著者の感性、物の見方には一目置く。普通の人いや多くの人が、見ても知っても、「ふーん」か「見逃し、考えない」ことを書き留め、少々の深掘りをしていく、短編の集成集。ただし、「視点」は一貫している。
様々なその時々の事柄を取り上げ、書かれているが、器用な人ではなく、どちらかと言うと不器用な人であろうが、「見逃さない」「逃げない」で、その現実から目をそらさず、考える。そこに潜んでいるものを、明らかにしようとする。
私もテレビを見ていて、「事件や物事の現象」だけの垂れ流しが多く、どういう経過で、どういう原因で、どういう意味を持つのかを報道するものがほとんどない」ことに、少々うんざりと言うか、物足りなさを感ずることが多い。著者は書く。テレビは分業制で、いろんな専門家が「デコレーションしていく」。画面を見ないで聞くとラジオよりはるかにうるさい。視聴率アップ、見てもらわないとスポンサーがつかない。
見る人は、その原因や経過はどうでもよく、すごいこと、悲惨なことが起きている現象を「多くのデコレーション」を付けてみせる。それで終わり。何も残っていない。一つにエンタメ、その場限り。それ以上は深掘りする思考はないし欲求もない、いやなものはリモコンですぐ変え、見ないで、係わらない。逃げる。
しかし、著者は、単独が多いようだが、引っかかったものを、も少し深めてみる感性、視点、習性を持っており、その原因や意味を探って行く。そこから、社会、特に集団化した人間の様を描き、問う。
私は、それが当たり前だと思うが、一人の人間は状況により色んな姿・様を呈する。違う人如くになることも多い。また、それをうまく利用する社会構造や勢力があり、好奇心と勇気とこだわりを持って追究して行くと、意外なことや正体が見えてくることがある。
著者は、其れが出来る人の一人である。その姿勢を共有する。

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「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい (講談社文庫) 文庫 – 2018/11/15
森 達也
(著)
死刑存続論者の多くは、「死刑制度がある理由は被害者遺族のため」と言う。しかし、著者は問う。「自分の想像など被害者遺族の思いには絶対に及ばない。当事者でもないのに、なぜこれほど居丈高に、また当然のように死刑を求められるのか?」本書は、死刑制度だけでなく、領土問題、戦争責任、レイシズム、9・11以後、原発事故、等々、多岐にわたる事象を扱う。日本に蔓延する「正義」という名の共同幻想を撃つ!
- 本の長さ480ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2018/11/15
- 寸法10.7 x 1.9 x 14.9 cm
- ISBN-104065137209
- ISBN-13978-4065137208
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商品の説明
著者について
森 達也
1956年、広島県生まれ。映画監督・作家・明治大学特任教授。98年、オウム真理教の教団内部に入り込み撮影したドキュメンタリー映画「A」を公開。2001年、続編「A2」が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。11年に『A3』(集英社インターナショナル)で講談社ノンフィクション賞を受賞。16年、「ゴーストライター騒動」で世間を賑わせた佐村河内守氏を追ったドキュメンタリー映画「FAKE」が大きな話題を呼ぶ。
1956年、広島県生まれ。映画監督・作家・明治大学特任教授。98年、オウム真理教の教団内部に入り込み撮影したドキュメンタリー映画「A」を公開。2001年、続編「A2」が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。11年に『A3』(集英社インターナショナル)で講談社ノンフィクション賞を受賞。16年、「ゴーストライター騒動」で世間を賑わせた佐村河内守氏を追ったドキュメンタリー映画「FAKE」が大きな話題を呼ぶ。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2018/11/15)
- 発売日 : 2018/11/15
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 480ページ
- ISBN-10 : 4065137209
- ISBN-13 : 978-4065137208
- 寸法 : 10.7 x 1.9 x 14.9 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 316,075位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 4,844位講談社文庫
