
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
日本の雇用と中高年 (ちくま新書 1071) 新書 – 2014/5/7
濱口 桂一郎
(著)
激変する雇用環境。労働問題の責任ある唯一の答えは「長く生き、長く働く」しかない。けれど、年齢が足枷になって再就職できない中高年。あるべき制度設計とは。
- 本の長さ238ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2014/5/7
- 寸法10.7 x 1.3 x 17.3 cm
- ISBN-104480067736
- ISBN-13978-4480067739
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2014/5/7)
- 発売日 : 2014/5/7
- 言語 : 日本語
- 新書 : 238ページ
- ISBN-10 : 4480067736
- ISBN-13 : 978-4480067739
- 寸法 : 10.7 x 1.3 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 214,011位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 748位ちくま新書
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年5月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
そもそも、戦時中に労働者とその家族の生活を保障する事を背景として生まれた日本型雇用システム(年功賃金と終身雇用)から企業を解放するために定年制がある事が理解できます。生活給の要素を有する年功賃金を有し、一部社会福祉の分野まで担っている日本の大企業にとって、長年議論されていた「職務に基づいた賃金」を導入する好機となっていると思われます。この4月の「改正高年齢雇用安定法」施行を受けて、シニア人財の社内での活用方法を考えている人事政策担当者には、参考になります。
2014年5月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ジョブ型、メンバーズ型という雇用のパターンを提起してきた著者ならではの本と言える。
これまでも従来の観念的な労働法制や解雇規制の浅薄な議論を批判し正してきた。
この本でも参考になる論点が相当記述されていて読み応えがある。
後半の生計費のゆえに中高年の賃金を高くせざるを得ない日本社会の構造、欧州特にフランスの社会保障の制度的な支えなど
大変参考になる。
ただ ジョブ型社員というのは日本でどこまで一般化するのだろうか。これは 巷間言われている「役割給」なるものとも共通するのかもしれない。
振り返ると、新人の頃から 一つ上の立場で考える習慣をつけろとか、問題意識を広く持てといった指導をされてきたように思う。
言われたことだけではなく 自主的に改善を提案城といった指導は多くの職場でされてきた。
そうして そのような教育、指導の上に人事考課があった。
生産現場では 知的熟練というコトバが言われるか、それ以外でも組織市民行動とかいったコトバで論じられる。
ある一定の仕事が指示され、それをキチンと遂行する以上のものを多くの職場で、多くの労働者に求めるのが日本の文化ではなかろうか。
それは地域や職種を無限定の旧来型の正社員により多く要求されたが、無限定な正社員野のみに要求されたり 無限定であるが故に求められたということでも無いように思える。
何はともあれこの本は多くの課題を提起している。多くの人にすすめたい。
これまでも従来の観念的な労働法制や解雇規制の浅薄な議論を批判し正してきた。
この本でも参考になる論点が相当記述されていて読み応えがある。
後半の生計費のゆえに中高年の賃金を高くせざるを得ない日本社会の構造、欧州特にフランスの社会保障の制度的な支えなど
大変参考になる。
ただ ジョブ型社員というのは日本でどこまで一般化するのだろうか。これは 巷間言われている「役割給」なるものとも共通するのかもしれない。
振り返ると、新人の頃から 一つ上の立場で考える習慣をつけろとか、問題意識を広く持てといった指導をされてきたように思う。
言われたことだけではなく 自主的に改善を提案城といった指導は多くの職場でされてきた。
そうして そのような教育、指導の上に人事考課があった。
生産現場では 知的熟練というコトバが言われるか、それ以外でも組織市民行動とかいったコトバで論じられる。
ある一定の仕事が指示され、それをキチンと遂行する以上のものを多くの職場で、多くの労働者に求めるのが日本の文化ではなかろうか。
それは地域や職種を無限定の旧来型の正社員により多く要求されたが、無限定な正社員野のみに要求されたり 無限定であるが故に求められたということでも無いように思える。
何はともあれこの本は多くの課題を提起している。多くの人にすすめたい。
2021年3月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
迅速なご対応誠にありがとうございます。大変綺麗な本!
