将棋のプロになる道を諦めず、その夢をかなえた著者の人生における大切な出会い、その折々の記憶や思いを書きとめた一冊。
《「だからね、セガショー。君はそのままでいいの。いまのままで十分、だいじょうぶよ」》p.59 と、小学五年生の瀬川少年に励ましの言葉をかけた苅間澤(かりまさわ)先生。
小学五年生の時に出会った将棋のライバル・渡辺健弥(わたなべ けんや)くんのこと。
将棋の奨励会を退会し、何もする気力が起きない26歳の瀬川青年に、《「ゆっくり休め」「おまえは本当に奨励会でがんばった。(中略)だから心配しないで、しばらく休め。これからのことは、そのあとゆっくり考えればいい」》p.224~225 と声をかけた、普段は無口な父。
将棋のプロとなる道を目指すかどうかの岐路に立った時、《だけど僕は、将棋が好きだ。本当は、僕は将棋を指して生きていきたい。それが僕のいちばん望む、いちばん好きな道だ。》p.272~273 と、自分の心からわき上がってくる気持ちに耳を澄ます著者の述懐。
この文庫本の頁をめくりながら何度も涙し、後半はもう、泣きながら読み終えるしかなかったです。
今年(2023年)の2月、将棋のプロ編入試験に見事に合格し、念願のプロ棋士となった小山怜央(こやま れお)さんを応援したくなったり、将棋のタイトル戦で快進撃を続ける藤井聡太・竜王の戦いぶりに注目したり、ここのところ、にわか将棋ファンの観戦者と化している私にとって、本書はとてもタイムリーな、大満足の一冊となりました。
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泣き虫しょったんの奇跡 完全版 サラリーマンから将棋のプロへ (講談社文庫) 文庫 – 2010/2/13
瀬川 晶司
(著)
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中学選抜選手権で優勝した男は、年齢制限のため26歳にしてプロ棋士の夢を断たれた。将棋と縁を切った彼は、いかにして絶望から這い上がり、将棋を再開したか。アマ名人戦優勝など活躍後、彼を支えた人たちと一緒に将棋界に起こした奇跡。生い立ちから決戦まで秘話満載。(講談社文庫)
あきらめなければ、夢は必ずかなう!
中学選抜選手権で優勝した男は、年齢制限のため26歳にしてプロ棋士の夢を断たれた。
将棋と縁を切った彼は、いかにして絶望から這い上がり、将棋を再開したか。アマ名人戦優勝など活躍後、彼を支えた人たちと一緒に将棋界に起こした奇跡。
生い立ちから決戦まで秘話満載。
あきらめなければ、夢は必ずかなう!
中学選抜選手権で優勝した男は、年齢制限のため26歳にしてプロ棋士の夢を断たれた。
将棋と縁を切った彼は、いかにして絶望から這い上がり、将棋を再開したか。アマ名人戦優勝など活躍後、彼を支えた人たちと一緒に将棋界に起こした奇跡。
生い立ちから決戦まで秘話満載。
- 本の長さ360ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2010/2/13
- 寸法10.8 x 1.4 x 14.8 cm
- ISBN-104062765829
- ISBN-13978-4062765824
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商品の説明
著者について
瀬川 晶司
昭和45年横浜市生まれ。小学5年生のときに将棋に夢中になり、6年生でプロを志す。中学3年生のとき、中学生選抜選手権大会で優勝、その年、プロ棋士養成機関の奨励会に入会する。22歳で三段に昇るが、その後、低迷して26歳のとき年齢制限の規定により奨励会退会。一度は将棋と縁を切ったが、神奈川大学法学部在学中に将棋を再開すると、平成11年のアマ名人戦優勝をはじめ、アマチュア強豪として大活躍する。やがて就職してサラリーマンとなるが、プロとの公式戦で7割以上という驚異的な勝率をあげると、平成17年、日本将棋連盟にプロ入りを希望する嘆願書を提出、周囲の協力もあって戦後初めてのプロ編入試験将棋を実現させる。平成17年11月6日、この試験将棋に合格して念願のプロ棋士となる。
