355頁もの長篇小説。
寓話です。
あたりまえです。蛇に言葉なんて無いはずだから、こんな話、寓話に決まってます。
でも、大昔の人間のことはよくわかりません。
もしかしたら「蛇の言葉」を話せたのかもね。
妙にワクワクしてきます。
この寓話、「サラマンドルとぼく、蛇の言葉を話した最後の人間」(355頁)
で終わっています。
「ぼく」は人間の言葉で、この物語を語っているので、人間でいいとしても、
「サラマンドル」は、人間ではなく、蛇なのでは?
「サラマンドルと言うのは、大きな蛇の一種だ」(7頁)
巻末の「フランス語版訳者による解説」の訳注によると、
「サラマンドル」は、蛇の形をした「想像上の生き物」(359頁)
「オウドクヘビよりもずっと大きい、一番大きいんだ。森ほどのとてつもない身体で空を飛ぶ。巨大な翼を持ち、飛び立つと、翼が太陽も月も隠してしまうくらいだ。かつては、サラマンドルはよくそうやってわれらの敵を食らい尽くしてくれた」(7頁)
なるほどね。「サラマンドル」のイメージがわきました。
できれば、表紙カバーは「サラマンドル」のバンド・デシネにしてほしかった…
「蛇の言葉」って、聞いたことがありません。
いったいどんな「言葉」なのでしょう?
「ぼくはなおもぴゅーっという音を鳴らす。ぼくが吹き鳴らした言葉は沼地のようになり、そこから抜けだすことはできないのだ」(4頁)
この「ぴゅーっ」という音が「蛇の言葉」。
「ぴゅーっ」というのは、音ですが、同時に「言葉」なんですね。
「ぼくはクマを見かけ、挨拶代わりにしゅうしゅうと口を鳴らした」(14頁)
「しゅうしゅう」も言葉でしょう。
「ぼくはすぐに、自分が知っている中で一番簡単な言葉を鳴らした」(4頁)
「ぼくは蛇の言葉を鳴らした」(31頁)
「歯が欠けた口でそれでも巧みに言葉を鳴らした」(39頁)
「そこでヒーエは、習ったばかりの言葉を間違えずに鳴らすと、狼は言うことを聞いた」(87頁)
「蛇の言葉」は、話すものというより、<鳴らす>ものだったようです。
「獣は蛇の言葉を聞いておとなしくなり、黙って首を掻き切られたのである」(4頁)
「蛇の言葉」は、獣にとって命以上の力を持った魔法の言葉だったのです。
「言葉の太古からの力には抗(あらが)えないのだ」(4頁)
「ぼくがいる限り、この年老いた獣が存在する限り、この森には、蛇の言葉を話す者がいると誰かが思い出すのだ」(5頁)
「大きな蛇とおしゃべりをしている長い髭の老人に出会ったものだった」(16頁)
「村人は蛇の言葉を知らないからな」(24頁)
「村人は蛇の言葉をもう忘れてしまい、毛皮を手に入れることができんのだ」(24頁)
「そういう道具はすべて、蛇の言葉を話せなくなったために必要になったということだ」(25頁)
「だから皆、苦労して蛇の言葉を習得するよりは、鎌やら熊手やらのガラクタを発明した方がいいと思うようになったのさ」(25頁)
「遠い昔、子供はごく小さい頃から蛇の言葉を学ぶのが当たり前だった」(25頁)
「ぼくたちの舌は蛇の言葉を鳴らすようにはできていない」(26頁)
「おじさんは間違いなく森の住人の中では蛇の言葉を完璧に話せる最後の人間だった」(26頁)
「蛇の言葉を習わなかった?」(87頁)
巻末の「フランス語版訳者による解説」の訳注によると、
「蛇の言葉」とは、エストニア語では
「蛇に嚙まれないため発せられる言葉のことを指す」(359頁)そうです。
なるほど。日本語ではシッシッ? これでは蛇に噛まれちゃいますね。
日本語の訳者「関口涼子」さんは「ぴゅーっ」と訳されました。いいですね。
さてさて、この本は、「森には、もう誰もいない」(3頁)という一文で始まります。
そして「この表現は少なくとも十数回繰り返されます」(358頁、「フランス語版訳者による解説」)
「森に戻る人なんて一人もいないわよ」(20頁)
「森にはもうほとんど人間は住んでおらず、その数は少なくなる一方だ」(35頁)
「森にはもう一人もいなくなって、自分の足音しか聞こえないように感じていた」(112頁)
そして、
「サラマンドルとぼく、蛇の言葉を話した最後の人間」(355頁)で終わります。
「サラマンドルと言うのは、大きな蛇の一種だ」(7頁)
「ぼく」の名前は、「レーメット」(12頁)
「ぼく」は「びっくりぎょうてん、蛇の言葉を話す人間だ!」(3頁)
長篇小説なのに、<目次>も<主な登場人物>も無いのです。
なので、読者が<主な登場人物> を試作してみました。
<読者が試作した「主な登場人物」>(含む、登場動物)
「レーメット」(12頁) 語り手の「ぼく」
