普通の高校生が医師に処方された鎮痛剤によって中毒となり、あっという間に麻薬依存症になってしまうという、信じられない話。製薬会社の非人道的な利益追及と医師の癒着が火種だが、アメリカの地域産業の空洞化と医療保険制度の不備がその火を広げて、まさに「野火」のように普通の家庭を、地域を崩壊させていく様は空恐ろしい。
しかしそんな絶望的な状況の中でも、信念を持って粘り強く目の前の患者を救おうとする医師や市民団体、製薬会社を検挙しようとする検察官、麻薬ディーラーを追う警察官がいて、彼らの姿を地方紙の女性記者が何年もかけて丹念に取材している。アメリカ社会の脆さと底力を同時に見るようだ。何よりも、最後まで希望と愛を持って子供を救おうとする母親たちの姿は感動的。訳者まえがきにあるように、日本で起こり得ない話ではないので、対岸の火事ではないと痛感した。依存症患者を麻薬中毒者として罰するだけでは解決しないので、薬物維持治療をして社会復帰させる方向へ向かっているようだが、コロナのパンデミックで依存症治療が後回しになって、コロナと薬物過剰摂取の死者が両方とも増えているのではないかと心配になった。
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DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機 単行本(ソフトカバー) – 2020/2/19
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購入オプションとあわせ買い
タイガー・ウッズも見舞われ、プリンス、トム・ペティ、そして大谷翔平投手のチームメイトのスキャッグス投手の命を奪った鎮痛薬の罠!
本書は今やアメリカ史上最悪の麻薬問題となっているオピオイド蔓延の実態を余すことなく描いたドキュメントだ。今や依存症者数が400万人、年間死者も4万人を超えるオピオイド依存症の震源地となったアパラチア地方で地元紙の記者を務めていたベス・メイシーは、「夢の鎮痛剤」として大々的に宣伝されていた処方薬のオキシコンチンが、地域の高校生から働き盛りのビジネスマン、主婦、そして高齢者にいたるまで、無差別に人々をオピオイドも魔力に引き込んでいく様を克明に記録し、5年間にわたる取材の成果をこの一冊にまとめた。
本書にはオピオイドによって生活を根底から破壊された人々やその家族のほか、問題解決の前に立ちはだかる数々の政治的な壁、依存症を引き起こすことが分かっていながら欺瞞に満ちた営業攻勢をかけ続けた欲深い製薬会社と堕落した医師の癒着した関係、問題を過小評価した結果、全てが後手後手に回った行政の不作為、そして多勢に無勢を覚悟で問題に立ち向かう被害者の遺族や地域のボランティアたちの姿が、いずれも等身大で描かれている。
アメリカは明らかにオピオイド問題への対応に失敗した結果、今まさにその大きなツケを払わされている。なぜアメリカはオピオイド依存症をこれほどまでに状況が悪化するまで放置したのか。そこから日本が学ぶべき教訓とは何か。薬物依存症の蔓延を対岸の火事としないための必読の書だ。
本書は今やアメリカ史上最悪の麻薬問題となっているオピオイド蔓延の実態を余すことなく描いたドキュメントだ。今や依存症者数が400万人、年間死者も4万人を超えるオピオイド依存症の震源地となったアパラチア地方で地元紙の記者を務めていたベス・メイシーは、「夢の鎮痛剤」として大々的に宣伝されていた処方薬のオキシコンチンが、地域の高校生から働き盛りのビジネスマン、主婦、そして高齢者にいたるまで、無差別に人々をオピオイドも魔力に引き込んでいく様を克明に記録し、5年間にわたる取材の成果をこの一冊にまとめた。
