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キャロル (河出文庫 ハ 2-12) 文庫 – 2015/12/8

4.4 5つ星のうち4.4 148個の評価

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クリスマス、おもちゃ売り場の女店員はキャロルと出会う…サスペンスの女王による、二人の女性の恋の物語。映画化原作ベストセラー。
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商品の説明

著者について

1921-1995年。テキサス州生まれ。『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』が映画化され、人気作家に。『太陽がいっぱい』でフランス推理小説大賞、『殺意の迷宮』で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞。

1953年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学科卒業。訳書にアン・ライス『ヴァンパイア・クロニクル』シリーズ、エドマント・ホワイト『ある少年の物語』他。共編著に『女性探偵たちの履歴書』他。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 河出書房新社 (2015/12/8)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2015/12/8
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 文庫 ‏ : ‎ 462ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4309464165
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4309464169
  • 寸法 ‏ : ‎ 10.7 x 1.7 x 15 cm
  • カスタマーレビュー:
    4.4 5つ星のうち4.4 148個の評価

著者について

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パトリシア・ハイスミス
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カスタマーレビュー

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上位レビュー、対象国: 日本

2016年2月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
 アラン・ドロン主演の映画「太陽がいっぱい」の原作者として有名な
パトリシア・ハイスミス(1921-1995)が1951年に出版した恋愛小説。

 テレーズ 舞台美術家の卵。婚約者のいる19歳の娘。デパートでアルバイト。
 キャロル 離婚の話し合いがうまくいかず悩んでいる裕福な人妻。
      娘のクリスマスプレゼントを買いにおもちゃ売り場にやってくる。

ふたりの出合いと曲折を二部構成で描いている。第一部ではそれぞれの置かれている
環境と出会いのエピソード。第二部ではふたりの自動車旅行と予期せぬ出来事。

 第一部の出だし、

 ・・昼食時、フランケンバーグ・デパートの社員食堂は喧騒をきわめていた。・・

これに続く食堂の混雑の描写がみごとでぐいぐい話にひきこまれる。しかもこれが
表紙の絵と期せずして対照になっていることに感心した。この表紙の絵は
エドワード・ホッパーの「Automat」(1927)という絵で、この女性はテレーズだと
考えてかまわない。一見レストランぽいが、Automatとは自動販売機による軽食の
販売飲食施設であり、働く女性がひとりで食事を取るのに安全かつ適当な場所として
当時利用され始めていた。テレーズは仕事の帰り、ここで食事をしたりお茶を
飲んだりしているのだ。昼は社員食堂の喧騒、夜はAutomatのわびしい静寂。
テレーズは婚約者がいるはずなのになにか充たされてない感じである。伏し目がちに
コーヒーの中を覗きこんでいる。何を考えているのだろう。この絵の中で彼女の
両脚のあかるいピンク色が目立つ。官能的なほどにあざやかだ。

 そんなテレーズがキャロルに「ひとめぼれ」(正確には、恋に似たなんだかわからない
気持ち)するのである。はじめてテレーズがキャロルの運転で、ニューヨークから
ニュージャージーにあるキャロルの家に行くとき:

 ・・車は猛スピードでリンカーン・トンネルへ入っていった。フロントガラス越しに
  前方を見つめているうちに、テレーズのなかに荒々しく不可解な感情がわき
  おこってきた。いっそトンネルが崩れ落ちてふたりとも死んでしまえばいいのに。
  そしてふたりの体は一緒に発見されるのだ。・・

このはげしい想いはやはり恋そのものだ。知り合ったばかりなのに。
リンカーン・トンネルをくぐりぬけて日常から「異界」へ翔け上る感じ。

 第二部の出だし:

