本書はタイトルとは異なり、インターネット誕生以来のニュースメディアをめぐる陣取り合戦を精緻に描いた傑作。タイトルは著者が慶應大学や上智大学で受け持つ講座名を生かしただけで、未来のメディアを語るものではない。
新聞社のインターネットへの向き合い、ヤフーとの戦いが膨大な関係者への取材をもとに描かれており、メディアの変遷を知るうえで後世に残る歴史書となっている。本書に登場する人物、匿名人物への取材にとどまらず、新聞社の社内報など膨大な社内資料も引用しているとあって、初めて知る史実も多く、読み出すと止まらない。事実は小説より奇なりと言われるが、一流の経済小説に負けず劣らず、メディアに興味がないものでも引き込まれること請け合いだ。
文庫版では40ページ近くにわたり、ネットの言論空間正常化への最新動向が加筆されている。単行本を読んだ者でも新章を読むためだけに手に取る価値がある。
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2050年のメディア 単行本 – 2019/10/25
下山 進
(著)
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購入オプションとあわせ買い
読売、日経、ヤフー、波乱のメディア三国志!
紙かデジタルか? 技術革新かスクープか?
「読売はこのままでは持たんぞ」
2018年正月の読売賀詞交換会。いつも「経営は磐石」と太鼓判を押す渡邉恒雄がその年は違った。「紙の王国」に大きな危機が訪れていた。
分水嶺は2005年に訪れていた。
1995年には存在すらしていなかったヤフー・ジャパン。
そのヤフーは、読売からのニュース提供をうけて、月間224 億PVという巨大プラッットフォームに成長。
危機感を抱いた読売新聞の社長室次長山口寿一(後のグループ本社社長)は、ヤフーに対抗して新聞社が独自のプラットフォームを持つことを思いつく。
日経、朝日に声をかけ、ヤフー包囲網がしかれたかに見えたが・・・。
同じ時期、日本経済新聞社長の杉田亮毅は、無料サイトにみきりをつけ、電子有料版の準備をひそかに進めていた 。
序章 読売はこのままでは持たんぞ
二〇一八年正月の読売賀詞交換会。いつも「経営は磐石」と太鼓判を押す渡邉恒雄がその年は違った。遺言のようだ、と感じた社員もいた。紙の王国に大きな危機が訪れていた。
第一章 最初の異変
「新聞の切り抜きを使った授業はもうできないんです。新聞をとる家庭がもうないから」そう言われて北区で複数の読売の新聞専売店を経営する副田義隆は衝撃をうける。
第二章 中心のないネットワーク
後に「日本のインターネットの父」と呼ばれるようになる慶應義塾大学の村井純は、この技術が、産業のあらゆる分野で変革を起こすようになるとは夢にも思っていなかった。
第三章 青年は荒野をめざす
二〇一六年には読売、朝日、日経を全て足した売上よりも大きな売上をあげるようになるヤフー・ジャパンの設立は、九六年一月のことだった。旧メディアから若者たちが集まる。
第四章 読売を落とせ
激烈さをますポータルサイト同士の競争のなか、「ヨミウリ・オンライン」は喉から手がでるほどほしいコンテンツだった。遅れをとったヤフーの井上雅博はいらだつ。
第五章 ライントピックス訴訟一審
ハイパーリンクというインターネットの最大の発明を使って様々なビジネスが花開く。神戸の小さな会社が始めた「ライントピックス」というサービスもそのひとつだった。
第六章 戦う法務部
守るだけではなく、攻めなくてはだめだ。山口の信念のもと読売法務部は変わっていく。「ライントピックス」訴訟控訴審。グーグルの上陸で掛け金ははねあがる。
第七章 日経は出さない
各社が自社サイトやヤフーで紙面掲載のほぼ全てを見せているなか、日経だけは3割ルールをもうけて制限をしていた。このことがデジタル有料版への重要な布石になる。
第八章 真珠のネックレスのような
二〇〇五年は分水嶺の年だった。ヤフーの売上が一〇〇〇億円を
紙かデジタルか? 技術革新かスクープか?
