オールカラー絵画32点を収録。マネ、バーン=ジョーンズ、ルーベンス、ブリューゲル、ゴーギャン、ベラスケス、ターナー、ティツィアーノ、クリムトなどなど。
一枚の絵画に秘められた神話・歴史的史実・文学的要素。中野京子さんの解説を頭に入れて鑑賞すると、作品がここまで面白くなるのかと唸らされました。
・どの章も興味深く読めたが、『選択』『マクベス夫人に扮したエレン・テリー』による世紀末大女優の物語が特に印象に残った。
・『アンコレ橋のナポレオン』『死刑囚の監房』作品が認められ、底辺から身を起こして成功することは称賛されるべきだが、富と地位を得ると人間はかくも変わるのか。
・「相手の個人的事情も正義も悪も立場もいっさい考慮しない」女神フォルトゥナ(p30)、女性を次々に毒牙にかける天空の支配者ゼウス(p128)、半獣人マルシュアスの生皮を平然とそぎ落とす太陽神アポロン(p180)、「人間ごときを歯牙にも」かけない女神アテナ(p185)。神々の力=大自然と運命に翻弄される人間と動物の物語は哀しくも力強い。
個人的な話で恐縮ですが、2014年4月にコートールド美術館でマネ『フォリー=ベルジェールのバー』を鑑賞し、数日後にパリのFOLIES BERGEREを訪問しました。その時は漠然としていましたが、華やかなミュージックホールの裏側、うつろな目でこちらをみる彼女の思い、時代の残酷さと可能性など、本書の「若さと綺麗な顔だけを武器に」によって作品世界が拡がった気がします。
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中野京子と読み解く 運命の絵 もう逃れられない 単行本 – 2019/1/31
中野 京子
(著)
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「怖い絵」「名画の謎」に続く注目のシリーズ第2弾!
何気なく見ていた有名絵画の奥底を知れば、
もう登場人物の境遇に心を寄せずにはいられない……!
世紀を越えた名画が私たちに突きつけるのは、
〈誰もみな、運命から逃れられない〉という現実。
表紙は印象派の先駆者マネの最晩年の大作『フォリー・ベルジェールのバー』。
華やかなパリの酒場に立つバーガールは、なぜ死んだ目をしているのか?
そして裏表紙に続く絵の右側には、怪しい男の気配……。
実は彼女は追い詰められ、今まさに運命の分岐点にいる――。
〈この作品は2019年9月からはじまる「コートールド美術館展」で来日予定。
本書を読めば、鑑賞が何倍も楽しくなるのでおすすめです!〉
ほか、絵画エッセイの名手・中野京子さんだから解き明かせる17の〈運命〉を収録。
◎グロの描いた、若きナポレオンにオーラを授けた「奇跡の一枚」
◎波乱万丈すぎるゴーギャンの「遺書になりそこねた名作」
◎シェフェールがエロティックに描いた「死に向かう乙女」の理想と現実
◎ターナーが戦艦に重ねた「イギリスの栄枯盛衰」
◎バーン=ジョーンズの「運命の車輪」が真に迫りすぎている理由
etc.
絵画32点はすべてオールカラー掲載、主要絵画は引き出し線の入った詳細解説入り。
何気なく見ていた有名絵画の奥底を知れば、
もう登場人物の境遇に心を寄せずにはいられない……!
世紀を越えた名画が私たちに突きつけるのは、
〈誰もみな、運命から逃れられない〉という現実。
表紙は印象派の先駆者マネの最晩年の大作『フォリー・ベルジェールのバー』。
華やかなパリの酒場に立つバーガールは、なぜ死んだ目をしているのか?
そして裏表紙に続く絵の右側には、怪しい男の気配……。
実は彼女は追い詰められ、今まさに運命の分岐点にいる――。
〈この作品は2019年9月からはじまる「コートールド美術館展」で来日予定。
本書を読めば、鑑賞が何倍も楽しくなるのでおすすめです!〉
ほか、絵画エッセイの名手・中野京子さんだから解き明かせる17の〈運命〉を収録。
◎グロの描いた、若きナポレオンにオーラを授けた「奇跡の一枚」
◎波乱万丈すぎるゴーギャンの「遺書になりそこねた名作」
◎シェフェールがエロティックに描いた「死に向かう乙女」の理想と現実
◎ターナーが戦艦に重ねた「イギリスの栄枯盛衰」
◎バーン=ジョーンズの「運命の車輪」が真に迫りすぎている理由
etc.
