共和制と民主主義は戦争に人々を動員するための仕組みであり、皇帝は権威への服従を求めるが、それに対して1人の人間による支配での平和を打ち出した、というあたりの議論もなるほどな、と。カエサル以前のローマは、共和制と自由が内乱で自滅した、というんです。カエサルの『ゲルマニア』も蛮人は自由だけど野蛮な世界を描いている、と。民主化することで人々を戦争に動員するという手法は、最近の先進国による徴兵制の廃止まで否定されてこなかった、と。もしかして、欧米や日本による「国民は軍事的な面で国家とは切れるが、政治的な参加だけは残っている」という試みは、歴史的にみても相当、凄いことなのかもしれません(p.248)。
プラトンにしてもアリストテレスにしてもポリス的な小さなサイズでしか政治を考えていなかったけれど、それを破壊したのがアリストテレスによって教えられたアレクサンドロスで、広い境域を覆うためにギリシア人が否定したオリエント世界のスタイルが復活した、というのは皮肉。また、ポリス的生活がなくなり、人間が自分と向き合うようになって、死と人生の意義の問題も浮上してきた、と。大帝国を皇帝が支配することで人間にとっての興味の対象ではなくなった、ということで新しい哲学や蹴球も生まれていきます。
金持ちは支配すること、貧乏人は服従することしか知らないが、中間層は両方知っているから、そういう人間が集まったポリスは安定する、なんていうアリストテレスの議論も面白く紹介してくれています。

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よみがえる古代思想―「哲学と政治」講義1 (講談社学術文庫) 文庫 – 2012/10/11
佐々木 毅
(著)
政治について根源的に考えようとする時、人は古代ギリシア・ローマの哲学に立ち戻らざるを得ない。人間と政治の関わりについて、これほど深く、率直に議論された時代は他にないからである。ポリス最大の悪徳「ヒュブリス」とは。プラトンの唱えた「哲人王」とは。ローマの政治家はなぜ哲学を嫌ったのか。政治思想史の第一人者が「政治の本質」を語る。(講談社学術文庫)
2003年、講談社刊の同名書籍の学術文庫化。
2003年、講談社刊の同名書籍の学術文庫化。
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2012/10/11
- 寸法10.5 x 1 x 14.8 cm
- ISBN-104062921383
- ISBN-13978-4062921381
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商品の説明
著者について
佐々木 毅
1942年生まれ。東京大学法学部卒業。専攻は政治学,政治思想史。東京大学法学部教授,東京大学総長などを経て,現在,学習院大学法学部教授,東京大学名誉教授,日本学士院会員。著書に『政治学講義』『近代政治思想の誕生』『マキアヴェッリと「君主論」』『プラトンの呪縛』『民主主義という不思議な仕組み』『学ぶとはどういうことか』ほか多数。
1942年生まれ。東京大学法学部卒業。専攻は政治学,政治思想史。東京大学法学部教授,東京大学総長などを経て,現在,学習院大学法学部教授,東京大学名誉教授,日本学士院会員。著書に『政治学講義』『近代政治思想の誕生』『マキアヴェッリと「君主論」』『プラトンの呪縛』『民主主義という不思議な仕組み』『学ぶとはどういうことか』ほか多数。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2012/10/11)
- 発売日 : 2012/10/11
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 264ページ
- ISBN-10 : 4062921383
- ISBN-13 : 978-4062921381
- 寸法 : 10.5 x 1 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 619,812位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 320位古代・中世・ルネサンスの思想
- - 335位イデオロギー
- - 1,681位講談社学術文庫
- カスタマーレビュー:
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2014年1月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年12月11日に日本でレビュー済み
政治思想の歴史についての講義を本にまとめたもの。
第1巻では、古代ギリシャからローマについてをカバーしている。
この講義録を見ると、政治思想の原点は、人間をどのように捉えるか、つまり哲学が大きな位置を占めていることがわかる。
内容は、全般的にオーソドックスな内容で新味はないが、わかりやすい語り口で、頭の中に、すっと入ってくる。
第1巻では、古代ギリシャからローマについてをカバーしている。
この講義録を見ると、政治思想の原点は、人間をどのように捉えるか、つまり哲学が大きな位置を占めていることがわかる。
内容は、全般的にオーソドックスな内容で新味はないが、わかりやすい語り口で、頭の中に、すっと入ってくる。
2018年7月28日に日本でレビュー済み
本書は、1996年4月から7月にかけて新宿の朝日カルチャーセンターで行った「哲学と政治 ー ギリシア・ローマの世界」という5回の公開講座の内容をもとにしたものである。
現代に生きる我々にとって、哲学とは図書館の奥の埃の匂いのする本のことであり、政治と結びつくイメージが湧かない。
