその影響を排除したのでしょうか?“原爆”ははっきり意識しているので、その差が気になりました。
巻末の解説は、今回の翻訳者中村融氏が、23版の解説に書いた文章を一部修正して掲載してあります。時代の要請によるものか、関連する映像作品についてかなり細かく取り上げてあるのはうれしいですが、本書に関する評価が旧来の価値観からホラー的要素を再評価しようとする形に変わっています。ちょっと悲しい。