久しぶりに本作品を再読したんですけど、こんなに素敵な作品だったかなってくらい、堪能させられました。
話の導入部でトミー・ベレズフォードがびっくりする、あの辺からもう、作者の手玉に取られてたって、そんな感じ。アガサ女史に、いいように誘導されてましたわ。いや、わくわくしながらページをめくっていったんですけどね。
でもって、終盤の敵(ドイツのナチス)・味方(英国の諜報機関)の攻防に、はらはら、手に汗握らされたし‥‥。タペンス・ベレズフォードてば、すっげぇ魅力的だったわ。あらためて脱帽。彼女の行動力と機略、冒険魂に、ぐっときちゃいました。
そう言えば、霜月蒼(しもつき あおい)さんもこの作品のこと、高く買ってましたっけ。『アガサ・クリスティー完全攻略 決定版』(早川書房・クリスティー文庫)のなかで。《見事。第一級のエンタテインメントだ。こいつは傑作です。》ってね。
おしまいに、本書の中から、とびっきり素敵な台詞を紹介しましょう。本文庫本の92ページにそれ、トミー・ベレズフォードの次の台詞があって、ぐっと心を掴まれました。
《じつはわたしとしても、説得しようという気はあまりないんです──タペンスとわたしは──その、なんというか、そういう間柄ではありませんから。どんなことであれ、いっしょにとびこんでゆくんです──どこまでもいっしょに!》
なんて素敵なコンビなんだろう、トミーとタペンスてば!
1941年発表の作品。同時期のクリスティーの作品では、ほかに、『五匹の子豚』(1942年)、『春にして君を離れ』(1944年)、『ホロー荘の殺人』(1946年)が忘れ難いです。未読の方は、ぜひ!
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NかMか (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 文庫 – 2004/4/16
アガサ・クリスティー
(著),
深町 眞理子
(翻訳)
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- 本の長さ421ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2004/4/16
- ISBN-104151300481
- ISBN-13978-4151300486
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2004/4/16)
- 発売日 : 2004/4/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 421ページ
- ISBN-10 : 4151300481
- ISBN-13 : 978-4151300486
- Amazon 売れ筋ランキング: - 99,324位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1890年、保養地として有名なイギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。中産階級の家庭に育つが、のちに一家の経済状況は悪化してしまい、やがてお金のかからない読書に熱中するようになる。特にコナン・ドイルのシャーロック・ホームズものを読んでミステリに夢中になる。
1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚し、1920年には長篇『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。1926年には謎の失踪を遂げる。様々な憶測が飛び交うが、10日後に発見された。1928年にアーチボルドと離婚し、1930年に考古学者のマックス・マローワンに出会い、嵐のようなロマンスののち結婚した。
1976年に亡くなるまで、長篇、短篇、戯曲など、その作品群は100以上にのぼる。現在も全世界の読者に愛読されており、その功績をたたえて大英帝国勲章が授与されている。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年8月14日に日本でレビュー済み
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2013年5月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
トミーとタペンスシリーズは書店で探してもなかなかみつからない。これをすぐに入手できて大変楽しめた。
2020年7月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最高に面白くて夢中で読みました。
タペンスのシリーズは親指のうずきから入ったので、若い頃のタペンスの活躍が読めて良かったです。
タペンスのシリーズは親指のうずきから入ったので、若い頃のタペンスの活躍が読めて良かったです。
2010年4月16日に日本でレビュー済み
本書は第二次大戦の最中の1941年に発表された、トミーとタペンスものの前作長編『秘密機関』から約20年後の作品である。
作品の中でも20年が経過しており、今では二人年老い、仕事にあぶれ、平凡で退屈な日々に明け暮れるそんなある日、情報局からトミーに新たな指令が与えられた。それはドイツ軍のスパイ、「NかM」を突き止めるというもの。ただしタペンスには内密にだが...。
手に汗握る冒険とロマンスに彩られた『秘密機関』や同系統の『チムニーズ館の秘密』、『茶色の服の男』などはポジティブで明るい作風だったが、本書はこれら初期作品に比べ起伏が少なく、私には退屈だった。
『秘密機関』など初期の一連の冒険ものは夢物語のようで現実性には欠けてはいたが、その分、作者は純粋に作品を楽しんで書いていたように思われ、その楽しさが読む側にも伝わってきたものだが、推理作家の第一人者となってしまった作者自身、もうそんな作品は書けなくなってしまったのだろう。
なお、本書には「があがあ、がちょうのお出ましだ」というマザーグースが用いられ、これがひとつのキー・ワードになっている。
作品の中でも20年が経過しており、今では二人年老い、仕事にあぶれ、平凡で退屈な日々に明け暮れるそんなある日、情報局からトミーに新たな指令が与えられた。それはドイツ軍のスパイ、「NかM」を突き止めるというもの。ただしタペンスには内密にだが...。
