■この作品では人間の成長が描かれている。主人公アイコの心の強さと美しさが浮かび上がる。心なき中傷の数々にさらされながらも、あたたかい親族友人たちに支えられて新たに生き始める人間の希望に満ちた歩みが、丁寧な筆致でつづられる。主人公の素朴で一途な純粋さが読者の心をふるわせる。島本理生さんの諸作品は常に「恋愛小説」というレッテルを貼られてきたが、むしろ「変容物語」なのだと言える。
一人の女性が成長してゆく日々の心の変化。一人称の語りで、淡々と物語は進む。しかし、主人公は決して孤独ではない。家族・友人・指導教員、そして映画監督の織り成す関わりの輪の幾重にもわたる相互共振。まるで、水面(みなも)の同心円状の模様の重なり合いのような。
しかし、だいたいの読者は共振の全体像を見ていない。恋愛の部分にしか目が向かないからだろう。むしろ、今回の作品の主題は「人の変容のダイナミズムそのもの」なのだから。作者は、決して個別的な恋愛物語を書こうとしているわけではない。あらゆる人間関係の根底に潜む普遍的な真実を探ろうとする哲学的な意図が感じられるから。そして、作家自身の執筆生活における格闘の日々もまた一人の人間のかけがえのない変容譚となっている。
顔のあざを幼いころにクラスメイトから「琵琶湖」と嘲笑された主人公は、最愛の人からは「夏の夜空」として大切に理解された。相手を曇りのないまなざしで大切に眺めることの意味を問う作者の試みは「よだか」が夜空に飛翔し輝くまでの軌跡という変容の奇跡として、いつまでも私たちの心に残ってほのかなよろこびの源となる。
『よだかの片想い』を読み終えてから、デヴュー作の『シルエット』(講談社、2001年)を読み直してみて驚かされた。最初の作品である『シルエット』と最新作の『よだかの片想い』とがループしているのだから。対応して響き合う二つの作品。そして、その間に挟み込まれた数々の小説群もまた呼応する一貫性を備えている。透徹した夜空のすがすがしさ。星々のきらめき。愛おしきいのちの輝き。
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よだかの片想い (集英社文庫) 文庫 – 2015/9/18
島本 理生
(著)
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顔に大きなアザがあるため、世の中に居心地の悪さを感じている大学院生のアイコ。ルポ本の取材がきっかけで映画監督の飛坂に出会い、恋をして……。瑞々しく切ない恋と成長の物語。(解説/瀧井朝世)
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2015/9/18
- 寸法10.5 x 1.2 x 15.2 cm
- ISBN-104087453618
- ISBN-13978-4087453614
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2015/9/18)
- 発売日 : 2015/9/18
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 256ページ
- ISBN-10 : 4087453618
- ISBN-13 : 978-4087453614
- 寸法 : 10.5 x 1.2 x 15.2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 318,315位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,664位集英社文庫
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2013年10月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
顔に大きな青あざのある理系女子大学院生が新進気鋭の映画監督に恋する話。戦中生まれの身としては顔にあざのある若い女性の話はできれば避けたい。気の毒で正視に耐えないという言いわけで目を逸らす。主人公はその顔をアイデンティティとして大切に思い、完治の可能性が高くなった治療も受けないという。主人公の両親の感覚は小生に近い。自ら口に出す言葉では「見かけよりは中身」「見かけにだまされるな」というが、心の奥底では極めて見かけを重視している、その割にはそんなに見かけがいいわけでもない自分。そうした人間に対してやさしく矯正を迫っている。身障者や顔にキズのある人々から目を逸らすなと。読後感は重いが、さわやか。
2013年8月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
よかったです。すらすらと読めて、考えさせられるところもあるので、子どもにも勧めようとおもいます。
2019年8月23日に日本でレビュー済み
作者の作品を何作か読んでいます。あくまで個人的なイメージですが、作者は、控えめで、決して表にでず、しかし芯の強い、とても繊細な、心が揺れやすい、といったヒロインの特徴をいつもうまく描き出していると思います。私はいつも作者の描くヒロインのファンです。