本書にはオピオイドによって生活を根底から破壊された人々やその家族のほか、問題解決の前に立ちはだかる数々の政治的な壁、依存症を引き起こすことが分かっていながら欺瞞に満ちた営業攻勢をかけ続けた欲深い製薬会社と堕落した医師の癒着した関係、問題を過小評価した結果、全てが後手後手に回った行政の不作為、そして多勢に無勢を覚悟で問題に立ち向かう被害者の遺族や地域のボランティアたちの姿が、いずれも等身大で描かれている。
アメリカは明らかにオピオイド問題への対応に失敗した結果、今まさにその大きなツケを払わされている。なぜアメリカはオピオイド依存症をこれほどまでに状況が悪化するまで放置したのか。そこから日本が学ぶべき教訓とは何か。薬物依存症の蔓延を対岸の火事としないための必読の書だ。
- 本の長さ488ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2020/2/19
- 寸法12.9 x 2.5 x 18.8 cm
- ISBN-104334962386
- ISBN-13978-4334962388
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商品の説明
著者について
ベス・メイシー
バージニア州ロアノークに拠点を置き、30年にわたり取材活動をしているアメリカのジャーナリスト。著書の『Factory Man』(2014)、『Truevine』(2016)は高い評価を得、ベストセラーとなった。ハーバード大学のジャーナリストのための特別研究員『ニーマン・フェローシップ』を含む12を超える全米での賞を受賞。本書はロサンゼルス・タイムズ書籍賞を受賞し、カーネギー賞の候補となった。
訳者・解説
神保哲生
ジャーナリスト/『ビデオニュース・ドットコム』代表
東京生まれ。AP通信などの記者を得て1994年独立。以来、フリーのビデオジャーナリストとして活動を続け、2000年日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立。著書に『ビデオジャーナリズム』(明石書店)、『PC遠隔操作事件』(光文社)など、訳書に『食の終焉』(ポール・ロバーツ著、ダイヤモンド社)、『暴君誕生』(マット・タイービ著、ダイヤモンド社)などがある。
バージニア州ロアノークに拠点を置き、30年にわたり取材活動をしているアメリカのジャーナリスト。著書の『Factory Man』(2014)、『Truevine』(2016)は高い評価を得、ベストセラーとなった。ハーバード大学のジャーナリストのための特別研究員『ニーマン・フェローシップ』を含む12を超える全米での賞を受賞。本書はロサンゼルス・タイムズ書籍賞を受賞し、カーネギー賞の候補となった。
訳者・解説
神保哲生
ジャーナリスト/『ビデオニュース・ドットコム』代表
東京生まれ。AP通信などの記者を得て1994年独立。以来、フリーのビデオジャーナリストとして活動を続け、2000年日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立。著書に『ビデオジャーナリズム』(明石書店)、『PC遠隔操作事件』(光文社)など、訳書に『食の終焉』(ポール・ロバーツ著、ダイヤモンド社)、『暴君誕生』(マット・タイービ著、ダイヤモンド社)などがある。
登録情報
- 出版社 : 光文社 (2020/2/19)
- 発売日 : 2020/2/19
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 488ページ
- ISBN-10 : 4334962386
- ISBN-13 : 978-4334962388
- 寸法 : 12.9 x 2.5 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 446,022位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 65,498位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2023年6月25日に日本でレビュー済み