「読売はこのままでは持たんぞ」
2018年正月の読売賀詞交換会。いつも「経営は磐石」と太鼓判を押す渡邉恒雄がその年は違った。「紙の王国」に大きな危機が訪れていた。
分水嶺は2005年に訪れていた。
1995年には存在すらしていなかったヤフー・ジャパン。
そのヤフーは、読売からのニュース提供をうけて、月間224 億PVという巨大プラッットフォームに成長。
危機感を抱いた読売新聞の社長室次長山口寿一(後のグループ本社社長)は、ヤフーに対抗して新聞社が独自のプラットフォームを持つことを思いつく。
日経、朝日に声をかけ、ヤフー包囲網がしかれたかに見えたが・・・。
同じ時期、日本経済新聞社長の杉田亮毅は、無料サイトにみきりをつけ、電子有料版の準備をひそかに進めていた 。
序章 読売はこのままでは持たんぞ
二〇一八年正月の読売賀詞交換会。いつも「経営は磐石」と太鼓判を押す渡邉恒雄がその年は違った。遺言のようだ、と感じた社員もいた。紙の王国に大きな危機が訪れていた。
第一章 最初の異変
「新聞の切り抜きを使った授業はもうできないんです。新聞をとる家庭がもうないから」そう言われて北区で複数の読売の新聞専売店を経営する副田義隆は衝撃をうける。
第二章 中心のないネットワーク
後に「日本のインターネットの父」と呼ばれるようになる慶應義塾大学の村井純は、この技術が、産業のあらゆる分野で変革を起こすようになるとは夢にも思っていなかった。
第三章 青年は荒野をめざす
二〇一六年には読売、朝日、日経を全て足した売上よりも大きな売上をあげるようになるヤフー・ジャパンの設立は、九六年一月のことだった。旧メディアから若者たちが集まる。
第四章 読売を落とせ
激烈さをますポータルサイト同士の競争のなか、「ヨミウリ・オンライン」は喉から手がでるほどほしいコンテンツだった。遅れをとったヤフーの井上雅博はいらだつ。
第五章 ライントピックス訴訟一審
ハイパーリンクというインターネットの最大の発明を使って様々なビジネスが花開く。神戸の小さな会社が始めた「ライントピックス」というサービスもそのひとつだった。
第六章 戦う法務部
守るだけではなく、攻めなくてはだめだ。山口の信念のもと読売法務部は変わっていく。「ライントピックス」訴訟控訴審。グーグルの上陸で掛け金ははねあがる。
第七章 日経は出さない
各社が自社サイトやヤフーで紙面掲載のほぼ全てを見せているなか、日経だけは3割ルールをもうけて制限をしていた。このことがデジタル有料版への重要な布石になる。
第八章 真珠のネックレスのような
二〇〇五年は分水嶺の年だった。ヤフーの売上が一〇〇〇億円を
- 本の長さ440ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2019/10/25
- 寸法13.9 x 2.7 x 19.5 cm
- ISBN-104163911170
- ISBN-13978-4163911175
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2019/10/25)
- 発売日 : 2019/10/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 440ページ
- ISBN-10 : 4163911170
- ISBN-13 : 978-4163911175
- 寸法 : 13.9 x 2.7 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 156,299位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 35位新聞マスメディア
- - 120位メディアと社会
- - 138位ジャーナリズム (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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『アルツハイマー征服』(KADOKAWA、2021年)で、「レカネマブ(BAN2401)」の開発にいたる30年の研究史をまとめ、大きな話題となっている。他の著書に『アメリカ・ジャーリズム』(1995年、丸善)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA 、2002年)、『2050年のメディア』(文藝春秋、2019年)、『2050年のジャーナリスト』(毎日新聞出版、2021年)。文藝春秋で長くノンフィクションの編集者をつとめた。2020年3月より2ページのコラムを「サンデー毎日」→「週刊朝日」→「AERA」で連載中。上智大学新聞学科非常勤講師。元慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年4月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年11月6日に日本でレビュー済み