昭和45年横浜市生まれ。小学5年生のときに将棋に夢中になり、6年生でプロを志す。中学3年生のとき、中学生選抜選手権大会で優勝、その年、プロ棋士養成機関の奨励会に入会する。22歳で三段に昇るが、その後、低迷して26歳のとき年齢制限の規定により奨励会退会。一度は将棋と縁を切ったが、神奈川大学法学部在学中に将棋を再開すると、平成11年のアマ名人戦優勝をはじめ、アマチュア強豪として大活躍する。やがて就職してサラリーマンとなるが、プロとの公式戦で7割以上という驚異的な勝率をあげると、平成17年、日本将棋連盟にプロ入りを希望する嘆願書を提出、周囲の協力もあって戦後初めてのプロ編入試験将棋を実現させる。平成17年11月6日、この試験将棋に合格して念願のプロ棋士となる。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2010/2/13)
- 発売日 : 2010/2/13
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 360ページ
- ISBN-10 : 4062765829
- ISBN-13 : 978-4062765824
- 寸法 : 10.8 x 1.4 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 255,785位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 807位将棋 (本)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2023年5月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2021年7月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
藤井聡太二冠が四段だった平成29(2017)年の29連勝、昨年史上最年少二冠、八段昇段さらに今年、渡辺名人に棋聖戦3連勝し、タイトル初防衛と最年少九段昇段と、藤井フィーバーはとどまることを知らない。
将棋界でこうしてスーパースターが登場する毎に10〜15年周期で、社会現象にもなり将棋ブームが起きてきた。
因みに私は今から5回前の中原大山名人交代劇の直前にクラスの男子に急に将棋ブームが起きた時、やはりルールを憶えたクチだった。
周期的なブームの中心にいる藤井聡太二冠は400年に1人の大天才だからブームがブームで終わらず、かれこれ足掛け5年に及んでいるワケだが、これと全く逆の無名の奨励会三段退会者が主人公になった将棋ブームの主人公が著者の瀬川晶司現六段である。
今頃始めて本書を読了し、汗顔の至りだが、当時は自分も色々ある中、米長邦雄会長の会長選出とともに、将棋界に次々に新風が吹いたのだけはよく覚えている。
29連勝ブームの1つ前の将棋ブームは、瀬川アマ(当時)のプロ編入嘆願の他にも、コンピューターソフトに革新をもたらした将棋ソフト、ボナンザが登場し、遂にプロ最高峰渡辺明竜王vsボナンザの対決があり、その渡辺竜王が3連敗4連勝の離れ業で羽生善治名人との死闘を制して、初代永世竜王となった。
またこれは秘史だが、朝日毎日両新聞による名人戦争奪戦が、米長会長裁定により終止符が打たれた事も隠れたファインプレーだった。
米長会長は既にインターネットの時代にいずれ新聞棋戦の未来に暗雲が立ち込めるのに驚くべき先見の妙を示していた。
昭和52年(1977)年の騒動が再現されたら29連勝以来の空前のブームが一気に吹き飛びかねないのを15年前に未然に防いだ功績はもっと評価されるべきだと思う。
閑話休題
泣き虫しょったんの絶望と奇跡の物語の舞台となった平成17年(2005)年は、求人倍率0.5、100社受けても正社員になれない地獄のデフレ真っ只中、まさに平成の暗黒時代である。
