著者の岩田規久男前日銀副総裁はリフレ派の旗手として、何年も前から大規模金融緩和の必要性を訴え続けていました。
本書は岩田さんが副総裁に選出されてからの五年間を日記の形で振り返るという内容です。
量的質的金融緩和が始まってからすぐに、従来の懲罰的な株安、円高状況が改善し、雇用の改善(就業者の増加を伴う完全失業率の低下)という形で実体経済にも良い影響を及ぼしました。
2%の物価上昇率達成に向けて、最高のスタート切りましたが、その中で消費増税の議論も同時に進みます。
岩田さんご本人はもちろん、本田悦郎大使や浜田宏一教授などのブレーンは消費増税の悪影響を懸念していたようですが、政治的に延期は不可能と判断し、1%ずつの増税など悪影響を最低限に抑え込むような方法をメディアなどで展開し、増税延期を提言することはありませんでした。
岩田さんは黒田総裁の「(増税延期は)どえらいリスク」発言のときに、総裁と副総裁の考え方に齟齬が生じて金融政策の運営に悪影響が出ると思われることを懸念して、黒田総裁の発言を否定するような発言をしなかったようです。
第二章から第三章は「なんとしても増税を延期させるべきだった」という後悔が端々で感じられます。
財務官僚が言うような非ケインズ効果(増税によって社会保障や財政への信頼が増し、消費を増やす)は観察されるどころか、消費は大きく落ち込みました。
もちろん、順調に伸びていた物価上昇率も落ち込みました。
長らく続いたデフレを脱却し、安定的に物価上昇率2%を達成するために構築したリフレレジームを、消費増税によって実際のインフレ率を下げてしまったことでそれを完全に破壊してしまったのです。
この悪影響はいまだに続いており、2019年10月に控える消費増税を実行することは「どえらいリスク」だと思います。
他にも岩田さんの日々の生活から、自身の金融政策の考え方までいろいろなことが日記調で書かれており、読んでいてとても面白かったです。
昭和恐慌研究会のメンバー(髙橋洋一教授、飯田泰之准教授、安達誠司さん、若田部現副総裁など)が随所に登場して岩田さんと議論を交わしており、その内容が細かに書かれています。
非常に勉強になりました。
金融政策に関する部分は基本的なマクロの知識がないと、なかなか理解できない箇所も多いと思います。
とくに期待インフレに関する言及が多いので、フィッシャー方程式と投資は実質利子率、貨幣需要は名目利子率に依存することくらいは頭に入れて読むことを強くお勧めします。
岩田さんへの評価は分かれると思いますが、不十分ながらもデフレから脱却させ、雇用環境を質的に大きく改善させてくれたことに感謝したいと思います。
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日銀日記――五年間のデフレとの闘い (単行本) 単行本 – 2018/10/27
岩田 規久男
(著)
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日本経済をここまでダメにしたのは誰か? デフレから脱却し、経済成長を達成するべく、日銀副総裁を務めた経済学者による5年間の記録。歴史的転換点に立ち会え。
- 本の長さ432ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2018/10/27
- 寸法13.9 x 2.7 x 19.6 cm
- ISBN-104480864598
- ISBN-13978-4480864598
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2018年12月24日に日本でレビュー済み
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2019年5月3日に日本でレビュー済み
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非常に面白かった
本書を読むためには、若干の経済的知識がなければ何を言っているかわからない部分があるだろうが、
日銀運営の裏側としてだけではなく、成果、苦悩、実務の難しさ、失敗が詳細に書かれていて
色々考えるものがあった。
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2018年11月19日に日本でレビュー済み
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時系列に書いてあるので理解しやすいように感じます。
日銀には自己資本不要で債務超過でも問題ないとか、更なる財政支出が大事という点について持続可能性がどこまであるのか懸念しました。