21世紀、新聞メディアとヤフーはどのように向き合ったのか。ニュースを買ってサイトの客寄せに使い、あっという間に売り手の新聞よりはるかに巨大な企業になったヤフージャパン。ヤフーに中抜きされず、ニュースを自分たちで読者に売りたい読売・日経。3社がニュースをどのように売ろうとしてきたのか、実にあけすけな当事者の語りを交えつつ、舞台裏を描いている。
ニュースを紙で売りたい読売は、日経や朝日と3社連合で紙に誘導するためのサイト「あらたにす」を開いたが、3社のネット方針がずれ、うまくいかない。共同はヤフーへの配信を拒否し、加盟各社を巻き込みサイトを作ったが、ヤフーの集客力には全く太刀打ちできない。
日経は自社でニュースを売るには、自前でウェブファーストをやるしかないと判断した。ニュースは外販せず「日経電子版」を作り成功する。共同はヤフーと合弁でニュース事業をしようとするが、途中でヤフーから袖にされた。読売は「ネットも活用しながら、紙を維持する」方針を結局現在まで貫いている。紙の方は子ども向け新聞がある程度成功しているが、ネットの方はタブレットなど迷走気味である。「人材も主流が行かない、部門トップも官僚でプロパーは育たない」など評価は厳しい。
興味を引いたのが、本書における読売・山口社長の登場量の多さだ。文春編集者である著者のインタビューに応じたのも驚きだが、ざっくばらんに話しているのも印象的だった。業界最強の法務部を一から作り、次々と山口社長が、21世紀に入ってからの経営の主導権を握っていたようである。「清武の乱」法廷闘争での鮮やかな逆転、ライントピックス訴訟を勝ちに行く執念など、読んでいて本書の言う通り、「カミソリ」「能吏」という印象を受けた。
本書は、レビューで幕末やらやくざ映画やら、色々な群像劇にたとえられている。気持ちはわかる。過去繰り返された、新しい発想が旧体制をあっという間に駆逐する歴史だ。私は戦前の大艦巨砲主義に似ていると感じた。海でも航空戦が主になると思いつつ、海軍のエリート・砲兵はどうなるという話だ。紙は、巨額の設備投資が必要な代わりに強い収益力があった。だが、身軽な投資で激戦さえ勝ち抜けばさくさくキャッシュを生むネットに競争できていない。数百の戦闘機にバカスカ爆弾を撃ち込まれ巨艦が沈む状況に、新聞のイメージが重なる。
読売も頭では紙が廃れ、ネット時代になることはわかっている。だが、それまで培った販売店網は……?となる。日経は紙の投資が少ないからウェブファーストへの改革が可能になった。それでも、大規模な組織改編を行い、販売店から猛抗議され自殺者も出た。読売なら日経の比ではない苦難になるだろう。紙からネットへ劇的な転換は今後もない。山口社長のインタビューを読んでそう感じた。
「2050年なんてどこにもないじゃん」という表題との齟齬は否めないが、新聞とネットのドキュメンタリーとしては、出色の本だ。ガードが堅い3社でなかなか表に出てこない人物の語りが多く面白かった。「21世紀最後の巨艦」はどこになるだろう、と思う。
ニュースを紙で売りたい読売は、日経や朝日と3社連合で紙に誘導するためのサイト「あらたにす」を開いたが、3社のネット方針がずれ、うまくいかない。共同はヤフーへの配信を拒否し、加盟各社を巻き込みサイトを作ったが、ヤフーの集客力には全く太刀打ちできない。
日経は自社でニュースを売るには、自前でウェブファーストをやるしかないと判断した。ニュースは外販せず「日経電子版」を作り成功する。共同はヤフーと合弁でニュース事業をしようとするが、途中でヤフーから袖にされた。読売は「ネットも活用しながら、紙を維持する」方針を結局現在まで貫いている。紙の方は子ども向け新聞がある程度成功しているが、ネットの方はタブレットなど迷走気味である。「人材も主流が行かない、部門トップも官僚でプロパーは育たない」など評価は厳しい。
