人間がなぜ"群れ"になり社会を作るように進化したのか、その理由が狼たちの群れから学んだからである。という話が書かれてあるのをどうしても読みたくて買いました。でも得られた利益はそれだけではなかったですね。古代には世界中に動物や獣人の神々が存在したり、動物たちの神としての人(ポトニア・テロン)がレリーフにされているのは何故なのかとか、ローマ建国神話においてロームルス王とその双子レムスは何故、狼に育てられた野生児だったのか?そのことを考えているうちに、実際、人間は動物に-奇妙な表現ですが"支配"されていたのではないか、その原始の記憶があるのではないか、私はふと思うのです。よく、猫"が"飼い主だと言いますね。創世記には人間は動物を管理する(これは身勝手に扱って良いという意味ではない)ようにとあります。ある時点から動物は支配者ではなくなり動物の上に更なる支配者が誕生した。そのことにも辻褄が合うのです。事実上、本書を締め括る403ページの文章にこうあります。
"人間もかつては動物だった。そして人間になったときに、なにかを捨てた"
泣いてしまいました。私自身がASDで、動物を子供時代から大人になった現在も飼育して、かつても今も自力で飼育し続けている状態なので人間より、私にとって動物は人間に近かった。かといって動物の何かが分かるわけではありません、教わったことは獣医さんの話だけ。本書からもそう多くを理解するには時間がかかるはずですし、今後も新しく動物について発見していくでしょう。でも動物の恩恵はまさに、恩恵そのものだったと思います。そうでなければ私は"人"として生きていくにもままならなかったと思います。これでとても泣いたのは、やはり本書が自閉症の人々と動物の見る世界は同じであるという説に基づいているからです。現代でやっとASDやADHDの子供や大人と"共存"する時世ですが重い自閉症の人たちは、どうだろうかと。本書にも少し登場する言葉無い青年イルデフォンソや隔離児ジーニーと同じように想像を絶する世界で生きてた、生き、生きている子供たちや青年たちはどうだろうかと。はっきり言えば、医師からも看護師からも人間とは一ミリも思ってもらえてないんです。実験用の動物なんです。"人間はなにかを捨てた"...それは遺伝子なのか?能力なのか?才能なのか?価値観なのか?色々あるけれども、究極的には無辜でしょう。イルカのような高い知能の動物ほど、脳の伝達ミスが発生し猟奇的になりやすかったり恐怖心が欠落しやすかったりするということは、教わっていましたが、人間はイルカよりも遥かに脳の伝達ミスがあるということに気がつきました。バラス・スキナー博士について批判的に書かれていますが、その学説はともかくとして当時18歳の高校生だったのグランディンさんの脚を無闇に触るのはいけないことです。小児性愛的な虐待者となる人は脳内で恋愛と育児と暴力性などの意思が複雑に伝達ミスをおこしているというコラムを読んだことがあります。頭が良い大人ほど狡猾で子供や自閉症の人、そして動物たちが従順なのも分かりました。実際、本書におけるもう一つの重要なテーマである家畜または愛玩動物を可能な限り残酷に扱わないためには、動物の目線で見ることである、を重ね合わせて考えますと、健常な大人は子供や自閉症の人が虐待されないように注意してても見過ごします。それはそのような子供や自閉症の目線で見ていないからですけど、動物と同じく、言語ではなく五感で考え驚くほど"従順"であるからして、自己申告がまるで不可能であるからなのですね。その点からも健常者よりPTSDになりやすく動物のトラウマと似ているというのも説明がつきます。(五感では恐怖を伝えられないので、いたずら書きで虐待されているかそうではないかが判明したケースも多い)話を虐待者のことに戻しますと、多くの虐待者は物事を言語で考えなければ気が済まない人が多い傾向にあります。つまり、より思考回路が複雑でマルチタスクを短時間でこなせるし抽象的な概念を具体的に説明する能力まで備わっていますが、また規則違反をどうするればできるかを知っています(グランディンさんを規則違反しない人だとあとがきにありますが、おそらく彼女も規則違反の仕方がわからないんです。健常者は"ジョークがジョークだと分かるのと同じように"規則には抜け道があることを理解しますが、それがなぜかASDだと全然理解できないので社会的なつまずきが多い。つまり自分が規則をつくっても、当然のように破られるということを学習できない。)