その様な時節柄、瀬川アマに感情移入し熱狂的に応援した人と、特別扱いに屈折した感情をぶつける、自らを負け組と感じる人達に真っ二つに世論が分断されたのはやむを得ない。
瀬川さんが批判的なネットの反応に、思った以上に冷静で長兄が驚くシーンは、瀬川さんとしては、自身の最悪の地獄に較べれば大した事ないのと、年下の大学の同期生達が就職で苦労していたのを目の当たりにした事と無縁でないと思う。
誰もが勝ち組になれた高度成長期と違い、この2005年を挟む15年間は正にデフレ地獄だった。
私事で恐縮だが自分も将棋界の変遷に驚きつつ、瀬川新四段に微妙な感情を持っていたらしいのは、本書の購入を見送っている事からも判る。蛇足だか、バブル期の新入社員の我々世代は人手不足と、リストラ圧力の名の下、業務指導という名のパワハラを日常的に受けても、いまだパワハラの概念がなく、塗炭の苦しみを味わう最中であり、本書を読む暇すらなかったと思う。
50 年来の将棋好きが本書を読まなかった事に、じつは自分で驚いている。
それから10年が流れ羽生世代にも流石に年齢的に陰りが見られ始めた矢先、29連勝により将棋界に激震が走る。
藤井聡太四段による29連勝の後半、やっとC級2組順位戦の初対局が行なわれ、ネットでC2順位戦にまるまる1日付き合い、余りの長さに閉口しながら、なんとか終局を見届けた頃、日付は24時に迫ろうとしていた。
その藤井聡太二冠の初の順位戦の対戦相手が、瀬川五段(当時)で、記録係は当時奨励会三段の、里見香奈女流名人であった。
瀬川藤井戦は抽選だが、記録係が里見女流名人というのは将棋界の縮図を連盟が演出したものだろう。
この3者を一堂に会したのは、天才街道まっしぐらの藤井四段に一度将棋を断念した棋士と、その後程なく退会する女流棋士に何らかの刺激や想いに応える意味合いがあったのだろう。
それから4年経て、里見女流名人は三段リーグを年齢制限により退会し、瀬川五段は勝ち星規定で六段に昇進している。
里見女流名人は先日対男性棋士30勝をマークしたばかりだ。因みに四段昇段後、100勝すると五段昇段だが、里見さんが100勝しても連盟は何もしないのだろうか。
西山朋佳女王は竜王戦6組で二年連続で、昇級一歩手前で惜しくも破れている。
三段リーグと女流棋界と一般棋戦の実力拮抗の矛盾は崩壊寸前の状態であろう。
まだまだある。
瀬川六段に続きプロ編入試験で今泉四段、折田四段、2人の三段リーグ退会者の合格があった。
折田アマに至っては、棋王戦挑戦者本田五段を破り編入試験合格を勝ちとるだけにとどまらず
とうとう竜王戦6組で優勝してしまった。しかも決勝の相手は奨励会経験者ではないアマチュア強豪だった。
レビューなのに中々、泣き虫しょったんの話しにならないのをお許し頂きたいのは、上記の将棋界の構造矛盾がスッキリ風通しの良いものであれば、すんなり四段昇段を果たした瀬川六段はもう七段昇段している可能性が高く、本書のドラマの代わりに、羽生世代とタイトル戦で凌ぎを削った物語に置き換わったかも知れないからである。
蛇足ながら付け加えると、アマ時代の対プロ戦の勝利数は瀬川六段の通算勝率に合算されない。
将棋界はかくも頑迷固陋な伝統墨守団体の側面を持っているのである。
それ故、瀬川六段が昭和19年、花村元司九段以来61年振りに編入試験に漕ぎ着け突破したのは歴史的な事なのだ。
或る意味、藤井聡太さんのような中学生棋士はこれからも15年にひとりは現れるが、瀬川六段がこの時、羽生さんの電話に勇気付けられ嘆願書を出したことが、将棋界の未来にどれ程希望をもたらしたか、想像を絶する。
奨励会退会後、交流する中、アマ強豪達が異口同音に将棋界の未来に押し並べて悲観的だったと知るシーンがある。
このエピソードは、課題図書として幅広く読まれる本書に接する若年層に大きな啓示を与えるだろう。
将棋界でこうしてスーパースターが登場する毎に10〜15年周期で、社会現象にもなり将棋ブームが起きてきた。
因みに私は今から5回前の中原大山名人交代劇の直前にクラスの男子に急に将棋ブームが起きた時、やはりルールを憶えたクチだった。