絵画32点はすべてオールカラー掲載、主要絵画は引き出し線の入った詳細解説入り。
- 本の長さ206ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2019/1/31
- 寸法12.9 x 1.6 x 18.9 cm
- ISBN-10416390963X
- ISBN-13978-4163909639
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2019/1/31)
- 発売日 : 2019/1/31
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 206ページ
- ISBN-10 : 416390963X
- ISBN-13 : 978-4163909639
- 寸法 : 12.9 x 1.6 x 18.9 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 363,909位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 598位西洋画
- - 56,015位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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北海道生まれ。早稲田大学講師。専門はドイツ文学・西洋文化史(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (ISBN-13: 978-4334035662 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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5 星
一枚の絵画に秘められた神話・歴史的史実・文学的要素を知る。作品世界が拡がる愉しみがそこにある。
オールカラー絵画32点を収録。マネ、バーン=ジョーンズ、ルーベンス、ブリューゲル、ゴーギャン、ベラスケス、ターナー、ティツィアーノ、クリムトなどなど。一枚の絵画に秘められた神話・歴史的史実・文学的要素。中野京子さんの解説を頭に入れて鑑賞すると、作品がここまで面白くなるのかと唸らされました。・どの章も興味深く読めたが、『選択』『マクベス夫人に扮したエレン・テリー』による世紀末大女優の物語が特に印象に残った。・『アンコレ橋のナポレオン』『死刑囚の監房』作品が認められ、底辺から身を起こして成功することは称賛されるべきだが、富と地位を得ると人間はかくも変わるのか。・「相手の個人的事情も正義も悪も立場もいっさい考慮しない」女神フォルトゥナ(p30)、女性を次々に毒牙にかける天空の支配者ゼウス(p128)、半獣人マルシュアスの生皮を平然とそぎ落とす太陽神アポロン(p180)、「人間ごときを歯牙にも」かけない女神アテナ(p185)。神々の力=大自然と運命に翻弄される人間と動物の物語は哀しくも力強い。個人的な話で恐縮ですが、2014年4月にコートールド美術館でマネ『フォリー=ベルジェールのバー』を鑑賞し、数日後にパリのFOLIES BERGEREを訪問しました。その時は漠然としていましたが、華やかなミュージックホールの裏側、うつろな目でこちらをみる彼女の思い、時代の残酷さと可能性など、本書の「若さと綺麗な顔だけを武器に」によって作品世界が拡がった気がします。
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2019年2月5日に日本でレビュー済み
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オールカラー絵画32点を収録。マネ、バーン=ジョーンズ、ルーベンス、ブリューゲル、ゴーギャン、ベラスケス、ターナー、ティツィアーノ、クリムトなどなど。
一枚の絵画に秘められた神話・歴史的史実・文学的要素。中野京子さんの解説を頭に入れて鑑賞すると、作品がここまで面白くなるのかと唸らされました。
・どの章も興味深く読めたが、『選択』『マクベス夫人に扮したエレン・テリー』による世紀末大女優の物語が特に印象に残った。
・『アンコレ橋のナポレオン』『死刑囚の監房』作品が認められ、底辺から身を起こして成功することは称賛されるべきだが、富と地位を得ると人間はかくも変わるのか。
・「相手の個人的事情も正義も悪も立場もいっさい考慮しない」女神フォルトゥナ(p30)、女性を次々に毒牙にかける天空の支配者ゼウス(p128)、半獣人マルシュアスの生皮を平然とそぎ落とす太陽神アポロン(p180)、「人間ごときを歯牙にも」かけない女神アテナ(p185)。神々の力=大自然と運命に翻弄される人間と動物の物語は哀しくも力強い。
個人的な話で恐縮ですが、2014年4月にコートールド美術館でマネ『フォリー=ベルジェールのバー』を鑑賞し、数日後にパリのFOLIES BERGEREを訪問しました。その時は漠然としていましたが、華やかなミュージックホールの裏側、うつろな目でこちらをみる彼女の思い、時代の残酷さと可能性など、本書の「若さと綺麗な顔だけを武器に」によって作品世界が拡がった気がします。