アメリカ食品医薬品局(FDA)による承認鎮痛薬「オキシコンチン」にケシの実(阿片)由来の麻薬成分が含有され、薬物依存症を招いた有り得べからざる事実に戦慄が走る。これを「薬害」と呼ばずにはいられない。
別書『ヒルビリー・エレジー』で触れられたアパラチア山脈の麓に広がる所謂「ラストベルト」(錆び付いた斜陽工業地帯)の地方都市から、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)依存症が蔓延し始めたらしい。処方箋を患者に乱発して薬禍を拡げた悪徳医の存在が、おぞましい。
オピオイド過剰摂取の死因が増え、離脱症状(DOPESICK)の苦しみに耐えられず、さらに別の強力な麻薬に手を出すなど常習性・依存性を高めてしまう悪循環過程が、ルポ取材で白日の下に明らかにされる。
「一旦、脳がモルヒネ分子に乗っ取られると、離脱症状の物理的、心理的苦痛から逃れるためなら、人は手段を選ばなくなる。」「最後の方はハイになるためではなく、離脱症状の苦しさから逃れるだけのために、麻薬を求めるようになります。」 まさに、「魔」薬なのだ。
著者によれば、「患者」を「消費者」と位置付ける医療サービスの競争激化で、医師や病院が「痛み」にも積極的に対応する必要が生じた時期と、「オキシコンチン」の販売時期とが重なった偶然が、オピオイド危機を助長した一つの要因だという。
「1%未満」の危険性という根拠のないデータを悪用して市場流通させ、アメリカ麻薬取締局から流通自制、市場戦略見直しや乱用防止策を勧告されても、根本的に非を認めずに利益追求に走った製薬会社パデュー社の無責任極まりない企業姿勢が最も指弾されるべき悪だ。
経営幹部3名を被告人とする連邦裁判で漸く司法取引に応じ、一転有罪を認めて和解し、罰金刑に服するも禁固刑を免れる。犠牲者遺族に対する謝罪は一切無かった。第4章「企業は痛みを感じない」のタイトルが、読者にやり場のない怒りと非情な現実を空しく突きつける。
別書『ヒルビリー・エレジー』で触れられたアパラチア山脈の麓に広がる所謂「ラストベルト」(錆び付いた斜陽工業地帯)の地方都市から、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)依存症が蔓延し始めたらしい。処方箋を患者に乱発して薬禍を拡げた悪徳医の存在が、おぞましい。
オピオイド過剰摂取の死因が増え、離脱症状(DOPESICK)の苦しみに耐えられず、さらに別の強力な麻薬に手を出すなど常習性・依存性を高めてしまう悪循環過程が、ルポ取材で白日の下に明らかにされる。
「一旦、脳がモルヒネ分子に乗っ取られると、離脱症状の物理的、心理的苦痛から逃れるためなら、人は手段を選ばなくなる。」「最後の方はハイになるためではなく、離脱症状の苦しさから逃れるだけのために、麻薬を求めるようになります。」 まさに、「魔」薬なのだ。
著者によれば、「患者」を「消費者」と位置付ける医療サービスの競争激化で、医師や病院が「痛み」にも積極的に対応する必要が生じた時期と、「オキシコンチン」の販売時期とが重なった偶然が、オピオイド危機を助長した一つの要因だという。
「1%未満」の危険性という根拠のないデータを悪用して市場流通させ、アメリカ麻薬取締局から流通自制、市場戦略見直しや乱用防止策を勧告されても、根本的に非を認めずに利益追求に走った製薬会社パデュー社の無責任極まりない企業姿勢が最も指弾されるべき悪だ。
経営幹部3名を被告人とする連邦裁判で漸く司法取引に応じ、一転有罪を認めて和解し、罰金刑に服するも禁固刑を免れる。犠牲者遺族に対する謝罪は一切無かった。第4章「企業は痛みを感じない」のタイトルが、読者にやり場のない怒りと非情な現実を空しく突きつける。
2020年8月16日に日本でレビュー済み
