Amazonで購入させていただきました。
まず、ぼく自身について述べさせていただきます。
ぼくは過去に、10年間に渡って社会的ひきこもり的な生活を続けたことがあります。
社会的ひきこもりの正確な定義に照らせば、約1年間ほど完全なる社会的ひきこもりでした。
その「完全なる社会的ひきこもり」生活をしていたときに、一念発起して(というのも、どういう形ではあっても他者と触れあいたかったからです)アルバイトをはじめました。
アルバイトを約1年間して、人慣れをしてから某会社に正社員として採用してもらいました。それ以降いままで仕事を辞めずに数年間働いています。
社会的ひきこもり経験者のぼくのレビューがどなたかの役にたったとしたら幸いとおもい、筆をとった次第です。
著者の斎藤環(さいとう・たまき)さんは、
①(社会的)ひきこもり
②病跡学(『関係の化学としての文学』で2010年度の日本病跡学会賞を受賞)
③(ラカンの)精神分析(『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』で2013年に第11回角川財団学芸賞を受賞)
④思春期・青年期の精神病理学
が専門の精神科医でいらっしゃいます。
本レビュー執筆時現在(2017/5/19)には母校・筑波大学の医学医療系社会精神保健学の教授でいらっしゃいます。
本書は、2007年10月に中央法規出版から単行本として刊行されたものが、2012年10月にちくま文庫に文庫化されたものです(ちなみに、2017年5月19日現在、単行本版も購入できます)。
本書の成りたちは「はじめに」のなかで以下のように述べられています。
「二◯◯六年の九月から一一月にかけて、私は社団法人青少年健康センターが主催する理論講座「不登校・ひきこもり援助論」の講師を務めました。/この本は、全六回に及んだその講座の記録をもとに、大幅に加筆修正をほどこしたものです」(p.3)
本書の内容は「あとがき」に以下のようにまとめられています。
「かつて、「ひきこもり」という言葉がまだいわれていなかった時代には、もちろん教科書もマニュアルもありませんでした。幸い私は師と仲間には恵まれたので、協力し合って独自の方法論を蓄積していきました。その詳細は、『社会的ひきこもり』(PHP新書)と『「ひきこもり」救出マニュアル』(PHP研究所)に記してあります。/しかし、これらの本には、詳しい方法論はあっても理論的な裏づけは十分に書けませんでした。/本来方法論というものは、そのバックボーンとなった理論とともに学ぶことで、最も効率よく、確実に血肉化されるものです。いずれそういう本も書かなければと漠然と考えていたところに、「はじめに」でも述べた「理論講座」の企画が持ち込まれたのでした」(p.221-222)
つまり、この本は社会的ひきこもりから脱却させるための実践編ではなく、治療実践のバックボーンとなる理論編です。
さて、本書の内容を紹介する前に、目次を紹介したほうが説明がしやすくなるとおもわれるので、以下に目次を列挙します。
はじめに
第1章「ひきこもり」の考え方
対人関係があればニート、なければひきこもり
「ひきこもり」はかかわりたくないもの?
若者論のなかのひきこもり
成熟とは何か
家族の特殊性
不登校の問題
ニートとひきこもり
第2章 ラカンとひきこもり
なぜ他者とのかかわりが必要なのか
ジャック・ラカン
ひきこもりと自己愛
欲望
第3章 コフート理論とひきこもり
人間は一生をかけて成熟する
自信とプライド
「自己−対象」と変容性内在化
人とかかわることの意味
「自己」の発達
適度な欲求不満
双子自己−対象
融和した自己へ
共感の重要さ
持続的な支持対象
第4章 クライン、ビオンとひきこもり
攻撃すると攻撃が、良い対応をすると良い反応が返ってくる
クラインの対象関係論
妄想ー分裂態勢
投影性同一視
ビオンの理論
基底的想定グループ
第5章 家族の対応方針
安心してひきこもれる環境を作ることから
「家族の常識」を疑う
まず「安心」と「共感」を
会話は「あいさつ」から
誠実でわかりやすい態度を
ルールと交渉
経済的な将来設計を!