興味を引いたのが、本書における読売・山口社長の登場量の多さだ。文春編集者である著者のインタビューに応じたのも驚きだが、ざっくばらんに話しているのも印象的だった。業界最強の法務部を一から作り、次々と山口社長が、21世紀に入ってからの経営の主導権を握っていたようである。「清武の乱」法廷闘争での鮮やかな逆転、ライントピックス訴訟を勝ちに行く執念など、読んでいて本書の言う通り、「カミソリ」「能吏」という印象を受けた。
本書は、レビューで幕末やらやくざ映画やら、色々な群像劇にたとえられている。気持ちはわかる。過去繰り返された、新しい発想が旧体制をあっという間に駆逐する歴史だ。私は戦前の大艦巨砲主義に似ていると感じた。海でも航空戦が主になると思いつつ、海軍のエリート・砲兵はどうなるという話だ。紙は、巨額の設備投資が必要な代わりに強い収益力があった。だが、身軽な投資で激戦さえ勝ち抜けばさくさくキャッシュを生むネットに競争できていない。数百の戦闘機にバカスカ爆弾を撃ち込まれ巨艦が沈む状況に、新聞のイメージが重なる。
読売も頭では紙が廃れ、ネット時代になることはわかっている。だが、それまで培った販売店網は……?となる。日経は紙の投資が少ないからウェブファーストへの改革が可能になった。それでも、大規模な組織改編を行い、販売店から猛抗議され自殺者も出た。読売なら日経の比ではない苦難になるだろう。紙からネットへ劇的な転換は今後もない。山口社長のインタビューを読んでそう感じた。
「2050年なんてどこにもないじゃん」という表題との齟齬は否めないが、新聞とネットのドキュメンタリーとしては、出色の本だ。ガードが堅い3社でなかなか表に出てこない人物の語りが多く面白かった。「21世紀最後の巨艦」はどこになるだろう、と思う。
2023年4月21日に日本でレビュー済み
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タイトルに騙される。2050年とはいかなくとも将来の予想かなと思い買ってみたが、過去の話ばかりです。それはそれで面白かったので、星3つ。
2023年4月21日に日本でレビュー済み
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読まなければと思い、一気に読みました その判断はよかったと思っています
タイトルが絶妙で、2050年を語っているわけではありません もっぱら現在に至るまでのメディアの過程を当事者の声を直接取材して正確に記録するルポです この後30年耐えうる歴史教科書ですが、なので現在進行中の今読むと臨場感は格段にちがいます
お値段高いですが中古が出るまで待つのはもったいないです
タイトルが絶妙で、2050年を語っているわけではありません もっぱら現在に至るまでのメディアの過程を当事者の声を直接取材して正確に記録するルポです この後30年耐えうる歴史教科書ですが、なので現在進行中の今読むと臨場感は格段にちがいます
お値段高いですが中古が出るまで待つのはもったいないです
2021年5月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
緻密な取材力で綴られており、読み応えアリです。
読売新聞内部によく取材できたと感心します。
特にあの「清武の乱」は報じられなかった真実もありどんどん引き込まれました。
かなりボリュームありますが、読む価値ありの傑作でした。
読売新聞内部によく取材できたと感心します。
特にあの「清武の乱」は報じられなかった真実もありどんどん引き込まれました。
かなりボリュームありますが、読む価値ありの傑作でした。
2019年10月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルで気になって買いましたが、お世辞にも良い本とは言えません。まったく2050年が語られておらず、釣りタイトルとも言えるかもしれません。過去の歴史を辿っているだけで発見はほぼありませんでしたが、読売や日経、ヤフーの裏側を少し覗きたい人には良いかもしれません。個人的には申し訳ありませんが☆ひとつです。
2019年10月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
面白い本だ。メディア関係者は必読だろう。
本書前半のクライマックスは「ライントピックス」訴訟の第一審だ。2002年、見出しの著作権他をめぐり、神戸のベンチャー企業が、読売から6000万強の損害賠償を請求される、読売の大弁護団に、神戸の新人弁護士がひとり対峙する。本書で「ダビデとゴリアテの戦い」とされるこの訴訟で、読売が完敗するのである(のちに控訴)。ここは映画化してほしいくらい面白い。
