著者は、漫画『テルマエ・ロマエ』の作者として有名。本書は、波乱万丈な彼女の経歴と、彼女の考える魅力的な男性に関する考え方が書かれたエッセイ。文章は平易で、読みやすい。
著者は、イタリアで極貧生活を送ったり、生活能力に乏しいイタリア人の詩人の子を出産したり(その後、別のイタリア人男性と結婚)と、日本人の女性としてはユニークな経歴をもつ。また著者は、さばさばした性格の持ち主でユーモア精神がある一方、ローマの歴史に造詣が深く、日本人の閉鎖的な考え方を的確に批判するなど、知的な面も持ちあわせている。そのため、読んでいて楽しめた。
私がとくに気に入ったのは、以下の記述だ。
<変人だっていいんです。その人が何事かを成し遂げたとき世間は驚き「変人」のレッテルを「天才」に変えます。逆に言えば偏狭で画一的な価値観を押し広げられるのはそうした勇気を持った変人だけです。寛容な世界の実現のためにも私は変人を応援したい。>
さまざまな点で行き詰まっている現代の世の中を前に進めることができるのは変人だと私も思う。また、変人であるためには、自分が好きであることも必要だろう。この点はイタリア人を見習いたいと、私は以下の記述を読んで思った。
<イタリアの強さは何といってもみんなが自分好きであること。「生まれてきて、俺バンザイ!」が基本で外になどなびかない自分の鏡を持っている。>
著者は、こういう男がかっこいいと考えている。
私も、そう思う。

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男性論 ECCE HOMO (文春新書 934) 新書 – 2013/12/18
ヤマザキ マリ
(著)
古代ローマ、あるいはルネサンス。先進的な文明、そして数々の芸術作品を生んだエネルギッシュな時代には、いつも知的好奇心あふれる熱き男たちがいた――。
ハドリアヌス、プリニウス、フェデリーコ2世(フリードリヒ2世)、ラファエロ、そしてスティーブ・ジョブズ、安部公房まで。確かな技術と壮大な空想力で時代の一歩先を読み、新たな次元を切り拓いた古今東西のボーダレスな男たちを軸に、『テルマエ・ロマエ』の作者・ヤマザキマリが語る想像力の在り処。
ハドリアヌス、プリニウス、フェデリーコ2世(フリードリヒ2世)、ラファエロ、そしてスティーブ・ジョブズ、安部公房まで。確かな技術と壮大な空想力で時代の一歩先を読み、新たな次元を切り拓いた古今東西のボーダレスな男たちを軸に、『テルマエ・ロマエ』の作者・ヤマザキマリが語る想像力の在り処。
- 本の長さ229ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2013/12/18
- 寸法10.9 x 1.3 x 17.4 cm
- ISBN-104166609343
- ISBN-13978-4166609345
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
古代ローマ、あるいはルネサンス。エネルギッシュな時代には、いつも好奇心あふれる熱き男たちがいた!ハドリアヌス、プリニウス、ラファエロ、スティーブ・ジョブズ、安倍公房まで。古今東西、男たちの魅力を語り尽くす。
古代ローマ、あるいはルネサンス。先進的な文明、そして数々の芸術作品を生んだエネルギッシュな時代には、いつも知的好奇心あふれる熱き男たちがいた――。
ハドリアヌス、プリニウス、フェデリーコ2世(フリードリヒ2世)、ラファエロ、そしてスティーブ・ジョブズ、安部公房まで。確かな技術と壮大な空想力で時代の一歩先を読み、新たな次元を切り拓いた古今東西のボーダレスな男たちを軸に、『テルマエ・ロマエ』の作者・ヤマザキマリが語る想像力の在り処。そして浮かび上がる波乱万丈のヤマザキマリの半生。
古代ローマ、あるいはルネサンス。先進的な文明、そして数々の芸術作品を生んだエネルギッシュな時代には、いつも知的好奇心あふれる熱き男たちがいた――。
ハドリアヌス、プリニウス、フェデリーコ2世(フリードリヒ2世)、ラファエロ、そしてスティーブ・ジョブズ、安部公房まで。確かな技術と壮大な空想力で時代の一歩先を読み、新たな次元を切り拓いた古今東西のボーダレスな男たちを軸に、『テルマエ・ロマエ』の作者・ヤマザキマリが語る想像力の在り処。そして浮かび上がる波乱万丈のヤマザキマリの半生。
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2013/12/18)
- 発売日 : 2013/12/18
- 言語 : 日本語
- 新書 : 229ページ
- ISBN-10 : 4166609343
- ISBN-13 : 978-4166609345
- 寸法 : 10.9 x 1.3 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 388,455位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 797位文春新書
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年2月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ヤマザキマリさんの漫画も映画化されたものも、まったく知りませんでしたが、この著書は有名作家がこて先に、印税小遣い稼ぎに書いたようなエッセイとは一線を画す。一つの世界観を表出している。
筆者のイタリアへの恋(というかローマへの愛)で、最初から最後まで貫かれている。それも古代ローマへの熱烈な思い。その情熱は、須賀敦子さんや、塩野七生さんの比ではないと思う。
イタリアに暮らして、イタリアの街が好き・・というようなお手軽女子大生のノリではない。彼女の中では、古代ローマが、そのまま、現代のイタリアにつながっており、古代ローマ以降の出来事は、彼女にとって(つい最近の出来事)感覚なのだ。
そこが、すごい!!いまのイタリア(いや、シリアでも、どこでもローマ軍遠征の地でも、ローマの息のかかった場所ならどこでも・・)は、彼女から見れば、つい最近古代ローマから派生した出来事になってしまう!