淘汰圧についても考えたので触れておきますが。実際、人間も動物も少しの変化で進化します。森を見ないで木を見てみましょう。一匹の品種改良された実験用のラットでさえ、ラットのポピュレーションを人為的に変化させています。奇形的純血種はコリーやダルメシアンのような犬だけではく、スコティッシュフォールドやイングリッシュロップなど猫やうさぎもそうで、インスタ映えや外出規制でもっと今は飼育数が多いのです。ダルメシアンの白皮症(白斑)に感じている苦痛による異常行動や攻撃性ついて考えると、人間は"人間だけ"の利益のため怪物を作ってしまったのかと。"人間もかつては動物だった。そして人間になったときに、なにかを捨てた"...子供が大人になると全く違う存在になる。無辜を失って利益を得る、仕事、妻夫、子供。人類のポピュレーションはさらに仕事、妻夫、子供のために壮絶な惨憺たる行為を神々の如く繰り広げる。失って得る、その代償はあまりにも大きすぎる。
自閉症の人間-動物間でその世界観を完全に共有することは不可能な部分もあり、情報がとても多岐にわたる本ですが、動物を飼育している当事者の私としては必読必須な本でした。
"動物と友達になればそのいくらかでも取りもどせる"

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動物感覚 アニマル・マインドを読み解く 単行本 – 2006/5/23
- 本の長さ443ページ
- 言語日本語
- 出版社NHK出版
- 発売日2006/5/23
- ISBN-104140811153
- ISBN-13978-4140811153
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登録情報
- 出版社 : NHK出版 (2006/5/23)
- 発売日 : 2006/5/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 443ページ
- ISBN-10 : 4140811153
- ISBN-13 : 978-4140811153
- Amazon 売れ筋ランキング: - 298,163位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,012位動物学
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2021年5月17日に日本でレビュー済み
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2011年12月13日に日本でレビュー済み
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翻訳者が動物の専門家ではないらしく、文章は読みづらかったが、犬だけでなく様様な家畜の感覚は頷けるものが多かった。
ストレスが軽減されると、食肉用の肉の味も良くなる解説は推察できた。私は本書を犬の訓練に役立てる目的で購入した。
納得できる内容であり、訓練に有用と思えた。
ストレスが軽減されると、食肉用の肉の味も良くなる解説は推察できた。私は本書を犬の訓練に役立てる目的で購入した。
納得できる内容であり、訓練に有用と思えた。
2011年8月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ページをめくる毎に、次々と先入観が崩れ、新しい景色が網膜に映るような気分になりました。
動物が遊んでいる世界にこっそりと忍び込めたような快感です。
著者は、自閉症であったため、健常者には見えない動物の行動の意味が読み取れるようになったようです。
動物学者として、諸説に通じておられて、個人的な経験と知識を使って、今まで近づけなかった動物の領域を私達が見ることができるようになったことを感謝したいと思いました。
現在は家畜動物のアニマル・ウエルネスフェアに従事しておられるようです(文面から推測して)。
厚い本ですが、どの章もかなり刺激的です。
人間はかなり動物のことが判っていない、と率直に感じます。
何故、自閉症の人が動物の行動が理解しやすいかと言えば、言葉を話すのが苦手だということでしょう。
「人は、自分の見たいものだけを見ている」という事例が何度となく登場します。
その為、牛が何に怯えているのか、どうして前に進まなくなるのか、見えなくなっているのです。
動物と人間は機能が違っているだけで、実は殆ど同じなのではないかと思えてきました。
犬が水洗トイレを使わないから人間より愚かであると言えるでしょうか。
目の前にいる動物たちが宇宙人なのかもしれません。
動物が遊んでいる世界にこっそりと忍び込めたような快感です。
著者は、自閉症であったため、健常者には見えない動物の行動の意味が読み取れるようになったようです。
