1945年から46年にかけて27歳の時に上海に滞在していた堀田善衛が、12年後にその地を訪れた時の回想録。若き堀田氏が、1945年という終戦へ向かう年に上海で見、感じた世界の貴重な記録。
「インドで考えたこと」では驚きの連続だった世界を、それでも希望的に捉えていた堀田氏だが、1945年の上海では重く暗い現実に苦しむ。
命懸けで日本に協力してくれた中国人達を半ば見捨てる日本の上層部。異国の花嫁を辱めようとする日本兵に抗議し逆に殴られる堀田氏。そんな日本と日本人に嫌気がさしてしまうが、同文同種とはいえ、中国は全くの異国だと堀田氏は痛感する。
堀田氏の比較文化の文章を読むと山本七平氏が頭に浮かぶ。
山本氏もまた、戦中のフィリピンでの兵士として悲惨な経験から、日本文化を深く掘り下げて考えるようになった。
戦争という特異な状況下で明らかになる日本の特異性。両氏とも夏目漱石について言及しているのが興味深い。向こう三軒隣りの人が作ったのが日本なのだ。
中国の文学者は、反体制分子として処刑された者が多いが、日本では自ら命を絶って逝った文学者が多い。堀田氏はその理由を明確にしていないが、そこに日本文化の闇があるのだろうか。
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上海にて (集英社文庫) 文庫 – 2008/10/17
堀田 善衞
(著)
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共産革命直前の上海を活写した傑作紀行エッセイ
日本の敗色濃い1945年、上海へ渡った青年・堀田善衞。崩壊していく東洋の魔都で、彼は何を見て何を考えたのか? 『堀田善衛上海日記』と対をなす紀行エッセイの名作。(解説/大江健三郎)
日本の敗色濃い1945年、上海へ渡った青年・堀田善衞。崩壊していく東洋の魔都で、彼は何を見て何を考えたのか? 『堀田善衛上海日記』と対をなす紀行エッセイの名作。(解説/大江健三郎)
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2008/10/17
- ISBN-104087463648
- ISBN-13978-4087463644
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2008/10/17)
- 発売日 : 2008/10/17
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 256ページ
- ISBN-10 : 4087463648
- ISBN-13 : 978-4087463644
- Amazon 売れ筋ランキング: - 184,203位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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5 星
終戦の日前後の上海の様子
第二次世界大戦時においても上海は国際都市の様子を残していた。当時の上海での国民党、共産党、日本軍、米軍などの立場が変わって行く様子が垣間見えた。筆者は終戦の日前後に上海に暮らし、引き揚げて10年後に再び訪れている。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2022年7月31日に日本でレビュー済み
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2022年8月31日に日本でレビュー済み
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第二次世界大戦時においても上海は国際都市の様子を残していた。当時の上海での国民党、共産党、日本軍、米軍などの立場が変わって行く様子が垣間見えた。筆者は終戦の日前後に上海に暮らし、引き揚げて10年後に再び訪れている。
第二次世界大戦時においても上海は国際都市の様子を残していた。当時の上海での国民党、共産党、日本軍、米軍などの立場が変わって行く様子が垣間見えた。筆者は終戦の日前後に上海に暮らし、引き揚げて10年後に再び訪れている。
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2020年2月22日に日本でレビュー済み
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1957年11月、中野重治、山本健吉、井上靖らと上海を訪れた時の旅行記。著者の堀田善衛は1945年3月から敗戦をまたいで二年弱上海に滞在した経験があり、当時の回想と12年後の現在(すなわち今回の旅行)が交錯して語られる。1945年8月の日本の敗戦によって共通の敵を失った国民党と共産党との間では緊張が高まり翌年には内戦へと突入するのだが、堀田の上海滞在は内戦の始まった直後の46年12月まで。堀田は国民党宣伝部に留用された。このあたりの事情をのみこんでいないと本書はとてもわかりにくいものになる。読後感として印象に残ったのは、日本の敗戦前後の上海よりもむしろ共産党支配の成った上海である。どうやら堀田は共産中国に輝かしい、とまでは言わないまでも少なくとも明るい未来を見ていたようだ。「革命開放が、同時に中国の悠久な歴史への復帰という面を、広く強く持っている」、「・・歴代王朝の歴史のなかに現在の中華人民共和国をおいてみるとするならば、それは、人民王朝時代とでもいうべきものであろうか」と一見、無邪気とも思える感慨で本書は締めくくられる。読後、果たしてその後の中国は堀田の見通したようであっただろうか、という複雑な思いが残った。