男性論・・・とタイトルにあるが、彼女好みの男性とは、古代ローマ人。そこから派生したDNAを感じることができるオトコ。彼女の視点、洞察から判断して、いいオトコというのは、どこかに古代ローマの品格を持ち、ルネッサンスのエネルギーを体現できるオトコということになる。彼女のニンゲン観察は、すべてが古代ローマに続いている。あのジョッブスですら、ルネッサンスで解析して位置付ける。
ここまで、古代ローマにほれ込んで、が~~っと徹頭徹尾、その観点でつっぱしる作文というのは、一歩、間違えると、チャットじみた駄文の寄せ集めになってしまうのだが、このヤマザキマリさんは、日本語があやしげ(すみません!)なので、この著書自体が、イタリアでイタリア人同士が喧々諤々と井戸端会議をしている、雰囲気で、ずべずべ続くのである。その雰囲気が、まるごと一冊の本として出来上がったよ・・・というような、とりとめもない会話の集合体。
そして、日本人的、正直さで、ぜんぶ、カッコつけないで、さらけ出している。
好感が持てる女性です。正直な生き方です。
わたしは須賀敦子さんのファンで全集を読んでいるし、塩野七生さんも、さすが・・・と感嘆するが。
彼女たちは、半端でない教養と、正統派の学識を備えてイタリアを論じる。そのポジションは、あくまで、日本人としての見識である。
ヤマザキマリさんは、国籍不明人・・・強いて言えば、古代ローマ人がタイムトリップしたままで、いつでもローマに戻れる。というような、時空を超えた感性の人だ。
なので・・彼女のとりとめもない、しまりのない、おしゃべりの連続・・・・これを、楽しむべし!!
筆者のイタリアへの恋(というかローマへの愛)で、最初から最後まで貫かれている。それも古代ローマへの熱烈な思い。その情熱は、須賀敦子さんや、塩野七生さんの比ではないと思う。
イタリアに暮らして、イタリアの街が好き・・というようなお手軽女子大生のノリではない。彼女の中では、古代ローマが、そのまま、現代のイタリアにつながっており、古代ローマ以降の出来事は、彼女にとって(つい最近の出来事)感覚なのだ。
そこが、すごい!!いまのイタリア(いや、シリアでも、どこでもローマ軍遠征の地でも、ローマの息のかかった場所ならどこでも・・)は、彼女から見れば、つい最近古代ローマから派生した出来事になってしまう!
男性論・・・とタイトルにあるが、彼女好みの男性とは、古代ローマ人。そこから派生したDNAを感じることができるオトコ。彼女の視点、洞察から判断して、いいオトコというのは、どこかに古代ローマの品格を持ち、ルネッサンスのエネルギーを体現できるオトコということになる。彼女のニンゲン観察は、すべてが古代ローマに続いている。あのジョッブスですら、ルネッサンスで解析して位置付ける。
ここまで、古代ローマにほれ込んで、が~~っと徹頭徹尾、その観点でつっぱしる作文というのは、一歩、間違えると、チャットじみた駄文の寄せ集めになってしまうのだが、このヤマザキマリさんは、日本語があやしげ(すみません!)なので、この著書自体が、イタリアでイタリア人同士が喧々諤々と井戸端会議をしている、雰囲気で、ずべずべ続くのである。その雰囲気が、まるごと一冊の本として出来上がったよ・・・というような、とりとめもない会話の集合体。
そして、日本人的、正直さで、ぜんぶ、カッコつけないで、さらけ出している。
好感が持てる女性です。正直な生き方です。
わたしは須賀敦子さんのファンで全集を読んでいるし、塩野七生さんも、さすが・・・と感嘆するが。
彼女たちは、半端でない教養と、正統派の学識を備えてイタリアを論じる。そのポジションは、あくまで、日本人としての見識である。
ヤマザキマリさんは、国籍不明人・・・強いて言えば、古代ローマ人がタイムトリップしたままで、いつでもローマに戻れる。というような、時空を超えた感性の人だ。
なので・・彼女のとりとめもない、しまりのない、おしゃべりの連続・・・・これを、楽しむべし!!
