新聞の書評欄からこの本のことを知った。空から降ってきた男とは、旅客機の車輪格納庫に潜んでイギリスへの密航を試みた男が、飛行機がロンドンに近づいて着陸のために格納庫を開いた時に落下して死亡した男のことである。そう言う記事を何かで読んだことがある。それがこの本に注目した最初のきっかけだった。イギリスでの事件なので著者は外国人と思ったところ、日本人であることがわかり、それが次の注目点だった。更に、副題として、『アフリカ「奴隷社会」の悲劇』が眼を惹いた。奴隷社会とは、1800年代の奴隷狩りのことかと思い、この落下事件と奴隷社会とに何の関わりがあるのだろう、と思ったのだった(「奴隷社会」についての記述は私の想像とは違っていたが、この話しの根幹を成す興味深い話しだった)。
内容は、空から落下して死んでしまった、モザンビーク国籍のジョゼ・マタダが、いかにしてこのような数奇な事件の当事者となったのか、を追跡調査してその背景を記述した実録である。筋書きはここでは話さないが、驚くような事実がこの事故の背景にはあった。
このような話しを日本人である著者が取り上げることになったのは、ジョセ・マタダが落下した当時(2012年9月)、著者はロンドン駐在の毎日新聞の記者だったことから、日本から遠いイギリスでの事件ではあったが、心の琴線に触れる事件だったからである。
事実は小説より奇なりと言うが、落下事件がどうして起こったのか、興味心を満足させてもらった。同時に感銘を受けたのは、高品質な実録描写を形成している著者の飽くなき探究心と緻密な取材と、格差社会の中で不幸な生い立ちを過ごした名も無い男の人生を明るみに出すという題材を取り上げた、「著者の見識」にである。著者があとがきでのべた、「誰の人生にもドラマがあります。飛行機から転落したアフリカ男性の人生を追いました。何かを感じてもらえればと思います。」は、読者の心に十分に届いたと思う。
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空から降ってきた男:アフリカ「奴隷社会」の悲劇 単行本 – 2016/5/18
小倉 孝保
(著)
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購入オプションとあわせ買い
英国がEUを離脱!
その最大の原因となった「移民問題」を
独自の視点で描いた注目のノンフィクション
彼はなぜB777から墜落し、
路上で息絶えていたのか?
ロンドン郊外の住宅地で、ひとりの黒人青年の死体が見つかった。
所持品は僅かな現金と携帯電話のみ。
SIMカードに残されたデータを頼りに事件の謎を追い、
ロンドン、ジュネーブ、ケープタウン、アンゴラ、モザンビークへ。
真相に迫るなかで見えてきたものとは!?
難民問題が生んだ衝撃の実話。
序 章 異様なほど晴れ渡った朝、突然
第1章 ルアンダ発ヒースロー行きBA76便
第2章 いったい彼は「誰」だったのか?
第3章 空飛ぶ棺
第4章 ジュネーブへ
第5章 現代のおとぎ話
第6章 ケープタウンでの運命の出会い
第7章 悲劇の始まり
第8章 嫉妬と狂気の果てに
第9章 モザンビークへ
第10章 永遠の別離
第11章 絶対に越えられない壁
第12章 ジュネーブで出会った第三の男
第13章 最後の日々
第14章 モザンビークの現実
第15章 ジョゼ・マタダの原点
第16章 墓標のない墓
終 章 帰郷
その最大の原因となった「移民問題」を
独自の視点で描いた注目のノンフィクション
彼はなぜB777から墜落し、
路上で息絶えていたのか?
ロンドン郊外の住宅地で、ひとりの黒人青年の死体が見つかった。
所持品は僅かな現金と携帯電話のみ。
SIMカードに残されたデータを頼りに事件の謎を追い、
ロンドン、ジュネーブ、ケープタウン、アンゴラ、モザンビークへ。
真相に迫るなかで見えてきたものとは!?
難民問題が生んだ衝撃の実話。
序 章 異様なほど晴れ渡った朝、突然
第1章 ルアンダ発ヒースロー行きBA76便
第2章 いったい彼は「誰」だったのか?
