明治の初めは大久保利通、大久保が暗殺されると伊藤博文という二人の卓越した
政治家に恵まれ、明治天皇は殊に伊藤に高い信頼を置き、格別に「元勲優遇の詔勅」
を与えたことから、元老として天皇を補佐する習わしになります。
その元老のリーダーとして、伊藤は憲法を制定し国会を開設し、いずれは政党政治に
移行していく構想を持っていたようですが、しばらくは立憲君主としての天皇に
助言する形で組閣の大命を下す形が定まり、当然、尾崎咢堂や一部の新聞のように
原則論でこの元老の存在を批判する論調もあるものの、現実の政党政治の方は
なかなかうまく機能しないまま、次第に元老制度の正当性が確立していきます。
伊藤が暗殺されて元老のリーダーになった山県有朋は、政治家としては数段見劣り
するもので、政党政治を嫌い、元老制度の維持に躍起になりますが、皮肉なことに
本格的政党政治である原内閣は、宮中某重大事件でミソをつけて失脚同然になった
山県を救うことで、陸軍に睨みが利く山県を後ろ盾に陸軍の予算拡大を抑えるなど、
見事な政治運営を見せます。
その後、西園寺公望が元老に加えられ、昭和になると西園寺一人が元老として
首相候補を推薦することになるものの、病気がちで興津の坐漁荘に籠ってなかなか
参内しないためにいろいろと混乱を来します。
昭和天皇の周囲には、牧野伸顕内大臣や鈴木貫太郎侍従などの好い人物もいて、
天皇の下問に元老に代わって答えることが増えるものの、こちらは経験に乏しく、
何よりも正当性を欠くため、右翼や陸軍からはしばしば君側の奸と見做される
こともあり、実際に二人ながら二・二六では襲われています。
後に、首相経験者の中から「重臣」も選ばれ、内大臣を中心に首相を推薦する
体勢に移っていくものの、、元老に追加される人物はないまま、陸軍の暴走を
止める最後の盾は天皇の決断しかなく、それすらも無視されるようになって、
日本は破滅を迎えます。
思えば、西園寺までの元老はいずれも維新を戦った経験を持ち、その後の学校出の
秀才は、どこか気概に欠ける面があり、原が生きていれば、いずれは元老の一員に
加えられて日本の政治をリード出来ていたはずなので、原の暗殺は残念なところです。
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元老―近代日本の真の指導者たち (中公新書 2379) 新書 – 2016/6/21
伊藤 之雄
(著)
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天皇の特別な補佐として、首相選出をはじめ重要国務を取り仕切った元老。
当初政治の黒幕として批判されたが、昭和の軍部台頭下では未成熟な立憲国家を補う存在として期待が高まる。
半世紀にわたり権力の中枢にいた元老を通して描く近代日本の軌跡。
明治憲法成立後の1890年代以降、天皇の特別な補佐として、首相選出をはじめ、内閣の存廃、戦争、条約改正など重要国務を取り仕切った元老。
近代日本は、伊藤博文、山県有朋、西園寺公望ら元老8人の指導下にあった。
非公式な組織のため、当初政治の黒幕として批判されたが、昭和初期の軍部台頭下では未成熟な立憲国家を補う存在として期待が高まる。
本書は、半世紀にわたり権力の中枢にいた元老を通して描く近代日本の軌跡である。
当初政治の黒幕として批判されたが、昭和の軍部台頭下では未成熟な立憲国家を補う存在として期待が高まる。
半世紀にわたり権力の中枢にいた元老を通して描く近代日本の軌跡。
明治憲法成立後の1890年代以降、天皇の特別な補佐として、首相選出をはじめ、内閣の存廃、戦争、条約改正など重要国務を取り仕切った元老。
近代日本は、伊藤博文、山県有朋、西園寺公望ら元老8人の指導下にあった。
非公式な組織のため、当初政治の黒幕として批判されたが、昭和初期の軍部台頭下では未成熟な立憲国家を補う存在として期待が高まる。
本書は、半世紀にわたり権力の中枢にいた元老を通して描く近代日本の軌跡である。
- 本の長さ319ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2016/6/21
