おぞましい作品を愛好する人びとには名の知れた小説。
生まれてすぐ犬にペニスを食い千切られたという記憶を持つ16歳の語り手フランク、家の二階の鍵かかった研究室に籠もって医師を自称する父親、そして精神病院を脱走して道中で動物たちを虐殺しながら家へ向かいつつある兄エリック、この三人家族の物語。
舞台はスコットランドの架空の地方ポートネイルで、地名から分かるように町は海と繋がる河口に面しているが、三者三様のトラウマを抱えた社会不適合の一家は孤絶した私有地「島」からほとんど離れることなく暮らしている。
自立して島を出ようとした兄は気が狂い、残された弟は海水による浸食を堰き止めるダム造りを趣味としている。
語り手が小動物や昆虫を惨殺する描写の数々にはひどく嫌悪感を覚えるし、エリックが発狂する引き金となったエピソードは文句なしにおぞましい。
にもかかわらず読後に残る印象がやけに爽やかなのは、この作品が本質的にホラーではなくジュヴナイル小説であることの証だろう。
外に対する恐怖から自らを狂気の殻に閉ざした者たちも、いつか世界と和解出来るかもしれない。本書が感じさせてくれたそんな絶望的な希望を、私もまた願っている。
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蜂工場 (集英社文庫) 文庫 – 1988/3/18
犬を焼き殺したりして病院に収容されていた兄が脱走した!その日から少年フランクの恐怖の日々が始まる。ひんぱんにかかってくる兄からの不気味な電話…。サイコ・スリラー。(解説・小川 隆)
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日1988/3/18
- ISBN-104087601412
- ISBN-13978-4087601411
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (1988/3/18)
- 発売日 : 1988/3/18
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 264ページ
- ISBN-10 : 4087601412
- ISBN-13 : 978-4087601411
- Amazon 売れ筋ランキング: - 113,385位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 601位SF・ホラー・ファンタジー (本)
- - 904位集英社文庫
- - 914位英米文学研究
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年11月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
好き嫌いあるかもしれませんがグロテスクな描写も難無く読めました。30年前の作品ですが、今現在でも十分楽しめますし、名作と言われるだけあって読者をグイグイ惹きつけられます。主人公の父親の鍵がかかっている部屋に入るシーンはもうドキドキでした!素晴らしい作品です。
2020年2月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
帯には神話世界とか呪術的世界とか書かれているけれど、今の日本人には現実のこととして普通に理解できると思う。学校に拒否された、学校に行けなくなった子供たち、学校が怖くて行けない子供たち、会社に理不尽な仕打ちをされた大人たち、社会に抵抗勢力扱いされた大人たちにはとても身近な話だと思う。
そういう人たちがこの社会でどういう思いをして生きているか、何を考えて生きているか、イギリスは日本人より早くその核心に迫る物語を生んでいた。この小説を読めば1997年以降の日本の少年犯罪がただ悪人が犯罪を犯したというような話ではないことが少し理解できるのでは、というかなぜオウム真理教がハルマゲドンを起こそうとしたのかも少し理解できるかもしれない。もちろん悪いことは悪いことだと思うけれど、今の日本人ならこの小説の主人公をただ悪だと切り捨てることは出来ないのではないか、格差社会と自己責任の名のもとに社会の外に追いやられた人の想像世界に少し共感できるのではないか。