この方の書かれたリフレは正しい と木内さんの書かれた異次元緩和の真実を読んで経済学素人の私も少し理解できました。
日銀には自己資本不要で債務超過でも問題ないとか、更なる財政支出が大事という点について持続可能性がどこまであるのか懸念しました。
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2020年5月9日に日本でレビュー済み
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後の時代に2010年代の経済政策を振り返る際に必須の文献だろう。
2021年2月25日に日本でレビュー済み
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○日経の経済図書ベスト10にも選ばれている本であり、著者によれば、日銀副総裁に就任する時に筑摩書房に勧められて後日のための記録としてつけ始めた日記がもとになっている。
○当然のことながら、読者としては、日銀の政策決定に関する説明を期待するのだが、そこには十分に応えていないように思う。そのような回顧録や資料ではなく、著者個人の感慨や思いを書きつけた個人的な日記だと思った。したがって、著者の驚き、感慨、憤慨、憤りが込められていて、それを通じて著者の人となりはわかるのだが、残念ながら私はそちらには関心がない。
○基本知識を欠いていてくだらない質問を尊大な態度で繰り返す国会議員たちを「経済学をまったくわかっていない」と見下すのではなく、何処が誤りでどう考えるべきなのかを教師らしく教えて欲しかったと思う。世の中はその程度の知識でものごとを論じている人が多いのだから(本書の読者の多くもそうであるはず)、政策決定責任者と研究者と教育者の立場とを知る著者であれば、この日記でそのような人たちの蒙を啓くことを意図した方がは世のためになったと思う。
○当然のことながら、読者としては、日銀の政策決定に関する説明を期待するのだが、そこには十分に応えていないように思う。そのような回顧録や資料ではなく、著者個人の感慨や思いを書きつけた個人的な日記だと思った。したがって、著者の驚き、感慨、憤慨、憤りが込められていて、それを通じて著者の人となりはわかるのだが、残念ながら私はそちらには関心がない。
○基本知識を欠いていてくだらない質問を尊大な態度で繰り返す国会議員たちを「経済学をまったくわかっていない」と見下すのではなく、何処が誤りでどう考えるべきなのかを教師らしく教えて欲しかったと思う。世の中はその程度の知識でものごとを論じている人が多いのだから(本書の読者の多くもそうであるはず)、政策決定責任者と研究者と教育者の立場とを知る著者であれば、この日記でそのような人たちの蒙を啓くことを意図した方がは世のためになったと思う。
2018年12月16日に日本でレビュー済み
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旧民主党政権までの新自由主義(緊縮路線)で失業にあふれ低迷した経済状況を改善するため、安倍首相は反緊縮のリフレ路線に舵を切った。歴史的快挙である。その中心的な施策を日銀副総裁として担った岩田氏の、実にexcitingな日記である。国内外のリフレ派の経済学者の理論や日本経済の現況への評価など、興味深い話や会話が載っている。歴史的な「実験」が行われた状況がリアルタイムで記述されている。そこには、旧日銀派の評論家や記者の妨害、国会の委員会の場での、経済音痴の民主党議員の恥知らずな嫌がらせ・妨害活動の詳細が記述されている。リフレ政策の最大の障害である「消費増税」について、緊縮の司令塔・財務省の異常なマスコミ対策や狂った論理も紹介されている。現在の日本経済をめぐる状況やマクロ経済政策の重要性を理解するために価値の高い本である。
2018年11月11日に日本でレビュー済み
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民主党議員の金融政策に対する理解が貧弱な様子が詳しく書かれており何度か笑ってしまった。また、黒田総裁の下での金融政策に日銀官僚は渋々受け入れていることも書かれていた。また、消費増税を巡る黒田総裁への恨み節が吐露されており、その時の副総裁としての立場としての葛藤が記述されている。そんなことはさておき、現下の金融政策の理論的支柱の考え方がまとめられており、「日記」と思いきや実践的な金融論のテキストと言って良いだろう。
2019年3月10日に日本でレビュー済み
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日記形式で読みやすい。何故デフレから脱却できなかったかがよく理解できる。