- 寸法11 x 1.5 x 17.4 cm
- ISBN-10412102379X
- ISBN-13978-4121023797
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2016/6/21)
- 発売日 : 2016/6/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 319ページ
- ISBN-10 : 412102379X
- ISBN-13 : 978-4121023797
- 寸法 : 11 x 1.5 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 247,286位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年6月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2024年2月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
元来政治についてはほぼ白紙
近代日本史についても同様
政治家の在り方みたいなテーマを垣間見
後学のため購読
「元老」
日本の近代化に向けた
共通の目標とモラルを持つ貴重な存在
巨大な権力は私益や蓄財には惑わず
開発途上国につきものの腐敗に陥らず
明治国家の成功へ向けられた
政治の実践のための大切な要素
国民の支持
公共性と権力の正当性
威信 有力 重要な助言者
未開の日本を大きな間違いから守り
方向づけた先人の功績から学ぶ事は多いです
近代日本史についても同様
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日本の近代化に向けた
共通の目標とモラルを持つ貴重な存在
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開発途上国につきものの腐敗に陥らず
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公共性と権力の正当性
威信 有力 重要な助言者
未開の日本を大きな間違いから守り
方向づけた先人の功績から学ぶ事は多いです
2019年10月22日に日本でレビュー済み
星5つでもあり星1つでもあり、というわけで間を取って星3つとしました。
星5つなのは、明治維新から太平洋戦争終戦までの政治史の舞台裏の動きが見事に描き出されていること。これほどの長期間に渡る政治史の舞台裏を詳しく描いた新書本など他にない。コストパフォーマンス最高です。
明治期は伊藤が明治天皇の信任により主導的地位にあって山縣らと対立しながら議会政治の確立に努め、伊藤が政友会を結成して山縣閥と決定的な対立関係に入り政府内での影響力を失ったのちから大正期にかけては山縣が絶大な権勢を確立し政党勢力の拡大を牽制し続け、山縣の死後軍部のテロが政党内閣制を崩壊させてからは伊藤の後継者西園寺が実質的な影響力は持たないが歴代の首相選定を通じて何とか陸軍の暴走を抑えようと努力し続けたが死去。最後の歯止めを失い開戦となる。
首相選定の舞台裏の攻防がこんなにすさまじい神経戦だったとは。近代政治史とは伊藤・西園寺(実質は原敬だが)と山縣との、そして最後は山縣なきあとコントロールを失った軍部と一人元老となった西園寺との、激しい戦いの歴史であったのだと心底から納得できました。
星1つなのは、著者が主張する「憲法に規定のない非公式な元老集団は政党政治が未成熟な時代に議会制民主主義を支えるために必要だった」というテーゼが全く証明されていないこと。
著者は徹頭徹尾歴史家なんですよね。ひたすら歴史過程を叙述していくわけですが、その叙述から上記テーゼが当然のごとく結論されるようには残念ながら私はならなかった。こういうテーゼを論証するには理論モデルを使わないと難しいのではありませんかね。
星5つなのは、明治維新から太平洋戦争終戦までの政治史の舞台裏の動きが見事に描き出されていること。これほどの長期間に渡る政治史の舞台裏を詳しく描いた新書本など他にない。コストパフォーマンス最高です。