2015年6月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
正社員といわれた人々の、仕事へのかかわり方や社内行動、そして会社での雇用慣行や国の労働政策(法制も含めて)のもろもろが、著者のいう「メンバーシップ型」雇用の視点から、丁寧に説明されているのが、興味深く、かつ大変納得させられた。関係労使での争点や労働ルールにかかわる判例の位置づけなども、歴史を追って具体的に説明が進められていて、過去の一時期にかかわったことのあるテ-マが、「メンバーシップ型」雇用の文脈のなかで、くっきりと位置付けられて見えてきたのも、面白かった。
今、非正規社員の増加によって、「メンバーシップ型」雇用の前提が大きく揺らいでいる現実に、どう対応していくかは、この社会をあげての最重要の課題であることを、実感させられた。
不足点をいえば、「メンバーシップ」の中に、女性が組み込まれていなかったことを、もっと掘り下げてほしかった。今後の著作にも、期待したい。
今、非正規社員の増加によって、「メンバーシップ型」雇用の前提が大きく揺らいでいる現実に、どう対応していくかは、この社会をあげての最重要の課題であることを、実感させられた。
不足点をいえば、「メンバーシップ」の中に、女性が組み込まれていなかったことを、もっと掘り下げてほしかった。今後の著作にも、期待したい。
2018年1月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この東大出身の先生の本は名著である。日本はちっとも解雇しづらくなっていないし、この本の丹念な調査によっても実際に明らかにされている。実情を一言でいうと、「日本人の周囲を気にする性質に付け込んだ、より狡猾な退職強要がおこなわれているだけであり、制度が形骸化していることは明白である。
2016年5月25日に日本でレビュー済み
「Hamachan」の名で知られる労働政策研究者、濱口桂一郎氏。わが国の雇用労働問題が象徴的かつ端的に現れる「中高年」というテーマに焦点をあてることで、本書は「若者と中高年の雇用問題」「日本型雇用と高齢者政策」「定年」「年齢差別禁止」等の中高年に関連するトピックスを縦横無尽に論じています。
さて、最近の濱口氏の「新書本シリーズ」とも呼べる代表的な著作をあげてみます。
「新しい労働社会―雇用システムの再構築へ」 岩波新書(2007年)
「日本の雇用と労働法」 日経文庫(2011年)
「若者と労働―「入社」の仕組みから解きほぐす」 中公新書ラクレ(2013年)
「日本の雇用と中高年」 ちくま新書(2014年)
「働く女子の運命」 文春新書(2015年)
このように、濱口氏は「労働社会」「労働法」「若者」「中高年」「女子」というキーワードを手掛かりに様々な角度からスポットライトを順序よく当てていくことで、複雑で難解な「日本型雇用システム」の全体像(歴史的経緯も含めて)を浮き彫りにすることに成功しています。裏返していえば、これだけの角度からスポットライトをあてていかない限り、わが国の雇用問題の複雑で難解な「全体像」は容易には見えてこないということでしょう。
本書でも述べられているように「雇用システムというのは社会システム全体の一部分システム」です。その全体像を隈なく捉えるためには時系列の歴史的分析に加えて、日本経済全体のレベル、個別企業の経営環境や労使関係、働く人の意識や所得レベル、雇用法規と労働慣行、年金、世界的な雇用問題(中高年対策、年金問題など)、さらには高等教育(新卒の就活など)までも含む、極めて幅広い関連テーマを視野に入れる必要があります。
日本の雇用問題/労働問題については新聞、テレビ、インターネットなど、ありとあらゆるメディアで「同一労働同一賃金」「女性管理職比率」「ホワイトカラーエグゼンプション」「限定社員」などの話題が声高に議論されていますが、一体本当にどれだけの人が問題の全体像や本質を理解しているのでしょうか。「小難しい専門用語や聞いたことのない概念ばかりで、何がなんだかさっぱりわからない!」と感じている方もきっと多いのではないかと想像します。
わが国の雇用問題の「将来やあるべき姿」について真剣に考えることが難しい理由は、わたしたち自身が拠って立つ足場であるところの「現状認識」が、極めて難しいからです。すなわち、「日本の会社で働く」ということは一体どういうことなのか?長期にわたって行われている人事異動(職務の書き換え)という雇用慣行がどれだけユニークなことなのか?