集団適応と自発性
集団参加のあり方
働きかけのコツ
第6章 ひきこもりの個人精神療法
「治る」ということは、「自由」になるということ
治療における心構え
「集団」と「連携」のもつ力
「治療美談」を求めない
「欠点」と「自己愛」を大切に
「転移」について
「意外性」の効能
「誘惑」のために
「一体感」から「試行錯誤」へ
人を動かすということ
おわりに
あとがき
文庫版あとがき
参考文献
解説 重層的な「ひきこもり」の理解の必要性 井出草平
以上です。
本書は「解説」までふくめて、243ページです。
いつもの斎藤さんの著作同様に読みやすく、サクサクとストレスなく読めます。
学術書ではないので、その手の本が苦手な方でもとっつきやすいとおもわれます。
この本は、目次とは別に、5つのパートにわかれると個人的にはおもわれます。
⑴社会的ひきこもりがどういうものか、ということについての説明→「第1章「ひきこもり」の考え方」
⑵社会的ひきこもりの治療実践のバックボーンとなる理論についての説明→「第2章 ラカンとひきこもり」〜「第4章 クライン、ビオンとひきこもり」
⑶社会的ひきこもり当事者に家族はどう関わるべきか、ということについての説明→「第5章 家族の対応方針」
⑷社会的ひきこもり当事者を治療する上で、治療者が取るべき基本姿勢についての説明→「第6章 ひきこもりの個人精神療法」のp.178-204
⑸社会的ひきこもり当事者の治療手順についての説明→「第6章 ひきこもりの個人精神療法」のp.204-218
レビューが長くなってしまったのでまとめに入りたいとおもいますが、斎藤さんご自身は社会的ひきこもりが「治る」ということはどういうことかを以下のように簡潔に説明しています。
「「治る」ということを、私は「自由になること」と考えています」(p.202)
そして、その「自由になること」を以下のようにより具体的に記述した箇所があります。
「「(前略)自由で なんというか 救われてなきゃあダメなんだ 独りで静かで豊かで……」」(p.219)
最後になりますが、斎藤さんは社会的ひきこもりの治療に関して以下のような厳しい見方も示されています。
「(前略)ひきこもりの治療は、どんなに順調でも二年から三年はかかります。人間は促成栽培はできません」(p.182)
*本レビューのタイトルの括弧内の文章は本書からの引用です。
**ぼくは精神分析等に関して門外漢ですので、本レビューに間違い等散見されるかもしれませんが、文責はぼくにあります。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
新品:
¥748¥748 税込
ポイント: 7pt
(1%)
無料お届け日:
3月31日 日曜日
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
新品:
¥748¥748 税込
ポイント: 7pt
(1%)
無料お届け日:
3月31日 日曜日
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
中古品: ¥139
中古品:
¥139

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ひきこもりはなぜ「治る」のか?: 精神分析的アプローチ (ちくま文庫 さ 29-4) 文庫 – 2012/10/1
斎藤 環
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥748","priceAmount":748.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"748","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"2lSGXNR4xwCYd0jlB4w%2F7TEC18O5yyeSnoa8Y5viDyRfPrDNTqXztn7Vf%2BiqQshvRO%2BLuC8lsFi%2FVuwLS30LbAfvBRch74OtPmBnT5pU4B7RzsHn0wEfYgkrhX75eaqmrgbxGkioWm8%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥139","priceAmount":139.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"139","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"2lSGXNR4xwCYd0jlB4w%2F7TEC18O5yyeSVo0CcKlzjuHKbBe7%2FKv8FDqE3u9tCmqBylG6iivCA07cm0vAGUD6qgZjkQ4nfsBl9fs2MOn18y560YJy6q20NHlNfhjm6wYgJAM95GJm%2Bcqgo0C0h3jwvYQbMN7gkfkev9g%2FTfi9wQsOiCOrft08%2Fg%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
- 本の長さ243ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2012/10/1
- ISBN-104480429956
- ISBN-13978-4480429957
よく一緒に購入されている商品

対象商品: ひきこもりはなぜ「治る」のか?: 精神分析的アプローチ (ちくま文庫 さ 29-4)
¥748¥748
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
残り8点(入荷予定あり)
¥858¥858
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
残り10点(入荷予定あり)
¥836¥836
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
残り11点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2012/10/1)