トランプ大統領の当選当時、「白人男性の平均寿命が短くなっている」、「旧産炭地域や中西部の失業者が、アルコールや薬物依存になっているのが背景」という指摘(「総力取材!トランプ政権と日本」NHK出版新書2017.1)があった。当時は「グローバル化に伴う経済空洞化で失業して自暴自棄になった労働者層」のイメージで、それはそれで従来の既成概念「薬物問題は大都市の黒人貧困層の話」を壊すものではあったが、実は失業者に止まらず、上中流階級や、高校生、女性までも広がっていたという。
これらの人々が薬物依存になったきっかけが「怪我の治療などで医師から処方された強力な鎮痛剤」というのが衝撃。いったん依存症になってしまうと、「Just Say No!」「ダメ、ゼッタイ」など役に立たない。わざと怪我をして病院で鎮痛剤を処方してもらったり、ヘロインに手を出したり。
第1部は、依存症のきっかけをつくった鎮痛剤から見えた製薬企業の反倫理的な営業活動。
第2部は、著者の地元ロアノーク(バージニア州)で普通の高校生たちに薬物依存が蔓延していった話。上流・中流階級は、世間体を気にして家族の薬物依存を隠そうとするから、問題が見えないうちに、子供たちが過剰摂取で次々と死んでいた。
第3部は、ある一人の女性と母親の苦闘の物語。著者は女性ジャーナリストということもあるのか、被害者の母親たちへの取材が濃い。「本人も家族もこれだけ頑張っているのに、薬物と縁が切れないし、救えないのか」と薬物依存の恐ろしさに暗然とする。
「本気で薬物から足を洗いたいなら、まず薬物を断て」という断薬治療が現在の治療の主流のようだ。薬物使用が犯罪として扱われるからかもしれない。しかし、本書の第2部・第3部を読むと、断薬で完治できる患者はむしろ少数派ではないかと思えてくる。著者が指摘するように、薬物維持治療が認められてもいいような気がする。断薬治療派と薬物維持治療派の双方が相手方をこき下ろすだけでは前に進めないのであって、自分たちの欠点も含めてオープンに話し合うべきだろう。
巻末の訳者解説も参考になった。原著の発刊時点では、製薬会社との訴訟和解(第1部)の後味が悪いままだが、日本語版が出るまでの間に、かなりの社会的制裁を受けたようで少しスッキリ。また、日本は「痛くても少しくらいは我慢しなさい」という常識があり、アメリカほどの過剰処方はなさそうでちょっと安心。
そのほか、薬物使用を犯罪と扱うから治療に支障があるのではないか、医療機関を患者が評価するという制度が裏目に出て鎮痛剤が大量に処方されてしまったなど、いろいろ考えさせられる本である。重い内容だがおススメ。
これらの人々が薬物依存になったきっかけが「怪我の治療などで医師から処方された強力な鎮痛剤」というのが衝撃。いったん依存症になってしまうと、「Just Say No!」「ダメ、ゼッタイ」など役に立たない。わざと怪我をして病院で鎮痛剤を処方してもらったり、ヘロインに手を出したり。
第1部は、依存症のきっかけをつくった鎮痛剤から見えた製薬企業の反倫理的な営業活動。
第2部は、著者の地元ロアノーク(バージニア州)で普通の高校生たちに薬物依存が蔓延していった話。上流・中流階級は、世間体を気にして家族の薬物依存を隠そうとするから、問題が見えないうちに、子供たちが過剰摂取で次々と死んでいた。
第3部は、ある一人の女性と母親の苦闘の物語。著者は女性ジャーナリストということもあるのか、被害者の母親たちへの取材が濃い。「本人も家族もこれだけ頑張っているのに、薬物と縁が切れないし、救えないのか」と薬物依存の恐ろしさに暗然とする。
「本気で薬物から足を洗いたいなら、まず薬物を断て」という断薬治療が現在の治療の主流のようだ。薬物使用が犯罪として扱われるからかもしれない。しかし、本書の第2部・第3部を読むと、断薬で完治できる患者はむしろ少数派ではないかと思えてくる。著者が指摘するように、薬物維持治療が認められてもいいような気がする。断薬治療派と薬物維持治療派の双方が相手方をこき下ろすだけでは前に進めないのであって、自分たちの欠点も含めてオープンに話し合うべきだろう。