第3章 空飛ぶ棺
第4章 ジュネーブへ
第5章 現代のおとぎ話
第6章 ケープタウンでの運命の出会い
第7章 悲劇の始まり
第8章 嫉妬と狂気の果てに
第9章 モザンビークへ
第10章 永遠の別離
第11章 絶対に越えられない壁
第12章 ジュネーブで出会った第三の男
第13章 最後の日々
第14章 モザンビークの現実
第15章 ジョゼ・マタダの原点
第16章 墓標のない墓
終 章 帰郷
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2016/5/18
- 寸法18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- ISBN-104103500611
- ISBN-13978-4103500612
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商品の説明
出版社からのコメント
空から人が降ってくる!?
英国がEUを離脱!
何の関係もなさそうな二つの事件が
見事に結びついていく迫真のストーリーテリング
そのキーワードは「移民問題」
グローバル社会の闇を
独自の視点で暴く注目のノンフィクション
この空を飛べたら
男はなぜ絶望的な賭けに打って出たのか
超格差社会が産んだ愛と悲しみの実話
英国がEUを離脱!
何の関係もなさそうな二つの事件が
見事に結びついていく迫真のストーリーテリング
そのキーワードは「移民問題」
グローバル社会の闇を
独自の視点で暴く注目のノンフィクション
この空を飛べたら
男はなぜ絶望的な賭けに打って出たのか
超格差社会が産んだ愛と悲しみの実話
著者について
小倉孝保(おぐら・たかやす)
1964年滋賀県生まれ。関西学院大学社会学部を卒業し、88年毎日新聞社入社。
カイロ、ニューヨーク両支局長、欧州総局(ロンドン)長を経て2015年7月より外信部長。
14年に日本人として初めて英国外国特派員協会賞(特派員部門)受賞。
『柔の恩人「女子柔道の母」ラスティ・カノコギが夢見た世界』(小学館)で
第18回小学館ノンフィクション大賞、第23回ミズノスポーツライター賞最優秀賞をダブル受賞
1964年滋賀県生まれ。関西学院大学社会学部を卒業し、88年毎日新聞社入社。
カイロ、ニューヨーク両支局長、欧州総局(ロンドン)長を経て2015年7月より外信部長。
14年に日本人として初めて英国外国特派員協会賞(特派員部門)受賞。
『柔の恩人「女子柔道の母」ラスティ・カノコギが夢見た世界』(小学館)で
第18回小学館ノンフィクション大賞、第23回ミズノスポーツライター賞最優秀賞をダブル受賞
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2016/5/18)
- 発売日 : 2016/5/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 256ページ
- ISBN-10 : 4103500611
- ISBN-13 : 978-4103500612
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 882,604位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 105,925位ノンフィクション (本)
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トップレビュー
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2016年8月28日に日本でレビュー済み
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2022年1月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
旅客機から墜落死した黒人青年の謎を追跡した著者が、彼の出生地南部アフリカで見たものは、西欧の白人たちが搾り取るだけ搾り取った後に、アフリカに残した理不尽な住民同士の対立と貧困だった。
2016年8月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アフリカと欧州が直面している現実の圧倒的な厳しさが、等身大の物語として迫ってくる。
あらためて、さまざまな意味でアフリカが「遠い」ということも。
日本に暮らしていて、「アフリカ系の密入国者がジェット機から落ちてくることは少なくない」
なんて、知っている人がどれだけいるだろう。
読後、数奇な運命をたどりながらも強かに生きるジェシカに身勝手さを感じるけれど、
では自分が彼女の立場になったとき、別の選択肢があっただろうか、とも思う。
あらためて、さまざまな意味でアフリカが「遠い」ということも。
日本に暮らしていて、「アフリカ系の密入国者がジェット機から落ちてくることは少なくない」
なんて、知っている人がどれだけいるだろう。
読後、数奇な運命をたどりながらも強かに生きるジェシカに身勝手さを感じるけれど、
では自分が彼女の立場になったとき、別の選択肢があっただろうか、とも思う。
2017年8月4日に日本でレビュー済み
飛行機のある部分に乗り込み、アフリカのアンゴラからイギリスへ密入国を試みた、「空から落ちてきた」男性の人生を追った本です。
あらすじは他の方がしてくださるので感想を。
私が思うに、この本は傑作ではありません。
男性の関係者である女性のインタビューに紙面が割かれすぎている、取材の公平性がイマイチ、作者の主観(とくに女性と男性の男女関係の有無)が盛り込んであること、その場でかられた偽善をあたかも正義のように語ることなど、疑問点はいくつかあります。
その上で私が思うのは、作中の登場人物は自分の眼鏡を外せない、ということです。
富豪のアフリカ系男性は、欧州で育ってもアフリカの家族主義が抜けない。
どれだけフラットな価値観を持っていると主張しても、欧州の考えが根底にある女性はアフリカの呪術を学び理解する前に嫌悪する。
日本の暮らしを知る筆者はどこまでもアフリカのリアルから空回り、「空から落ちてきた」男性は自由の象徴という欧州像から抜け出せない。
はっきり言って、私には登場する女性=「何不自由なく育った欧州人」、以上になりえません。作中で彼女は何度も差別や認識にはフラットだと主張していますが、父親を呼び寄せたことも、自分の精神の安寧を求め使用人の1人だけに親切にしたことも、街を牛耳るのが容易い配偶者から逃げ出してやっていけると思ったことも、浅はかとしか言えません。
そういったインタビューに紙面の大半をさき、彼女の元配偶者一族や使用人に弁解の機会もないのは、なんだかなぁと思います。事情はおありでしょうが。
一方、この本はアフリカに潜む多くの問題を投げかけてくれます。
機能しない中央、拡大するばかりの貧富の格差、内戦の爪痕を残し、発展途上の国々。
そういった複数の問題を提示し、興味をもたせてくれること、登場人物の主張を鵜呑みにせず現実と照らし合わせて判断する大切さを知ることができること。
そういった点では良作と思います。
この本だけにとどまらず、アフリカの雇用背景、民族紛争史などを調べたい、と思わせてくれたので星4です。
それにしても、女性のインタビューと自己陶酔的な感想には少々辟易します。
あらすじは他の方がしてくださるので感想を。
私が思うに、この本は傑作ではありません。
男性の関係者である女性のインタビューに紙面が割かれすぎている、取材の公平性がイマイチ、作者の主観(とくに女性と男性の男女関係の有無)が盛り込んであること、その場でかられた偽善をあたかも正義のように語ることなど、疑問点はいくつかあります。
その上で私が思うのは、作中の登場人物は自分の眼鏡を外せない、ということです。
富豪のアフリカ系男性は、欧州で育ってもアフリカの家族主義が抜けない。
どれだけフラットな価値観を持っていると主張しても、欧州の考えが根底にある女性はアフリカの呪術を学び理解する前に嫌悪する。
日本の暮らしを知る筆者はどこまでもアフリカのリアルから空回り、「空から落ちてきた」男性は自由の象徴という欧州像から抜け出せない。
はっきり言って、私には登場する女性=「何不自由なく育った欧州人」、以上になりえません。作中で彼女は何度も差別や認識にはフラットだと主張していますが、父親を呼び寄せたことも、自分の精神の安寧を求め使用人の1人だけに親切にしたことも、街を牛耳るのが容易い配偶者から逃げ出してやっていけると思ったことも、浅はかとしか言えません。
そういったインタビューに紙面の大半をさき、彼女の元配偶者一族や使用人に弁解の機会もないのは、なんだかなぁと思います。事情はおありでしょうが。
一方、この本はアフリカに潜む多くの問題を投げかけてくれます。
機能しない中央、拡大するばかりの貧富の格差、内戦の爪痕を残し、発展途上の国々。
そういった複数の問題を提示し、興味をもたせてくれること、登場人物の主張を鵜呑みにせず現実と照らし合わせて判断する大切さを知ることができること。
そういった点では良作と思います。
この本だけにとどまらず、アフリカの雇用背景、民族紛争史などを調べたい、と思わせてくれたので星4です。
それにしても、女性のインタビューと自己陶酔的な感想には少々辟易します。
2018年1月7日に日本でレビュー済み
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私は女ですがマタダの気持ちを考えるとたまらなくなりました。人生の中で最も心に残る本です。
しかしジェシカは本当に真実を100パーセント話しているのかな?とも思います。私がジェシカだったら見ず知らずの外国人ジャーナリストに真実を全て話すだろうか?…いずれにしてももう真実はわからないし1人の大切な命は失われてしまった。是非、英語版も発売してほしい。1人でも多くの人にアフリカの現実やマタダが存在した事を知ってほしいと思った。
しかしジェシカは本当に真実を100パーセント話しているのかな?とも思います。私がジェシカだったら見ず知らずの外国人ジャーナリストに真実を全て話すだろうか?…いずれにしてももう真実はわからないし1人の大切な命は失われてしまった。是非、英語版も発売してほしい。1人でも多くの人にアフリカの現実やマタダが存在した事を知ってほしいと思った。
2017年8月23日に日本でレビュー済み
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ロンドン・ヒースロー空港近くで、旅客機の主脚格納部から転落・死亡したアフリカ人男性マタダは、なぜ飛行機に密航してまでヨーロッパを目指そうとしたのか。彼の死から、彼の故郷モザンビークまでを逆に辿るルポルタージュ。
期待して読み始めたのだが、だんだん残念な思いが重なっていく。
なによりルポルタージュとして弱いのは、本書の1/3を占める、マタダと、彼がごく親しい関係にあったスイス人女性ジェシカの関係についての物語が、ジェシカへのインタビューだけを情報源として叙述されていること。しかも、こここそが、なぜマタダがヨーロッパを目指したかを解き明かすキモなのにも関わらず。
加えて、そのジェシカへのインタビュー内容を、あたかも目撃したかのように描写する箇所が散見されるのも気になる。
例えば
「ジョゼ・マタダが死んだ。ジェシカは携帯電話を持ったままくずれ落ちた。目から光るものがこぼれている。……ジェシカは嗚咽しながら叫んだ……隣でジャワラが心配そうにジェシカを見守っている(p.180)」。
というように。
内容的にも、通読して感じるのは、この事件は、マタダとジェシカ、ジェシカの元夫のホセイン、さらにはジェシカの現在の夫ジャワラの4人という狭い世界でほぼ「完結」しているということである。その点、「目立たない出来事でありながら、掘り下げることによって次第に社会性が鮮明に(p.250)」なるような大型ルポを目指したという著者の言葉からすると、事件と社会のつながりが十分に描かれていないように思う。
確かに「欧州とアフリカの経済格差やアフリカの汚職体質など、欧州への難民・移民の背景の一端(pp.251-252)」が示されてはいるが、それはそれほど新奇な話ではあるまい。
期待して読み始めたのだが、だんだん残念な思いが重なっていく。
なによりルポルタージュとして弱いのは、本書の1/3を占める、マタダと、彼がごく親しい関係にあったスイス人女性ジェシカの関係についての物語が、ジェシカへのインタビューだけを情報源として叙述されていること。しかも、こここそが、なぜマタダがヨーロッパを目指したかを解き明かすキモなのにも関わらず。
加えて、そのジェシカへのインタビュー内容を、あたかも目撃したかのように描写する箇所が散見されるのも気になる。
例えば
「ジョゼ・マタダが死んだ。ジェシカは携帯電話を持ったままくずれ落ちた。目から光るものがこぼれている。……ジェシカは嗚咽しながら叫んだ……隣でジャワラが心配そうにジェシカを見守っている(p.180)」。
というように。
内容的にも、通読して感じるのは、この事件は、マタダとジェシカ、ジェシカの元夫のホセイン、さらにはジェシカの現在の夫ジャワラの4人という狭い世界でほぼ「完結」しているということである。その点、「目立たない出来事でありながら、掘り下げることによって次第に社会性が鮮明に(p.250)」なるような大型ルポを目指したという著者の言葉からすると、事件と社会のつながりが十分に描かれていないように思う。
