素晴らしい一冊でした。
現代を生きる多くの日本人に読まれるべき作品です。
少なくとも、政治家を自称する方には必ず読んでいただきたいです。
特に、核保有国となったとはいえ、経済力、軍事力、科学力のいずれもが今とは比べものならないほど小さかった中国に対する脅威とジレンマを明確に描き出す洞察力は圧巻でした。
印象に残った文章をいくつか抜粋します。
遂に待った無しの節目に差し掛かっている、日本の岐路を考える重要な提言が示されています。
p162 マキャベリはしばしば人間が完全に善人でもなく、また完全に悪人でも無いことを嘆いた。人間の行為がどちらかつかずの中途半端なものに終わってしまうところに、多くの君主が反対派によって滅ぼされることを彼は見てきたのである。しかし、彼自身が誰よりよく知っていたように、人間が完全に善人でもなく、また、完全に悪人でも無いところに政治の必要とその可能性が生まれるのである。われわれはこの政治学のいわば基本をもう一度かみしめなくてはならない。
p170 だから、日本の政治家に見られる知的な問題に対する関心の欠如は、実に由々しいことなのである。かれらは、これから起ころうとしている、知的能力を推進力とした変化に対処する用意を持ってていないように思われる。われわれは経済復興と建設に目覚ましい成功を示した。しかし、常に成功は失敗と同じくらいおそろしい。われわれはこれまでと同じ努力を繰り返しておこなうことによって、より豊かな社会を作ることができると思いがちである。しかし、実は要求される努力の質が変化しつつあるのだ。われわれはこの新しい仕事に正面から取り組まなくてはならない。一つの時代が終わり、新しい時代が始まらなくてはならないのだ。
p179 「もし日本が北京からの脅威に対抗するためにいっそう米国の保護を必要と判断すれば、日本は米国を中心とする太平洋安全保障体制の発展を必要と考えてくるかもしれない。しかし、その場合、日本はワシントンに対していっそう依存度を強めることになる。それに対する代案は中立主義を取って中共と友好関係を保ち、親善を求めて行くという行き方である。しかしその場合、日本は中共との関係において真の独立性を失ってしまうだろう。」もっとも、この場合ガロア自身もそれは遠い将来の問題であることを認めている。また私が後から述べるように核兵器がガロアのかかげた鋭い選択を迫るとは思わない。しかし、デカルトの弟子をもって任ずる純粋理論家の彼は、日本の置かれた国際政治的位置のむつかしさを、力関係だけを写し出すレントゲン写真で見せるように明確に映し出している。日本は東洋でもなければ西洋でもない。日本は「飛び離れた西」なのだ。そこに、われわれが直面している状況のむつかしさがある。一体、われわれは、このジレンマを通り抜けることができるだろうか。
p238 端的にいえば、日本は第七艦隊の盾に守られた島国となりつつある。それは、アメリカの「力」の傘が日本をおおっているうちはまだよい。しかし、その傘が有効でなくなったとき、それは問題となるのだ。日本は海洋国として独自の力を持たなくてはならないのに、それを持っていないからだ。その場合、われわれはガロアの指摘した対米従属か対中従属のいずれに追い込まれるだろう。それは十年以上先のことであるにはちがいない。しかし、それに対する対策は今から立てて置かなくてはならない。
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海洋国家日本の構想 (中公クラシックス J 35) 新書 – 2008/1/10
高坂 正尭
(著)
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- ISBN-104121601017
- ISBN-13978-4121601018
- 出版社中央公論新社
- 発売日2008/1/10
- 言語日本語
- 本の長さ259ページ
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2008/1/10)
- 発売日 : 2008/1/10
- 言語 : 日本語
- 新書 : 259ページ
- ISBN-10 : 4121601017
- ISBN-13 : 978-4121601018
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2022年8月7日に日本でレビュー済み
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2020年9月6日に日本でレビュー済み
