最初の単行本から10年を過ぎ、新潮文庫版からも5年も経っているんですね。しかも、それでもなお新鮮な傑作であることは間違いない初期作品集。新潮文庫版よりもさらに内容が増えていてオトクでもあります。
冒頭の「ABC戦争」でまず腰が抜けます。成人式に田舎に帰った主人公が高校時代の「戦争」を調べ始めるという話。通学電車での不良高校生のいざこざから近隣高校生を震え上がらせる全面対立へと進展したのはなぜなのか。その「物語」の中心だけでもおもしろいのに、導入部分は「文学」の可能性についての長い長い注釈です。現代思想を要約するその力技が「物語」そのものにも浸透していって、何が起こったのかあいまいなまま、心地よい「語り」が進行しています。この「持続」と「強度」。すげーぞ、阿部さん。
いたずらに難解なだけでないのが特にすごい。誰もがアノ頃を懐かしく思いだすはず。特に堀ちえみの「ジャンプ!ジャンプ!」にピンと来る世代は読むべし。
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ABC<阿部和重初期作品集> (講談社文庫) 文庫 – 2009/4/15
阿部 和重
(著)
読後すぐには日常に戻れない
周到に張りめぐらされた言葉が、不穏な予感を暴発させる――デビュー以来、日本文学の最先端を疾走し続ける阿部和重の危険な作品世界は、いまや次々に現実となっていく。今だからこそ読みたい初期の傑作6作品。3人のゲームクリエイターによる語り下ろし特別座談会〈阿部和重ゲーム化会議〉を巻末に収録。
※本書は新潮文庫より刊行された『ABC戦争』(平成14年6月刊)と『無情の世界』(平成15年3月刊)を1冊にしたものです。
周到に張りめぐらされた言葉が、不穏な予感を暴発させる――デビュー以来、日本文学の最先端を疾走し続ける阿部和重の危険な作品世界は、いまや次々に現実となっていく。今だからこそ読みたい初期の傑作6作品。3人のゲームクリエイターによる語り下ろし特別座談会〈阿部和重ゲーム化会議〉を巻末に収録。
※本書は新潮文庫より刊行された『ABC戦争』(平成14年6月刊)と『無情の世界』(平成15年3月刊)を1冊にしたものです。
- ISBN-10406276315X
- ISBN-13978-4062763158
- 出版社講談社
- 発売日2009/4/15
- 言語日本語
- 寸法10.8 x 2 x 14.8 cm
- 本の長さ544ページ
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2009/4/15)
- 発売日 : 2009/4/15
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 544ページ
- ISBN-10 : 406276315X
- ISBN-13 : 978-4062763158
- 寸法 : 10.8 x 2 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 539,807位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1968年生まれ。小説家。
「アメリカの夜」で第37回群像新人文学賞を受賞しデビュー。1999年『無情の世界』で第21回野間文芸新人賞、2004年『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞および第58回毎日出版文化賞、2005年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞をそれぞれ受賞した。
その他の著書に『インディヴィジュアル・プロジェクション』『ニッポニアニッポン』『プラスティック・ソウル』『映画覚書vol.1』『阿部和重対談集』『ABC 阿部和重初期短編集』『ピストルズ』など。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年5月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ここ最近で阿部和重氏の『ピストルズ』と『シンセミア』は間違いなく世界レベルの純文学に驚かされた。圧倒的完成度の高さと圧倒的面白さ。恐らく阿部氏の実力は現時点で日本では最高の作家だろう。その氏の初期作。デビュー作『アメリカの夜』が『読まずに語る文芸批評』by田中康夫氏に「ただの人」とこき下ろされ同作を読んだ僕も同じ感想を持ったものだ・・・。
その阿部氏による初期作品の中で『ABC戦争』タイトル通りなのだがメタフィクションとして、まず巧い。しっかりした設計と緻密な文章にて抜群の作品に仕上がっている。徹底した自己言及による言葉を積み重ねて用意周到に計算され尽くした作品だ。しかし、徹底したメタフィクションとして完成度は非常に高いのだが、何も表現されていない。最も突き詰めて考えるとメタフクションを貫き通すとそこには虚構の証明があるだけになるのかもしれないので、こんなレビューは無意味なのかもしれない。だが、メタフィクションという表現形式だからこそリアリズムやメタファーでは語りえぬことをあぶり出す可能性があると思う。上述の傑作二本は実験性という面は薄れてしまった。それを成熟とみなすべきか戦略的後退とみなすべきかは様々な意見があるだろう。だが、阿部氏が『ABC戦争』で見せた実力と現時点での、王道的手法の実力を合致させれば過去の大作家や現在も活躍している純文学作家をぶっちぎるような大作家になる可能性があると思う。そんな理由で氏の次回長編が楽しみでしかたがない。
その阿部氏による初期作品の中で『ABC戦争』タイトル通りなのだがメタフィクションとして、まず巧い。しっかりした設計と緻密な文章にて抜群の作品に仕上がっている。徹底した自己言及による言葉を積み重ねて用意周到に計算され尽くした作品だ。しかし、徹底したメタフィクションとして完成度は非常に高いのだが、何も表現されていない。最も突き詰めて考えるとメタフクションを貫き通すとそこには虚構の証明があるだけになるのかもしれないので、こんなレビューは無意味なのかもしれない。だが、メタフィクションという表現形式だからこそリアリズムやメタファーでは語りえぬことをあぶり出す可能性があると思う。上述の傑作二本は実験性という面は薄れてしまった。それを成熟とみなすべきか戦略的後退とみなすべきかは様々な意見があるだろう。だが、阿部氏が『ABC戦争』で見せた実力と現時点での、王道的手法の実力を合致させれば過去の大作家や現在も活躍している純文学作家をぶっちぎるような大作家になる可能性があると思う。そんな理由で氏の次回長編が楽しみでしかたがない。