周期的なブームの中心にいる藤井聡太二冠は400年に1人の大天才だからブームがブームで終わらず、かれこれ足掛け5年に及んでいるワケだが、これと全く逆の無名の奨励会三段退会者が主人公になった将棋ブームの主人公が著者の瀬川晶司現六段である。
今頃始めて本書を読了し、汗顔の至りだが、当時は自分も色々ある中、米長邦雄会長の会長選出とともに、将棋界に次々に新風が吹いたのだけはよく覚えている。
29連勝ブームの1つ前の将棋ブームは、瀬川アマ(当時)のプロ編入嘆願の他にも、コンピューターソフトに革新をもたらした将棋ソフト、ボナンザが登場し、遂にプロ最高峰渡辺明竜王vsボナンザの対決があり、その渡辺竜王が3連敗4連勝の離れ業で羽生善治名人との死闘を制して、初代永世竜王となった。
またこれは秘史だが、朝日毎日両新聞による名人戦争奪戦が、米長会長裁定により終止符が打たれた事も隠れたファインプレーだった。
米長会長は既にインターネットの時代にいずれ新聞棋戦の未来に暗雲が立ち込めるのに驚くべき先見の妙を示していた。
昭和52年(1977)年の騒動が再現されたら29連勝以来の空前のブームが一気に吹き飛びかねないのを15年前に未然に防いだ功績はもっと評価されるべきだと思う。
閑話休題
泣き虫しょったんの絶望と奇跡の物語の舞台となった平成17年(2005)年は、求人倍率0.5、100社受けても正社員になれない地獄のデフレ真っ只中、まさに平成の暗黒時代である。
その様な時節柄、瀬川アマに感情移入し熱狂的に応援した人と、特別扱いに屈折した感情をぶつける、自らを負け組と感じる人達に真っ二つに世論が分断されたのはやむを得ない。
瀬川さんが批判的なネットの反応に、思った以上に冷静で長兄が驚くシーンは、瀬川さんとしては、自身の最悪の地獄に較べれば大した事ないのと、年下の大学の同期生達が就職で苦労していたのを目の当たりにした事と無縁でないと思う。
誰もが勝ち組になれた高度成長期と違い、この2005年を挟む15年間は正にデフレ地獄だった。
私事で恐縮だが自分も将棋界の変遷に驚きつつ、瀬川新四段に微妙な感情を持っていたらしいのは、本書の購入を見送っている事からも判る。蛇足だか、バブル期の新入社員の我々世代は人手不足と、リストラ圧力の名の下、業務指導という名のパワハラを日常的に受けても、いまだパワハラの概念がなく、塗炭の苦しみを味わう最中であり、本書を読む暇すらなかったと思う。
50 年来の将棋好きが本書を読まなかった事に、じつは自分で驚いている。
それから10年が流れ羽生世代にも流石に年齢的に陰りが見られ始めた矢先、29連勝により将棋界に激震が走る。
藤井聡太四段による29連勝の後半、やっとC級2組順位戦の初対局が行なわれ、ネットでC2順位戦にまるまる1日付き合い、余りの長さに閉口しながら、なんとか終局を見届けた頃、日付は24時に迫ろうとしていた。
その藤井聡太二冠の初の順位戦の対戦相手が、瀬川五段(当時)で、記録係は当時奨励会三段の、里見香奈女流名人であった。
瀬川藤井戦は抽選だが、記録係が里見女流名人というのは将棋界の縮図を連盟が演出したものだろう。
この3者を一堂に会したのは、天才街道まっしぐらの藤井四段に一度将棋を断念した棋士と、その後程なく退会する女流棋士に何らかの刺激や想いに応える意味合いがあったのだろう。
それから4年経て、里見女流名人は三段リーグを年齢制限により退会し、瀬川五段は勝ち星規定で六段に昇進している。
里見女流名人は先日対男性棋士30勝をマークしたばかりだ。因みに四段昇段後、100勝すると五段昇段だが、里見さんが100勝しても連盟は何もしないのだろうか。
西山朋佳女王は竜王戦6組で二年連続で、昇級一歩手前で惜しくも破れている。
三段リーグと女流棋界と一般棋戦の実力拮抗の矛盾は崩壊寸前の状態であろう。
まだまだある。
瀬川六段に続きプロ編入試験で今泉四段、折田四段、2人の三段リーグ退会者の合格があった。
折田アマに至っては、棋王戦挑戦者本田五段を破り編入試験合格を勝ちとるだけにとどまらず
とうとう竜王戦6組で優勝してしまった。しかも決勝の相手は奨励会経験者ではないアマチュア強豪だった。
