ダイエー創業者・中内功の評伝である。なつかしい本である。いやあ、ハマった、ハマッた。
佐野眞一は、中内のことを「日本の戦後復興と高度成長時代、そしてバブル時代を通じて、時の神に愛され、そして最後は追放された実業家、つまりカリスマ」として描き出した。
このため、中内の人間像は「ちょいワルだがエネルギッシュで、そして最後は破滅を運命付けられた、まるでワグナーの楽劇みたいな神話的英雄」と映る。まあ、話としては面白いが。
一方の中内はと言うと、2000/1/1から1/31にかけて、日本経済新聞に自伝「私の履歴書」を連載している。
事実関係において、佐野の『カリスマ』と矛盾する所はないが、中内は佐野を意識して、「カリスマなどというマスコミがつくった虚像ではなく、」生身の自分を知ってほしい。「私は、カリスマでも、スーパーマンでもない。大阪で生まれ、神戸で育った、ごく普通の人間」だと記している。
佐野版「カリスマ中内」と、リアル中内。きっと落差はあるだろう。
これは佐野の創作方法に根差す問題だからだ。
佐野は「自分自身でも解けない『謎』を抱えている人物」、「自分でも自分がよくわかっていない過剰な人間」に引かれると書く。(佐野『ノンフィクションは死なない』119ページ)
これは佐野のセルフイメージまたは自画像なのではなかろうか?
それを(意識的にか無意識的にか)取材相手に投影しているのではなかろうか?
この佐野特有の思い入れの強さが、良い方向に転べば「見て来たような面白おかしい話」になる。悪い方に転ぶと、予断と偏見になる。
だが、「思い入れ過剰」と「予断と偏見」の間に、明確な一線を引くことは可能なのだろうか?
そもそも、このやり方で、いじくり回されたら、佐野の取材対象にされた方は、たまったもんじゃないと思う。
中内、没して17年。佐野も鬼籍に入った。
30年後、佐野の『カリスマ』が、令和生まれの読者に、どう読まれるか、とても興味がある。

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カリスマ 上巻―中内功とダイエーの「戦後」 (新潮文庫 さ 46-1) 文庫 – 2001/5/1
佐野 眞一
(著)
- 本の長さ463ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2001/5/1
- ISBN-104101316317
- ISBN-13978-4101316314
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2001/5/1)
- 発売日 : 2001/5/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 463ページ
- ISBN-10 : 4101316317
- ISBN-13 : 978-4101316314
- Amazon 売れ筋ランキング: - 297,704位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 120位小売
- - 5,381位新潮文庫
- - 13,810位投資・金融・会社経営 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1947(昭和22)年東京生れ。
出版社勤務を経てノンフィクション作家に。主著に、民俗学者・宮本常一と渋沢敬三の交流を描いた『旅する巨人』(大宅賞)、エリートOLの夜の顔と外国人労働者の生活、裁判制度を追究した『東電OL殺人事件』、大杉栄虐殺の真相に迫り、その通説を大きく覆した『甘粕正彦 乱心の曠野』『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』など多数。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年5月8日に日本でレビュー済み
取材したことは何でも書く。だから膨大な文字数。未整理。で、中身もほんとかどうか不明な話が山盛りになる。そのため、ダイエー関係者は、本書をダイエー解体後もほとんど相手にしていない。無視してるというより、不確かな話が多すぎて、「あんな本」という反応が大半でした。連載当時もダイエーから訴訟されまくってましたね。事実無根が目に余る、ということだったのでしょう。筆者のそういう姿勢が、結局、ばっくれたまま筆を折ることになった例の橋下問題になるわけですね。