手に汗握る冒険とロマンスに彩られた『秘密機関』や同系統の『チムニーズ館の秘密』、『茶色の服の男』などはポジティブで明るい作風だったが、本書はこれら初期作品に比べ起伏が少なく、私には退屈だった。
『秘密機関』など初期の一連の冒険ものは夢物語のようで現実性には欠けてはいたが、その分、作者は純粋に作品を楽しんで書いていたように思われ、その楽しさが読む側にも伝わってきたものだが、推理作家の第一人者となってしまった作者自身、もうそんな作品は書けなくなってしまったのだろう。
なお、本書には「があがあ、がちょうのお出ましだ」というマザーグースが用いられ、これがひとつのキー・ワードになっている。
2010年3月6日に日本でレビュー済み
トミー&タペンスものですが、ドイツとの戦争状態での話しです。
ドイツ側からみても、納得できる部分もありますが、
一面的なところがあるのはやむをえないかもしれません。
皮肉もところどころあるので、イギリス人の考え方に陶酔しているのではないことが伺えます。
違和感のある事項がでてきたので、話の途中で、関係者が分かりました。
首謀者はわかりませんでした。
解説に、映像作品についての紹介がありました。
ポアロとマープルもの以外は診たことが無いので、かならずしもピンと来ていません。
ながらくポアロものの映像作品を見てきました。
最近、英語の勉強のためにマープル物のDVDを揃えた際に、
ポアロものと同じ著者だと知り、著者に興味を覚えたため、
全作品を読もうと読み出したところです。
アガサクリスティの題材は、映像作品にしやすいのは、
「プロット」がしっかりしているからなのでしょうか。
ドイツ側からみても、納得できる部分もありますが、
一面的なところがあるのはやむをえないかもしれません。
皮肉もところどころあるので、イギリス人の考え方に陶酔しているのではないことが伺えます。
違和感のある事項がでてきたので、話の途中で、関係者が分かりました。
首謀者はわかりませんでした。
解説に、映像作品についての紹介がありました。
ポアロとマープルもの以外は診たことが無いので、かならずしもピンと来ていません。
ながらくポアロものの映像作品を見てきました。
最近、英語の勉強のためにマープル物のDVDを揃えた際に、
ポアロものと同じ著者だと知り、著者に興味を覚えたため、
全作品を読もうと読み出したところです。
アガサクリスティの題材は、映像作品にしやすいのは、
「プロット」がしっかりしているからなのでしょうか。
2007年6月12日に日本でレビュー済み
冒険ミステリーとありますが、半分くらいまで、はっきりいって地味です。
が、しかし。そこがアガサ=クリスティーのすごいところで、
小さな小さな世界である、村の中、しかも「無憂荘」という宿の中での数名の人物たちの描き方が非常にスリリングなのです。
地味なんだけど、人間描写、人間観察のおもしろさに引き込まれて、
ぐいぐい頁をめくってしまいます。
ミス・マープルものが好きな人なら非常に楽しめると思います。
一体、誰がスパイなのか、そもそもこんな暢気そうな人たちの中にドイツのスパイなどがいるのか。地味だけど手に汗握ります。
後半からは、物語がいよいよ動き、冒険サスペンスものになっていきますが、
個人的には前半の人間観察を描いた部分が好きです。
前半部分の微に入りさいにうがった描写の中に、まさに真実が紛れています。
が、しかし。そこがアガサ=クリスティーのすごいところで、
小さな小さな世界である、村の中、しかも「無憂荘」という宿の中での数名の人物たちの描き方が非常にスリリングなのです。
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ぐいぐい頁をめくってしまいます。
ミス・マープルものが好きな人なら非常に楽しめると思います。
一体、誰がスパイなのか、そもそもこんな暢気そうな人たちの中にドイツのスパイなどがいるのか。地味だけど手に汗握ります。
後半からは、物語がいよいよ動き、冒険サスペンスものになっていきますが、
個人的には前半の人間観察を描いた部分が好きです。
前半部分の微に入りさいにうがった描写の中に、まさに真実が紛れています。
2023年10月4日に日本でレビュー済み
どういうわけかアガサ作品で初めて?あんまり楽しめなかった。
義務感でとりあえず読了した。
義務感でとりあえず読了した。
2004年10月4日に日本でレビュー済み
知る人ぞ知るトミーとタペンスの冒険ミステリシリーズの第三弾である。アガサのミステリの中で、「読んで楽しい」ものといえば、このトミーとタペンスシリーズにとどめをさす。ミステリを、「読んで楽しい」などと書くと、いぶかる向きもあるかもしれないが、本当なのである。元々、アガサのウイットとユーモアの効いた、センスの良い文章力には、ミステリ作家として抜群のものがあるのだが、深刻な殺人事件が題材になると、ウイットとユーモアもほどほどに、ということになる。しかし、冒険ミステリなら、そんな手加減はいらないわけである。特に、トミーとタペンスとの間で交わされるウイットとユーモアの効いた、テンポのよい絶妙な掛け合いは、それだけで一つの小説に書き上げてほしいくらいである。
さて、物語だが、時は第二次世界大戦開戦直後。英国情報部の依頼を受けたトミーは、コードネームをNとMという二人の謎のドイツのスパイを探るため、二人が住んでいると思われる海辺保養地の下宿「無憂荘」に、住人として潜り込むことになった。しかし、下宿の女主人に住人を紹介されたトミーは、いきなり、あり得ない出来事に出くわし、息を呑むことになる。誘拐あり、殺人あり、恋愛あり、もちろん、トミーとタペンスの大ピンチありの、冒険活劇の始まりである。
ちなみに、全ての謎が解き明かされた後に、アガサが用意したエピソードが、何とも粋で、心暖まるものであり、素晴らしい。エンターテイメントのエンディングは、こうでなくっちゃネ!
さて、物語だが、時は第二次世界大戦開戦直後。英国情報部の依頼を受けたトミーは、コードネームをNとMという二人の謎のドイツのスパイを探るため、二人が住んでいると思われる海辺保養地の下宿「無憂荘」に、住人として潜り込むことになった。しかし、下宿の女主人に住人を紹介されたトミーは、いきなり、あり得ない出来事に出くわし、息を呑むことになる。誘拐あり、殺人あり、恋愛あり、もちろん、トミーとタペンスの大ピンチありの、冒険活劇の始まりである。
ちなみに、全ての謎が解き明かされた後に、アガサが用意したエピソードが、何とも粋で、心暖まるものであり、素晴らしい。エンターテイメントのエンディングは、こうでなくっちゃネ!