明治期は伊藤が明治天皇の信任により主導的地位にあって山縣らと対立しながら議会政治の確立に努め、伊藤が政友会を結成して山縣閥と決定的な対立関係に入り政府内での影響力を失ったのちから大正期にかけては山縣が絶大な権勢を確立し政党勢力の拡大を牽制し続け、山縣の死後軍部のテロが政党内閣制を崩壊させてからは伊藤の後継者西園寺が実質的な影響力は持たないが歴代の首相選定を通じて何とか陸軍の暴走を抑えようと努力し続けたが死去。最後の歯止めを失い開戦となる。
首相選定の舞台裏の攻防がこんなにすさまじい神経戦だったとは。近代政治史とは伊藤・西園寺(実質は原敬だが)と山縣との、そして最後は山縣なきあとコントロールを失った軍部と一人元老となった西園寺との、激しい戦いの歴史であったのだと心底から納得できました。
星1つなのは、著者が主張する「憲法に規定のない非公式な元老集団は政党政治が未成熟な時代に議会制民主主義を支えるために必要だった」というテーゼが全く証明されていないこと。
著者は徹頭徹尾歴史家なんですよね。ひたすら歴史過程を叙述していくわけですが、その叙述から上記テーゼが当然のごとく結論されるようには残念ながら私はならなかった。こういうテーゼを論証するには理論モデルを使わないと難しいのではありませんかね。
2019年1月18日に日本でレビュー済み
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伊藤之雄氏の一連の本はまだまだたくさんあるのだが、この本は、明治維新以来の政治史を振り返るのに、便利な本となっている。伊藤氏の本を最初に読んだのは「伊藤博文―近代日本を創った男」だ。退職後読み始めた幕末明治維新の本の一連のものの一冊だが、この伊藤博文の本はイギリスの外交官アーネスト・サトウ関連の本を読んだ後で読みたくなったものの一冊だ。伊藤とサトウの関係がもっと知りたくて読んだのがきっかけだが、伊藤之雄氏の伊藤博文の本は、従来の小説家などによる軽いエピソード本とは異なり、もっと認識を深めるものとなった。瀧井一博氏の伊藤博文の本も同時期に読み、深い考察の本であることがわかった。そこまで関心が深まってきたときに、さらに読んだのが、伊藤之雄氏の元老として明治天皇に信頼された伊藤博文の存在を知る本だったのだが、その後に続く元老たちやそのクラスの人達のことも気になりだした。山県有朋の本も読み、伊藤博文と同じ元老だが、軍寄りの山県の立場を知った。それに続く、桂太郎や西園寺といった政治家たちの本を読んでいくと、第二次大戦突入の前夜まで、たどり着いた。
個人の政治家中心に本を読んできた後で、この元老の本に出合った。この本は、私のように個別の政治家の本を読んできた人間には都合のいいまとめ編となった側面があるが、ただ、伊藤之雄氏の記述は、常に子細を極めていて、読破は大変だ。途中で何度か放置していたこともあり、かなり流れを忘れたままで、次を読んでいったところも多い。ただ、それでも、明治天皇がもっとも信頼した伊藤博文に元老として、次の総理大臣を下問するという習慣は、制度化はしなかったが、有効な役割を持ち続けた。最後の元老は西園寺一人になるのだが、昭和天皇が下問する相手となる。ただ、西園寺は老齢化しすぎて、後続する元老も任命や指名されなかったので、そのまま元老の役割を受け継ぐ人は途絶えた。
システムを重んじる人からすれば、元老は制度としては、どこにも明確に規定されていない。初期のころは、元老は、黒幕や元勲と呼ばれていたようだが、伊藤博文が明治天皇に果たした役割を元老と呼ぶようになって、実質は、ちゃんと存在した。どうみても、歴史的に重要な役割を果たしたと思えるのだ。形はしっかりしている現今の党首や元総理などではとても務まりそうもない重要な役目を果たしていたように思えるのが、面白い。これは、明治維新から第二次大戦前夜までの日本史の中で、元老達の実質部分を知ることのできる面白い本である。天皇の相談相手になれた人物の歴史でもある。
個人の政治家中心に本を読んできた後で、この元老の本に出合った。この本は、私のように個別の政治家の本を読んできた人間には都合のいいまとめ編となった側面があるが、ただ、伊藤之雄氏の記述は、常に子細を極めていて、読破は大変だ。途中で何度か放置していたこともあり、かなり流れを忘れたままで、次を読んでいったところも多い。ただ、それでも、明治天皇がもっとも信頼した伊藤博文に元老として、次の総理大臣を下問するという習慣は、制度化はしなかったが、有効な役割を持ち続けた。最後の元老は西園寺一人になるのだが、昭和天皇が下問する相手となる。ただ、西園寺は老齢化しすぎて、後続する元老も任命や指名されなかったので、そのまま元老の役割を受け継ぐ人は途絶えた。
システムを重んじる人からすれば、元老は制度としては、どこにも明確に規定されていない。初期のころは、元老は、黒幕や元勲と呼ばれていたようだが、伊藤博文が明治天皇に果たした役割を元老と呼ぶようになって、実質は、ちゃんと存在した。どうみても、歴史的に重要な役割を果たしたと思えるのだ。形はしっかりしている現今の党首や元総理などではとても務まりそうもない重要な役目を果たしていたように思えるのが、面白い。これは、明治維新から第二次大戦前夜までの日本史の中で、元老達の実質部分を知ることのできる面白い本である。天皇の相談相手になれた人物の歴史でもある。
2023年12月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
得体の知れない元老の実体がどうだったのか知りたく購入した。
元老という切り口で明治~昭和初期の歴史を眺めることが出来て、
興味深く読んだ。著者は元老を『論じる』というスタンスなので、
「前述のとおり」「前にも述べた」が頻出し、事実の流れがやや
行ったり来たりする部分は読み難かった。面白い本ではある。
元老という切り口で明治~昭和初期の歴史を眺めることが出来て、
興味深く読んだ。著者は元老を『論じる』というスタンスなので、
「前述のとおり」「前にも述べた」が頻出し、事実の流れがやや
行ったり来たりする部分は読み難かった。面白い本ではある。
2018年3月25日に日本でレビュー済み
著者・伊藤之雄氏の 元老-近代日本の真の指導者たち は、明治維新以降、近代
国家を目指す日本の外交・政治上の問題について、天皇陛下を補弼(ほひつ)して、
立憲君主制を確立する、真のリーダ「元老」の系譜が詳細に綴られている。
征韓論政変以降に、内閣の中で、薩長の藩閥の発言が強くなる中、元老は首相の
指名などを行う、憲法には規定されない非公式組織である。1875年に元老院の
設立が始まりとされる。
明治天皇と元老は、近代的内閣制度を目指し、国政の根幹と大日本帝国憲法と
皇室典範を制定することを目的として、国政の根幹を構築してゆくのだ。
時代を超えて、日本の真のリーダが国家が進むべき方向性を示す。躍動する歴史
を実感する。
1889年に伊藤博文と黒田清隆が元老に加わった。イギリスの立憲君主制の政党政治
を目指す伊藤と、藩閥体制と軍事司令部にも影響力のある黒田を加えることで、閣内
のパワーバランスと柔軟性を持たせる。困難な政局運営の調停役として機能する。
やがて、重要事項が内閣が決め天皇が裁可する。天皇の軍司令部の統帥権について
も、理想的な体制ができつつあった。
1894年日清戦争後に、1900年に伊藤博文が政友会を創設する。政党を中心と
する内閣に向けて地盤を築いて行く。欧米協調路線を基本としながら、1902年に
日英同盟を締結させ、東南アジア経済圏における政治の安定を目指す。
伊藤博文に代わって、外交に対して陸軍・海軍などを率いた官僚内閣を目指した
山県有朋が、政党内閣に距離を置き、元老での発言力を増して行く。
1904年日露戦争後の山県有朋が元老として政友会から強く牽制される中で、第1次
大戦後 1915年に内閣は対華21カ条を提示した。
山県有朋はアジア諸国との信頼回復に迫られ、宮中と陸軍の権力緩和を望んだ。
原敬首相を指名することで、身の元老としての威厳を守り、協調路線を目指すので
ある。
しかし、1921年 東京駅で原敬首相が暗殺された。軍部と内閣を掌握できる、唯一
の首相の死によって、日本の外交方針は世論とマスメディアに再び翻弄されるの
である・・・。
1916年 山県有朋の大正天皇の奏上により、正式に元老となった西園寺公望は、元老
という存在を、政党が主体となる内閣を目指しつつ、昭和天皇に仕えたのである。
しかし、1932年 5・15事件のあと、満州事変が起きた。1936年 2・26事件の後、軍部
の抑制も限界となる。高齢かつ健康上の理由で、西園寺公望は上奏することすら困難な
状況に追い込まれる。こうして、元老が事実上機能を果たさなくなる。
昭和天皇と牧野伸顕内大臣らは国際協調の価値観を共有しながら、立憲君主制を志向
するが、1933年 国際連盟を脱退し太平洋戦争への道を歩んでしまうのだ・・。
本書は緻密な記載は、膨大な刊行物と史料に裏付けられたものである。著者の取り組
む姿勢に、最大の敬意を払いたいのである。
国家を目指す日本の外交・政治上の問題について、天皇陛下を補弼(ほひつ)して、
立憲君主制を確立する、真のリーダ「元老」の系譜が詳細に綴られている。
征韓論政変以降に、内閣の中で、薩長の藩閥の発言が強くなる中、元老は首相の
指名などを行う、憲法には規定されない非公式組織である。1875年に元老院の
設立が始まりとされる。
明治天皇と元老は、近代的内閣制度を目指し、国政の根幹と大日本帝国憲法と
皇室典範を制定することを目的として、国政の根幹を構築してゆくのだ。
時代を超えて、日本の真のリーダが国家が進むべき方向性を示す。躍動する歴史
を実感する。
1889年に伊藤博文と黒田清隆が元老に加わった。イギリスの立憲君主制の政党政治
を目指す伊藤と、藩閥体制と軍事司令部にも影響力のある黒田を加えることで、閣内
のパワーバランスと柔軟性を持たせる。困難な政局運営の調停役として機能する。
やがて、重要事項が内閣が決め天皇が裁可する。天皇の軍司令部の統帥権について
も、理想的な体制ができつつあった。
1894年日清戦争後に、1900年に伊藤博文が政友会を創設する。政党を中心と
する内閣に向けて地盤を築いて行く。欧米協調路線を基本としながら、1902年に
日英同盟を締結させ、東南アジア経済圏における政治の安定を目指す。
伊藤博文に代わって、外交に対して陸軍・海軍などを率いた官僚内閣を目指した
山県有朋が、政党内閣に距離を置き、元老での発言力を増して行く。
1904年日露戦争後の山県有朋が元老として政友会から強く牽制される中で、第1次
大戦後 1915年に内閣は対華21カ条を提示した。
山県有朋はアジア諸国との信頼回復に迫られ、宮中と陸軍の権力緩和を望んだ。
原敬首相を指名することで、身の元老としての威厳を守り、協調路線を目指すので
ある。
しかし、1921年 東京駅で原敬首相が暗殺された。軍部と内閣を掌握できる、唯一
の首相の死によって、日本の外交方針は世論とマスメディアに再び翻弄されるの
である・・・。
1916年 山県有朋の大正天皇の奏上により、正式に元老となった西園寺公望は、元老
という存在を、政党が主体となる内閣を目指しつつ、昭和天皇に仕えたのである。
しかし、1932年 5・15事件のあと、満州事変が起きた。1936年 2・26事件の後、軍部
の抑制も限界となる。高齢かつ健康上の理由で、西園寺公望は上奏することすら困難な
状況に追い込まれる。こうして、元老が事実上機能を果たさなくなる。
昭和天皇と牧野伸顕内大臣らは国際協調の価値観を共有しながら、立憲君主制を志向
するが、1933年 国際連盟を脱退し太平洋戦争への道を歩んでしまうのだ・・。
本書は緻密な記載は、膨大な刊行物と史料に裏付けられたものである。著者の取り組
む姿勢に、最大の敬意を払いたいのである。
2019年10月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
君側の奸、悪役の大物という印象ばかりが強かった元老たちだが、彼らの政治家としての能力とビジョンを著者は高く評価する。民主主義が成熟する前の途上国では権力者が腐敗して国の根幹が傾くことが繰り返されてきたが、元老たちには天皇、国民、国家への忠誠と情熱があった、というのが論旨。特に終盤の西園寺の奮闘には頭が下がる。享年90。