2015年3月28日に日本でレビュー済み
【内容(ネタバレ禁止!)】
古代ローマから現代まで、そしてイタリア人から日本人まで、例を挙げて男たちの魅力を語り尽くす。そして流れで、少々の女性論も。
【ささった言葉】
・『世界でいちばんばかな国=日本(クラウディオ・ジュンタ)』
ずる賢く相手を出し抜いてなんぼの国であるイタリアに比べて、日本の人々は親切で秩序立っており、無邪気だといっています。
これは称賛に値する、だがしかしこれで大丈夫なのか?と疑問を呈するわけです。交渉術、外交力にもつながる問題提起ですね。
・わたしは、基本的に空気をうまく読み取る人、つまり、自分がいまいる場所の価値観やルールに自分を巧みに適応させることが得意なひとのことを、あまり信用していません。
・イタリア人はよく噂話もするし、ひとの悪口も言います。「ひとの悪口を言わない人は信じない」が信条と言っていいくらい。
・イタリアにいればやっぱり、きれいごとだけではすまないんです。
・イタリアの強さは、なんといってもみんなが自分好きであることにあります。「生まれてきて、俺バンザイ!」が基本
【教訓】
やはり、国際結婚は大変だ。相手がイタリア人、であるなら特に。。。
波乱万丈の人生を経て、ケッサク『テルマエ・ロマエ』をモノにした作者だけあって、男性論いやむしろ日本人論に、百戦錬磨の厳しさがある。
一言で言えば日本人は「ぬるい」「お人好し」と言われているわけで、、、やはり彼女の住む世界ではずる賢く生きていかねばならないらしい。
興行収入60億円と言われる映画の原作使用権がたったの100万円だったと暴露したことは大問題になったようで、後半それについて語る箇所はやはりかなりの反日怒気を含む。
つまり、どうも自分などは友達になっていただけそうもないタイプなわけでして。。。大変良い勉強をさせていただきました。拝
古代ローマから現代まで、そしてイタリア人から日本人まで、例を挙げて男たちの魅力を語り尽くす。そして流れで、少々の女性論も。
【ささった言葉】
・『世界でいちばんばかな国=日本(クラウディオ・ジュンタ)』
ずる賢く相手を出し抜いてなんぼの国であるイタリアに比べて、日本の人々は親切で秩序立っており、無邪気だといっています。
これは称賛に値する、だがしかしこれで大丈夫なのか?と疑問を呈するわけです。交渉術、外交力にもつながる問題提起ですね。
・わたしは、基本的に空気をうまく読み取る人、つまり、自分がいまいる場所の価値観やルールに自分を巧みに適応させることが得意なひとのことを、あまり信用していません。
・イタリア人はよく噂話もするし、ひとの悪口も言います。「ひとの悪口を言わない人は信じない」が信条と言っていいくらい。
・イタリアにいればやっぱり、きれいごとだけではすまないんです。
・イタリアの強さは、なんといってもみんなが自分好きであることにあります。「生まれてきて、俺バンザイ!」が基本
【教訓】
やはり、国際結婚は大変だ。相手がイタリア人、であるなら特に。。。
波乱万丈の人生を経て、ケッサク『テルマエ・ロマエ』をモノにした作者だけあって、男性論いやむしろ日本人論に、百戦錬磨の厳しさがある。
一言で言えば日本人は「ぬるい」「お人好し」と言われているわけで、、、やはり彼女の住む世界ではずる賢く生きていかねばならないらしい。
興行収入60億円と言われる映画の原作使用権がたったの100万円だったと暴露したことは大問題になったようで、後半それについて語る箇所はやはりかなりの反日怒気を含む。
つまり、どうも自分などは友達になっていただけそうもないタイプなわけでして。。。大変良い勉強をさせていただきました。拝
2017年6月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ヤマザキマリさんの視点を通しての男性の味方と時代背景。私の視野は広がりつつあります。
2014年3月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自分の人生をきちんと生きている、
人のせいにしない、
著者の生き方は、潔く
元気が出ました。
個人的に一番共感できた部分は、
「置かれた場所で咲かない!だから、わたしは外の世界に出た。」という
意味のことばでした。
何があるかわからないけれど、やってみると決めたら、
すべてを引き受けて、生き抜く。
