顔の傷が原因で高校退学となってしまった主人公の直哉。傷を作ったのは自分のせいだと責め続ける母親。自分の好きな物事も分からず、これから何をしたらいいのかわからない彼と星が大好きな蒼史が出会い、そこから物語が始まります。
生きている中で必ず自分にとってコンプレックスというものはあります。外見的なものかもしれませんし、内面的なものかもしれません。
それが原因となり生きること自体がうまくいかない人たちにとっては、さぞ生きにくい世界だと日々感じます。しかし、そうした自分を変えられるのは意外なところにあるきっかけなんだと今回強く学ばせて頂きました。今まで周囲にけなされ続けていたことがある一人に出会い、ポロッと言われた一言によって一人の人生が大きく変わる、なんていうのは案外物語の中だけではないように感じられます。
直哉くんは蒼史さんに今まであることないこと言われてきた傷を初対面であるのに「君は顔にオリオンがあるんだ！」と言われたことで今までの全てが救われたのではないでしょうか。自分が辛いなぁと感じている時に、同情でない、心からの言葉をかけてもらえるというのは人にとって物凄く救われる行為だと思います。
私自身は星のことについて残念ながら学校で習う程度のことしか分かりませんが、この話を読んでから何となく夜空を見上げることが多くなりました。これも相川先生並びに蒼史さんのお陰で星が「好きになった」と言っても過言ではありません。生きている中で好きなものを増やしていただくというのはとても幸せなことだとつくづく感じます。
また、物語の中で直哉くんは「大丈夫、君のことわかってるから」という大人達を嫌っていましたが、今大人と子供の狭間にある私には強く突き刺さる考え方でした。疑っているのならそもそも話をしてこないというのはとても的を得た考え方であり、大人達が如何に自分を正当化しようとしているのかが分かります。
子供と大人の距離、自分とコンプレックスの戦い、血の繋がらない家族…それでも支えてくれる周りの人達がいるというのは本当に有難いことなんだと改めて考えさせられました。これらを星座という大きな括りで纏めあげることの出来る相川先生は日頃から人を見ていて、更に様々なことを深く学んでいるからこそこのような作品を書き上げることが出来るんだろうと感銘を受けました。
全てを読み終えてから「君と星の話をしよう」というタイトルの「しよう」という部分が何故優しさを含めているのかが分かりました。
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