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日本外交の在り方を問う評論集。それも半世紀以上前に、30代前半の若き国際政治学者により記された。60年安保騒動が一旦は沈静化するも、言論界は圧倒的に、非武装中立などの平和論者が優位を占めていた。そうした時に彼は、「権力政治」「現実主義」の立場から、果敢に議論を呼び掛けたのである。曰く「人間は武力の後押しなしに国際紛争を解決する手段をまだ生み出してはいないのだ(166頁)」。この「われわれが現在置かれている現実の状況の重みを認識し(158頁)」、「国家は自国の安全を保障しながら、世界の平和を維持していかなければならない(同左)」。更に曰く「外交政策をつかさどるものの任務とは、直接かつ具体的な問題をひとつひとつ解決しながら、より基本的な国家の進路と、その行手を切り開くために必要な努力を、国民に次第にさとらせることにある(133頁)」。こうした基本認識に立ち、『日本外交のあるべき方向性』を、地理的条件や歴史的分析などを踏まえ展望したのが、本書の表題にもなる『海洋国家日本の構想』である。同じく大陸に海を隔て隣接するイギリスの歩みを例に、「イギリスは海洋国であったが、日本は島国であった(232頁)」の認識から。我が国外交の可能性を引き出し、提言する。それらは粗削りながら、全く色褪せていない。
他に「中共革命への対応」を説く件では、「われわれは強大で、尊大なまでに自己主張をおこなう中国を身をもって体験していない(118頁)」が、「長い年月のあとでマルクス・レーニン主義はきわめて中国化されるものになるであろう(117頁)」し、「中国が東南アジア諸国を支配下に置こうとすることも考えられないでない(130頁)」とまで、将来を見据えている。正に「権力政治」「現実主義」に立つ、国際政治学者の真骨頂を、ここに見る。同時に「直接かつ具体的な問題に真正面からぶつかり、解決しようとする努力をしない政府(132〜3頁)」を叱咤する、若き高坂正尭氏の熱き謂いが、今も強烈に響く。
他に「中共革命への対応」を説く件では、「われわれは強大で、尊大なまでに自己主張をおこなう中国を身をもって体験していない(118頁)」が、「長い年月のあとでマルクス・レーニン主義はきわめて中国化されるものになるであろう(117頁)」し、「中国が東南アジア諸国を支配下に置こうとすることも考えられないでない(130頁)」とまで、将来を見据えている。正に「権力政治」「現実主義」に立つ、国際政治学者の真骨頂を、ここに見る。同時に「直接かつ具体的な問題に真正面からぶつかり、解決しようとする努力をしない政府(132〜3頁)」を叱咤する、若き高坂正尭氏の熱き謂いが、今も強烈に響く。
2021年10月18日に日本でレビュー済み
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特に国際政治学を専攻している訳では無い私ですが、非常に興味深く読みきることが出来ました。
2016年9月26日に日本でレビュー済み
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素晴らしいです。左翼論客があまた君臨する時代に、強い自信に基づいて正論がなされている。
でも、一匹狼、左翼の根城をこじ開けてやるの精神というよりも、正しいものは正しいと淡々と正論を主張する姿勢は、その内容に真理の厚みが加えられたものとなっている。
でも、一匹狼、左翼の根城をこじ開けてやるの精神というよりも、正しいものは正しいと淡々と正論を主張する姿勢は、その内容に真理の厚みが加えられたものとなっている。
2016年8月29日に日本でレビュー済み
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現在の為政者、老いも若きも、この作品を研究して政治に生かしてほしい。下手な解説するより直に読み、自らの頭で考えてほしい。
今欠けているのは、こういうことなのです。
今欠けているのは、こういうことなのです。
2011年6月6日に日本でレビュー済み
非常にわかりやすく、論文として読みやすい文章であった。
言葉の一つ一つが研究者のみに向けられたものでないこと
が本としての秀逸性を表している。
この本が最初に出版された当時の時代背景は今とは全く違い、
冷戦真っ只中であり、日本も経済的には今のような上位には
いない。
その点を加味して星を一つ減らした。
しかし、この本のすごいところはそれを排除しても十分今にも
通用するようなことが書かれているところである。
日本の外交の無策は今に始まったことではないし、海洋国家として
日本ができることはある。
その意味では日本の政策に昔から問題があるということになるが...
詳しくは実際に手に取って読んでみることをお勧めしたい。
言葉の一つ一つが研究者のみに向けられたものでないこと
が本としての秀逸性を表している。
この本が最初に出版された当時の時代背景は今とは全く違い、
冷戦真っ只中であり、日本も経済的には今のような上位には
いない。
その点を加味して星を一つ減らした。
しかし、この本のすごいところはそれを排除しても十分今にも
通用するようなことが書かれているところである。
日本の外交の無策は今に始まったことではないし、海洋国家として
日本ができることはある。
その意味では日本の政策に昔から問題があるということになるが...
