HONZの紹介で本書に出会った。書評を集めた本を読むことの意義を強く認識したところである。
それほど本書は面白かった。米国の高校生達が「科学のオリンピック」に参加する姿を描き出す
ノンフィクションだ。読んでいて以下二点が感想となった。
一点目。米国の力の源泉を垣間見た気がした。
本書を読む限り、米国は極めて「開かれた」社会である。「科学のオリンピック」の参加者は
まさに「科学者」であることだけが条件である。いや、実際に参加している高校生達は、若しかしたら
自身を科学者だと思っていないかもしれない。ただ自分の好きなことに打ち込み、その結果を他人と
共有したいと思っているだけかもしれない。
そんな「思い」に対して、機会を与え、結果に対しては真摯に評価する姿勢の清々しさは本書の
通奏低音である。米国がどこまで「開かれた社会」かどうかは僕には分からない。最近の大統領選挙の
結果を見ても、閉塞感が強い社会のような気もする。但し、かつ一方、本書が描き出している米国の
もう一つの一面を見る限り、まだまだ社会を「開こう」としていく基本的な姿勢は健在に見える。
日本にはまだまだ不足している部分だろう。
二点目。改めて人間の持つ好奇心の強さに感銘を受けた。
本書に登場する高校生達の好奇心は並大抵ではない。勿論、ここに登場する高校生達が特別に
好奇心が強いことは論を待たないだろう。但し、大なり小なり人というものは好奇心の動物
である。人間という哺乳類がここまで繁栄しているのは、好奇心を持つ点にあると僕は思う。
そんな人類の歴史の短縮版が本書の精髄と言える。
好奇心とは、それにしても、何なのだろうか。「天才とは普通の人が問題を発見しないものに問題を
見出す人である」という定義をどこかで読んだ記憶がある。「好奇」とは「奇を好む」と書く。「奇」
とは何なのか。「常ではないもの」という意味なのかもしれない。「常」の中に「常ならざるもの」を見つけて
好むという姿勢は、本書で紹介される子供たちに通底しているのではないか。

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理系の子 高校生科学オリンピックの青春 (文春文庫 S 15-1) 文庫 – 2014/10/10
世界中の理系少年少女があつまる科学の祭典、インテル国際学生科学フェア。科学者顔負けの研究をやってのけた彼らそれぞれのドラマ。読めば科学が好きになる、感動の科学ノンフィクション。待望の文庫化。インテル国際学生科学フェア―それは高校生による科学のオリンピック。世界中の予選を勝ち抜いた理科の自由研究が集い、名誉をかけて競う。出場した少年少女たちは、どんなふうに育ち、なぜ科学に魅せられ、どんな研究をやってのけたのだろう?十歳で独力で爆薬を製造、やがて「核融合炉」の製作に挑んだ少年。自閉症を持ついとこのため画期的な教育プログラムを生み出した少女。少年院で非行少年たちの眠れる知の才能を発掘した熱血理科教師。ハンセン病に感染してもへこたれず、らい菌の徹底研究を開始した少女。そして小さな虫を手がかりに太古の地球環境を解明した日本人の少女。ほか研究に青春をかけた理系少年少女たちの感動の実話。ノンフィクション書評サイトHONZでベスト1に選ばれた科学ノンフィクション、待望の文庫化。
- 本の長さ437ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2014/10/10
- ISBN-10416790215X
- ISBN-13978-4167902155
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
成毛眞氏、堀江貴文氏絶賛、感動の科学ノンフィクション
世界の理系少年少女が集まる科学のオリンピック、国際学生科学フェア。そこに参加するのはどんな子供たちなのか? 感動の一冊。
世界の理系少年少女が集まる科学のオリンピック、国際学生科学フェア。そこに参加するのはどんな子供たちなのか? 感動の一冊。
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2014/10/10)
- 発売日 : 2014/10/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 437ページ
- ISBN-10 : 416790215X
- ISBN-13 : 978-4167902155
- Amazon 売れ筋ランキング: - 429,403位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,385位文春文庫
- - 63,671位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年1月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
Every Junior- and Senior-High School pupil should read this book. Every school teacher also should read this, because they will be convinced that all their pupils will be able to develop their great potential.
2012年12月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容は素晴らしい。理系に興味なくとも子供たちの人生ドラマとその親・周りの大人の発言、対応に驚嘆し、引き込まれる。ただし、すべての章で最終結果を語らず、一番最後にまとめて登場人物のその後が記されているので読んでる途中は消化不良ぎみ。この一点で5星と4星になりました。
2014年9月14日に日本でレビュー済み
日本でのIntel国際学生科学フェア提携フェアも,もっと注目されるようにすべきでは?