2017年8月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ダイエーの成長と挫折の軌跡と、創業者の中内功の成功と終焉について書かれています。
破たんまでのダイエーの全部じゃなくても一部でも知っていて、実際のお店に行かれたことがある方なら
かなりの勢いで読み進めることができる一冊です。
破たんまでのダイエーの全部じゃなくても一部でも知っていて、実際のお店に行かれたことがある方なら
かなりの勢いで読み進めることができる一冊です。
2013年1月31日に日本でレビュー済み
小説を期待して購入したが残念ながら期待外れ。
どうも中内功本人が登場しないので人物像が分かりにくい。
確かに周到な取材、調査を基にしてはいるがかなりの部分は彼らの記憶の話しなどがベースになっており、中内本人の取材を含めても、中内本人に迫り切れていない感がある。
作品の各章ごとに関係人物、出来事の推移で構成されているため時代が頻繁に前後し同じ内容を視点を変えてみているため全体像が分かりにくい。
とにかく同一内容が頻繁に記述されておりうんざりしたくなる。
一般文学通算927作品目の感想。2013/01/31 19:15
どうも中内功本人が登場しないので人物像が分かりにくい。
確かに周到な取材、調査を基にしてはいるがかなりの部分は彼らの記憶の話しなどがベースになっており、中内本人の取材を含めても、中内本人に迫り切れていない感がある。
作品の各章ごとに関係人物、出来事の推移で構成されているため時代が頻繁に前後し同じ内容を視点を変えてみているため全体像が分かりにくい。
とにかく同一内容が頻繁に記述されておりうんざりしたくなる。
一般文学通算927作品目の感想。2013/01/31 19:15
2020年9月19日に日本でレビュー済み
「あの人は物欲の塊だ。他人のものはなんでも欲しい」「一度手にしたものは絶対に手放さない。『握力』がすごい」「側近は中内に近ければ近いほど早死にしている。ほとんどの幹部が50代で亡くなっている」「あんなに他人を信用していない人はいない」あまりに強烈すぎる人物批評に眩暈を覚えるが、これほど強烈な戦争帰りのカリスマでもなければゼロから1兆円の日本No.1の小売王国をつくりあげることは不可能なんだろう
1965年:330億(2500人)
1970年:1430億(9600人)
1975年:7600億(19000人)
1980年:1兆1340億(17300人)
5兆を目指したがそこまで飛び立つことはできなかった
リクルート、ローソン、吉野家、ハワイのアラモアナショッピングセンター、福岡ホークス、ウェンディーズなど関わってきた会社も多く、ダイエー中内が関わり、ぶん回し続けた日本経済はその後にも大きく影響を残し続ける。
兄弟間の骨肉の争いを制し、一度は他人に任せる経営を行ったが、最後は息子に継ぐことに執心しすぎて内部崩壊。どんぶり会計が90年代にM&A戦略の失敗に転嫁し、倒産へ。。。
1965年:330億(2500人)
1970年:1430億(9600人)
1975年:7600億(19000人)
1980年:1兆1340億(17300人)
5兆を目指したがそこまで飛び立つことはできなかった
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兄弟間の骨肉の争いを制し、一度は他人に任せる経営を行ったが、最後は息子に継ぐことに執心しすぎて内部崩壊。どんぶり会計が90年代にM&A戦略の失敗に転嫁し、倒産へ。。。
2005年9月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中内さんが、ついに亡くなりました。
後藤田氏も亡くなり、少しずつ時代の移ろいを感じます。
温故知新、私が愛読する佐野氏の渾身のルポを、これを機に読んでみてはいかがでしょうか。
特に流通業に従事している20~40代の人は、この本なしに流通を語ることなかれ、という程です。戦後日本経済を垣間見ることができます。そして、これからどうすれば良いのか、少なくとも今のままではマズイということを、この本は教えてくれます。
後藤田氏も亡くなり、少しずつ時代の移ろいを感じます。
温故知新、私が愛読する佐野氏の渾身のルポを、これを機に読んでみてはいかがでしょうか。