 ・・一月。一月にはすべてがある。一月は頑丈な扉のような個でもある。
  その寒さは灰色のカプセルのなかに街のすべてを封印している。・・

これは詩ですね。ハイスミスの描写は詩的で繊細。この第二部は車に乗ってアメリカを
あてどなく旅する話なので、ちょっとケルアックのオン・ザ・ロードの趣がある。
この旅はサスペンス調で、ふたりの危険なランデブーにいつも緊張と不安がつきまとって
はらはらする。でもその強迫観念のような紆余曲折を経てふたりの結びつきが結局は
より強固になって、おだやかな結末につながっていく。

 全体を読んで、もっとも印象に残ったのはミセス・ロビチェク。敗残、老醜の
象徴であり、キャロルの美しさ、テレーズの若さと対比される存在だが、でも誰しも
ミセス・ロビチェクの道をたどるわけだし、テレーズがミセス・ロビチェクをあまり
好きでもないのにもかかわらず、なにかと気にかけてお土産やプレゼントを贈ること
には少しこころ温まる思いがした。
14人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2015年12月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
 人が人を好きになる。愛したくなる。惚れ込んでしまう。
それは、男女間ではもちろんあろうが、男性同士、女性同士でも成立する純真な感情でも
ある。お互い相手を独り占めにしてしまいたい。あなたは「わたしのものよ」という、愛
情のなせるわざか所有欲か、両方が混然とした強い気持ちが生じる関係がある。一時的で
線香花火のように終わってしまうのか、未来があり長続きするものなのか。読者は、胸を
ときめかしながらページを繰ることになる。

 時代は1952年頃。クリスマスソングが流れ、華やかな街の喧騒や、人々のざわめき
がきこえてきそうなニューヨークが舞台である。
 作中人物は、チェコ系の名前であり十九歳のテレーズ・ベリヴェット。デパートでおも
ちゃの人形売り場に勤めている。舞台芸術家の卵でもある。彼女を愛し結婚したいと思っ
ている、画家志望のリチャード、物理学を研究しているダニー。
 髪や「眉もまたブロンドで、額のカーブに沿って優雅な弧を描いている」三十歳過ぎで
上流階級の女性が売り場に来る。テレーズがどこかで見たような懐かしい感覚を持ち(そ
の秘密が終わり近くに明かされる)、目が合った瞬間にすべてが始まった相手、キャロル
(ミセス・H・F・エアド)である。幼い娘がいるが、離婚寸前で娘をどちらが引き取る
かで、夫ハージと係争中である。
 
 テレーズは人形を買ってもらったお礼にクリスマスカードを贈る。キャロルから電話が
あり二人の関係が進展していく。クリスマスにふさわしい出会いであり、若きカップルが
誕生しそうな場面である。しかし、女性同士の「愛」が育まれていくところが、この作品
のもつ「テーマ」である。

 第一部は、テレーズをとりまく人間関係とキャロルとの出会いを。第二部は、テレーズ
とキャロルのアメリカ北西部へのドライブ旅行を中心に、二人の人生観、肉親や夫、子供
のこと、愛についてなどを語り合う。車内、ホテル、食事のときにぶつけ合う会話に、怒
り、嫉妬、疑惑など、二人の心理的内面が披露されていく。
 「音楽の和音のように、バレーの一幕のように美しい」キャロルのしぐさに「愛」を深
く感じてしまうテレーズ。リチャードから、考え直すようにと手紙を何通も受け取るが、
「あなたはなにも見えてないのよ」と心は離れていく。また、テレーズがキャロル宛に書
いたが(投函しなかった)、後半で大きな問題になっていく手紙もある。

 洒落た大人の会話は、ユーモアとウイットが豊富である。例えば、「あなたの帽子から
はあと何匹ウサギが出てくるの?」「お酒がいらないほど幸せってことかしら」など、キ
ャロルの「元交際相手」だったアビーとの女性三角関係の嫉妬心を『勝ち目がない』とか
『負け犬』と表現していることなど。