たとえば僕は群馬県(高崎市)出身ですが、もし自分が生まれて以来一回も郷土の群馬県を出たことがなければ、他県や他の地域との慣習や気候、言葉や文化の違いはわからないでしょう。たとえ本で読んでも「ふーん、他の県ってそんなに違うのかなぁ」という程度のあいまいな理解で終わってしまうはずです。それと全く同様に、もし自分が日本企業(メンバーシップ型雇用契約)でしか働いたことがなければ、そうでない環境(ジョブ型雇用契約)で働くことや、そこでの仕事の進め方や働き方や喜びや苦しみをリアリティをもって理解するのは至難の業でしょう。
そこで、日本の現状をわかりやすい言葉で説明するためには、いったんわが国の雇用システムの「外」(アウェイ)に立ち、日本の社会経済の歴史的事実も踏まえて冷静かつ愛着をもって記述していく必要があります。ただ、そこで自分自身の立ち位置を完全にアウェイにしてしまうと「日本は特殊でガラパゴス、だからダメだ」という単純な現状批判(日本を非とし、世界を是とする姿勢)におちいってしまいます。
おそらく濱口氏の著作が大勢の読者から支持されている最大の理由は、元厚労省官僚かつ研究者という正統派のキャリア経験から滲み出るキレ味のよい分析力に加えて、日本人インサイダーとしての「愛のムチ」がほどよくブレンドされている点にあると思います。だからこそ、どの本を読んでも良識的な「語り」に安心して身を任せることができるのです。ただ、ときには厳しいスパイスの効いた警句をちらりと挿入するあたりなどは一種の職人芸を見ているかのようです。
さて、同氏も指摘する世界共通の雇用政策は「長く生き、長く働く」(Live Longer, Work Longer)というものです。世界的な高齢化社会が進む中、仕事ができる「現役世代」をいかに確保し、労働者の活力や可能性を引き出していくか。彼らの労務にどれだけきちんと報いることができるか。このように、日本も含む先進国が共通してめざす目標は同じです―Live Longer, Work Longer。各国がこれをいかに達成していくか。
日本では「戦後から高度経済成長期」の社会人口動態、オイルショック等の経済変動にもっとも適合的だったシステムが、会社の採用権・人事権の裁量を最大限に許容する「メンバーシップ型雇用契約」でした。もちろんいまでも、学生から社会人への接合部分(就活と新卒採用)は、就業経験のない若者を全員あまねく受入れるという観点から、メンバーシップ型契約の有効性は変わりありません。新卒入社後、各人のジョブが正式に決まるまでの「モラトリアム期間」に相応しい契約形態が、わが国のメンバーシップ型雇用契約といえるでしょうか。
しかし、誰であれいつまでもモラトリアム期間(ジョブが定まらない状態)に安住するわけにはいきません。遅かれ早かれ、自分の「ジョブ」(職業、職種、職務)を決め、そのジョブを通じて会社組織および社会に個人として貢献をしていくことが求められるはずです。同氏も指摘するように「(少なくとも)中高年期からはジョブ型正社員のトラックに移行しておくことが不可欠の条件」(P210)となります。
そこで、ここから先は僕個人の経験にもとづく提言になりますが、新卒入社時に「メンバーシップ型雇用契約」(職務非限定正社員)を結ぶ場合、期間の定めのない契約は原則NGとし、例えば上限Max 10年などの有期雇用契約とするという方向が望ましいと考えます。すなわち、新卒入社の人が10年間働いた後は、全員、「ジョブ型契約」(職務限定正社員)へ切り替える。なおジョブ型契約は、期間の定めのない契約を可とします。
一般的に若年期はとくに3,4年おきに配置転換があるでしょうから、勤続最初の10年間で2-3回のジョブローテーションを経験できるでしょう。そこで10年働けば、「自分にどんな職種が向いているのか」「この会社でずっと働いていけるか」がわかってくると思います。さらには中高年雇用対策として「40歳以上の労働者とは会社はメンバーシップ型契約は結べない」「40歳以上の雇用契約は、すべてジョブ型とする」という規程を設けてもよいかもしれません。そうすれば、現在60歳としている定年年齢も65歳(年金受給開始年齢)まで容易に延長できるでしょう。なぜなら、40歳以降はジョブ型契約=非年功賃金のため、無理に60歳で定年退職扱いにする理由がなくなるからです。
