鳥取でホスピスケアのある診療所を営むお医者のエッセイ。
著者ら団塊の世代と「老い」を考える文章が多く、その分、著者が接した患者や家族、あるいは他の医療者の描写が少ないのは残念。
中では、死を覚悟した女性が息子を呼んで握手した話、亡くなっていく人の手を取って掌に円を描くとよいという話など、「肌の触れあい」に関する文章に惹かれる。
生真面目な文章が多いなかでも著者のユーモアは健在で、かつて著者らがよく歌った「インターナショナル」についての次の文章などは、爆笑を誘われた。
「この分だと下手をすると、半強制入所させられた老人施設で『さあ、いっしょに』と若い介護士さんに誘われて『起て飢えたる者よ、今ぞ日は近し／醒めよ我が同胞、暁は来ぬ～声が小さいよ、はいもう一回、大きな声で』と言われてしまいそうだ。近いのは何の日だ。もう皆寝たきりだ、醒める奴なんていないよ。立てる奴なんていないよ、と心の中でボソボソと言いながら……(p.76)」。
著者より少し若い私の世代の場合は、「巨人の星」その他TVアニメの主題歌だろうか。
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