2020年12月15日に日本でレビュー済み
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日中戦争の終わりを上海で迎えた著者は、帰国後、惨敗を「終戦」と繕い、占領軍を「進駐軍」と阿る現実逃避の日本人の陰湿さを見る。国共内戦後に再訪した上海の再建を文学者の視点で見事に捉える。
2022年4月17日に日本でレビュー済み
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1920〜30年代の上海の資料として購入しました
2021年5月7日に日本でレビュー済み
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堀田善衛氏の本を読む度に思うのは、知性と感性、史実と体験、事実と感情が不思議なバランスで綴られていること。初めて読んだのは「スペイン断章(上下)」で、20年以上も前。その時もその不思議な世界に浸り、何度も何度も繰り返し読んだ。未だに愛読書だったりする。
今回この本を手にしたのは、確かNHKの「映像の世紀プレミアム」を見ている最中、唐突に堀田氏の著書から引用があったから。東京大空襲の直後、昭和天皇がどこぞに視察に来て、部下が見せたいものだけを見て、去っていった・・というような場面だった。そこに堀田氏がたまたま居合わせたらしい。
そして驚いたことに、その直後、堀田氏は上海に渡ったという。
敗戦が地平線上に見え始めていたはずのその時期、日本を離れるのは危険なことだったはずだし、中国なんてもっての他。一体どういうこと・・と思い、この本を手にした。
27歳だった堀田青年の見た上海と、10数年後に初めて上海を再訪した時の印象が相互に語られる。
堀田青年は必ずしも聖人ではなかっただろうけど、それでも彼の知性を通して語られる上海と、当時や再訪時の感情の表現は私にはとても好ましく映り、「スペイン断章」同様に、堀田氏の頭の良さだけでなく人間としての人柄の良さが伝わってくる。案外このバランスで書かれたものは多くないように思う。変な言い方だが、「スペイン断章」の時のように、私は若干堀田氏に恋をしてしまったような感覚で読み終えた。次は「バルセローナにて」を読む。
今回この本を手にしたのは、確かNHKの「映像の世紀プレミアム」を見ている最中、唐突に堀田氏の著書から引用があったから。東京大空襲の直後、昭和天皇がどこぞに視察に来て、部下が見せたいものだけを見て、去っていった・・というような場面だった。そこに堀田氏がたまたま居合わせたらしい。
そして驚いたことに、その直後、堀田氏は上海に渡ったという。
敗戦が地平線上に見え始めていたはずのその時期、日本を離れるのは危険なことだったはずだし、中国なんてもっての他。一体どういうこと・・と思い、この本を手にした。
27歳だった堀田青年の見た上海と、10数年後に初めて上海を再訪した時の印象が相互に語られる。
堀田青年は必ずしも聖人ではなかっただろうけど、それでも彼の知性を通して語られる上海と、当時や再訪時の感情の表現は私にはとても好ましく映り、「スペイン断章」同様に、堀田氏の頭の良さだけでなく人間としての人柄の良さが伝わってくる。案外このバランスで書かれたものは多くないように思う。変な言い方だが、「スペイン断章」の時のように、私は若干堀田氏に恋をしてしまったような感覚で読み終えた。次は「バルセローナにて」を読む。
2021年9月14日に日本でレビュー済み
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この本が書かれたのは1959年7月、日中国交回復以前だった。しかしこの時に著者堀田善衛は「私に一つの危機の予感がある。今日の両国の関係の仕方は、遠からぬ未来において、今日ではちょっと想像出来ないようなかたちの危機をもたらすのではないか」と書いた。62年後の現在、この言葉の的確性・迫真性には驚かざるを得ない。この本で著者が書いた内容は、すべて自身が体験・見聞した出来事ばかりである。そこから、これだけの未来への透視力が生まれることを、この本は教えてくれる。今どき、堀田善衛を読む人は少ないのかも知れないが、今のこの時代、彼ほど「読み甲斐」のある作家は容易に見出し難い。
2021年5月17日に日本でレビュー済み
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当時の上海の様子が、手にとるように理解できた。
昔の上海を知るには、最初に読むと良い本だ。
昔の上海を知るには、最初に読むと良い本だ。