本書の内容は以下の通りであり、ギリシャ・ローマの主な思想を順を追って説明していく構成となっている。
〈目次〉
第一章 ソクラテス以前とソクラテス ー 人間にとっての政治
第二章 プラトン ー 哲人王の意味するもの
第三章 アリストテレス ー ポリスと人間の諸相
第四章 ヘレニズム諸派の時代へ ー 大帝国の出現と脱ポリスの哲学
第五章 古代ローマの哲学と政治論 ー 政治の意味と無意味
ソクラテス以前のギリシア人は、財産も欲しい、金も欲しい、名声も欲しいという中で生きてきた。そのような中ソクラテスは、そんなものは本当は人間にとって大切ではなく、大切なのは魂に心配りをすることであると説いた。
他のなによりも自分たる所以の魂に配慮しなければならない、というソクラテスの概念は、価値の基準を自分の外の世界から、自分の内側に転換させたという意味で、当時の思想的革命だとする。
ソクラテスの弟子のプラトンは、本当に正しい仕方で哲学をしているような人々がポリスの支配者になるか、あるいは独裁的な権力を現に持っている人が哲学をするかどちらかが必要、という哲人王論を説き、権力と哲学の結合を考えた。
またプラトンは当時の民主政治家のペリクレスを、民衆に迎合し人々の魂を正しい方向に導く本当の政治を行わなかったとして批判しており、デモクラシー批判者として20世紀になってマルクス主義者やナチスに引用されたという。
続くアリストテレスは、人間をよき方向へ習慣づけていくための方法を教えるのが政治学の役目であるとして、政治学と倫理学を結びつけた。
アリストテレスの教え子であるアレクサンドロスによって大帝国が成立し、ポリスの輝きがなくなる中で、人生の意義(政治参加)とポリスとの存在が重なり合っていたギリシアの伝統が断ち切られ、人々は人生の意義を哲学に求めるようになりヘレニズム期には様々な哲学諸派(キュレネ派、キュニコス派、エピクロス派、ストア派)が出現。なかでもストア派はローマの政治思想へとつながる。
最初は哲学と政治が結びつくイメージはなかったが、本書を読み進むにつれ、高校の公民の教科の最初の方にソクラテスが登場し、最後の方に政治のことが書いてあったような気がしてきた。
当時なぜ哲学と政治が一冊の本に同居しているのか考えてもみなかったが、西洋思想の源流であるギリシア・ローマの時代にはそれらは不可分のものあったこと、アメリカ合衆国の成立、フランス革命、20世紀の大戦前後の政治思想などに古代思想が反芻され取り込まれていることが分かった。もとがカルチャーセンターの講義であり、素人にも読みやすくお薦めの一冊である。
現代に生きる我々にとって、哲学とは図書館の奥の埃の匂いのする本のことであり、政治と結びつくイメージが湧かない。
本書の内容は以下の通りであり、ギリシャ・ローマの主な思想を順を追って説明していく構成となっている。
〈目次〉
第一章 ソクラテス以前とソクラテス ー 人間にとっての政治
第二章 プラトン ー 哲人王の意味するもの
第三章 アリストテレス ー ポリスと人間の諸相
第四章 ヘレニズム諸派の時代へ ー 大帝国の出現と脱ポリスの哲学
第五章 古代ローマの哲学と政治論 ー 政治の意味と無意味
ソクラテス以前のギリシア人は、財産も欲しい、金も欲しい、名声も欲しいという中で生きてきた。そのような中ソクラテスは、そんなものは本当は人間にとって大切ではなく、大切なのは魂に心配りをすることであると説いた。
他のなによりも自分たる所以の魂に配慮しなければならない、というソクラテスの概念は、価値の基準を自分の外の世界から、自分の内側に転換させたという意味で、当時の思想的革命だとする。
ソクラテスの弟子のプラトンは、本当に正しい仕方で哲学をしているような人々がポリスの支配者になるか、あるいは独裁的な権力を現に持っている人が哲学をするかどちらかが必要、という哲人王論を説き、権力と哲学の結合を考えた。
またプラトンは当時の民主政治家のペリクレスを、民衆に迎合し人々の魂を正しい方向に導く本当の政治を行わなかったとして批判しており、デモクラシー批判者として20世紀になってマルクス主義者やナチスに引用されたという。
続くアリストテレスは、人間をよき方向へ習慣づけていくための方法を教えるのが政治学の役目であるとして、政治学と倫理学を結びつけた。
アリストテレスの教え子であるアレクサンドロスによって大帝国が成立し、ポリスの輝きがなくなる中で、人生の意義(政治参加)とポリスとの存在が重なり合っていたギリシアの伝統が断ち切られ、人々は人生の意義を哲学に求めるようになりヘレニズム期には様々な哲学諸派(キュレネ派、キュニコス派、エピクロス派、ストア派)が出現。なかでもストア派はローマの政治思想へとつながる。
最初は哲学と政治が結びつくイメージはなかったが、本書を読み進むにつれ、高校の公民の教科の最初の方にソクラテスが登場し、最後の方に政治のことが書いてあったような気がしてきた。
当時なぜ哲学と政治が一冊の本に同居しているのか考えてもみなかったが、西洋思想の源流であるギリシア・ローマの時代にはそれらは不可分のものあったこと、アメリカ合衆国の成立、フランス革命、20世紀の大戦前後の政治思想などに古代思想が反芻され取り込まれていることが分かった。もとがカルチャーセンターの講義であり、素人にも読みやすくお薦めの一冊である。
2014年8月13日に日本でレビュー済み
古代ギリシャからヘレニズムを経て古代ローマに至る政治思想史を分かりやすく、かつ、水準を落とさず説明してくれます。
政治哲学を通してこの時代の哲学の鳥瞰図を得る事ができるので哲学の入門書という側面もあります。
これからプラトン、アリストテレス、キケロ、セネカの著作を読みたい人は必読の入門書です。
政治哲学を通してこの時代の哲学の鳥瞰図を得る事ができるので哲学の入門書という側面もあります。
これからプラトン、アリストテレス、キケロ、セネカの著作を読みたい人は必読の入門書です。