- 発売日 : 2012/10/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 243ページ
- ISBN-10 : 4480429956
- ISBN-13 : 978-4480429957
- Amazon 売れ筋ランキング: - 87,525位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 328位ちくま文庫
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年5月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2024年2月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
でも、環先生シリーズの読者なら一応読んでも損はないと思います。
この本に書いてあったのですが、斎藤環医師も自分探し系かひきこもり系かと言うとひきこもり系で、だからひきこもりの心理がわからなくはないと書いてあったので。
この本に書いてあったのですが、斎藤環医師も自分探し系かひきこもり系かと言うとひきこもり系で、だからひきこもりの心理がわからなくはないと書いてあったので。
2020年11月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
良いと思います
2022年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ひきこもり対応の仕方の本なので、なぜそうしたら良いのか、家族の心構えが主に書かれているけど、
学校の先生にもぜひ読んで欲しい。せっかく家庭で良い支援をしても、先生がわかっていないと親と共に学校から離れていってしまうだろう。
学校の先生にもぜひ読んで欲しい。せっかく家庭で良い支援をしても、先生がわかっていないと親と共に学校から離れていってしまうだろう。
2014年12月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本はひきこもりについて書かれた本であるということは題名を見れば誰にでもわかると思う。
しかし、この本がひきこもりをどう治せばよいかといことだけでなく、有名な精神分析家の理論を引用して説明されている本であるということは題名だけではわからないと思のでその辺のことは強調しておきたいと思う。
なぜかと言うとこの本で紹介されているラカン、コフート、クライン、ビオンという精神分析家の理論は非常に興味深く、人間関係というものを考えるうえでかなり有用であると思えるからである。
「欲望は他者の欲望である」(ラカン)、「自己―対象」「変容性内在化」(コフート)、「投影性同一視」「妄想―分裂態勢」(クライン)、「基底的想定グループ」(ビオン)などの概念は人間関係を理解するうえで重要な概念であり得ると思われる。
しかし、おそらくかなり難しい概念でもあるとも思われるのでこの本において著者がかなりわかりやすく解説してくれて大いに助かったし、啓蒙された。
題名をを見てこの本に興味を亡くした人がいるとしてもそこだけにとらわれずラカン、コフート、クライン、ビオンといった精神分析家の理論についてこの本を読めば興味が持てると思うので精神分析の世界に興味のある人ならばそういう視点と動機でこの本を手に取ってみるのもよいと思う。
しかし、この本がひきこもりをどう治せばよいかといことだけでなく、有名な精神分析家の理論を引用して説明されている本であるということは題名だけではわからないと思のでその辺のことは強調しておきたいと思う。
なぜかと言うとこの本で紹介されているラカン、コフート、クライン、ビオンという精神分析家の理論は非常に興味深く、人間関係というものを考えるうえでかなり有用であると思えるからである。
「欲望は他者の欲望である」(ラカン)、「自己―対象」「変容性内在化」(コフート)、「投影性同一視」「妄想―分裂態勢」(クライン)、「基底的想定グループ」(ビオン)などの概念は人間関係を理解するうえで重要な概念であり得ると思われる。
しかし、おそらくかなり難しい概念でもあるとも思われるのでこの本において著者がかなりわかりやすく解説してくれて大いに助かったし、啓蒙された。
題名をを見てこの本に興味を亡くした人がいるとしてもそこだけにとらわれずラカン、コフート、クライン、ビオンといった精神分析家の理論についてこの本を読めば興味が持てると思うので精神分析の世界に興味のある人ならばそういう視点と動機でこの本を手に取ってみるのもよいと思う。
2008年1月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今、ひきこもりの支援をやっている者としては、押さえておきたい考えが書かれており(少し小難しいが…)参考になる1冊である。読み物ではないかな。
しかし、これが支援の方法の中心になるとは考えにくい。
斉藤環という人は斉藤環の考えの下で支援をしている。その背景にはこういった理論があったんだという理解にはなるが、だから同じようにしようとか、安易に考えてもダメなんでしょうね。理論もそんなに裏づけがあるわけではないし…。
でも、まぁ、そんなもんですかね。
しかし、これが支援の方法の中心になるとは考えにくい。
斉藤環という人は斉藤環の考えの下で支援をしている。その背景にはこういった理論があったんだという理解にはなるが、だから同じようにしようとか、安易に考えてもダメなんでしょうね。理論もそんなに裏づけがあるわけではないし…。
でも、まぁ、そんなもんですかね。
2017年4月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
論理と実践の両方に言及しており納得と、実現性がある。
ひきこもりの方へのアプローチ方法が確立できた。
ひきこもりの方へのアプローチ方法が確立できた。
2016年6月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ひきこもりに対して、支援者だけでなく、家族の視点を変えるためのエッセンスがわかりやすく書かれている本だと思う。