 読者は、会話の声音を、人物の感情や情景を理解しながら再現するのも面白いだろう。
ニューヨークに詳しい読者は街並みが浮かんでくるだろう。当時のアメリカン・ファッシ
ョン、食事、お酒のメニュー、タバコの銘柄や匂い。音楽は、『クリスマスキャロル』や
ガーシュインの『エンブレイサブル・ユー』、1937年映画『街は春風』の主題歌
『イージー・リビング』(ビリーホリデイが歌っているのかも、また、歌詞はテレーズの
キャロルへの「ラヴ・レター」になっている)などである。バックグラウンドミュージ
ックも物語に色彩をそえている。

 「人を愛するとは、愛ってなんなの、なぜ愛は終わり、あるいは続くのかしら」。テレ
ーズの疑問に正解はあるのだろうか。

 
27人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2016年3月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者はサスペンス小説の大家パトリシア・ハイスミス(1921 - 1995)。最初の長編『見知らぬ乗客』執筆後の1952年、同性愛のロマンスを真正面から描いたという当時としてはセンセーショナルな題材ゆえに「クレア・モーガン」という別名義のもとで、“The Price of Salt” (刺激の代償)という題名で出版された作品です。

舞台は1950年代アメリカ。将来に不安を抱えた若い娘テレーズが美しい既婚女性キャロルと恋に落ち、その経験をとおして成長していく物語です。

2016年に公開された映画版があまりにすばらしかったため、原作である本書を手にとってみました。ふたつのおおきな相違点として挙げられるのは語り口でしょう。原作ではテレーズの視点だけで物語が語られる一方で、映画版ではテレーズとキャロルふたりの視点が入れ替わりながら物語が進みます。したがって映画版ではキャロルの変化の過程にも光があてられていますが、本書ではほぼテレーズの成長のみに焦点があてられています。

くわえて映画版とは少し異なり、本書のテレーズは潔癖で「醜さ」や「老い」といったものを憎悪し、キャロルに象徴される「美しいもの」という幻想に恋する女性として登場します。しかしテレーズはキャロルとの出会いや恋をとおしてキャロルもまた完璧な存在ではないことを知り、その瑕疵までも受け入れられるようになります。つまり本書では、恋に恋する女性から、愛を知る女性へ、というテレーズの成熟により力点が置かれています。

けれども、「他者」ともっとも密接に関わる体験である恋愛をとおして成長する、そして同性愛をタブーとする社会的な束縛から自らを解き放つ、という本質的なテーマは小説と映画でまったく変わっていないでしょう。
また相反しながらも相補的なふたりの男というのはハイスミスが生涯にわたり描き続けた構図ですが、本書ではそれがふたりの女に置き換えられており、そのあたりに作家の特徴をうかがうことができます(犯罪は描かれませんが)。

難点を挙げれば、作家の初期作品だからか物語進行のテンポに統一感がないことでしょうか。それでも同性愛に対する色眼鏡が出版当時よりもずっと減っている現在の眼からすると、同性愛を特殊なものとしてとらえずに、むしろ純粋な恋愛小説として楽しむことができると思います。
66人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2020年5月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
忘れられない小説になりました。
テレーズの成長していく姿が印象的で、ラストもとても良かったです。
映画も素晴らしいので、両方照らし合わせて見ると尚いいと思います。
5人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2020年4月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画とはまた違った場面も結構あり楽しめました。
愛とはなんなのかを改めて考えることができました。
映画と本も素晴らしい
3人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2019年5月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ケイト・ブランシェットが神的に美しい!!!!!!!
あんな眼で見つめられて微笑まれたら、あたしは難なく未知の世界にだって踏み入っちゃうぞ!!!!!!って感じ💛
悲劇的結末が多い気のする世界を描いているんですが、最後のシーンはそれを否定していて頼もしい、というか至福感が漂う素敵な映像。ぜひ、賞翫してください。
7人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2019年4月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画とは違うところもありますが 素敵でした
作者の他の作品も違う目で読み返してみたいと感じました
4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2017年4月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大筋映画と同じでした。特に違ったストーリーを期待しましたが、流れ的には同じでした。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート