「知の遺産仮説」という新しい観点から人類の拡散の歴史を振り返る新進気鋭の生物人類学者の意欲作です。
「グレートジャーニー!」
およそ20万年前までに、東アフリカ・大地溝帯に成立していた現生人類は6-5万年前に出アフリカを果たし、
最後は700年前にニュージーランドに達して、南極大陸と1部の無人島の除いて地球上のありとあらゆる陸地に拡散しました。
他の生物種では決して見られない、信じられない位の分布域の廣さであります。
筆者はその人類拡散の過程を最新の科学的知見を元に克明に描き出します。
「もし、あなたが5万年前の地球に生まれていたら・・・・・・」との帯も実に意味深です。
その当時の(5万年前の)社会であなたは天才的な存在になれたのか。
「知の遺産仮説」がもし正しければ、必ずしもそうはならず、恐らくあなたは楽しくも平凡な人生を送る事になっただろうと筆者は予想する。
つまり、我々の5万年前の祖先は現代人と基本的に同様の知的潜在能力を持っていたとの仮説でございます。
奥深くかつ柔軟な知的能力。
それが現生人類の最も重要な特徴であり、だからこそ世界各地で地域文化が多様化した主張する。
「農耕は歴史としてはごく新しく、およそ12000年前に始まったに過ぎない。人類史全体の中で言えば、0.2%にしかならないものである。」(276p)
ここのフレーズは特に素晴らしい。
人類はその歴史の99.8%の期間、狩猟採取生活だった。これは争い様の無い歴史的事実です。
ヒトの遺伝子はその時代(旧石器時代)に最適化されているのは当たり前と言う事になります。
「我々日本人は農耕民族であり、お米を沢山食べるのが合っている。」との識者の御主張がむなしく聞こえますな。
「我々は余りにも速く食物(肉食から穀物食へ)を代え過ぎたのかも知れませんね。」とは宮本輝さんの御言葉です。
人類の拡散、ヒト本来の食とは、農耕とは何か、などに興味の有る方にお勧め出来る良作です。
科学的読み物としても大いに楽しめます。

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人類がたどってきた道 “文化の多様化"の起源を探る (NHKブックス) 単行本(ソフトカバー) – 2005/4/21
海部 陽介
(著)
- ISBN-104140910283
- ISBN-13978-4140910283
- 出版社NHK出版
- 発売日2005/4/21
- 言語日本語
- 本の長さ332ページ
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登録情報
- 出版社 : NHK出版 (2005/4/21)
- 発売日 : 2005/4/21
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 332ページ
- ISBN-10 : 4140910283
- ISBN-13 : 978-4140910283
- Amazon 売れ筋ランキング: - 288,669位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 87位サル・人類学
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2010年9月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年5月26日に日本でレビュー済み
極寒で未知の大陸シベリアからアメリカ大陸に過酷な状況で渡ったホモサピエンスがいたかもしれないんだ。
そこまでに装備や食べ物や薬になる材料なんか一からその土地で試行錯誤して作っていったのとか改めて考えると、私達の祖先って潜在能力が半端なかったんだな。
ホモサピエンス凄い。。
読んでみて、ちょっとこの時代の事は知らない事が多かったので前半調べながらでも読むのが難しかったのですが、中盤の壁画の部分から面白くなりました。
白熊の絵の写真の形とか4万年前の人がこんなに上手く描けていたの!?とビックリしました。
他の壁画も気になって調べてみたら心を掴まれました笑
現地に行って本物が見たい。
個人的にホモサピエンスもその時期の美術ももっと知りたいなと思わせてくれた本でした。
そこまでに装備や食べ物や薬になる材料なんか一からその土地で試行錯誤して作っていったのとか改めて考えると、私達の祖先って潜在能力が半端なかったんだな。
ホモサピエンス凄い。。
読んでみて、ちょっとこの時代の事は知らない事が多かったので前半調べながらでも読むのが難しかったのですが、中盤の壁画の部分から面白くなりました。
白熊の絵の写真の形とか4万年前の人がこんなに上手く描けていたの!?とビックリしました。
他の壁画も気になって調べてみたら心を掴まれました笑
現地に行って本物が見たい。
個人的にホモサピエンスもその時期の美術ももっと知りたいなと思わせてくれた本でした。
2008年1月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
人類の歴史に関する本は最近たくさん出ているようです。この本は専門家が系統だってかつ分かりやすく書いているのが特徴です。著者の言う「知の遺産仮説」という遠大な展望をもとに、人類の歴史が繰り広げられます。アフリカを出て最後の南太平洋までたどりつくと、現生人類のたどった遙かな道筋が目の前に広がるようです。
周囲の自然が、それを初めて見た人類たちがどう見たのか、と周りを見る目も違ってきます。
広汎な知識を、情熱的に説くということは、希にしかみられない出来事です。著者の広い知識、実地の調査経験、そして人類の多様性への畏敬の念がにじみ出た好著だと思います。人類考古学のバランスがとれて、読み物として優れた書籍で、今後読み継がれるでしょう。他のジャーナリストたちの書いた入門書とはひと味違います。著者の勤務する博物館の展示企画の副産物として書かれた書物とのことで、国立科学博物館の展示も是非見てみたいですね。
周囲の自然が、それを初めて見た人類たちがどう見たのか、と周りを見る目も違ってきます。
広汎な知識を、情熱的に説くということは、希にしかみられない出来事です。著者の広い知識、実地の調査経験、そして人類の多様性への畏敬の念がにじみ出た好著だと思います。人類考古学のバランスがとれて、読み物として優れた書籍で、今後読み継がれるでしょう。他のジャーナリストたちの書いた入門書とはひと味違います。著者の勤務する博物館の展示企画の副産物として書かれた書物とのことで、国立科学博物館の展示も是非見てみたいですね。
2012年2月2日に日本でレビュー済み
生命の歴史40億年を1年のカレンダーにたとえると、チンパンジーとの共通祖先から枝分かれして、人類がアフリカで誕生した700万年前は、12月31日午前8時30分ごろになる。猿人(最古の人類化石のサヘラントロプス・チャデンシスなど)→原人(ホモ・ハビリス、ホモ・エレクトス)→旧人(ホモ・ハイデルベルゲンシス)→新人(現生人類のホモ・サピエンス)と辿ってきて、日本列島の人類史にも1章が割かれている。なお、旧人のホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)はホモ・サピエンスの祖先ではなかったことが、1997年に明らかにされている。
『人類がたどってきた道』(海部陽介著、日本放送出版協会・NHKブックス)は、20万年前にアフリカで誕生したホモ・サピエンスの、5万年前に始まった世界拡散という興味深いドラマが、最新の研究成果に基づいて鮮やかに描き出されている。
『人類がたどってきた道』(海部陽介著、日本放送出版協会・NHKブックス)は、20万年前にアフリカで誕生したホモ・サピエンスの、5万年前に始まった世界拡散という興味深いドラマが、最新の研究成果に基づいて鮮やかに描き出されている。