ジョブ型契約の賃金については「同一労働同一賃金」がそのままあてはまります。というのも彼らは全員、職務限定社員だからです。法制化するには労基法の賃金パーツと最賃法を統合した「均等賃金法」(米国のEqual Pay Act)が必要となるかもしれません。そこでは「同一価値」の定義(あるいは参考となる職務分析の測定指標)を条文で記載していくのが望ましいでしょう。外資系では「ジョブサイズ」という概念で、部門間職種間の異なるジョブを共通の指標でスコアリングし、ジョブの「重さ」を測定します。
これらのジョブ型契約の根幹となるのが「職務記述書」(JD。ジョブディスクリプション)です。僕自身、過去にいくつかの会社組織のJDを作成してきた経験を踏まえても、やはりすべてのジョブのJDを作るのは大変労力を要します。しかしながら、社内の職務を明確化し、各々のジョブのJDを整備しない限り、ジョブ型社会への移行は不可能なのです。JDの調査・作成は大変な作業ですが、その労に報いるだけの価値ある仕事です。なぜなら、JDはジョブ型雇用契約の根幹をなす組織インフラであり、ジョブ型組織の人材マネジメント・賃金管理に必要不可欠なツールだからです。
さて、濱田氏の「次なる新書本」は、どんなテーマでしょうか? 「解雇」?「定年」?「異動・出向」?「賃金・賞与」?「職務給」?、それとも?
さて、最近の濱口氏の「新書本シリーズ」とも呼べる代表的な著作をあげてみます。
「新しい労働社会―雇用システムの再構築へ」 岩波新書(2007年)
「日本の雇用と労働法」 日経文庫(2011年)
「若者と労働―「入社」の仕組みから解きほぐす」 中公新書ラクレ(2013年)
「日本の雇用と中高年」 ちくま新書(2014年)
「働く女子の運命」 文春新書(2015年)
このように、濱口氏は「労働社会」「労働法」「若者」「中高年」「女子」というキーワードを手掛かりに様々な角度からスポットライトを順序よく当てていくことで、複雑で難解な「日本型雇用システム」の全体像(歴史的経緯も含めて)を浮き彫りにすることに成功しています。裏返していえば、これだけの角度からスポットライトをあてていかない限り、わが国の雇用問題の複雑で難解な「全体像」は容易には見えてこないということでしょう。
本書でも述べられているように「雇用システムというのは社会システム全体の一部分システム」です。その全体像を隈なく捉えるためには時系列の歴史的分析に加えて、日本経済全体のレベル、個別企業の経営環境や労使関係、働く人の意識や所得レベル、雇用法規と労働慣行、年金、世界的な雇用問題(中高年対策、年金問題など)、さらには高等教育(新卒の就活など)までも含む、極めて幅広い関連テーマを視野に入れる必要があります。
日本の雇用問題/労働問題については新聞、テレビ、インターネットなど、ありとあらゆるメディアで「同一労働同一賃金」「女性管理職比率」「ホワイトカラーエグゼンプション」「限定社員」などの話題が声高に議論されていますが、一体本当にどれだけの人が問題の全体像や本質を理解しているのでしょうか。「小難しい専門用語や聞いたことのない概念ばかりで、何がなんだかさっぱりわからない!」と感じている方もきっと多いのではないかと想像します。
わが国の雇用問題の「将来やあるべき姿」について真剣に考えることが難しい理由は、わたしたち自身が拠って立つ足場であるところの「現状認識」が、極めて難しいからです。すなわち、「日本の会社で働く」ということは一体どういうことなのか?長期にわたって行われている人事異動(職務の書き換え)という雇用慣行がどれだけユニークなことなのか?