安全であることだけを優先させる生き方ではなく、
自分の願いをかなえる、自分にとって価値あることを
大切にして人生を生きることの気持ちよさが
伝わってきました。
人のせいにしない、
著者の生き方は、潔く
元気が出ました。
個人的に一番共感できた部分は、
「置かれた場所で咲かない!だから、わたしは外の世界に出た。」という
意味のことばでした。
何があるかわからないけれど、やってみると決めたら、
すべてを引き受けて、生き抜く。
安全であることだけを優先させる生き方ではなく、
自分の願いをかなえる、自分にとって価値あることを
大切にして人生を生きることの気持ちよさが
伝わってきました。
2014年1月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
第2章「古代ローマ」な男たち、がいい。古代ローマおたく全開で、芸術肌で理想家のハドリアヌス帝、好奇心の塊のような『博物誌』の著者、プリニウスについて語る。寛容性、ダイナミズム、増長性。ここ100年くらいの日本人でいうと、松下幸之助とか盛田昭夫とか出光佐三とか、伝説の経営者たちにこうした古代ローマ的なにおいを感じる。ものごとにとらわれない。不可能を可能にするためにまずは動いてみる。とにかく考えることのスケールが大きい。いま著者が取り組んでいるプリニウスはヴェスヴィオ火山の噴火を間近で見たいと火山に近づきすぎて死んでしまったという冗談みたいな人である。いまもたまに台風のときにわざわざ荒れ狂う海を見に行くなどして亡くなる人がいるが、家族としては泣くに泣けないだろうなあ。
第3章の、ルネサンスを起こす男たち、もいい。実際にはルネサンスに先駆けて登場した教養と国際的センスを身に付けた進歩的君主、フェデリーコ2世の話をとくに面白く読んだ。「人種と文化の坩堝」であった当時のシチリアに、神聖ローマ帝国皇帝とノルマン朝シチリア王国王女の子として生まれた、リベラルなイケメンスーパーエリート。西ローマ帝国崩壊後、政情不安が続いたヨーロッパにおいて、近代国家的な行政、教育、外交、法整備などを目指したフェデリーコはあまりに進歩的過ぎて彼を養育した教皇も手におえなくなって破門してしまう。いつの時代も、あまりに出来過ぎる人間は同じような憂き目に遭っている。本人には合理的な行動が、他者は不可解極まりない脅威と映る。国造りとその拡張に歴史に残る手腕を発揮した人だったが、後年は息子と争い合ったり宗教勢力に目の敵にされたりして苛烈な人生を送ったそうだ。気になってウィキペディアのエントリも読んでみるとこんな記述があってなんだかやりきれない。「フリードリヒの死について、インノケンティウス4世は「天地が喜ぶ」と書き記し、追い詰められていた教皇派は彼の死に安堵した。他方、イングランドの年代記作家マシュー・パリスは「偉人」「世界の驚異」「変革者」が没したと記録している」。
ラファエロについては、画家ならではの視点が興味部深かった。ラファエロはどんな平凡な人、美しいとはいえない人でも、どこかしらいいところを見つけてそこを最大限に引き出そうとして描いたという。そんなラファエロと比べて、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロの両巨匠の絵をこのように評している。
「人間に絶望していると、モデルに直接対峙せず、自分のパターン、自己模倣的な絵にしてしまうのかもしれません。だれを描いても同じ顔になったダ・ヴィンチ、どんなひとを描いても筋肉もりもりにしてしまったミケランジェロのように」。
ルネサンス時代の巨匠ということで、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロとつけば、どんな作品も「ははあ」とありがたががって見ていたが、言われてみればそのとおり。でも心優しき天才ラファエロは、この同時代の巨匠たちに大いに刺激を受けながらその才能を伸ばしていったのに違いないと著者は書き添えている。絵描きとして「ラファエロのチームに参加したかった!」という著者の魂の叫び。彼女も孤高の芸術家というよりは、ラファエロのように人間愛に溢れた人なのだと思う。
