ヒトと大型類人猿(主にチンパンジー)とヒトの乳幼児の観察・実験から、
ヒトが独自の思考とその先の言語をどのような進化的な経過から持つようになったのか、
納得できる推論が展開されている。人の進化に興味ある方は、絶対に読んで損はないと思います。
筆者は「信頼に足る進化的な説明は、特定の認知スキルのセットが、それを持つ個体に、
特定の利益セットをもたらすような特定の環境のセットを前提とした適応的なシナリオの上に
築き上げられなくてはならない」(p212)と書いてあり、
大型類人猿の認知の特徴から始め、ヒトがチンパンジーとの共通祖先から別れ、
初期人類、現生人類に至る過程で、思考がどのように発展しうるのかを(推論ながら)丁寧に書いている。
トマセロは言語について、
「ヒトの言語は、それに先行する志向性の接続への様々な適応(たとえば、共同のゴール、
共通概念基盤、再帰的推論)によって可能になったもので、結果として、
言語の登場は、ヒトの多くの活動が慣習化され規範化された、より大きなプロセスの一部なのだ」(p215)
とまとめている。
全体のまとめとして、(p232)
1.集団内の仲間との競合が、ヒト的な社会性やコミュニケーションの形式が不在のままで、
ヒト以外の霊長類の社会的に認知と思考を洗練されたものへと導いた。
2.初期人類のー社会的協調のあらたな形をとったー共同活動と協力的コミュニケーションは、
文化も言語も抜きで、ヒトの思考のあらたなかたちをもたらした。
3.慣習化した文化と言語とを現生人類的に処理することこそが、現生人類的な思考と
推論における独自の複雑さを生んだ。
4.累積的文化進化が文化的に特異的なさまざまな認知スキルと思考タイプの過剰を招いた。
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思考の自然誌 単行本 – 2021/1/29
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ヒトの思考の独自性はどこにあるのか? 「志向性の共有」というトマセロの理論的関心の焦点を体系的に論じた要の著書、待望の邦訳。
ヒトの思考の独自性は、それが根本的に協力的なものである点にある。志向性の共有を伴うあらゆる行為をなす点に決定的な違いがあり、協働採食において他者との相互調整を行っていた初期の進化的ステップこそが現生人類の文化を可能にしたのだ。『心とことばの起源を探る』の続編にして『道徳の自然誌』の対となる姉妹篇、ついに登場!
ヒトの思考の独自性は、それが根本的に協力的なものである点にある。志向性の共有を伴うあらゆる行為をなす点に決定的な違いがあり、協働採食において他者との相互調整を行っていた初期の進化的ステップこそが現生人類の文化を可能にしたのだ。『心とことばの起源を探る』の続編にして『道徳の自然誌』の対となる姉妹篇、ついに登場!
- 本の長さ312ページ
- 言語日本語
- 出版社勁草書房
- 発売日2021/1/29
- 寸法13.6 x 2.1 x 19.5 cm
- ISBN-104326154691
- ISBN-13978-4326154692
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商品の説明
著者について
マイケル・トマセロ(Michael Tomasello)
1950年生まれ。1980年、ジョージア大学にて博士号を取得(心理学)。デューク大学教授、マックス・プランク進化人類学研究所名誉所長。邦訳書に『心とことばの起源を探る』(勁草書房、2006)、『ヒトはなぜ協力するのか』(勁草書房、2013)、『コミュニケーションの起源を探る』(勁草書房、2013)、『道徳の自然誌』(勁草書房、2020)ほか。
橋彌 和秀(はしや かずひで)
1968年生まれ。1997年、京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。九州大学大学院人間環境学研究院准教授。著書に『知覚・認知の発達心理学入門』(共著、2008、北大路書房)、『動物と出会う2』(ナカニシヤ出版、2015)ほか、訳書にトマセロ『ヒトはなぜ協力するのか』(2013、勁草書房)、プレマック『ギャバガイ!』(2017、勁草書房)。
1950年生まれ。1980年、ジョージア大学にて博士号を取得(心理学)。デューク大学教授、マックス・プランク進化人類学研究所名誉所長。邦訳書に『心とことばの起源を探る』(勁草書房、2006)、『ヒトはなぜ協力するのか』(勁草書房、2013)、『コミュニケーションの起源を探る』(勁草書房、2013)、『道徳の自然誌』(勁草書房、2020)ほか。
橋彌 和秀(はしや かずひで)
1968年生まれ。1997年、京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。九州大学大学院人間環境学研究院准教授。著書に『知覚・認知の発達心理学入門』(共著、2008、北大路書房)、『動物と出会う2』(ナカニシヤ出版、2015)ほか、訳書にトマセロ『ヒトはなぜ協力するのか』(2013、勁草書房)、プレマック『ギャバガイ!』(2017、勁草書房)。
登録情報
- 出版社 : 勁草書房 (2021/1/29)
- 発売日 : 2021/1/29
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 312ページ
- ISBN-10 : 4326154691
- ISBN-13 : 978-4326154692