巻末の訳者解説も参考になった。原著の発刊時点では、製薬会社との訴訟和解(第1部)の後味が悪いままだが、日本語版が出るまでの間に、かなりの社会的制裁を受けたようで少しスッキリ。また、日本は「痛くても少しくらいは我慢しなさい」という常識があり、アメリカほどの過剰処方はなさそうでちょっと安心。
そのほか、薬物使用を犯罪と扱うから治療に支障があるのではないか、医療機関を患者が評価するという制度が裏目に出て鎮痛剤が大量に処方されてしまったなど、いろいろ考えさせられる本である。重い内容だがおススメ。
2020年10月4日に日本でレビュー済み
オキシコンチンといえばあのヒトラーも常用していたアヘン系アルカロイドの仲間でまさに麻薬。ところが、1990年頃から医療界にあった「痛みに対する治療をもっとちゃんとやろう!」という機運に合わせるように、溶けにくい基材で固めてゆっくりとしか吸収されないという工夫を施したオキシコンチンが鎮痛薬として認可・発売された。
薬発売した薬品会社、パデュー・ファーマはそれまでも麻薬系の薬剤(MSコンチンは日本でもおなじみですよね)が得意分野だったが、がんの末期患者などが主なマーケットで売り上げの上ではたいしたことはなかった。そこで徐放錠とすることで依存性をかなり低減(そのデータはかなりいい加減なものであったことは裁判などで明らかに)したオキシコンチンを市場に出し、それが普通の鎮痛剤として処方されるというとんでもないことが1990~2010年代のアメリカで爆発的に起こった。
オキシコンチンの大量処方で依存症者が激増し過剰摂取で死亡する事件が多発、歌手のプリンスや大谷翔平の同僚のピッチャーが急死したのもこれ。日本でもトヨタ初の外国人取締役として赴任してきた女性がオキシコンチンを持ち込もうとして警視庁に逮捕されるという事件があったが、オキシコンチンが家庭の常備薬のようになっているというアメリカのなんともすごい状況がその背景にある。
パデュー・ファーマが処方してくれる医師に接待攻勢をかけ、処方箋を書きまくる医師に歯科医と、つい最近の出来事とは思えない、いやこれがまさに今のアメリカなのかも・・。当然2010年頃から大問題になり大きな裁判がいくつも争われ、多額の和解金・賠償金がニュースになることも増えてきましたが、オキシコンチンであげた収益に比べれば和解金・賠償金は微々たるものらしい。
「若者たちは、朝一番でアデロール(ADHDの薬で精神刺激作用あり)を飲み、午後にはスポーツによる怪我の痛み用にオピオイド(オキシコンチン)を飲み、夜には眠るのは助けるためにザナックス(ベンゾ系睡眠導入剤)を、何の躊躇もなく服用していた。その多くは医師によって処方された薬だった。」(197ページ)・・どうですか、そんなアメリカの大学生の一日。
こんなことが21世紀になってのアメリカで現実問題として起こっているわけで、今のアメリカは明日の日本かもしれない。いや、アメリカの巷にあふれるオキシコンチンは日本にも大量に持ち込まれている可能性も大きいのでは? この本を読んで、芸能人の急死のニュースを聞くと「過剰摂取なんじゃないの?」と思うようになってしまった。医者と薬屋が麻薬をばらまく、なんともタガのはずれた社会がすぐそこまで来ているのかも、くわばら、くわばら。
薬発売した薬品会社、パデュー・ファーマはそれまでも麻薬系の薬剤(MSコンチンは日本でもおなじみですよね)が得意分野だったが、がんの末期患者などが主なマーケットで売り上げの上ではたいしたことはなかった。そこで徐放錠とすることで依存性をかなり低減(そのデータはかなりいい加減なものであったことは裁判などで明らかに)したオキシコンチンを市場に出し、それが普通の鎮痛剤として処方されるというとんでもないことが1990~2010年代のアメリカで爆発的に起こった。
