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昭和解体 国鉄分割・民営化30年目の真実 単行本 – 2017/3/16
本書は国鉄が崩壊、消滅に向けて突き進んだ二十年余の歴史に再検証を試みたものである。昭和が平成に変わる直前の二十年余という歳月は、薩長の下級武士たちが決起、さまざまな歴史上の人物を巻き込んで徳川幕藩体制を崩壊に追い込んだあの「明治維新」にも似た昭和の時代の「国鉄維新」であったのかもしれない。少なくとも「分割・民営化」は、百年以上も続いた日本国有鉄道の「解体」であり、それはまた、敗戦そして占領から始まった「戦後」という時間と空間である「昭和」の解体をも意味していた。
- 本の長さ522ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2017/3/16
- 寸法14 x 3.1 x 19.5 cm
- ISBN-104062205246
- ISBN-13978-4062205245
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商品の説明
メディア掲載レビューほか
当局VS労組。国鉄民営化の裏で繰り広げられた熾烈な戦い
「富塚三夫」という名前を見て、即座にその顔を思い浮かべられる読者はまだ多いはずだ。日本最大の労働組合・総評(日本労働組合総評議会)の事務局長を長らくつとめた富塚のイメージは、重厚な労組官僚といったものであった。
その富塚が料亭での密談で、みずから土下座する場面が本書には出てくる。当時の肩書きは国労(国鉄〈日本国有鉄道〉労働組合)の部長。土下座の相手は国鉄当局の職員局長である。
「今後一切あなたのいうことを聞く」
と懇願する富塚を見おろして、局長は、
「富塚、お前(中略)徹底的にやろうじゃないか」
と啖呵(たんか)を切る。すると、富塚は顔色を変え、
「馬鹿にするな、俺は福島の水飲み百姓だ」
激昂して目の前の膳台を料理ごと引っくり返し、仁王立ちになるのである。
かつて流布していた労使の“馴れ合い"という見方は、この描写だけによっても一変しよう。「国鉄」が「JR」に変わる過程の水面下では、こんな熾烈(しれつ)なやりとりが繰り返され、攻守ところを変えながら、憎悪をつのらせていった。当局と労組の裏側でも、食うか食われるかの内紛が続いた。その一方、田中角栄と労組の重鎮が同郷の戦友で、始終ひそかに連絡を取り合っていたというのだから、話は一筋縄ではいかない。
私はつい、自民党・宏池会の事務局長をつとめた伊藤昌哉の『自民党戦国史』や、田中角栄の秘書だった早坂茂三の一連の著作を思い起こしたのだが、これらはいわば側近による回顧録であった。著者は違う。日本経済新聞の担当記者として両陣営に食い込み、地道な取材を重ねたアウトサイダーなのである。
国鉄の“分割・民営化"三十年目にあたる先ごろ出版されたこの大著には、中曽根康弘ら当事者への新たな取材も盛り込まれ、著者の言う「戦後最大級の政治経済事件」を日本のみならず世界の現代史に正確に位置づけようとする気概が滲(にじ)み出ている。分割・民営化の末、総評が解散した一九八九年(平成元年)にベルリンの壁が崩れ落ち、東西冷戦が終結したのは、決して偶然の一致ではない。
強大な労組の崩壊はまた、働く人々が分断され、裸同然のまま職場の寒風に晒(さら)される時代をもまねいた。
同業者としていえば、このテーマでの取材と執筆は困難を極めたはずで、複雑に入り組んだ人間関係や事の経緯(いきさつ)を、よくぞ読ませる物語(ストーリー)にまとめあげたものだと感嘆した。特に何らかの組織改革に直面している個人や集団にとっては、今後必読のテキストとなろう。
評者:野村進
(週刊文春 2017.04.27号掲載)著者について
ジャーナリスト。昭和16年(1941)、大分県生まれ。昭和39年(1964)早稲田大学第一政治経済学部政治学科卒業。同年、日本経済新聞社入社、東京本社編集局社会部に所属。サイゴン・シンガポール特派員、平成元年(1989)、東京・社会部長。その後代表取締役副社長を経て、テレビ大阪会長。著書に『サイゴンの火焔樹――もうひとつのベトナム戦争』、『「安南王国」の夢――ベトナム独立を支援した日本人』、『不屈の春雷――十河信二とその時代(上、下)』(すべてウェッジ)などがある。
登録情報
- 出版社 : 講談社; 初版 (2017/3/16)
- 発売日 : 2017/3/16
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 522ページ
- ISBN-10 : 4062205246
- ISBN-13 : 978-4062205245
- 寸法 : 14 x 3.1 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 171,383位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 126位交通関連
- - 458位鉄道 (本)
- - 4,547位その他のビジネス・経済関連書籍
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上位レビュー、対象国: 日本
