誰もが一度は触れたことがある･･･とは、ちょっと言い過ぎかもしれないが、それほどまでに馴染みの深い玩具「レゴブロック」。グーグルのオフィスにも、社員が「創造の精神を忘れないように」と必ず置いてある。
レゴジャパン株式会社が2018年に実施した調査では、東大出身者の約70％が幼い頃にレゴで遊んだことがあり、多くが説明書通りに組み立てるのではなく、説明書を見ずに自由に組み立てる遊び方をしていたことも明らかになっている。（同社プレスリリース：東京六大学出身者600名に聞いた「レゴと知育の関連性に関する調査」より）
自分の思い描くものを形にしようと、試行錯誤しながら答えを見つけていく遊び。小さな指先で作られる世界には無限の可能性が秘められている･･･
創業者のオーレ・キアクが自らの玩具会社の名前を「LEGO（レゴ）」としたのは1934年。レゴとは、デンマーク語の「Led God」（よく遊べ）という言葉から作った造語だった。偶然にも、LEGOはラテン語で「私は組み立てる」という意味があったことが後にわかる。
本書は、世界有数のブランド「LEGO（レゴ）」の強さを解き明かすケーススタディであり、同社の波乱に満ちた経営の軌跡を追いながら、競争力の原点であるレゴの普遍的な価値を発見していくプロセスが描かれている。
1980年代から各国でレゴブロックの基本特許の期限が切れ、競合メーカーからコピー品が次々と発売され、一方で「ファミリーコンピュータ」や「ゲームボーイ」といった家庭用ゲーム機の登場もあり、レゴは2004年に記録的な赤字になり、身売りを迫られるまで経営が追い詰められた。そこで生き残るために行われた大改革が、リストラによる人員整理や不慣れな事業からの撤退。そして創業者の理念に立ち返ることだった。結果、経営危機から奇跡のV字回復を果たし、唯一無二のブランド力を持つようになった。
1. 自分の強みを理解すること
2．継続的に成果をアウトプットする仕組みをつくること
3．コミュニティを育み、つながりを強化すること
4．存在意義を明確に発信すること
理由は、この4つの強さがあったからだという。
レゴには『自分たちは何者か』を問う企業文化がしっかりと根づいている･･･という一言が心に響く。
「我々は何を成し遂げたいのか」
「どんな価値を社会に提供できるのか」
「レゴがなくなったら、社会は何を失うのだろうか」
レゴが投げ続けているこれらの問いは、『自分がいなくなったら、会社は何を失うのか』と読み替えることで、これからの時代を生き抜く私たちすべてに向けた問いにもなる」（本書より）
著者の 蛯谷 敏 さんは、ご自身もトレーニング修了認定を受けた、レゴ®シリアスプレイ®ファシリテータ。前職の日経ビジネス記者時代に出会った、エレファントデザインの 西山 浩平 さんへの取材がきっかけで、この本が生まれたとのこと。
実は、西山さんはレゴ社の救世主でもある。レゴが2014年に開始した、インターネット上でファンが「自分の欲しいレゴ」を制作し、投票によって製品化を決める「LEGO IDEAS（レゴアイデア）」というサービスの原型は、西山さんが提供したもの。
エレファントデザインは、2000年代前半からユーザー参加型の商品企画サイト「空想生活」と呼ぶ、現在のクラウドファンディングに近いコミュニティ・サービスを開始。2008年からは「LEGO CUUSOO（レゴ空想）」の名称で、レゴと共同で実験サービスを始めている。
レゴの成功の裏側に迫るとともに、さまざまなステークホルダーの関わりを通して、社会や会社の中での「自分の価値」についても考えさせられる一冊。
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企業経営の困難や危機を乗り越えるためのヒントが満載の指南書
この本は企業経営の困難や危機をどうやって生き延びるかとというヒントをピックアップできる最良の指南書です。読んでみて感じたのは「ああ、カッコいいドラマチックな解決などはドラマの中だけの話。泥臭くても失敗を繰り返しても、現場を回し、意見に耳を傾け、悪夢のような状況の中を切り拓く先に次のステージがあるのだ」という思いです。そう、企業は変わり続けなければならないのです。製造業に関わる方々ならこの本、一度読んでおくことを強くおすすめします。蛯谷さん、素晴らしい本を世に届けていただき、本当にありがとうございます。