この時の読売の弁論は、「記者が夜討ち朝駆けで苦労して取ってきた情報をネットがタダで使うなんて」という論理だった。「労働価値説」とでも言うのか。本書はそれを「いわば内輪の論理で、外から見るとまったく非常識に見えた」と書く。結局、ここに、それ以降、新聞がネットに負け続ける理由が表れていると思う。新聞は長い間、世論を自由に操ってきたので、自分たちの慢心に気づかなかった。
そのあと、朝日、日経、読売の強者連合「ANY」で「あらたにす」というウェブサイトができる。日経はその時点で自社サイトの課金を決めているのに、ANY加入はそれに矛盾する行動だ。その日経の不思議な行動の理由を、本書はいちおう説明してみせるが、それが真相なのか、いまひとつ納得できない。日経は本書の取材に非協力的だったようなので、別の真相があるかもしれない。
このANYから排除された弱者「毎日」の朝比奈役員(のち社長、会長)が、2007年の新聞大会の舞台裏で、読売の山口寿一(のち社長)に食ってかかる場面などが面白い。しかし、このANYもすぐ失敗する。「この三社のサイトは、あくまで新聞記者の意識を前提におきながら、それを世の中が読むべきだ、読むのが当然だ、という考えで作ったことが大きな失敗の原因となってくる」(P158)。つまりは慢心である。
新聞の強者連合も敗れ、結局ヤフージャパンが勝者となる、というのが本書のストーリーだ。それはそれとして、新聞はデジタル戦略で致命的に敗れたのに、新聞経営者は誰も責任を取っていないらしいことが気になった。日経は最終的に勝者らしいのでよいとして、読売の山口、朝日の秋山、毎日の朝比奈各社長などはその責任をとったように見えない。
本書では2000年代半ばまで新聞の部数はそれほど減らなかったとしているが、実際には1990年代後半がピークであった。もっと早く、賢明な経営判断がありえたはずだ。最近、毎日のデジタル担当だった役員が、妻の覚醒剤所持で辞任した。週刊誌は次期社長候補だったと書いていた。毎日はいちばんの敗者で、その責任者のはずなのに、その責任ではなく、妻の不始末でしか辞任しないわけである。産経と毎日の一般社員はリストラでどんどん「クビ」になっているという。
デジタル部局やネット生え抜きの社員をいつまでも傍流扱いして、「夜討ち朝駆け」自慢の政治部や社会部出身者が出世するシステムを変えなければならないはずだが、よほどの外圧がない限り無理なのだろう。本書でも少し触れられているが、新聞社は特殊な法律で守られ、株式が公開されず、株主総会のコントロールが効かないので、要するに現経営者とその取り巻きの「独裁」が会社がつぶれるまで続くのだろう。
ところで、本書はやたら読売の山口寿一社長を持ち上げるのが気になる。よほど取材に協力してもらったのだろうが、ということは、渡辺恒雄会長の意思が働いているということだ。読売こども新聞の宣伝みたいな部分もある。新聞社では日経だけがネットの勝ち組になりそうな業界事情の中、読売が何か仕掛けてきたのかもしれない、とちょっと感じる。ともかく、そのせいか、日本の古い新聞文化を象徴するような渡辺会長への批判がないどころか、ちょっと持ち上げてもいる。
しかし、そもそもネットに理解がないどころか敵対してきた読売の会長さんが世論を牛耳ってきたせいで、新聞業界はもちろん、日本のIT産業とネット文化が、致命的に遅れたのではないか。民主党政権時代に文科副大臣を務めた、著者と同じ慶大教授の鈴木寛が、デジタル教育導入をナベツネに妨害されたことを本に書いている(『テレビが政治家をダメにした』双葉新書)。2010年には読売は「デジタル化が日本を滅ぼす」という講演を含むイベントもやっている。「この裏には、読売新聞のデジタルコンテンツ化は主要メディアの中でも最も遅れていて、教科書のデジタル化が進むと世の中全体のデジタル化も進み、経営に大打撃になるという理由があったようです。」と鈴木は書いている。
読売ならずとも、日本の新聞は2000年代になっても、日本はネットやソフトはやらずにパソコンづくりという「ものづくり」をこれまで通りに真面目にやりつづければよい、という論調であった。ネットではイデオロギー的理由で特定の新聞をつぶそうとかいう運動があるが、そういうものではなく、新聞社を日本のためになるように、市民国民の利益になるように変えていく必要があると思った。