確かに「欧州とアフリカの経済格差やアフリカの汚職体質など、欧州への難民・移民の背景の一端(pp.251-252)」が示されてはいるが、それはそれほど新奇な話ではあるまい。
2016年12月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ロンドンの空港近くの住宅街に突如、飛行機から男が落ちてきたという、衝撃的な取っ掛かりで話に引き込まれる。男の正体を探る記者の視点で書かれ、読者はあたかも薄紙を一枚一枚はがす取材に加わった感覚が味わえる。事情を知る白人女性は、スイス在住でアフリカ人の夫を持つ謎多き人物。そこを突破口に、男がなぜ、アフリカ南部から飛行機の脚部の格納庫に忍び込み、ロンドンに渡ろうとしたのか、真相に迫る。モザンビークに住む男の母親にまで取材が及ぶが、取材の終わりに母親が、記者に無心するという、何とも割り切れない現実まで赤裸々に書かれ、きれいごとで済まない欧州とアフリカのギャップを痛感させられる。昨今の移民問題を読み解く材料にもなる。
2016年9月18日に日本でレビュー済み
片方聞いて沙汰するな、とのコメントも多いのですが、私は、これはこれでありだと思います
何故なら、この本の主題は、何故、空から降ってきたのか、であるからです
脇役というか、ある意味、主演女優として扱われすぎている登場人物からのみのインタビューが、大きな部分を占めているので、一方的、中立性の欠如との指摘があるのも無理からぬ事とは思います
しかし、主人公は、あくまでも「降ってきた男」
彼は、なぜ、その人生の最後を飛行機からの墜落で終えねばならなかったのかこそが、主題だと言いたいのです
彼女のインタビューは、主題を構成する一部に過ぎません
これ以降、ネタバレありです
私は、筆者がアフリカに行ってから取材して到達した「物質的な豊かさに汚染された」との結論こそが重要と考えるため、ジャーナリストの著作ではありますが、公平性については気にしません もっとも、彼女の行動の奇異な面には、筆者同様に、表には出さないものの
主人公は、運がなかった なぜならば、彼女に会ってしまったから と思います(ただし、筆者は、匂わせてもおりませんが
力作です。しかし、読み続けるのに少々苦労しました 何故、これほどまでに、「彼女」の事情にページを費やすのかが判らないまま読み続けなければならないのが主な原因でした しかし、読み終えると、特に、アフリカ取材の結果得られた事実の背景として、彼女の不幸な結婚によるアフリカの事情は欠かせないなと、後からは思いました
星1つ書いた理由は、もう少し、読み手の側に経って貰えなかったものかと 苦痛を感じたことを読了後も覚えていたからです 今後、同じような状況に至った場合、この筆者が、ストーリーテラーとして読み手に配慮頂けることを希望します それ位、苦痛でした 後半は、あっという間でしたが
何故なら、この本の主題は、何故、空から降ってきたのか、であるからです
脇役というか、ある意味、主演女優として扱われすぎている登場人物からのみのインタビューが、大きな部分を占めているので、一方的、中立性の欠如との指摘があるのも無理からぬ事とは思います
しかし、主人公は、あくまでも「降ってきた男」
彼は、なぜ、その人生の最後を飛行機からの墜落で終えねばならなかったのかこそが、主題だと言いたいのです
彼女のインタビューは、主題を構成する一部に過ぎません
これ以降、ネタバレありです
私は、筆者がアフリカに行ってから取材して到達した「物質的な豊かさに汚染された」との結論こそが重要と考えるため、ジャーナリストの著作ではありますが、公平性については気にしません もっとも、彼女の行動の奇異な面には、筆者同様に、表には出さないものの
主人公は、運がなかった なぜならば、彼女に会ってしまったから と思います(ただし、筆者は、匂わせてもおりませんが
力作です。しかし、読み続けるのに少々苦労しました 何故、これほどまでに、「彼女」の事情にページを費やすのかが判らないまま読み続けなければならないのが主な原因でした しかし、読み終えると、特に、アフリカ取材の結果得られた事実の背景として、彼女の不幸な結婚によるアフリカの事情は欠かせないなと、後からは思いました
星1つ書いた理由は、もう少し、読み手の側に経って貰えなかったものかと 苦痛を感じたことを読了後も覚えていたからです 今後、同じような状況に至った場合、この筆者が、ストーリーテラーとして読み手に配慮頂けることを希望します それ位、苦痛でした 後半は、あっという間でしたが