たとえば僕は群馬県(高崎市)出身ですが、もし自分が生まれて以来一回も郷土の群馬県を出たことがなければ、他県や他の地域との慣習や気候、言葉や文化の違いはわからないでしょう。たとえ本で読んでも「ふーん、他の県ってそんなに違うのかなぁ」という程度のあいまいな理解で終わってしまうはずです。それと全く同様に、もし自分が日本企業(メンバーシップ型雇用契約)でしか働いたことがなければ、そうでない環境(ジョブ型雇用契約)で働くことや、そこでの仕事の進め方や働き方や喜びや苦しみをリアリティをもって理解するのは至難の業でしょう。
そこで、日本の現状をわかりやすい言葉で説明するためには、いったんわが国の雇用システムの「外」(アウェイ)に立ち、日本の社会経済の歴史的事実も踏まえて冷静かつ愛着をもって記述していく必要があります。ただ、そこで自分自身の立ち位置を完全にアウェイにしてしまうと「日本は特殊でガラパゴス、だからダメだ」という単純な現状批判(日本を非とし、世界を是とする姿勢)におちいってしまいます。
おそらく濱口氏の著作が大勢の読者から支持されている最大の理由は、元厚労省官僚かつ研究者という正統派のキャリア経験から滲み出るキレ味のよい分析力に加えて、日本人インサイダーとしての「愛のムチ」がほどよくブレンドされている点にあると思います。だからこそ、どの本を読んでも良識的な「語り」に安心して身を任せることができるのです。ただ、ときには厳しいスパイスの効いた警句をちらりと挿入するあたりなどは一種の職人芸を見ているかのようです。
さて、同氏も指摘する世界共通の雇用政策は「長く生き、長く働く」(Live Longer, Work Longer)というものです。世界的な高齢化社会が進む中、仕事ができる「現役世代」をいかに確保し、労働者の活力や可能性を引き出していくか。彼らの労務にどれだけきちんと報いることができるか。このように、日本も含む先進国が共通してめざす目標は同じです―Live Longer, Work Longer。各国がこれをいかに達成していくか。
日本では「戦後から高度経済成長期」の社会人口動態、オイルショック等の経済変動にもっとも適合的だったシステムが、会社の採用権・人事権の裁量を最大限に許容する「メンバーシップ型雇用契約」でした。もちろんいまでも、学生から社会人への接合部分(就活と新卒採用)は、就業経験のない若者を全員あまねく受入れるという観点から、メンバーシップ型契約の有効性は変わりありません。新卒入社後、各人のジョブが正式に決まるまでの「モラトリアム期間」に相応しい契約形態が、わが国のメンバーシップ型雇用契約といえるでしょうか。
しかし、誰であれいつまでもモラトリアム期間(ジョブが定まらない状態)に安住するわけにはいきません。遅かれ早かれ、自分の「ジョブ」(職業、職種、職務)を決め、そのジョブを通じて会社組織および社会に個人として貢献をしていくことが求められるはずです。同氏も指摘するように「(少なくとも)中高年期からはジョブ型正社員のトラックに移行しておくことが不可欠の条件」(P210)となります。
そこで、ここから先は僕個人の経験にもとづく提言になりますが、新卒入社時に「メンバーシップ型雇用契約」(職務非限定正社員)を結ぶ場合、期間の定めのない契約は原則NGとし、例えば上限Max 10年などの有期雇用契約とするという方向が望ましいと考えます。すなわち、新卒入社の人が10年間働いた後は、全員、「ジョブ型契約」(職務限定正社員)へ切り替える。なおジョブ型契約は、期間の定めのない契約を可とします。
一般的に若年期はとくに3,4年おきに配置転換があるでしょうから、勤続最初の10年間で2-3回のジョブローテーションを経験できるでしょう。そこで10年働けば、「自分にどんな職種が向いているのか」「この会社でずっと働いていけるか」がわかってくると思います。さらには中高年雇用対策として「40歳以上の労働者とは会社はメンバーシップ型契約は結べない」「40歳以上の雇用契約は、すべてジョブ型とする」という規程を設けてもよいかもしれません。そうすれば、現在60歳としている定年年齢も65歳(年金受給開始年齢)まで容易に延長できるでしょう。なぜなら、40歳以降はジョブ型契約=非年功賃金のため、無理に60歳で定年退職扱いにする理由がなくなるからです。