オキシコンチンの大量処方で依存症者が激増し過剰摂取で死亡する事件が多発、歌手のプリンスや大谷翔平の同僚のピッチャーが急死したのもこれ。日本でもトヨタ初の外国人取締役として赴任してきた女性がオキシコンチンを持ち込もうとして警視庁に逮捕されるという事件があったが、オキシコンチンが家庭の常備薬のようになっているというアメリカのなんともすごい状況がその背景にある。
パデュー・ファーマが処方してくれる医師に接待攻勢をかけ、処方箋を書きまくる医師に歯科医と、つい最近の出来事とは思えない、いやこれがまさに今のアメリカなのかも・・。当然2010年頃から大問題になり大きな裁判がいくつも争われ、多額の和解金・賠償金がニュースになることも増えてきましたが、オキシコンチンであげた収益に比べれば和解金・賠償金は微々たるものらしい。
「若者たちは、朝一番でアデロール(ADHDの薬で精神刺激作用あり)を飲み、午後にはスポーツによる怪我の痛み用にオピオイド(オキシコンチン)を飲み、夜には眠るのは助けるためにザナックス(ベンゾ系睡眠導入剤)を、何の躊躇もなく服用していた。その多くは医師によって処方された薬だった。」(197ページ)・・どうですか、そんなアメリカの大学生の一日。
こんなことが21世紀になってのアメリカで現実問題として起こっているわけで、今のアメリカは明日の日本かもしれない。いや、アメリカの巷にあふれるオキシコンチンは日本にも大量に持ち込まれている可能性も大きいのでは? この本を読んで、芸能人の急死のニュースを聞くと「過剰摂取なんじゃないの?」と思うようになってしまった。医者と薬屋が麻薬をばらまく、なんともタガのはずれた社会がすぐそこまで来ているのかも、くわばら、くわばら。
2020年11月25日に日本でレビュー済み
2017年度のアメリカのオピオイド(麻薬性鎮痛薬)関連の死者数は4万人超だそうだ。
この死者数は、東日本大震災の死者数をはるかに上回る数値だ。
この本は、そのオピオイドがどのようにアメリカに蔓延したかを描く、
迫真のノンフィクションだ。オピオイドは、製薬会社や、製薬会社の
接待攻勢で腑抜けになった医師が、大量に患者に処方したため、
余剰分が全米中のブラックマーケットに流通してしまった。一度、オピオイド中毒になると、
そこから抜け出すのは、不可能に近い。オピオイドを打つと、体にイエス(神)がはいってきたような
恍惚とした気分になるが、逆に、一旦、禁断症状になると、体が悪魔にのっとられた
ように苦しくなるのだそうだ。そりゃ、繰返しつかってしまう。
ある一家で、オピオイドの過剰摂取で次々死んでいくくだりなんかは、さながら
ホラー映画の1シーンだ。
この本を読むと、かつては(いまでも)、日本人は、
アメリカの文化や学術・軍事力を最高だともてはやしていたのは、
もはや、過去の幻想だと気づく。近い将来、アメリカが、映画
バイオバイオハザードのように、ゾンビ(オピオイド患者)の群れが
跋扈する国になる様を想像し、身震いしてしまった。
この死者数は、東日本大震災の死者数をはるかに上回る数値だ。
この本は、そのオピオイドがどのようにアメリカに蔓延したかを描く、
迫真のノンフィクションだ。オピオイドは、製薬会社や、製薬会社の
接待攻勢で腑抜けになった医師が、大量に患者に処方したため、
余剰分が全米中のブラックマーケットに流通してしまった。一度、オピオイド中毒になると、
そこから抜け出すのは、不可能に近い。オピオイドを打つと、体にイエス(神)がはいってきたような
恍惚とした気分になるが、逆に、一旦、禁断症状になると、体が悪魔にのっとられた
ように苦しくなるのだそうだ。そりゃ、繰返しつかってしまう。
ある一家で、オピオイドの過剰摂取で次々死んでいくくだりなんかは、さながら
ホラー映画の1シーンだ。
この本を読むと、かつては(いまでも)、日本人は、
アメリカの文化や学術・軍事力を最高だともてはやしていたのは、
もはや、過去の幻想だと気づく。近い将来、アメリカが、映画
バイオバイオハザードのように、ゾンビ(オピオイド患者)の群れが
跋扈する国になる様を想像し、身震いしてしまった。