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平成生まれの私にとって、そもそも国鉄の存在はせいぜい授業で少し聞いたことがある程度。
何となくストライキをしていたらしいことや、昔はよく電車が止まったなどの話を聞いたことはあったが、そのどちらにもリアリティは全く感じられなかった。
しかしながら、全盛期の労働組合の実態には改めて驚かされた。
おおよそ世間とは乖離しているにも関わらず、その認識は皆無。
一方ヒラの一従業員の扱いさえままらない国鉄当局。
これではまともに経営が成り立つはずがない。
私にとっては全てが目新しく、またこんな世界があるのかと非常に興味深く、ページ数は多いがすんなりと読むことが出来た。
また、三人組に代表されるように、どんな腐った組織にも信念を持った素晴らしい人々がいるのには勇気付けられた。
ここにないようなもっとドロドロとしたこともあったのではないかと思われるが、一つ一つの出来事について、どちらかに偏ることなく情報をまとめ上げた著者はさすが元記者だと、改めて敬服した。
国鉄解体は昭和解体。
全て読み終えた今、まさにこれは昭和解体である。
ここまでの取材力は素晴らしい。
おすすめの一冊。
第2次世界大戦後、「公共事業体」(p.31。本のタイトルのない場合は『昭和解体(略)』のページ数とする)として発足した日本国有鉄道(国鉄)。1964年から恒常的に赤字を計上することになる。モータリゼーションなどの影響もあって、貨物の需要も減少。このままでは国鉄は持たず、国民の血税、ならびに運賃がますます増加するだけである。様々なプロセスの末に分割・民営化が目指され、それは成し遂げられた。本書は、国鉄がいかに分割・民営化されたかについて、約20年のプロセスをたどったものである。
2.評価
(1)まずは筆者の「立場」(大げさかな)を。筆者は、神野直彦『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007)を信奉しているので(客観的な妥当性ではなく、筆者の主観において)、財政にまかせるか、市場にまかせるかは、ニーズ(基本的必要)か、ウォンツ(欲望)によるか(『財政のしくみがわかる本』p.117参照。ニーズであれば財政、ウォンツであれば市場にまかせる)によって判断する。本書に書かれている状況であれば(とりわけ貨物需要の減少)、民営化の(ウォンツとする)方向性は間違っていないと判断する。もっとも、p.55にある細井宗一のコメント「『国鉄なんてものは大きな赤字は困るが、大もうけしてはならない。運賃を高くしないためにはトントンか、多少の赤字がよい。米国を除いて、先進国が国鉄にしているのはそのため。その国の経済を守るために必要なんです』」というのが、現在に当てはまるかは未調査も、一理ある考え方だと思ったことも付記しておく。
(2)ただ、分割が妥当であるということを、本書は何ら示していない。p.292によると、「『西武鉄道の営業キロは国鉄のおよそ百分の一。職員の数も約百分の一』」だそうだが、これでは比率が国鉄も西武鉄道も同じとなり、本書を読んだ限りでは分割の妥当性を見いだせなかった。
(3)本書は国鉄当局と、国鉄の労働組合との抗争を中心として描いており、それ自体は妥当である。しかし、
ア.どうして国鉄の労働組合が、牧久(まき・ひさし)の書いたような状況(カラ出張その他の、第3者が見るとデタラメなことをやったこと。蛇足だが、労働組合関係者は他山の石として本書を活用すればいいかもしれない)になったのかがよくわからなかったことと、
イ.GHQや自由民主党政権のでたらめぶりも結構大きいと思われ(本書の「スト権スト」は政治ストと思われるので違法だが(私見。ただ、「団体交渉によって解決できない政治問題」(菅野和夫『労働法(第7版補正版)』(弘文堂法律学講座双書、2006。なお、最新版で確認されたし(以下において省略))p.552)が考察のヒントである)、元来は国鉄従業員でも労働三権があるのが妥当なはずである。比率からすれば小さいかもしれないが、地方にローカル線をたくさん作ったことも国鉄の経営が厳しくなったことの一因である)、過度に労働組合を貶めているように読める。
(4)p.174「人事権は経営権の根幹であり、組合の要求で変更することはできない」とあるが、牧の労働法の理解の浅さを示した文章になっている。当時の国鉄にスト権はないにしても、「組合員の人事」であれば、「義務的団交事項であり、争議行為の正当な目的たりうる」(前述『労働法』p.553)からである。すなわち、p.174の文章は間違っている。牧の労働法の理解の浅さを示しているのは、p.279からの「リボン・ワッペン問題」もそうである。「リボン・ワッペンを就業中に着用するのは、『正当な組合活動ではない』との最高裁判例」(pp.279-280)はたしかにあるが、ケース・バイ・ケースである(前述『労働法』pp.565-566参照)。
3.結論としては、国鉄問題を知ることができるという意味で星5つ、2(2)~(4)は星1つレベル、中間として星3つとする。
国鉄改革の一面を知るうえで 歴史的にも
貴重な資料となる一冊と思います。