「父さん」(12頁) ぼくの父さん
「母さん」(12頁) ぼくの母さん。「リンダ」(27頁)
「サルメ」(11頁) ぼくの姉さん。「ぼくより五歳上」(14頁)
「ヴォートレおじさん」 「母さんの兄」(15頁)
「鉄の男たち」(11頁) 「鉄の男たちがお前のじいさんを殺したんだよ」(27頁)
「ヨハネス」(23頁) 村の司祭。「以前はヴァンボラという名前」(22頁)
「マグダレーナ」(23頁) ヨハネスの娘。
「マニヴァルド」(5頁) 葬儀。「海沿いに暮らしていた」
「パルテル」(5頁) ぼくの遊び相手。「仲間」(19頁)。「一番の友だち」(111頁)
「ヒーエ」(5頁) タンベットとマルの間に生まれた娘。ぼくたちの遊び相手
「タンベット」 「ヒーエの父親」
「メーメ」(9頁) 「おお、小僧、ワインはいるかい」(103頁)
「ウルガス」(6頁) 「聖なる森の賢人」「偉大で聖なる人」
「オンディーン」(17頁) 湖の「水の精」
「インツ」(31頁) 蛇
「クマ」(14頁、84頁)
「シカ」(99頁)
「シラミ」(90頁) 「彼らは巨大なシラミを飼っていた」(106頁)
「シラミの方は、猿人のアクセントで鳴らす古代の言葉しかわからない」(106頁)
「ピッレとラーク」(106頁)
「今でも、それらの歌は、ぼくの心を温め、ピッレとラークがまだ洞窟に住んでいて歌を歌ってくれた幸せな夜のことを思い出させる」(109頁)
あーあ。112頁まで一気に読んでしまいました。でも、やっと三分の一。
あと三分の二が残っています。たのしみです。
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蛇の言葉を話した男 単行本 – 2021/6/26
アンドルス・キヴィラフク
(著),
関口涼子
(翻訳)
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購入オプションとあわせ買い
これがどんな本かって?トールキン、ベケット、M.トウェイン、宮崎駿が世界の終わりに一緒に酒を呑みながら最後の焚き火を囲んで語ってる、そんな話さ。エストニア発壮大なファンタジー。
- 本の長さ384ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2021/6/26
- 寸法14 x 3 x 19.7 cm
- ISBN-104309208274
- ISBN-13978-4309208275
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商品の説明
著者について
アンドルス・キヴィラフク
1970年生まれのエストニア人作家。2007年発表の本作品は大ベストセラーとなり、フランスでイマジネーション賞(ケン・リュウ、ケリー・リンク等も受賞)を受賞、大きな成功を収めたエピック・ファンタジー。
関口涼子
1970年生まれ。詩人・翻訳家。訳書に、P・シャモワゾー『素晴らしきソリボ』、J・エシュノーズ『ラヴェル』など。多和田葉子、杉浦日向子など、日本の小説・コミックのフランス語訳も数多く手がけている。
1970年生まれのエストニア人作家。2007年発表の本作品は大ベストセラーとなり、フランスでイマジネーション賞(ケン・リュウ、ケリー・リンク等も受賞)を受賞、大きな成功を収めたエピック・ファンタジー。
関口涼子
1970年生まれ。詩人・翻訳家。訳書に、P・シャモワゾー『素晴らしきソリボ』、J・エシュノーズ『ラヴェル』など。多和田葉子、杉浦日向子など、日本の小説・コミックのフランス語訳も数多く手がけている。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2021/6/26)
- 発売日 : 2021/6/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 384ページ
- ISBN-10 : 4309208274
- ISBN-13 : 978-4309208275
- 寸法 : 14 x 3 x 19.7 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 442,077位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 38,446位文芸作品
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