- - 50,106位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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広島県生まれ。映画監督、作家。1998年にドキュメンタリー映画『A』を発表。2001年、続編の『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『極私的メディア論』(ISBN-10:4904795075)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年10月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年1月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ニュースやSNSを見ながら、ぼんやりと感じていた違和感を明確化してくれた。知人にも勧めます。
2023年6月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いわゆる リベラル本で、著者は私と世代も近いが、随分価値観が違う。それでも、多面的、違う角度で 時事や歴史問題を考えるには、良書だと思う。
2019年1月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
森氏の作品に触れるのは、『死刑』に続き二作目です。よって以下、氏についてはほぼ無知な者のレビューとなります。ご容赦ください。
本書を読んで、奇遇にも森氏の息子さんが自分と同年代であるという事に気づきました。オウムの事件が起きた頃に生まれ、9.11やブッシュ政権の記憶もあるようなないような子供時代を過ごし、成人する少し前に3.11を経験した世代です。
そんな自分にとって、例えば「犯罪者は死刑になること」や「被災地を応援すること」、「街にテロ警戒の文字が溢れていること」は当たり前で、疑う余地のないことでした。しかし、成人し、平成も終わりかけの今、あれ?と思い始めています。
メディアを通して得た情報は、当然ですが、切り取られ、意図を加えられ、編集されています。もちろん、森氏の作品もそうです。
ただ、メディアと氏の作品の違いは、「自分はこう思うけれど、あなたはどう?」という問いかけを内包しているかどうか、だと思います。メディアの情報には、考えさせる余地(材料)が少ないのです。自力で調べてみようなんて気は一切起こらない、与えられたものを消費するだけ。
でも、それでいいのでしょうか。
本書は、森氏が答えを出してくれる本、ではありません。正解のない問いを、問い続けていくための手がかりとなる本、だと思います。
考えたくない人や、答えだけが欲しい人には、理解できない本かもしれません。でも、考えたい人にとっては、いい材料となるでしょう。難しいテーマですが、高校生~大学生なら充分読める範囲です。むしろ、自分をはじめ、若い世代がもっと考えていかなければならないと思います。
当時を知らないからこそ、考えられる事、言える事があるのではないでしょうか。
例えば、あなたは「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と言うけれど、ではあなたの子どもや身内が死刑判決を下されたら?同じことが言えますか。感情論は、所詮このレベルのものです。
右だの左だのは一旦置いて、もう一歩踏み込んで考えてみませんか。
本書を読んで、奇遇にも森氏の息子さんが自分と同年代であるという事に気づきました。オウムの事件が起きた頃に生まれ、9.11やブッシュ政権の記憶もあるようなないような子供時代を過ごし、成人する少し前に3.11を経験した世代です。
そんな自分にとって、例えば「犯罪者は死刑になること」や「被災地を応援すること」、「街にテロ警戒の文字が溢れていること」は当たり前で、疑う余地のないことでした。しかし、成人し、平成も終わりかけの今、あれ?と思い始めています。
メディアを通して得た情報は、当然ですが、切り取られ、意図を加えられ、編集されています。もちろん、森氏の作品もそうです。
ただ、メディアと氏の作品の違いは、「自分はこう思うけれど、あなたはどう?」という問いかけを内包しているかどうか、だと思います。メディアの情報には、考えさせる余地(材料)が少ないのです。自力で調べてみようなんて気は一切起こらない、与えられたものを消費するだけ。
でも、それでいいのでしょうか。
本書は、森氏が答えを出してくれる本、ではありません。正解のない問いを、問い続けていくための手がかりとなる本、だと思います。
考えたくない人や、答えだけが欲しい人には、理解できない本かもしれません。でも、考えたい人にとっては、いい材料となるでしょう。難しいテーマですが、高校生~大学生なら充分読める範囲です。むしろ、自分をはじめ、若い世代がもっと考えていかなければならないと思います。