特に流通業に従事している20~40代の人は、この本なしに流通を語ることなかれ、という程です。戦後日本経済を垣間見ることができます。そして、これからどうすれば良いのか、少なくとも今のままではマズイということを、この本は教えてくれます。
2015年3月29日に日本でレビュー済み
ダイエーグループを一代で築き上げた中内功氏についてのノンフィクション。
"ダイエー前"にあった流通業変革の胎動から掘り起こし、単なるダイエー社史にとどまらぬ戦後流通史を描きます。
このスケールの大きさこそまさに、(他のあらゆる流通業がダイエーとの関わりの中で語り得るという意味において)ダイエーという存在の大きさでしょう。スーパーマーケットほど市民の生活を変えたものがどこにあったか。
狂気と紙一重の壮絶な戦争体験から生還した中内氏が ヤミ市から始めた事業をがむしゃらに拡大して巨大な富を築き、そしてバブル経済の崩壊と共に転落してゆく姿は、日本の「戦後」そのものの姿であり、その生き様にはどこか我々読者の胸をもえぐるようなところがあります。他人事と割り切れないのです。
佐野氏は入念な取材を基に、中内氏の持つさまざまな性格を描き出します。
中内氏のような人物はおそらく二度と現れないでしょう。ダイエー内部だけでなく、戦後日本を象徴する"カリスマ"と言えそうです。
"ダイエー前"にあった流通業変革の胎動から掘り起こし、単なるダイエー社史にとどまらぬ戦後流通史を描きます。
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狂気と紙一重の壮絶な戦争体験から生還した中内氏が ヤミ市から始めた事業をがむしゃらに拡大して巨大な富を築き、そしてバブル経済の崩壊と共に転落してゆく姿は、日本の「戦後」そのものの姿であり、その生き様にはどこか我々読者の胸をもえぐるようなところがあります。他人事と割り切れないのです。
佐野氏は入念な取材を基に、中内氏の持つさまざまな性格を描き出します。
中内氏のような人物はおそらく二度と現れないでしょう。ダイエー内部だけでなく、戦後日本を象徴する"カリスマ"と言えそうです。
2007年1月28日に日本でレビュー済み
関西生まれの私はダイエーやグルメシティ、トポスを利用して育ちました。
中内功氏が亡くなってから彼の偉大さに気付き、この本を手に。
※城山三郎氏のダイエー創業者中内功氏をモチーフにした「価格破壊」を先に
読まれると余計にわかりやすいと思います。
読んで感動です。ダイエーが近くにあって良かったと感謝しました。
「価格破壊」同様、おもしろ過ぎて、興奮しながらすらすら読めてしまいます。
これを読んだ後は、中内功氏のバイタリティーを吸収でき、前向きになれます。
彼が今では普通の「消費者主体」の日本を確立させたのです。
今までは「メーカーや小売主体」であって
「お客様第一主義」なんてなかったのです。
ダイエーの前身である薬局時代・・・
クレームや万引きの可能性も恐がらず「お客を信じること」を推奨した強さ。
そして最近までダイエーのスローガンは
「FOR THE CUSTOMER(お客様のために)」でした。
価格破壊に苦言を言う松下幸之助に中内氏が呼ばれた際のエピソード。
かっこ良すぎます。
松下より、ダイエーで買物し、ダイエーで売ってる食品で育った私は
中内功氏の人柄に感動します。
読んで、もう二度とこうゆう方は出てこないだろうと確信しました。
福岡の方やダイエーで買物をされる皆さん、ダイエーが近所にある方
兵庫県の皆さんダイエーに関わったことのある方、全ての方に上下巻を読んで頂き
ダイエーの凄さを「ダイエー創業者」や「ダイエー周辺を取り囲む男達」の
凄さを感じてほしいです。
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これを読んだ後は、中内功氏のバイタリティーを吸収でき、前向きになれます。
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かっこ良すぎます。
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中内功氏の人柄に感動します。
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凄さを感じてほしいです。