レビューなのに中々、泣き虫しょったんの話しにならないのをお許し頂きたいのは、上記の将棋界の構造矛盾がスッキリ風通しの良いものであれば、すんなり四段昇段を果たした瀬川六段はもう七段昇段している可能性が高く、本書のドラマの代わりに、羽生世代とタイトル戦で凌ぎを削った物語に置き換わったかも知れないからである。
蛇足ながら付け加えると、アマ時代の対プロ戦の勝利数は瀬川六段の通算勝率に合算されない。
将棋界はかくも頑迷固陋な伝統墨守団体の側面を持っているのである。
それ故、瀬川六段が昭和19年、花村元司九段以来61年振りに編入試験に漕ぎ着け突破したのは歴史的な事なのだ。
或る意味、藤井聡太さんのような中学生棋士はこれからも15年にひとりは現れるが、瀬川六段がこの時、羽生さんの電話に勇気付けられ嘆願書を出したことが、将棋界の未来にどれ程希望をもたらしたか、想像を絶する。
奨励会退会後、交流する中、アマ強豪達が異口同音に将棋界の未来に押し並べて悲観的だったと知るシーンがある。
このエピソードは、課題図書として幅広く読まれる本書に接する若年層に大きな啓示を与えるだろう。
2022年2月3日に日本でレビュー済み
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奨励会の厳しさ。全人格を否定されたようなどん底を味わう。将棋を恨み何も手につかないような状態の瀬川さんの復活のきっかけとなるのは幼馴染みのアマ強豪だった。王将の駒をどちらが持つか、退会後に彼と当時の所作をなぞり将棋の楽しさを思い出す。
ライバル。「だった、と過去形でいうのは」とある。物語の終盤で役割が変化した本当の意味を知る。
1969年生まれで将棋世界を愛読していた僕は登場人物の多くを知っている。でも知らない人にも読んでほしい。
埃をかぶっていた退会駒。
その駒に命を吹き込まれた場面が、もう。もう。じわっときてたちまち目の前が見えなくなりました。
高見先生もテレビで紹介してましたが、とてもいい本です。ぜひ活字で読んでください。
ライバル。「だった、と過去形でいうのは」とある。物語の終盤で役割が変化した本当の意味を知る。
1969年生まれで将棋世界を愛読していた僕は登場人物の多くを知っている。でも知らない人にも読んでほしい。
埃をかぶっていた退会駒。
その駒に命を吹き込まれた場面が、もう。もう。じわっときてたちまち目の前が見えなくなりました。
高見先生もテレビで紹介してましたが、とてもいい本です。ぜひ活字で読んでください。
2018年6月7日に日本でレビュー済み
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棋士は負けると身をよじるほど悔しいと聞きます。死にたいほど悔しいとも言います。
幼い頃から悔しい思いをしているのが奨励会の子供達なんだと思い知りました。
瀬川さんはまだまだ人知れず泣いているのかもしれない。プロになれたから大団円ではない。プロに手が届かないのが終わりではない。
現在進行形のノンフィクションであるため活躍する瀬川さんを応援しながら応援されている気持ちになるさわやかな一冊です。
幼い頃から悔しい思いをしているのが奨励会の子供達なんだと思い知りました。
瀬川さんはまだまだ人知れず泣いているのかもしれない。プロになれたから大団円ではない。プロに手が届かないのが終わりではない。
現在進行形のノンフィクションであるため活躍する瀬川さんを応援しながら応援されている気持ちになるさわやかな一冊です。
2020年4月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私は映画のほうを先に見てしまいました。
映画では瀬川さんと天彦さんの対決を一番楽しみにしてたのですが、
名前が佐山になってたのでガクッと来てしまい、
しばらくしてからこの本を手にとりました。
将棋の小説というと聖の青春が有名ですが、
いくら身近な人が書いたとはいえ、本人が書いたわけではないですから
それなら棋士さん本人の書いた本はどうなんだろうかと
本書を手に取りました。
自分は藤井ブームから入ったにわか将棋ファンですが