当時を知らないからこそ、考えられる事、言える事があるのではないでしょうか。
例えば、あなたは「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と言うけれど、ではあなたの子どもや身内が死刑判決を下されたら?同じことが言えますか。感情論は、所詮このレベルのものです。
右だの左だのは一旦置いて、もう一歩踏み込んで考えてみませんか。
2018年12月18日に日本でレビュー済み
書店でタイトルに目を惹かれて購入。なのですが、この本は連載を単行本にまとめたもののさらに文庫化で、タイトルは連載コラムの一つから取ったもの。丸々一冊、死刑制度とか裁判制度について語っているわけではありません。
でも失敗したとは思わなかった。読んでみたら、これは凄く良い本だとわかったからだ。内容は、スリッパを重ねるということについてなど小さな事柄から世界規模の大きなスケールの話まで、多岐にわたる。既視感があるような主張がないわけではないが、著者の主張が表れるところは新鮮で熱く、胸に刺さる。
ただ政治的な立ち位置がかなりはっきりしているので合わない人は合わないだろう。自分は合った。
だけど常識とか、世間やニュースではさらっと流されてるようなことに少しでも疑問を感じたことがある人なら、読んで損はないと思う。疑問を感じたことがなくても、これを読んで気づかされることがきっとあると思う。いや必ずある。
私はタマちゃんとか全然気にしたことなかったけど、これを読んだ後はかなり見方が変わった。
でも失敗したとは思わなかった。読んでみたら、これは凄く良い本だとわかったからだ。内容は、スリッパを重ねるということについてなど小さな事柄から世界規模の大きなスケールの話まで、多岐にわたる。既視感があるような主張がないわけではないが、著者の主張が表れるところは新鮮で熱く、胸に刺さる。
ただ政治的な立ち位置がかなりはっきりしているので合わない人は合わないだろう。自分は合った。
だけど常識とか、世間やニュースではさらっと流されてるようなことに少しでも疑問を感じたことがある人なら、読んで損はないと思う。疑問を感じたことがなくても、これを読んで気づかされることがきっとあると思う。いや必ずある。
私はタマちゃんとか全然気にしたことなかったけど、これを読んだ後はかなり見方が変わった。
2019年1月12日に日本でレビュー済み
死刑制度についての内容なのかと思いきや、話は多方面に及ぶ。いわゆる左寄りの人なのかと思うが、同意出来る話も多く、思想的に会わないなと思っても一読の価値はあると思った。
全編を通して、当然と思いそうな事を疑う姿勢が伺え、是非はともかく必要な事だと思う。例えば、オウム事件の謎を解明するために、教祖を死刑にする前に話させる事が必要だったと言う主張は、私の考えた事もない視点だった。
日本の置かれた現状について、いろいろ考えさせる本だと思う。社会問題に興味がある人に。
全編を通して、当然と思いそうな事を疑う姿勢が伺え、是非はともかく必要な事だと思う。例えば、オウム事件の謎を解明するために、教祖を死刑にする前に話させる事が必要だったと言う主張は、私の考えた事もない視点だった。
日本の置かれた現状について、いろいろ考えさせる本だと思う。社会問題に興味がある人に。
2019年2月24日に日本でレビュー済み
5〜10年前に書かれたコラムが中心だが、古さを感じないどころか社会情勢はもっと悪くなってることに改めて気づかされる。
ノルウェーの寛容さと、厳罰化の進む今の日本、どちらの国で生きるのが幸せかは考えるまでもない。
反省できないのか、敢えてしないのか、そんな日本に警鐘を鳴らす本。
ノルウェーの寛容さと、厳罰化の進む今の日本、どちらの国で生きるのが幸せかは考えるまでもない。
反省できないのか、敢えてしないのか、そんな日本に警鐘を鳴らす本。
2020年10月10日に日本でレビュー済み
死刑廃止論で必ずでる言葉がタイトルだったので購入しました。
が、、、 この本は何も回答につながるような記載はありません。
死刑問題だけの事が書かれてる本ではないので、死刑制度のことを
考えるために本を探してるのなら、他の書籍をおすすめいたします。
死刑制度が被害者遺族のためなら、天涯孤独な人が殺されたら犯人の罪が軽くなってもいいのか?
とありましたが人がこの世に生きてるという事は、その人を産んで育てた人が必ずいるので 真の意味で天涯孤独な人などこの世にはいません。
が、、、 この本は何も回答につながるような記載はありません。
死刑問題だけの事が書かれてる本ではないので、死刑制度のことを
考えるために本を探してるのなら、他の書籍をおすすめいたします。
死刑制度が被害者遺族のためなら、天涯孤独な人が殺されたら犯人の罪が軽くなってもいいのか?
とありましたが人がこの世に生きてるという事は、その人を産んで育てた人が必ずいるので 真の意味で天涯孤独な人などこの世にはいません。