一枚の絵画に秘められた神話・歴史的史実・文学的要素。中野京子さんの解説を頭に入れて鑑賞すると、作品がここまで面白くなるのかと唸らされました。
・どの章も興味深く読めたが、『選択』『マクベス夫人に扮したエレン・テリー』による世紀末大女優の物語が特に印象に残った。
・『アンコレ橋のナポレオン』『死刑囚の監房』作品が認められ、底辺から身を起こして成功することは称賛されるべきだが、富と地位を得ると人間はかくも変わるのか。
・「相手の個人的事情も正義も悪も立場もいっさい考慮しない」女神フォルトゥナ(p30)、女性を次々に毒牙にかける天空の支配者ゼウス(p128)、半獣人マルシュアスの生皮を平然とそぎ落とす太陽神アポロン(p180)、「人間ごときを歯牙にも」かけない女神アテナ(p185)。神々の力=大自然と運命に翻弄される人間と動物の物語は哀しくも力強い。
個人的な話で恐縮ですが、2014年4月にコートールド美術館でマネ『フォリー=ベルジェールのバー』を鑑賞し、数日後にパリのFOLIES BERGEREを訪問しました。その時は漠然としていましたが、華やかなミュージックホールの裏側、うつろな目でこちらをみる彼女の思い、時代の残酷さと可能性など、本書の「若さと綺麗な顔だけを武器に」によって作品世界が拡がった気がします。
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2024年3月19日に日本でレビュー済み
中野京子の「運命の絵 もう逃れられない」を手に取ってみる。
登場する画家は、Eduard Manet(1832~1883)、Henri Marie Raymond de Toulouse₋Lautrec₋Monfa(1964~1901)、Edward Burne=Jones(1833~1897)、Winslow Homer(1836~1910)、Peter Paul Rubens(1577~1640)、Peter Bruegel(c.1530~1569)、Eugene Henri Paul Gauguin(1848~1903)、Emile Jean₋Horace Vernet(1789~1863)、Ary Scheffer(1795~1858)、Diego Velazquez(1599~1660)、George Frederic Watts(1817~1904)、John Singer Sergent(1856~1925)、Munkacsy Mihaly(1844~1900)、Gustave Moreau(1826~1898)、Antoine Jean₋Gros(1771~1835)、William Turner(1775~1851)、Hiieronymus Bosch(c.1450~1516)、David Teniers de Jonge(1610~1690)、Pietro Perugino(1450~1523)、Tiziano Vecellio(c.1490~1576)、Gustav Klimt(1862~1918)、Rosa Bonheur(1822~1899)である。
有名な画家もいるし、初めて聞く名前もある。その中で興味深いのが、最後に取りあげられているRosa Bonheurである。
彼女は、南フランスのボルドーで貧しい美術教師の長子として生まれた。2人の弟も、画家になっている。独立心が強く、家父長的な父に反発していたのだが、彼女に最初に絵の手ほどきをしてくれたのはもちろん、その父であった。その父はRosaが27歳の時にコレラで亡くなり、以降は幼少時から好きだった動物の絵を描くようになる。リアルな動物画を描くためには解剖学的な知識も必要だとして、屠殺場にも通ったという。男性の権利が女性よりも強力であった当時のフランスで禁止されていた女性の男装にも挑戦し、公的な許可も得ている。職場の男性から当初揶揄いを受けたものの、デッサンのみごとさから段々と周囲に認められ、30代半ばで本書に挙げられている「馬市」を描き上げ、その後に城付きの邸宅を購入して、動物園まで造ってしまう。そして73歳で女性初のレジオンドヌール勲章のオフィシェも受賞している。
中野らしい歴史に対する鋭い見方も知ることができて、やはり楽しい講義を受けた気分になれるのである。