テレビでヤマザキマリさんの日常を追うドキュメンタリー(情熱大陸?)を見たが、彼女の飄々としたおかしみのある話し方が魅力的だった。語りおろし原稿という形式のせいでその味が薄まって、人柄があまり伝わってこない文章になってしまっているのは残念だが、『テルマエ・ロマエ』のような規格破りの作品を生んだこの人の半生、そのなかで培われた価値観が垣間見れたのはよかった。『プリニウス』も読まなくては。「女性論」の章にでてくるのが登場する須賀敦子と兼高かおるというのにも親近感。「兼高かおるの世界の旅」もよかったけど、幸田シャーミン、三宅民夫らがキャスターをやっていたNHKの「海外ウイークリー」も好きだったな。本とは関係ないが。
第3章の、ルネサンスを起こす男たち、もいい。実際にはルネサンスに先駆けて登場した教養と国際的センスを身に付けた進歩的君主、フェデリーコ2世の話をとくに面白く読んだ。「人種と文化の坩堝」であった当時のシチリアに、神聖ローマ帝国皇帝とノルマン朝シチリア王国王女の子として生まれた、リベラルなイケメンスーパーエリート。西ローマ帝国崩壊後、政情不安が続いたヨーロッパにおいて、近代国家的な行政、教育、外交、法整備などを目指したフェデリーコはあまりに進歩的過ぎて彼を養育した教皇も手におえなくなって破門してしまう。いつの時代も、あまりに出来過ぎる人間は同じような憂き目に遭っている。本人には合理的な行動が、他者は不可解極まりない脅威と映る。国造りとその拡張に歴史に残る手腕を発揮した人だったが、後年は息子と争い合ったり宗教勢力に目の敵にされたりして苛烈な人生を送ったそうだ。気になってウィキペディアのエントリも読んでみるとこんな記述があってなんだかやりきれない。「フリードリヒの死について、インノケンティウス4世は「天地が喜ぶ」と書き記し、追い詰められていた教皇派は彼の死に安堵した。他方、イングランドの年代記作家マシュー・パリスは「偉人」「世界の驚異」「変革者」が没したと記録している」。
ラファエロについては、画家ならではの視点が興味部深かった。ラファエロはどんな平凡な人、美しいとはいえない人でも、どこかしらいいところを見つけてそこを最大限に引き出そうとして描いたという。そんなラファエロと比べて、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロの両巨匠の絵をこのように評している。
「人間に絶望していると、モデルに直接対峙せず、自分のパターン、自己模倣的な絵にしてしまうのかもしれません。だれを描いても同じ顔になったダ・ヴィンチ、どんなひとを描いても筋肉もりもりにしてしまったミケランジェロのように」。
ルネサンス時代の巨匠ということで、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロとつけば、どんな作品も「ははあ」とありがたががって見ていたが、言われてみればそのとおり。でも心優しき天才ラファエロは、この同時代の巨匠たちに大いに刺激を受けながらその才能を伸ばしていったのに違いないと著者は書き添えている。絵描きとして「ラファエロのチームに参加したかった!」という著者の魂の叫び。彼女も孤高の芸術家というよりは、ラファエロのように人間愛に溢れた人なのだと思う。
テレビでヤマザキマリさんの日常を追うドキュメンタリー(情熱大陸?)を見たが、彼女の飄々としたおかしみのある話し方が魅力的だった。語りおろし原稿という形式のせいでその味が薄まって、人柄があまり伝わってこない文章になってしまっているのは残念だが、『テルマエ・ロマエ』のような規格破りの作品を生んだこの人の半生、そのなかで培われた価値観が垣間見れたのはよかった。『プリニウス』も読まなくては。「女性論」の章にでてくるのが登場する須賀敦子と兼高かおるというのにも親近感。「兼高かおるの世界の旅」もよかったけど、幸田シャーミン、三宅民夫らがキャスターをやっていたNHKの「海外ウイークリー」も好きだったな。本とは関係ないが。
2015年2月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
好きな男性たちは時代も国籍もバラバラ、ジョブズ、安倍公房
水木しげる、つげ義春等個性的な人が多い、又想像力に言及
しており本を読んだり、映画を観たりといった経験が作者の拠
り所になってるというフレーズには納得できる。
水木しげる、つげ義春等個性的な人が多い、又想像力に言及
しており本を読んだり、映画を観たりといった経験が作者の拠
り所になってるというフレーズには納得できる。