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コメント: 【注意書きをご覧ください】2008初版。カバ付き、帯欠、中身はきれいですが天と小口に経年過の薄いヤケ。9784334751616
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椿姫 (光文社古典新訳文庫 Aテ 2-1) 文庫 – 2008/8/7

4.3 5つ星のうち4.3 10個の評価

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 光文社 (2008/8/7)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2008/8/7
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 491ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 433475161X
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4334751616
  • カスタマーレビュー:
    4.3 5つ星のうち4.3 10個の評価

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上位レビュー、対象国: 日本

2021年6月29日に日本でレビュー済み
注意 これは西永良成訳の光文社古典新訳文庫へのレビューです。なぜか別の方の訳が同文庫からでることとなり、その方のバージョンにもこのレビューが表示されるようです。ちなみに西永良成訳の最新版は2015年に角川から販売されています。微妙な読点、主語の関係まで補正される徹底ぶりとのことですから、そちらを強くおすすめします。

以下、ネタバレ的に感想を書きます。未読の方は角川版のレビューを先におよみください。

読み始めたら、多くの人はびっくりするんじゃないでしょうか。ヒロインがすでに死んで不在、それはまあ特段に珍しいわけではないでしょう。ですが、そこから本筋がはじまるまでがびっくりするくらい長い。全体の二割ぐらいはあるでしょう。人によってはここで脱落する可能性すらあります。

ところが、ここが構成の妙なのです(たんに型式にしたがっのではなく有効に利用している)。ここで示されることは、娼婦がいかにエスタブリッシュメントからはさげずまれた地位にあったか、ヒロインがいかに不遇のうちに死んだか、男がどれほとヒロインの死を悲しんでいるか、といったことなのですが、「はいはい、そうですね、かわいそう」ぐらいにしか思えません。ありりがちにお涙頂戴のパターンを超えているとも思えないからです。

しかし、通読された方の多くはこの部分を読み返さざるを得なかったでしょうし、一度目とは全くちがった風景として見えたこととは思います。そこではじめて男のかなしみの意味がわかる仕組みなのではないでしょうか。つまり、そこにこの小説の深さがあると思われるのです。愛する人を失うことは誰にとっても悲しい。だが、この男の悲しみは、単なる喪失のそれではなく、ヒロインを残酷な破滅に追いやったのは自分自身に他ならなかったことを理解した人間の取り返しようのない悔悟の悲しみだと。

構成の妙はそれにとどまりません。無関係であった私を聞き手とすることで、男の語りはつねに過去の自分についてのいたらなさ、愚かしさの自己認識を示すことになります。懺悔です。ヒロインの有り様は常に男のフィルターを介して読み手たちは知ることになるのですが、最後にヒロインの手記を配することでヒロインの肉声に接することができるようになっています。さらにすばらしいのは、この手記の最後は、ヒロインの最後を看取った友人の手になるものであるため、そのヒロインをさらに別の角度で照らし出すことになるのです。

こういった構成によって、徹底して尊大な男の態度、誓っては平気に破り、許されてはまた破る。ヒロインの苦しみに近づこうとするのでなく、自分の嫉妬の苦しみに簡単に屈服してひたすら残酷にふるまう態度の底に流れているものを理解できるようになっています。それは、愛しているという言葉を楯に、相手を自分が了解可能な単純低劣なものとみなし、その勝手な優位性を根拠に愛するのも傷つけるのもこっち次第と、支配を簡単にゆるしてしまう他者への敬意の欠如にほかならないと。死ぬほど愛していると軽々しく言う口で、所詮売春婦だからとつぶやいてしまう。愛しているという思いが、この害悪をなんら防くわけでもなく、むしろたやすくしている様をつぶさ見せられることになります。

こういう愚かしさと対比するために配された最後まで礼儀ただしく接したG伯爵といった人物も効果を発揮しています。

たくさんの失敗をしてきた私には、この小説は痛くて痛くて読み進められなくなることしきりでした。ほんとうに読むに値する文学作品とはこういう作品のことだとおもえるのです。悲劇ではありますが、美しくはありません。永遠の愛たり得ていますが、それは永遠に癒されない悔悟をになってのゆえです。もし自己犠牲の物語とうつったのなら、それはヒロインが命を賭して得ようとした彼女の自由、矜持について思い到っていないとおもえるのです。そして、この他者への敬意の欠如とは、恋愛関係によらない、すべての人間の関係に潜んでいる重い重い問題だとおもえるのです。
7人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2009年2月18日に日本でレビュー済み
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高級娼婦のマルグリット(椿姫)が、アルマンと出会うことにより、それまでの虚飾の生活を離れ誠実な愛の世界に生きようとする物語です。

アルマンの中にマルグリットが見たもの、それは「あなたはじぶんのためではなく、あたしのためにあたしを愛してくれるから」と言う、まさに打算のない愛情です。
それに対して、彼女もまた純粋で打算のない愛情で返そうとします。
こうした「純愛」の期間が半年続きますが、彼らを取り巻く社会は、そうした社会から隔絶した二人の生活を許しません。

そして、別れがやってくるのですが、マルグリットにとっては、アルマンの存在自体が「幸福」で、前の生活に戻っても意識は全く違うものになっています。
彼女がアルマンとの半年で得たものは、単なる「幸福」な生活を過ごしたと言うことではなく、一つ高い精神レベルに人間として高みに至ったと言うことでしょう。
一方のアルマンは、マルグリットのようにはなかなか考えられず、嫉妬心を抱いてなかなか自分に正直になれません。