登場する画家は、Eduard Manet(1832~1883)、Henri Marie Raymond de Toulouse₋Lautrec₋Monfa(1964~1901)、Edward Burne=Jones(1833~1897)、Winslow Homer(1836~1910)、Peter Paul Rubens(1577~1640)、Peter Bruegel(c.1530~1569)、Eugene Henri Paul Gauguin(1848~1903)、Emile Jean₋Horace Vernet(1789~1863)、Ary Scheffer(1795~1858)、Diego Velazquez(1599~1660)、George Frederic Watts(1817~1904)、John Singer Sergent(1856~1925)、Munkacsy Mihaly(1844~1900)、Gustave Moreau(1826~1898)、Antoine Jean₋Gros(1771~1835)、William Turner(1775~1851)、Hiieronymus Bosch(c.1450~1516)、David Teniers de Jonge(1610~1690)、Pietro Perugino(1450~1523)、Tiziano Vecellio(c.1490~1576)、Gustav Klimt(1862~1918)、Rosa Bonheur(1822~1899)である。
有名な画家もいるし、初めて聞く名前もある。その中で興味深いのが、最後に取りあげられているRosa Bonheurである。
彼女は、南フランスのボルドーで貧しい美術教師の長子として生まれた。2人の弟も、画家になっている。独立心が強く、家父長的な父に反発していたのだが、彼女に最初に絵の手ほどきをしてくれたのはもちろん、その父であった。その父はRosaが27歳の時にコレラで亡くなり、以降は幼少時から好きだった動物の絵を描くようになる。リアルな動物画を描くためには解剖学的な知識も必要だとして、屠殺場にも通ったという。男性の権利が女性よりも強力であった当時のフランスで禁止されていた女性の男装にも挑戦し、公的な許可も得ている。職場の男性から当初揶揄いを受けたものの、デッサンのみごとさから段々と周囲に認められ、30代半ばで本書に挙げられている「馬市」を描き上げ、その後に城付きの邸宅を購入して、動物園まで造ってしまう。そして73歳で女性初のレジオンドヌール勲章のオフィシェも受賞している。
中野らしい歴史に対する鋭い見方も知ることができて、やはり楽しい講義を受けた気分になれるのである。
2019年2月3日に日本でレビュー済み
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運命の絵の第2弾。
いつもながら、絵の周辺にまつわる情報満載でおもしろい。
マネの「フォリー・ベルジェールのバー」では、歓楽施設で働く少女達の境遇を紹介。絵の少女の焦点の合っていない目に象徴される虚無感の意味が説かれる。
また、紹介される絵そのものの解説ではないが、関連して博識が披露される部分も面白い。ホーマー「メキシコ湾流」「ハリケーンの後で」では、2005年のハリケーン・カトリーナがメキシコ湾の海底を攪拌し、何万年分の泥を巻き上げ、思いがけず海底の糸杉の森を出現させた事を紹介し、絵の海面が泡立ち騒ぐ様を「海底をかき回している」と紹介する。
ブリューゲルの作品に描かれている当時のオランダ人は「マジパンで出来た人形みたいにずんぐりむっくりの体型だった」と紹介。しかし、今のオランダ人は男女ともヨーロッパ一の長身。これは「酪農国オランダが家畜の餌に成長ホルモンを混ぜその肉を食べたから」との説があると「蛇足」も。
中野さんの絵画紹介は、普段素人には知られていない画家も紹介されて興味深い。オラース・ヴェネルの「レノーレのバラード」は、18世紀後半、戦死した若者が残した恋人レノーレを連れ去りに来る、その物語も初めて知るし、画家も知らなかった。しかし、絵の印象は強い。レノーレが恋人の正体を知る場面を切り取ったもの。前シリーズ「怖い絵」を思い起こさせる。
ベラスケス「ブレダ開城」では、17世紀、オランダとの戦に貢献したスピノラ将軍の出自とその後が語られる。
取り上げられるのは17作品と関連する絵画。一枚の絵画からトリビア的に教養が広がるのが中野先生の本である。
いつもながら、絵の周辺にまつわる情報満載でおもしろい。
マネの「フォリー・ベルジェールのバー」では、歓楽施設で働く少女達の境遇を紹介。絵の少女の焦点の合っていない目に象徴される虚無感の意味が説かれる。
また、紹介される絵そのものの解説ではないが、関連して博識が披露される部分も面白い。ホーマー「メキシコ湾流」「ハリケーンの後で」では、2005年のハリケーン・カトリーナがメキシコ湾の海底を攪拌し、何万年分の泥を巻き上げ、思いがけず海底の糸杉の森を出現させた事を紹介し、絵の海面が泡立ち騒ぐ様を「海底をかき回している」と紹介する。
ブリューゲルの作品に描かれている当時のオランダ人は「マジパンで出来た人形みたいにずんぐりむっくりの体型だった」と紹介。しかし、今のオランダ人は男女ともヨーロッパ一の長身。これは「酪農国オランダが家畜の餌に成長ホルモンを混ぜその肉を食べたから」との説があると「蛇足」も。
中野さんの絵画紹介は、普段素人には知られていない画家も紹介されて興味深い。オラース・ヴェネルの「レノーレのバラード」は、18世紀後半、戦死した若者が残した恋人レノーレを連れ去りに来る、その物語も初めて知るし、画家も知らなかった。しかし、絵の印象は強い。レノーレが恋人の正体を知る場面を切り取ったもの。前シリーズ「怖い絵」を思い起こさせる。
ベラスケス「ブレダ開城」では、17世紀、オランダとの戦に貢献したスピノラ将軍の出自とその後が語られる。