ストーリーは、内容はもちろん違いますが、ナラタージュをコンパクトにソフトにした感じで、優しい気持ちで読み進められました。
ストーリーは、内容はもちろん違いますが、ナラタージュをコンパクトにソフトにした感じで、優しい気持ちで読み進められました。
2013年5月16日に日本でレビュー済み
蒼い太田母斑が顔面の片側を覆う24歳の理系大学院生の恋愛物語です。
「よだか」という単語だけで思わず本屋の棚から手にとりました。
勿論宮沢賢治の「よだかの星」を連想してです。
読み始めて美麗な文章が少し鼻につきましたが、読み易いです。
本の帯には 本当は全ての人間がアザを背負った当事者、すなわち「よだかの星」の「よだか」である
と標榜していますが、顔の傷や痣、瘤、変形はそんな生易しいものではないと思います。
作者はどこまで取材をして本作を書きあげたのか気になります。
作中の心理描写は実際の当事者と乖離はないのか。
ひょっとしたら痣をネタに変わった恋愛小説を書きたかっただけなのではないか。
と勘繰りました。
とはいうものの痣を経由して私は見られているという表現にはハッとします。
痣を経由してしか、市中のユニークフェースの人たちを見れない私には、非常に多くのことを考えされました。
作りものと言ってしまえばそれまでですが、中断できずに一日で読み切らせる小説です。
ただ、結末はあざとは関係なく、恋愛が最大の関心事か否かで終わります。
「よだかの星」は絶望のうちに天上へ消えますが、「よだかの片思い」は希望を持って飛び立ちます。
「よだか」という単語だけで思わず本屋の棚から手にとりました。
勿論宮沢賢治の「よだかの星」を連想してです。
読み始めて美麗な文章が少し鼻につきましたが、読み易いです。
本の帯には 本当は全ての人間がアザを背負った当事者、すなわち「よだかの星」の「よだか」である
と標榜していますが、顔の傷や痣、瘤、変形はそんな生易しいものではないと思います。
作者はどこまで取材をして本作を書きあげたのか気になります。
作中の心理描写は実際の当事者と乖離はないのか。
ひょっとしたら痣をネタに変わった恋愛小説を書きたかっただけなのではないか。
と勘繰りました。
とはいうものの痣を経由して私は見られているという表現にはハッとします。
痣を経由してしか、市中のユニークフェースの人たちを見れない私には、非常に多くのことを考えされました。
作りものと言ってしまえばそれまでですが、中断できずに一日で読み切らせる小説です。
ただ、結末はあざとは関係なく、恋愛が最大の関心事か否かで終わります。
「よだかの星」は絶望のうちに天上へ消えますが、「よだかの片思い」は希望を持って飛び立ちます。
2015年10月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
すみません、私にはちょっと合いませんでした。
ちょっと回りくどいかも…。
ちょっと回りくどいかも…。
2017年9月17日に日本でレビュー済み
時間をおいて二度、読んだ。恥ずかしながら思い浮かぶ恋の相手が、最初と二度目が違った・・・(笑)
あー、ワタシも臆病になり、へこたれながらもやっぱり恋に落ちる・・・いや、出会ってしまうんだな。島本作品にしてはすんなりと読めるので
読み終わった後はほっこりできるかな。主人公に新しい恋の兆しが見えて良かったかもしれない。
ほかの島本作品なら、自分が傷つけられた相手・自分で自分を傷つけるきっかけになってしまった相手をずるずると想ってしまう気がする。
ほっとする結末だけど、ミュウ先輩の件がちょっとグロテスクで(ミュウ先輩ごめんなさい)☆マイナス1。
あれは読み進めるのに勇気が必要な場面で・・・。
でも、どうか、みんな幸せになりますように。これから読む皆さんも、もちろん。
あー、ワタシも臆病になり、へこたれながらもやっぱり恋に落ちる・・・いや、出会ってしまうんだな。島本作品にしてはすんなりと読めるので
読み終わった後はほっこりできるかな。主人公に新しい恋の兆しが見えて良かったかもしれない。
ほかの島本作品なら、自分が傷つけられた相手・自分で自分を傷つけるきっかけになってしまった相手をずるずると想ってしまう気がする。
ほっとする結末だけど、ミュウ先輩の件がちょっとグロテスクで(ミュウ先輩ごめんなさい)☆マイナス1。
あれは読み進めるのに勇気が必要な場面で・・・。
でも、どうか、みんな幸せになりますように。これから読む皆さんも、もちろん。
2017年2月16日に日本でレビュー済み
宮沢賢治作の「よだかの星」が好きでタイトルに惹かれて購入。初めての作家さんでした。
顔におおきな痣のある女性の恋愛と日常を描いた作品です。
綺麗で、切ないストーリーでした。
純粋に恋愛小説として読むのにはもったいない作品だと思います。(人によっては物足りないかも)
文章もシンプルで読みやすく、心地よく読了しました。
普段読書しない人でも読みやすいと思います。
顔におおきな痣のある女性の恋愛と日常を描いた作品です。
綺麗で、切ないストーリーでした。
純粋に恋愛小説として読むのにはもったいない作品だと思います。(人によっては物足りないかも)
文章もシンプルで読みやすく、心地よく読了しました。
普段読書しない人でも読みやすいと思います。