映画を見てた頃はなんとなく今泉さんや瀬川さんが棋士になったのは
多少の抵抗はありました。
三段リーグから上位二名に入って四段になるのが正しく
フリークラス編入制度自体にもどことなく釈然としないものはありました。
瀬川問題で実際に世間が沸いていたころは将棋にさしたる
興味もなくああそうなのっと思っていたにもかかわらずです。
意地の悪い話、だから瀬川さんが天彦さんに負けるのを楽しみに映画を見たわけですが。
ただ奨励会の制度自体将棋連盟の都合でよく変わってるし、よく言えばおおらか
悪く言えば無茶苦茶なとこもありますからそれもありかなとも思ってました。
作品を読んで確かに恵まれた環境の人しか才能があっても棋士になれないんだということに気づきました。
才能と努力が90%かもしれませんが10%だとしても環境は大きいでしょう。
それと羽生世代って遅咲きな藤井九段は別にしてみんな小学校の時奨励会に行ったものだと誤解してたので
中学生で全国大会に羽生世代が続々と出てくるのに驚いてしましました。
その辺がにわかなわけですが。
読んでみてなんとなく編入制度へのわだかまりが解けたというか
実社会で名の通る大手企業が表に出ないだけで当たり前のように談合や癒着をしているのに
こんなことに違和感を覚えていたことに少し馬鹿らしくなりました。
一流の棋士から見たらある種平凡なひとのはなしかもしれませんが
我々本当の凡人から見たら珠玉の人生です。
将棋に人生をかけた結晶のストーリーだと思います。
映画では瀬川さんと天彦さんの対決を一番楽しみにしてたのですが、
名前が佐山になってたのでガクッと来てしまい、
しばらくしてからこの本を手にとりました。
将棋の小説というと聖の青春が有名ですが、
いくら身近な人が書いたとはいえ、本人が書いたわけではないですから
それなら棋士さん本人の書いた本はどうなんだろうかと
本書を手に取りました。
自分は藤井ブームから入ったにわか将棋ファンですが
映画を見てた頃はなんとなく今泉さんや瀬川さんが棋士になったのは
多少の抵抗はありました。
三段リーグから上位二名に入って四段になるのが正しく
フリークラス編入制度自体にもどことなく釈然としないものはありました。
瀬川問題で実際に世間が沸いていたころは将棋にさしたる
興味もなくああそうなのっと思っていたにもかかわらずです。
意地の悪い話、だから瀬川さんが天彦さんに負けるのを楽しみに映画を見たわけですが。
ただ奨励会の制度自体将棋連盟の都合でよく変わってるし、よく言えばおおらか
悪く言えば無茶苦茶なとこもありますからそれもありかなとも思ってました。
作品を読んで確かに恵まれた環境の人しか才能があっても棋士になれないんだということに気づきました。
才能と努力が90%かもしれませんが10%だとしても環境は大きいでしょう。
それと羽生世代って遅咲きな藤井九段は別にしてみんな小学校の時奨励会に行ったものだと誤解してたので
中学生で全国大会に羽生世代が続々と出てくるのに驚いてしましました。
その辺がにわかなわけですが。
読んでみてなんとなく編入制度へのわだかまりが解けたというか
実社会で名の通る大手企業が表に出ないだけで当たり前のように談合や癒着をしているのに
こんなことに違和感を覚えていたことに少し馬鹿らしくなりました。
一流の棋士から見たらある種平凡なひとのはなしかもしれませんが
我々本当の凡人から見たら珠玉の人生です。
将棋に人生をかけた結晶のストーリーだと思います。
2021年3月14日に日本でレビュー済み
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特に気にいっているのは瀬川先生のプロ入り後のフリークラスから順位戦C級2組への昇級が書かれていました。また、大崎さんの追記文も良かったです。また、その後の王位戦の挑戦者決定リーグ(王位保持者とトップ13名の中に入った事)への進出や棋王戦の挑戦者決定トーナメントに進出、さらに竜王戦5組への昇級、6段への昇段などの奨励会で脱落してから、単にプロ入りしただけでない大活躍している瀬川先生を追筆で再版してほしいです。