動物学者として、諸説に通じておられて、個人的な経験と知識を使って、今まで近づけなかった動物の領域を私達が見ることができるようになったことを感謝したいと思いました。
現在は家畜動物のアニマル・ウエルネスフェアに従事しておられるようです(文面から推測して)。
厚い本ですが、どの章もかなり刺激的です。
人間はかなり動物のことが判っていない、と率直に感じます。
何故、自閉症の人が動物の行動が理解しやすいかと言えば、言葉を話すのが苦手だということでしょう。
「人は、自分の見たいものだけを見ている」という事例が何度となく登場します。
その為、牛が何に怯えているのか、どうして前に進まなくなるのか、見えなくなっているのです。
動物と人間は機能が違っているだけで、実は殆ど同じなのではないかと思えてきました。
犬が水洗トイレを使わないから人間より愚かであると言えるでしょうか。
目の前にいる動物たちが宇宙人なのかもしれません。
2014年10月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自分がずっと人間じゃないと思っていた
動物とは意思疎通ができるのに、対人間になると上手くいかない
人間の言葉が理解出来てないのじゃないかとも思っていた
でも、そうじゃなかった、と思えた
動物とは意思疎通ができるのに、対人間になると上手くいかない
人間の言葉が理解出来てないのじゃないかとも思っていた
でも、そうじゃなかった、と思えた
2006年8月24日に日本でレビュー済み
犬のしつけ本などで、「動物には快と不快の感覚しかない」と書かれているのをよく目にする。そしてそのたびに何かが違うとずっと思っていた。この本を読んで「やっぱり!」と思い、かつ嬉しかった。動物たちが私たちが考えているよりもずっと感情豊かであることがわかったからだ。
著者は自閉症患者である。しかし普通の人間には理解できないレベルで物事を見たり感じたりすることができる。ヒトと動物の違いは脳の前頭前野の大きさだというが、彼女は病ゆえに動物がどのように物事を感じ取っているかを知ることができるようになった。普段一緒に暮らしていても、なかなかうかがい知ることができない動物たちの感覚。私たちが想像するより以上に、彼らの繊細さがわかってとてもためになった。
著者は自閉症患者である。しかし普通の人間には理解できないレベルで物事を見たり感じたりすることができる。ヒトと動物の違いは脳の前頭前野の大きさだというが、彼女は病ゆえに動物がどのように物事を感じ取っているかを知ることができるようになった。普段一緒に暮らしていても、なかなかうかがい知ることができない動物たちの感覚。私たちが想像するより以上に、彼らの繊細さがわかってとてもためになった。
2014年10月7日に日本でレビュー済み
自分自身、あるいは身近な人が、自閉症者(アスペルガーも含む)である方にとっては、
障害への理解が、格段に進むでしょう(私は、娘がアスペルガーです)。
タイトルに引きずられて動物の生態や感覚を詳しく論じた本だと思って読むと確かに評価が低くなるかもしれない。
しかし、それはかなり部分的な読み方で、本書の醍醐味は、動物生態学や脳科学の知見をもとに、
アスペルガー障害である自分自身を深く考察したところにある。
読者は、内と外から自閉症の世界を見ることになる。
「私はひょんなことから答えというか、答えの一部らしきものを、偶然、発見した。自分自身が問題を抱えているせいで、
自分の専門分野を追求してきたのと同じくらい綿密に、人間の脳に関する神経科学の研究をしてきた。そうせざるを得
なかったのだ。つねに、動物の生活だけでなく、自分自身の生活を管理する方法を模索している。両方の分野を同時に追求
するうちに、動物科学が見過ごしてきた、人間の知性と動物の知性の関連が見えてきた。」(P17)
主観的な体験と科学的な知識が滑らかに展開されるが、説明はあくまでも平易であり、一般読者を置き去りにすることはない。
動物感覚というある種の超能力的な感覚も、行き過ぎた主観や神秘主義に陥ることのない説明だった。
参考にした研究や論文も明示しているし、日本語訳されている有名なものもあるので、更に深めていくこともできる。
人間が前頭葉を獲得したことで、何を得、何を失ったかという考察は、
内と外から眺められるグランディンだからこそなしえたことだと思う。
自閉症は、人間と他の哺乳類との橋渡し的な現象として、
正負両面を併せ持つ、魅力的な存在であることが間違いないと確信できる記述だった。
その他にも、三つの脳説、脳内オピオイドシステムとの関係、恐怖の学習について、言語のバリア機能は、