ジョブ型契約の賃金については「同一労働同一賃金」がそのままあてはまります。というのも彼らは全員、職務限定社員だからです。法制化するには労基法の賃金パーツと最賃法を統合した「均等賃金法」(米国のEqual Pay Act)が必要となるかもしれません。そこでは「同一価値」の定義(あるいは参考となる職務分析の測定指標)を条文で記載していくのが望ましいでしょう。外資系では「ジョブサイズ」という概念で、部門間職種間の異なるジョブを共通の指標でスコアリングし、ジョブの「重さ」を測定します。
これらのジョブ型契約の根幹となるのが「職務記述書」(JD。ジョブディスクリプション)です。僕自身、過去にいくつかの会社組織のJDを作成してきた経験を踏まえても、やはりすべてのジョブのJDを作るのは大変労力を要します。しかしながら、社内の職務を明確化し、各々のジョブのJDを整備しない限り、ジョブ型社会への移行は不可能なのです。JDの調査・作成は大変な作業ですが、その労に報いるだけの価値ある仕事です。なぜなら、JDはジョブ型雇用契約の根幹をなす組織インフラであり、ジョブ型組織の人材マネジメント・賃金管理に必要不可欠なツールだからです。
さて、濱田氏の「次なる新書本」は、どんなテーマでしょうか? 「解雇」?「定年」?「異動・出向」?「賃金・賞与」?「職務給」?、それとも?
2014年6月7日に日本でレビュー済み
中高年の雇用問題(解雇問題)について、コンパクトに解説しています。
雇用政策に関する日本と欧米との違いや、日本型雇用システムの変遷の歴史、解雇や配置転換、降格についての裁判例など、詳細な解説が多岐に渡って続きます。文体は平易で、専門的な用語も少ないのですが、趣旨を理解するには、腰を据えて読むことが必要です。
結局のところ、中高年の雇用問題は、最後の第五章に集約されるように思います。
従来の年功序列型賃金は、家族手当などと同様、子供の教育費などの増加をカバーし、標準家庭の生活スタイルにマッチしていた。
そのため、本来は社会福祉として国が整備すべき扶養手当は、不十分なままになってしまった。
ところが、不況が長引き、企業はコスト削減のため、年功序列型賃金や各種手当を止め、相対的に賃金の高い中高年を、リストラし始めた。
賃金が高いのは、社会福祉的な費用を企業が負担していたことが一因であるが、企業側は(世の中も)、「あなたの能力が賃金に見合っていない」という、個々人の問題として扱っている。
(副作用として、資格取得や勉強会が流行ります)
賃金制度をどう設計するかは、各企業の裁量ですが、扶養手当の拡充は、少子化対策とも関連して、国が考えるべき課題でしょう。
雇用政策に関する日本と欧米との違いや、日本型雇用システムの変遷の歴史、解雇や配置転換、降格についての裁判例など、詳細な解説が多岐に渡って続きます。文体は平易で、専門的な用語も少ないのですが、趣旨を理解するには、腰を据えて読むことが必要です。
結局のところ、中高年の雇用問題は、最後の第五章に集約されるように思います。
従来の年功序列型賃金は、家族手当などと同様、子供の教育費などの増加をカバーし、標準家庭の生活スタイルにマッチしていた。
そのため、本来は社会福祉として国が整備すべき扶養手当は、不十分なままになってしまった。
ところが、不況が長引き、企業はコスト削減のため、年功序列型賃金や各種手当を止め、相対的に賃金の高い中高年を、リストラし始めた。
賃金が高いのは、社会福祉的な費用を企業が負担していたことが一因であるが、企業側は(世の中も)、「あなたの能力が賃金に見合っていない」という、個々人の問題として扱っている。
(副作用として、資格取得や勉強会が流行ります)
賃金制度をどう設計するかは、各企業の裁量ですが、扶養手当の拡充は、少子化対策とも関連して、国が考えるべき課題でしょう。
2015年6月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「ジョブ型社会」「メンバーシップ型社会」「内部労働市場」「外部労働市場」などをキーワードに、日本の雇用問題ないしは人事政策と法制の変遷と現状、高齢化する社会が直面する諸課題をコンパクトにまとめた良書です。現役のビジネスパースンはもとより、まもなくメンバーシップ型社会の一員になるであろう学生諸君にも一読を勧めたい良書です。