取り上げられるのは17作品と関連する絵画。一枚の絵画からトリビア的に教養が広がるのが中野先生の本である。
2019年6月1日に日本でレビュー済み
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本品は従来の作品同様に絵の裏にある時代背景や実情の説明を加えた上で一体この絵はどういう思いが込められているかを説明・推察したものです。
中野先生の言う通り、絵にもよりますが特に昔の作品は知識をもって鑑賞しないと感性のみでは理解できない側面が多々あります。
そういったことを素人にも分かりやすく説明のある先生の本はどれも素晴らしいと考えます。
中野先生の言う通り、絵にもよりますが特に昔の作品は知識をもって鑑賞しないと感性のみでは理解できない側面が多々あります。
そういったことを素人にも分かりやすく説明のある先生の本はどれも素晴らしいと考えます。
2019年5月9日に日本でレビュー済み
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中野京子先生流でいつもおもしろくためになります。絵の背景が解かれば2倍も3倍もその絵に興味が沸き、何回も見直します。
2019年5月24日に日本でレビュー済み
怖い絵、から継続して中野京子さんが「オール讀物」で連載中の、運命の絵。
もう逃げられない、と副題にあるダブルミーニングに思わずニヤリとしてしまう。
怖い絵ファンの読者の諸君は、もう逃げられない、読むしかない(笑)のである。
怖い絵シリーズで中野さんが切り開いたアート鑑賞の世界は、単に”こわーーい絵”を
見世物のように並べる、というものではない。絵に描かれている様々なモノの意味、
作者が籠めた真意、を読み解き、絵のシーンが一体どんな物語のどんな場面なのか?
この絵の場面の前にはこの事態に至った原因が何であり、この場面の後では物語は
どのように展開し結末を迎えるのか?といったことを調べ、解説し、想像する。
まるで小説を読んだり映画を観るように絵画を読む、これこそが中野さんが教えてくれた
「怖い絵」方式なのだ。
そして、メンター:導師ナカノは我々の興味を”怖い絵”で引いた後、これで絵の読み方の
チュートリアルは充分と見るや、次のステージ、”運命の絵”シリーズに我らを進めた。
というわけだ。
画中の登場人物の運命が変わる瞬間を描いた絵、それだけでは無く、その絵のモデルが、
画家が、さらには歴史が、その絵により大きく影響を受け、動かされるのが【運命の絵】。
その絵が持つ物語、その絵が語る運命のそれぞれのピースを読み解こう、という新たな
もう一段上のステージがこれなのだ。
本シリーズは運命の絵、シリーズ第2段目となる。
通算で言えば「名画の謎」シリーズを横に除ければ怖い絵新旧4作と運命の絵前作で
通算6作目となる。
だが、本作でも取り上げられる絵はしっかりと前シリーズに劣らず怖いモノをたくさん
取り揃えてくれている。
「レノーレのバラード」「レノーレ死者は駆けるのが速い」といったドイツの幽霊詩に
フランスの二人の画家が描いた騎士の怨霊が恋人を墓場に連れ去る絵、などは今まで
自分が知らずにいた絵であるが、絵筆の迫力といい、ドラマ性のある雰囲気といい
インパクト充分!である。
一体、中野さんにはどれだけ引き出しがあるのだろう・・?と感心してしまう。
これならシリーズにとってもネタ切れの心配などまだまだしなくて良い、という安心したのと
同時に、ほかの怖い絵関連の追従企画本(どこかで見たような怖い絵が繰り返し載っている)
の底の浅さと視点の低さで力量の差を明白に晒しているようだ、と苦笑してしまった。
さらに、この本で言えば、講師役の中野京子先生の語る技量、表現のスキルが、また一段と
アップしているように感じたのは自分だけではあるまい、数多の怖い絵たちとの歴戦を重ね
彼等を相手取る我々鑑賞者も感性のレベルを高めるべく精進を怠ってはいけない、という教え、
なのであろう。
先に触れた亡霊騎士「レノーレ」の中野さんの解説の妙を最後にご紹介して、この中野学校の
勧誘の辞に代えさせていただこう。
「若い美女の前に突如現れる異界の住人、彼女はこれまでに覚えたことのない恐怖に慄きつつ
抗いがたく魅かれてゆく。その恐怖の一線を越えた先のエクスタシーを予感する。」
「死んでもいい、そう思った瞬間が運命の時だ。異界の男を受け入れた彼女たちは皆、死ぬか
破滅する。やめておけばよかったのに、と嘲笑し同情する者は多いだろう。だが、長く続く
情愛と一瞬の燃焼のどちらがいいか、それは人それぞれに違いない。吸血鬼に首筋を噛まれることで
一生分の恍惚が得られるのなら、それはそれで良いではないか。」
もう逃げられない、と副題にあるダブルミーニングに思わずニヤリとしてしまう。
怖い絵ファンの読者の諸君は、もう逃げられない、読むしかない(笑)のである。
怖い絵シリーズで中野さんが切り開いたアート鑑賞の世界は、単に”こわーーい絵”を
見世物のように並べる、というものではない。絵に描かれている様々なモノの意味、
作者が籠めた真意、を読み解き、絵のシーンが一体どんな物語のどんな場面なのか?