このあたりの二人の心理描写が素晴らしく、単なるラブ・ストーリーに脱しておらず、現在まで名作として残っている所以でしょう。
9人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2012年11月25日に日本でレビュー済み
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19世紀フランスの作家であるデュマ・フィス(1824-1895)の代表作にして恋愛小説の古典、1848年の作。イタリアの作曲家ヴェルディによるオペラでも有名(初演1858年)。作者が嘗て関係を持っていた実在の高級娼婦との体験が基にあるとされている。なお、デュマ・フィスは『三銃士』『モンテ・クリスト伯』で知られる作家アレクサンドル・デュマの私生児。

本作中に様々な形で登場する、アベ・プレヴォーの『マノン・レスコー』と、幾つかの共通点を持つ。作者の実体験が背景にあること、ヒロインが高級娼婦であること、その恋人であった男の回想として話が展開していくこと、男がヒロインや世俗に翻弄されること、恋人同士は男の父親によって引き裂かれること、最後に恋人たる男を愛しながらヒロインは死に赴くこと、残された恋人によって埋葬の移しかえが行われること・・・etc. 本作のヒロインたるマルグリットの人物像・その心理の変遷は、マノンに比べてずっとはっきり描かれているように感じられる。



娼婦を自己の快楽享受の為に金で買った道具としか看做さない男たちの中で、アルマンだけは「じぶんのためではなく、あたしのためにあたしを愛してくれ」た。男たちの欲望に奉仕する商品として人格が物象化され心身ともに虚偽に塗れていく中で、アルマンは「あたしが自由に考え、話すことができる、たった一人の人間」だった。そんな二人が愛し合うと云うのは、実に美しいことだと思う。

そんな二人が一時の幸福な信頼の裡に愛の生活を実現できたのが、虚飾と俗物に埋め尽くされた狂騒の大都市パリを離れた田園であったという点も『マノン』と共通する。即物さを振り切りながら若さが疾走する真実の愛は、俗世を突き抜けたところにしか在り得ないのか。「社会」とは相容れない狂気にも似た無限遠の自閉空間――そして「社会」による制裁を受けて破滅せずにはいない私的世界――、でしか在り得ないのだろうか。

「これは狂気の沙汰かもしれない。でも、あたしは彼を愛しているのよ! どうしようもないじゃないの」(マルグリット)

「世界は遠くのほうで勝手に営みをつづけ、ぼくらの青春と愛の絵図を影で汚すこともありません」(アルマン)

「ああ、あんたはこう思っているんでしょう。ふたりが愛し合い、羊飼いの少年少女みたいに田舎でゆったりとした生活をしていればそれでいいんじゃないかって。・・・、それじゃだめなのよ。理想の生活とは別に、物質的な生活ってものがあるんだから。どんなに純真な決意だってね、・・・、鉄のように頑丈な鎖でこの地上につながれているものよ」(プリュダンス)

それにしても、男が女に向ける独占欲というのは度し難い。まして高級娼婦を恋人にもつ、若いだけで金持ちの粋人でもないただの男であれば。

「もしあなたが真剣に恋をしたことがあるならきっと、じぶんが全身全霊を捧げて生きたいと願う存在を世の中から孤立させておきたいという、あの欲求を覚えられたことでしょう。愛する女性が周囲にどんなに無関心でも、いろんな人間や物事にふれていくうちに、いくぶんかは香気と純一さをなくしていくように感じられるからです」(アルマン)

男の独占欲・虚栄心が娼婦の自尊心と衝突する遣り取りを見るにつけ、様々に姿を変える偽装した自己愛でないような純粋な愛というのが在り得るのか、思わず考えさせられた。二人いれば、その二人は互いに他者である。各人の愛の形に相手が首尾よく収まるとは限らない。自己都合という隔壁が融け消えてしまう陶酔の瞬間、合一の瞬間、それは殆ど死の瞬間と云っていい、成就されざる成就であるか。

二人の愛の美しさゆえに、女に裏切られたと勘違いした男による報復の残酷さが哀しく際立つ。自分を傷つけようとする男の行為すら愛の証だと赦し、男を愛し続けながら死んでいく女とは対照的に。憎しみも愛の一つの現れであろうか。



同じく若さの恋愛小説とでも云うべき『マノン・レスコー』と併せて読みたい。
10人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2018年2月19日に日本でレビュー済み
本を読んで涙したのは何年ぶりだったろうか。
マノンを愛したマルグリット。今もかたわらに彼女の息づかいが聞こえる気がする。
可愛いもの、愛しいもの、懐かしいもの。そのすべてが詰まっている。
物語は今は空家となった彼女の部屋の描写から始まる。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2012年12月18日に日本でレビュー済み
一人の女性の純粋な想いを見事に作品に昇華し切った傑作。
それにしても作品構成上必要だったとはいえ、アルマンの
へたれぶりがひどい。
こいつさえしっかりしてれば悲劇にならずに済んだと思うと
作品の作為が透けてしまうのがマイナス一点。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2009年10月22日に日本でレビュー済み
現代の若者たちがほぼ、通り過ぎる葛藤だろう。
主人公アルマンは時間を持て余した青年であり、娼婦マルグリットは心を持て余した女である。この二人が恋に落ちれば想像はできるだろう。
お互いをむさぼり合い、心をすり減らしていき、慰めあいと言っていい恋愛模様にかわっていく。
それでも、事実。彼らは幸せだった。
最後の時を遂げるまで、その幸せは離れなかった。
心を持て余した女は、その男の純粋な恋心にやっと居場所を見出せたのだ。

この本を読む事で、過去の恋愛を悔やみ、自分を責める事になるかもしれない。
大事な人が側に居るのなら、さらに深く愛し合えるかもしれない。

わたしは、この本を読む事が皆の通過点であってほしいと思っている。
5人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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