人間そのものを、いや自分自身を読み解く上で、強力なツールになるはずだ。
オオカミと人間の協働関係が、双方の進化にとって大きな役割を果たしたかもしれないという仮説は、
ちょっと突拍子もない気もするが、それはそれで面白く読めた。
否応なく読者に自己覚知を迫る書でもあり、最後まで知的啓発が緩むことのない書である。
そして、読み終えた時、自分と動物の関係が間違いなく縮まっていることに気がつくはずだ。
障害への理解が、格段に進むでしょう(私は、娘がアスペルガーです)。
タイトルに引きずられて動物の生態や感覚を詳しく論じた本だと思って読むと確かに評価が低くなるかもしれない。
しかし、それはかなり部分的な読み方で、本書の醍醐味は、動物生態学や脳科学の知見をもとに、
アスペルガー障害である自分自身を深く考察したところにある。
読者は、内と外から自閉症の世界を見ることになる。
「私はひょんなことから答えというか、答えの一部らしきものを、偶然、発見した。自分自身が問題を抱えているせいで、
自分の専門分野を追求してきたのと同じくらい綿密に、人間の脳に関する神経科学の研究をしてきた。そうせざるを得
なかったのだ。つねに、動物の生活だけでなく、自分自身の生活を管理する方法を模索している。両方の分野を同時に追求
するうちに、動物科学が見過ごしてきた、人間の知性と動物の知性の関連が見えてきた。」(P17)
主観的な体験と科学的な知識が滑らかに展開されるが、説明はあくまでも平易であり、一般読者を置き去りにすることはない。
動物感覚というある種の超能力的な感覚も、行き過ぎた主観や神秘主義に陥ることのない説明だった。
参考にした研究や論文も明示しているし、日本語訳されている有名なものもあるので、更に深めていくこともできる。
人間が前頭葉を獲得したことで、何を得、何を失ったかという考察は、
内と外から眺められるグランディンだからこそなしえたことだと思う。
自閉症は、人間と他の哺乳類との橋渡し的な現象として、
正負両面を併せ持つ、魅力的な存在であることが間違いないと確信できる記述だった。
その他にも、三つの脳説、脳内オピオイドシステムとの関係、恐怖の学習について、言語のバリア機能は、
人間そのものを、いや自分自身を読み解く上で、強力なツールになるはずだ。
オオカミと人間の協働関係が、双方の進化にとって大きな役割を果たしたかもしれないという仮説は、
ちょっと突拍子もない気もするが、それはそれで面白く読めた。
否応なく読者に自己覚知を迫る書でもあり、最後まで知的啓発が緩むことのない書である。
そして、読み終えた時、自分と動物の関係が間違いなく縮まっていることに気がつくはずだ。
2006年9月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日経の書評「自閉症の作者がなぜどのように動物の心が”わかる”のかを、豊富な具体例をあげ魅力的な語り口で説明されている」なに?動物の心がわかる?!うむむ、興味深い。しかし、自閉症関係者以外のわたしが読んでもおもしろいのか?という疑問も、、、読み進んでいく内にその心配はなくなりました!彼女はすばらしい動物科学の研究者であり、脳の働きの解説者であります。彼女の経験からの具体例は本当に分かり易く興味深い。四つんばいになり豚の目線で見る、モノクロ写真で陰影を感じる、猫の気持ちになり飼い主の帰りを待ってみる、、私にはできない、ゆえに大変興味深い。ある難読症の人はスイッチの入っていないラジオの音が聞こえる!しかし、作者はその能力は誰の脳にも”すでにある”という。それを使えないだけだと!私の脳にもそんな可能性があると思えるだけで嬉しい気がしちゃいます。エリザベス・M・トーマス「犬たちの隠された生活」や、オリバー・サックス「妻と帽子をまちがえた男」「火星の人類学者」を興味深く読まれた方にはぜったいにお薦めしたい本です。ノンフィクションの読み物としても読み応えあり、さすがニューヨークタイムズで12週間ベストセラーだけのことはありますね。
2006年8月14日に日本でレビュー済み
動物や人間の知能、自閉症などに興味を持つ人にお勧めの本です。私自身知能というものに非常に興味がありさまざまな本を読んできましたが、この本は多くの疑問に答えてくれました。自閉症で動物科学者である著者が、自閉症患者の思考方法が動物のそれに似ていると感じ、そういった観点から動物の思考、知能というものを紐解いていきます。言語を持たない動物がどのように考え、どのように感じているのか。そして、知能とはいったい何なのか。この分野に関連のある人は是非一読することをお勧めします。