詳しくは実際に手に取って読んでみることをお勧めしたい。
2011年10月5日に日本でレビュー済み
すみません。私は政治学を勉強したことがなくて、左右のイデオロギーによる主張ではない「まともな(?)政治学」の入門書を探してて、本書にたどり着き、読んでみた者です。なので、他の方のような深みのある意見や感想は申し上げられませんが、私のような読者もおられると思ってレビューさせていただきます。
一読しての率直な感想は、読んでみて良かったと思います。著者は、wikipedia等での評価にもあるように、左右のイデオロギーの違いを出発点とする政治主張をされる方ではなく、事象を客観的・相対的に分析しつつ、日本の国益を考えたうえでの現実的な議論をされる方との印象をうけました。なので、読んでいて納得する部分も多く、また、著者の視点や切り口は、はっとさせられる点も多く、勉強になりました。
本書の感想という本質からは少しずれるかもしれませんが、本書を読んでみて良かったと思うもうひとつの理由があります。それは、本書の「まえがき」がとても良かったことです。まえがきは、著者のお弟子さんであられる中西寛(京都大学教授)氏が、著者の研究経緯や本書が書かれた時代の状況を踏まえつつ本書の要約をされたものです。個人的には、この「まえがき」だけで満足しました。本書の著者はお亡くなりになられているため、現在、そして将来の日本のとるべき道についての意見を聞くことはできませんが、この「まえがき」を書かれた中西寛さんもしっかりした方だという印象を受けましたので、中西さんの今後の論文・著作物に期待したいと思います。
一読しての率直な感想は、読んでみて良かったと思います。著者は、wikipedia等での評価にもあるように、左右のイデオロギーの違いを出発点とする政治主張をされる方ではなく、事象を客観的・相対的に分析しつつ、日本の国益を考えたうえでの現実的な議論をされる方との印象をうけました。なので、読んでいて納得する部分も多く、また、著者の視点や切り口は、はっとさせられる点も多く、勉強になりました。
本書の感想という本質からは少しずれるかもしれませんが、本書を読んでみて良かったと思うもうひとつの理由があります。それは、本書の「まえがき」がとても良かったことです。まえがきは、著者のお弟子さんであられる中西寛(京都大学教授)氏が、著者の研究経緯や本書が書かれた時代の状況を踏まえつつ本書の要約をされたものです。個人的には、この「まえがき」だけで満足しました。本書の著者はお亡くなりになられているため、現在、そして将来の日本のとるべき道についての意見を聞くことはできませんが、この「まえがき」を書かれた中西寛さんもしっかりした方だという印象を受けましたので、中西さんの今後の論文・著作物に期待したいと思います。
2011年1月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
冒頭の「現実主義者の平和論」と掉尾を飾るタイトル作の「海洋国家日本の構想」を中心に計7編の論文を収めた秀逸な論文集。1965年初版発行だが、現在でも色褪せていないどころか、光り輝いている。日本が極東に位置しながらも、海洋によって世界と繋がり、軍事面で一定の役割を果たしながらも、主にその経済力、知的能力において国際的影響力を高めるべき、との主旋律は、北朝鮮による砲撃事件、尖閣・北方領土問題や経済・社会的閉塞感及びTPP参画問題等に直面している現在の日本の姿を予見しているかの様である。
「現実主義者の平和論」とは無論、非武装中立を標榜する所謂進歩派知識人への揶揄を込めた表現だが、著者の姿勢は彼等との対立ではなく平和を目指した対話(平和という"価値"へのスムーズな移行)である。執筆当時の思想界を考慮すると挑戦的な論題であり、それだけでも瞠目に値する。高邁な理想と現実感覚とのバランスが取れている。チェンバレンの答弁を引用した「政策」の定義も本質を突いている。著者の主張は「非核武装」宣言であり、それは非武装中立とは全く異質な物であるが、詳細は本文を参照されたい。以下の論文でも、草の根運動、陳情型政治、世論、軍縮、リベラリズム、権力政治のアプリオリ性、人道主義、抑止力としての(核)軍事力、経済力の持つ意味などに関する鋭敏な論考がなされる。「中国問題とはなにか」では中国が冷静に分析されるが、「革命国家としての中国」、「二つの中国」、「戦争責任」等が中心であり時代を反映している。中華思想と強大な軍事力の組み合わせによる脅威への見通しの楽観性は時代の限界だろう。「海洋国家日本の構想」は四部構成で全体を総括する形で上述の主旋律を奏でている。
50年経っても変らない政治・外交状況を的確に分析・問題提起した本書はまさに記念碑的作品と言える。著者の洞察力に敬意を表すると共に、この間の政治の停滞を痛感する。
「現実主義者の平和論」とは無論、非武装中立を標榜する所謂進歩派知識人への揶揄を込めた表現だが、著者の姿勢は彼等との対立ではなく平和を目指した対話(平和という"価値"へのスムーズな移行)である。執筆当時の思想界を考慮すると挑戦的な論題であり、それだけでも瞠目に値する。高邁な理想と現実感覚とのバランスが取れている。チェンバレンの答弁を引用した「政策」の定義も本質を突いている。著者の主張は「非核武装」宣言であり、それは非武装中立とは全く異質な物であるが、詳細は本文を参照されたい。以下の論文でも、草の根運動、陳情型政治、世論、軍縮、リベラリズム、権力政治のアプリオリ性、人道主義、抑止力としての(核)軍事力、経済力の持つ意味などに関する鋭敏な論考がなされる。「中国問題とはなにか」では中国が冷静に分析されるが、「革命国家としての中国」、「二つの中国」、「戦争責任」等が中心であり時代を反映している。中華思想と強大な軍事力の組み合わせによる脅威への見通しの楽観性は時代の限界だろう。「海洋国家日本の構想」は四部構成で全体を総括する形で上述の主旋律を奏でている。
50年経っても変らない政治・外交状況を的確に分析・問題提起した本書はまさに記念碑的作品と言える。著者の洞察力に敬意を表すると共に、この間の政治の停滞を痛感する。