2017年1月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新聞の書評欄でみて、すぐ購入したが、即日読了するほどおもしろかった。
私は「文系の」おばさん。
理系にあこがれ、数学にあこがれ、ソレ関連の本をガンバって読んできたが結果的にダメだった。
この「理系の子」はアメリカンドリームの現代版だ。
夢のような実話に引き込まれる。
しかし、これはアメリカの一粒の砂だ。
アメリカの現実は、金儲け主義のアリ地獄。
貧困⇒教育⇒兵役や病 のスパイラル。
その中の「夢のような」一発逆転劇が、この本なのだ。
私は「文系の」おばさん。
理系にあこがれ、数学にあこがれ、ソレ関連の本をガンバって読んできたが結果的にダメだった。
この「理系の子」はアメリカンドリームの現代版だ。
夢のような実話に引き込まれる。
しかし、これはアメリカの一粒の砂だ。
アメリカの現実は、金儲け主義のアリ地獄。
貧困⇒教育⇒兵役や病 のスパイラル。
その中の「夢のような」一発逆転劇が、この本なのだ。
2018年2月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アマゾンのノンフィクションジャンルをうろうろしていて本書をみつけました。
レビューの高評価に後押しされて、理系という縁のない分野の本でしたが読んでみることに。
本当に何度も胸が熱くなりとても感動しました。
アメリカの懐の深さと個人の強さでノーベル賞の多さも納得です。
レビューの高評価に後押しされて、理系という縁のない分野の本でしたが読んでみることに。
本当に何度も胸が熱くなりとても感動しました。
アメリカの懐の深さと個人の強さでノーベル賞の多さも納得です。
2012年9月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ふと街中で目にした耳の不自由な少女、友人と会話も楽しめない彼女を助けてあげる発明をしようーー
電気もないお湯も無い極貧の生活、天に輝く太陽の力を使って家族の為にお湯を湧かせないだろうかー
心を通わすことのできた大好きな馬、もしかしたら馬の力で心の傷ついた人達を癒せないかしらーーー
自閉症を抱える従姉妹は何を考えているんだろう?彼女の言動を理解できるならどんな努力もしようー
ほんの小さなきっかけや閃きに好奇心や愛が加わり見事な発明や発見を世に知らしめた若者達の物語です。
主題はサイエンスフェアという科学分野の世界大会に置いているので、
フェアでの評価や奨学金の為の「評価の為の研究」になってしまっているケースもありますが、
この年代の若者が持ち得る自由な発想と好奇心、勢いがあったからこその素晴らしい発明秘話が
本人だけでなく、仲間、家族、先生といった周りの暖かなサポートと共に短編形式で綴られています。
評価の為の研究、も決して悪いことではなく不遇の境遇から抜け出す為のわずかな救済装置としても大切ですし、
この大会を通じて、正しい答えをどれだけ覚えたかで評価されるのではなく、自分でなにかを生み出し
その成果が世に評価されること、役に立つこと、が人が為すべき正しいことであると学生達に教えているように思いました。
科学の歴史を振り返ると、このような大会の優秀者がその後企業、政府など様々な形で成果を積み重ねたことで、
今日用いられている戦争兵器なども生み出されているのかな、と考えたりすると複雑な気もしますが、
それと同じ、それ以上に科学は人々の生活の助けにもなっていると信じています。
この本のハイライトは、ほとんどの若者が強制ではなく自分の好奇心に従ってやりたいことをやっていて、
周囲の大人がそれを否定することなくできる限り最大限のサポートをしている点です。
感電したことを契機に電気だけが友達になってしまった我が子、放射性物質の虜になってしまった我が子を見て、
中途半端な状態で押え付けるのではなく、なにか問題が起こるくらいなら正しい知識と環境を与えよう!
と決断できる親御さんの度量に幾度も敬服させられました。
オススメする方
心温まる物語を読みたい人
科学と聞いても複数の分野が浮かばない人
頑張っている人を応援するのが好きな人
電気もないお湯も無い極貧の生活、天に輝く太陽の力を使って家族の為にお湯を湧かせないだろうかー
心を通わすことのできた大好きな馬、もしかしたら馬の力で心の傷ついた人達を癒せないかしらーーー
自閉症を抱える従姉妹は何を考えているんだろう?彼女の言動を理解できるならどんな努力もしようー
ほんの小さなきっかけや閃きに好奇心や愛が加わり見事な発明や発見を世に知らしめた若者達の物語です。
主題はサイエンスフェアという科学分野の世界大会に置いているので、
フェアでの評価や奨学金の為の「評価の為の研究」になってしまっているケースもありますが、
この年代の若者が持ち得る自由な発想と好奇心、勢いがあったからこその素晴らしい発明秘話が
本人だけでなく、仲間、家族、先生といった周りの暖かなサポートと共に短編形式で綴られています。
評価の為の研究、も決して悪いことではなく不遇の境遇から抜け出す為のわずかな救済装置としても大切ですし、
この大会を通じて、正しい答えをどれだけ覚えたかで評価されるのではなく、自分でなにかを生み出し
その成果が世に評価されること、役に立つこと、が人が為すべき正しいことであると学生達に教えているように思いました。
科学の歴史を振り返ると、このような大会の優秀者がその後企業、政府など様々な形で成果を積み重ねたことで、
今日用いられている戦争兵器なども生み出されているのかな、と考えたりすると複雑な気もしますが、
それと同じ、それ以上に科学は人々の生活の助けにもなっていると信じています。
この本のハイライトは、ほとんどの若者が強制ではなく自分の好奇心に従ってやりたいことをやっていて、
周囲の大人がそれを否定することなくできる限り最大限のサポートをしている点です。
感電したことを契機に電気だけが友達になってしまった我が子、放射性物質の虜になってしまった我が子を見て、
中途半端な状態で押え付けるのではなく、なにか問題が起こるくらいなら正しい知識と環境を与えよう!
と決断できる親御さんの度量に幾度も敬服させられました。
オススメする方
心温まる物語を読みたい人
科学と聞いても複数の分野が浮かばない人
頑張っている人を応援するのが好きな人
2016年8月7日に日本でレビュー済み
科学でアメリカンドリームを目指す高校生たち。未知の世界を探求することで開かれる人生の局面。その縁の下の力持ちとなる師の存在の大切さを再認識した。