この絵の場面の前にはこの事態に至った原因が何であり、この場面の後では物語は
どのように展開し結末を迎えるのか?といったことを調べ、解説し、想像する。
まるで小説を読んだり映画を観るように絵画を読む、これこそが中野さんが教えてくれた
「怖い絵」方式なのだ。
そして、メンター:導師ナカノは我々の興味を”怖い絵”で引いた後、これで絵の読み方の
チュートリアルは充分と見るや、次のステージ、”運命の絵”シリーズに我らを進めた。
というわけだ。
画中の登場人物の運命が変わる瞬間を描いた絵、それだけでは無く、その絵のモデルが、
画家が、さらには歴史が、その絵により大きく影響を受け、動かされるのが【運命の絵】。
その絵が持つ物語、その絵が語る運命のそれぞれのピースを読み解こう、という新たな
もう一段上のステージがこれなのだ。
本シリーズは運命の絵、シリーズ第2段目となる。
通算で言えば「名画の謎」シリーズを横に除ければ怖い絵新旧4作と運命の絵前作で
通算6作目となる。
だが、本作でも取り上げられる絵はしっかりと前シリーズに劣らず怖いモノをたくさん
取り揃えてくれている。
「レノーレのバラード」「レノーレ死者は駆けるのが速い」といったドイツの幽霊詩に
フランスの二人の画家が描いた騎士の怨霊が恋人を墓場に連れ去る絵、などは今まで
自分が知らずにいた絵であるが、絵筆の迫力といい、ドラマ性のある雰囲気といい
インパクト充分!である。
一体、中野さんにはどれだけ引き出しがあるのだろう・・?と感心してしまう。
これならシリーズにとってもネタ切れの心配などまだまだしなくて良い、という安心したのと
同時に、ほかの怖い絵関連の追従企画本(どこかで見たような怖い絵が繰り返し載っている)
の底の浅さと視点の低さで力量の差を明白に晒しているようだ、と苦笑してしまった。
さらに、この本で言えば、講師役の中野京子先生の語る技量、表現のスキルが、また一段と
アップしているように感じたのは自分だけではあるまい、数多の怖い絵たちとの歴戦を重ね
彼等を相手取る我々鑑賞者も感性のレベルを高めるべく精進を怠ってはいけない、という教え、
なのであろう。
先に触れた亡霊騎士「レノーレ」の中野さんの解説の妙を最後にご紹介して、この中野学校の
勧誘の辞に代えさせていただこう。
「若い美女の前に突如現れる異界の住人、彼女はこれまでに覚えたことのない恐怖に慄きつつ
抗いがたく魅かれてゆく。その恐怖の一線を越えた先のエクスタシーを予感する。」
「死んでもいい、そう思った瞬間が運命の時だ。異界の男を受け入れた彼女たちは皆、死ぬか
破滅する。やめておけばよかったのに、と嘲笑し同情する者は多いだろう。だが、長く続く
情愛と一瞬の燃焼のどちらがいいか、それは人それぞれに違いない。吸血鬼に首筋を噛まれることで
一生分の恍惚が得られるのなら、それはそれで良いではないか。」