そういう人たちがこの社会でどういう思いをして生きているか、何を考えて生きているか、イギリスは日本人より早くその核心に迫る物語を生んでいた。この小説を読めば1997年以降の日本の少年犯罪がただ悪人が犯罪を犯したというような話ではないことが少し理解できるのでは、というかなぜオウム真理教がハルマゲドンを起こそうとしたのかも少し理解できるかもしれない。もちろん悪いことは悪いことだと思うけれど、今の日本人ならこの小説の主人公をただ悪だと切り捨てることは出来ないのではないか、格差社会と自己責任の名のもとに社会の外に追いやられた人の想像世界に少し共感できるのではないか。
2018年9月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
久しぶりに読みました。少年の中二病で痛い心理描写がとてもリアルで、そのおかげで滑稽さと残酷さがうまく描かれています。
2019年10月12日に日本でレビュー済み
角川で翻訳もされた壮大な宇宙もの「ゲーム・プレイヤー」の作者のデヴュー長編だが、読んでいて何とも嫌な気分にさせられる。
マッドサイエンティスト氣味な父親と二人だけで島に住む主人公の所へ或る日、精神病院を脱走した兄から電話が入り、物語は兘まり、主人公の悶々とする日々の描写と共に過去に何が有ったかが描かれ、最後に衝撃的な秘密が明かされる。
學校へ行かずに育った主人公は16才だが社会性に欠け、幼児性を強く残している。幼児特有の空想癖と残虐性、この二つを象徴しているのが表題にも成っている蜂工場だが、これを想い着いた作者も相当病的な氣がする。
マッドサイエンティスト氣味な父親と二人だけで島に住む主人公の所へ或る日、精神病院を脱走した兄から電話が入り、物語は兘まり、主人公の悶々とする日々の描写と共に過去に何が有ったかが描かれ、最後に衝撃的な秘密が明かされる。
學校へ行かずに育った主人公は16才だが社会性に欠け、幼児性を強く残している。幼児特有の空想癖と残虐性、この二つを象徴しているのが表題にも成っている蜂工場だが、これを想い着いた作者も相当病的な氣がする。
2019年6月8日に日本でレビュー済み
全篇を彩る血と暴力の洪水の中から立ち込める悲痛な感情描写には声を失う。凡百のサイコスリラーを凌駕する奇想と周到に張り巡らされた伏線の妙はミステリとしても第一級。予想外の結末の後、それまでとは物語の様相が一変する辺りの衝撃は類を見ない読書体験だ。
冒頭に置かれた原著刊行時の毀誉褒貶が渦巻く書評やレビューの抜粋は本書が起こしたセンセーションが当時如何に凄まじかったか良く解り、非常に興味深い。
冒頭に置かれた原著刊行時の毀誉褒貶が渦巻く書評やレビューの抜粋は本書が起こしたセンセーションが当時如何に凄まじかったか良く解り、非常に興味深い。
2003年8月16日に日本でレビュー済み
ある書評に興味をそそられて読んでみた。独語癖のありそうなイカレた、よく言えばナイーヴな少年が一人称でつづるニューロティックホラー。でもあまり真っ向からエンタテインしておらず、どちらかというと純文に近い。「蜂工場」というのは主人公フランクが発明した占い遊びのようなもので、時計の上に蜂を放し、たどり着いた文字盤の数字によって自分がこれから犠牲者をどの方法でいたぶるか決めるという趣向。ところどころショッキングな描写があり、最大の落としはラストなんだけれど、ミステリーを読みなれた現代の読者の目をそこまで欺きとおせるかというと疑問。それよりはむしろ、主人公フランクの兄がおかしくなる「原因」の方が何倍もスゴかった。小さな従妹に対する過去の仕打ちも相当残虐。確実に圧倒的な筆力の持ち主だとは思うが…近ごろ自分の精神状態に自信がないという人は、とりあえず読んでみて、読後に厭味を感じたら多分正常です。本国イギリスでは新時代の旗手として一部若手読者から熱狂的な支持を受けたらしいですが。
2014年12月7日に日本でレビュー済み
男らしさを表す一連の月並みな主題に基づいた、神話を繰り広げている。つまり体液を飛ばし、動物を虐待という形で記された万物に対する男性優位の世界。
精神を病んだエリックが火をつけた羊の群れを駆って帰ってきたとき、物語はすべてを覆す終末を迎え、驚くべき事実が判明する…
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