本書前半のクライマックスは「ライントピックス」訴訟の第一審だ。2002年、見出しの著作権他をめぐり、神戸のベンチャー企業が、読売から6000万強の損害賠償を請求される、読売の大弁護団に、神戸の新人弁護士がひとり対峙する。本書で「ダビデとゴリアテの戦い」とされるこの訴訟で、読売が完敗するのである(のちに控訴)。ここは映画化してほしいくらい面白い。
この時の読売の弁論は、「記者が夜討ち朝駆けで苦労して取ってきた情報をネットがタダで使うなんて」という論理だった。「労働価値説」とでも言うのか。本書はそれを「いわば内輪の論理で、外から見るとまったく非常識に見えた」と書く。結局、ここに、それ以降、新聞がネットに負け続ける理由が表れていると思う。新聞は長い間、世論を自由に操ってきたので、自分たちの慢心に気づかなかった。
そのあと、朝日、日経、読売の強者連合「ANY」で「あらたにす」というウェブサイトができる。日経はその時点で自社サイトの課金を決めているのに、ANY加入はそれに矛盾する行動だ。その日経の不思議な行動の理由を、本書はいちおう説明してみせるが、それが真相なのか、いまひとつ納得できない。日経は本書の取材に非協力的だったようなので、別の真相があるかもしれない。
このANYから排除された弱者「毎日」の朝比奈役員(のち社長、会長)が、2007年の新聞大会の舞台裏で、読売の山口寿一(のち社長)に食ってかかる場面などが面白い。しかし、このANYもすぐ失敗する。「この三社のサイトは、あくまで新聞記者の意識を前提におきながら、それを世の中が読むべきだ、読むのが当然だ、という考えで作ったことが大きな失敗の原因となってくる」(P158)。つまりは慢心である。
新聞の強者連合も敗れ、結局ヤフージャパンが勝者となる、というのが本書のストーリーだ。それはそれとして、新聞はデジタル戦略で致命的に敗れたのに、新聞経営者は誰も責任を取っていないらしいことが気になった。日経は最終的に勝者らしいのでよいとして、読売の山口、朝日の秋山、毎日の朝比奈各社長などはその責任をとったように見えない。
本書では2000年代半ばまで新聞の部数はそれほど減らなかったとしているが、実際には1990年代後半がピークであった。もっと早く、賢明な経営判断がありえたはずだ。最近、毎日のデジタル担当だった役員が、妻の覚醒剤所持で辞任した。週刊誌は次期社長候補だったと書いていた。毎日はいちばんの敗者で、その責任者のはずなのに、その責任ではなく、妻の不始末でしか辞任しないわけである。産経と毎日の一般社員はリストラでどんどん「クビ」になっているという。
デジタル部局やネット生え抜きの社員をいつまでも傍流扱いして、「夜討ち朝駆け」自慢の政治部や社会部出身者が出世するシステムを変えなければならないはずだが、よほどの外圧がない限り無理なのだろう。本書でも少し触れられているが、新聞社は特殊な法律で守られ、株式が公開されず、株主総会のコントロールが効かないので、要するに現経営者とその取り巻きの「独裁」が会社がつぶれるまで続くのだろう。
ところで、本書はやたら読売の山口寿一社長を持ち上げるのが気になる。よほど取材に協力してもらったのだろうが、ということは、渡辺恒雄会長の意思が働いているということだ。読売こども新聞の宣伝みたいな部分もある。新聞社では日経だけがネットの勝ち組になりそうな業界事情の中、読売が何か仕掛けてきたのかもしれない、とちょっと感じる。ともかく、そのせいか、日本の古い新聞文化を象徴するような渡辺会長への批判がないどころか、ちょっと持ち上げてもいる。
しかし、そもそもネットに理解がないどころか敵対してきた読売の会長さんが世論を牛耳ってきたせいで、新聞業界はもちろん、日本のIT産業とネット文化が、致命的に遅れたのではないか。民主党政権時代に文科副大臣を務めた、著者と同じ慶大教授の鈴木寛が、デジタル教育導入をナベツネに妨害されたことを本に書いている(『テレビが政治家をダメにした』双葉新書)。2010年には読売は「デジタル化が日本を滅ぼす」という講演を含むイベントもやっている。「この裏には、読売新聞のデジタルコンテンツ化は主要メディアの中でも最も遅れていて、教科書のデジタル化が進むと世の中全体のデジタル化も進み、経営に大打撃になるという理由があったようです。」と鈴木は書いている。
読売ならずとも、日本の新聞は2000年代になっても、日本はネットやソフトはやらずにパソコンづくりという「ものづくり」をこれまで通りに真面目にやりつづければよい、という論調であった。ネットではイデオロギー的理由で特定の新聞をつぶそうとかいう運動があるが、そういうものではなく、新聞社を日本のためになるように、市民国民の利益になるように変えていく必要があると思った。