- 寸法 : 13.6 x 2.1 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 51,266位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,796位心理学 (本)
- カスタマーレビュー:
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2021年2月27日に日本でレビュー済み
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2023年2月17日に日本でレビュー済み
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他のトマセロの訳書を読んだのと比較すると強烈に読み辛い。
2021年8月22日に日本でレビュー済み
本書は、人間の複雑な思考の起源を探る一冊である。
サブ的に言語も取り扱われている。道徳については 道徳の自然誌 で扱っているので、本書では議論はない。
まず、類人猿もかなり複雑な思考は出来ることを示したうえで、ヒトと類人猿の大きな差異をもたらすのは「志向性の接続」の有無である。
類人猿は他人が道具を使うのを真似たりすることは出来るが、他人に道具の使い方を教えることはない。「私たちの意図」というものを獲得していないからである。
これが複雑に発展してくることで集合志向性が獲得される。これは歴史的な蓄積や継承が重要なものであり、前世代の文化に触れられなかった隔離されたヒトが多数いたとしたら、志向性の接続は行えるが集合志向性は獲得しないだろうと論じられている。
まずジェスチャーなどによる共通意思の獲得があり、それから言語などが現れるという主張は、 なぜヒトだけが言葉を話せるのか: コミュニケーションから探る言語の起源と進化 と同じである。
なので本書で展開されているのはある程度スタンダードな主張なのだと思うが、まとまってはいるものの議論がやや平板に感じた。
特に著者の姉妹編 道徳の自然誌 を先に読んでいると、展開はだいたい同じなので同じ内容を2回読まされているような感じになり、あまりよくないと思った。2人称視点→集団視点という流れは全く同じで、恐らく道徳と思考は共依存しながら進展してきていると思うので、少し分厚くなってもいいから、これらはまとめて一冊の本として出した方がよかったように思う。
サブ的に言語も取り扱われている。道徳については 道徳の自然誌 で扱っているので、本書では議論はない。
まず、類人猿もかなり複雑な思考は出来ることを示したうえで、ヒトと類人猿の大きな差異をもたらすのは「志向性の接続」の有無である。
類人猿は他人が道具を使うのを真似たりすることは出来るが、他人に道具の使い方を教えることはない。「私たちの意図」というものを獲得していないからである。
これが複雑に発展してくることで集合志向性が獲得される。これは歴史的な蓄積や継承が重要なものであり、前世代の文化に触れられなかった隔離されたヒトが多数いたとしたら、志向性の接続は行えるが集合志向性は獲得しないだろうと論じられている。
まずジェスチャーなどによる共通意思の獲得があり、それから言語などが現れるという主張は、 なぜヒトだけが言葉を話せるのか: コミュニケーションから探る言語の起源と進化 と同じである。
なので本書で展開されているのはある程度スタンダードな主張なのだと思うが、まとまってはいるものの議論がやや平板に感じた。
特に著者の姉妹編 道徳の自然誌 を先に読んでいると、展開はだいたい同じなので同じ内容を2回読まされているような感じになり、あまりよくないと思った。2人称視点→集団視点という流れは全く同じで、恐らく道徳と思考は共依存しながら進展してきていると思うので、少し分厚くなってもいいから、これらはまとめて一冊の本として出した方がよかったように思う。
2021年2月15日に日本でレビュー済み
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①人間と動物の志向性の違いは、社会性があるか否かの違いにあることが分かる。例えば、現生人類はマンモスを狩猟するのに、群で行動し、分業を取り入れ、体力で勝るマンモスを生け捕りにした。穴を掘る者、囮になる者が存在し、穴に落ちたマンモスを皆で槍で突いて殺し、協働で引き上げ、食した。
②このような社会的協働は他の動物にはない。獲物を生け捕るのは雄ライオンの役割と決まっている。雄と雌が獲物を挟み撃ちにするという社会的協働はライオンにはない。群れを成して暮らしても、行動するのは単体だ。
③類人猿がバナナを発見し、採取しようとしても、そこに外敵がいれば、逃げる。
仲間が囮になり外敵を誘き寄せている間にバナナを採取するという社会的協働は類人猿にはない。
④類人猿の認知機能は、外敵を見かけたら、逃げなければ自分が快適の餌食になるという認知の一般化(スキーム)である。
⑤人間の社会的協働の必要が言語を生み出した理由である。
本書から得るものは多い。
お勧めの一冊だ。
②このような社会的協働は他の動物にはない。獲物を生け捕るのは雄ライオンの役割と決まっている。雄と雌が獲物を挟み撃ちにするという社会的協働はライオンにはない。群れを成して暮らしても、行動するのは単体だ。
③類人猿がバナナを発見し、採取しようとしても、そこに外敵がいれば、逃げる。
仲間が囮になり外敵を誘き寄せている間にバナナを採取するという社会的協働は類人猿にはない。
④類人猿の認知機能は、外敵を見かけたら、逃げなければ自分が快適の餌食になるという認知の一般化(スキーム)である。
⑤人間の社会的協働の必要が言語を生み出した理由である。
本書から得るものは多い。
お勧めの一冊だ。