この本はゾロアスター教に関する書物ではあるが、
ゾロアスター教が大乗仏教に与えた影響を指摘しており、非常に刺激的な内容に富んでいる。
岡田氏のような独創的な研究者は今日にあって非常に貴重な存在である。
わたし個人はゾロアスター教の内容よりもやはりこの特異な宗教が大乗仏教に与えた影響について非常に関心をそそられる。
華厳経の教主は毘盧遮那仏(ヴァイローチャナ・ブッダ)
であり、その意味は「遍く照らす光の仏」である。
これは明らかにゾロアスターの神アフラ=マズダから大乗仏教徒たちが引っ張り込んできた光仏の概念と言える。
アフラ=マズダは光の神であり、ゾロアスター教は悪魔アンラマンユとの闇と光の二元論宗教である。
華厳経というこれまた特異な経典には、他の大乗経典中にはみられない「光明」がやたらと強調される。
毘盧遮那仏成立の背景には太陽神スーリヤの影響も指摘出来るが、やはりアフラ=マズダの存在は大きい。
さて、肝心かなめのゾロアスター教そのものについては、それが近親相姦を義務化する宗教である事、人間は死後「チンワト橋」と呼ばれるこの世とあの世を繋ぐ橋を渡るということで、善人は橋の幅が広くて容易に渡れるが、悪人にとっては非常に幅が狭くて、足を滑らせば地獄へ堕ちてしまう事など、読んでいてなかなか面白い。
そして重要なのは、現在という時代は悪魔アンラマンユが地上を支配しており、世界は混乱しているのだが、やがてアフラ=マズダの神が悪魔アンラマンユを倒して至福に満ちた光の王国を打ち建てることなど、一神教的終末論を説いていることだろう。
とにかくゾロアスター教そのものには汲めども尽きない興味と関心があるのだが、
残念なことに今では宗教として存在そのものが消滅の危機にあり、インドでパーシー教と呼ばれるゾロアスター教徒がごく少数ながら命脈を保っているに過ぎない

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ゾロアスターの神秘思想 (講談社現代新書 888) 新書 – 1988/2/1
岡田 明憲
(著)
- 本の長さ197ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1988/2/1
- ISBN-104061488880
- ISBN-13978-4061488885
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商品の説明
著者について
1947年、東京生まれ。1973年、東洋大学文学部仏教学科卒。在学中、1971年〜72年にかけ、イランに留学。1979年、東海大学文明学科博士課程修了。現在、日本オリエント学会会員。専攻は、インド・イラン学。インドの演劇論やカシミールのシヴァ崇拝にも関心をもつ。著書に、『ゾロアスター教』『ゾロアスターの悪魔払い』――平河出版社――がある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1988/2/1)
- 発売日 : 1988/2/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 197ページ
- ISBN-10 : 4061488880
- ISBN-13 : 978-4061488885
- Amazon 売れ筋ランキング: - 343,232位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 127位ヒンズー教・ジャイナ教 (本)
- - 1,259位宗教入門 (本)
- - 1,305位講談社現代新書
- カスタマーレビュー:
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2017年6月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年4月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前々から大乗仏教(チベット仏教を含む)とゾロアスター教との関わり(例えば大日如来や阿弥陀仏の来歴など)について関心があったのですが、大乗仏教はともかくとして、ゾロアスター教に関する資料があまりにも少ないのです。
さいわい本書では、そのゾロアスター教と大乗仏教との関わりのみならず、ユダヤ教やキリスト教及び西洋神秘思想との関連性までもばっちりカバーして書かれてあり、読んでいて「なるほど」と思える眼ウロコ落下の連続でした。
そのような分野に興味がおありの方には、ぜひオススメしたい一冊です。
さいわい本書では、そのゾロアスター教と大乗仏教との関わりのみならず、ユダヤ教やキリスト教及び西洋神秘思想との関連性までもばっちりカバーして書かれてあり、読んでいて「なるほど」と思える眼ウロコ落下の連続でした。
そのような分野に興味がおありの方には、ぜひオススメしたい一冊です。
2020年2月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ゾロアスター教に関する本は本書が初めてだったが、構成内容ともに整理されていて読みやすかった。内容は主としてゾロアスター教の根本思想とでもいうべき善悪二元論についてと、東西宗教(キリスト教、仏教)への影響の二つ。特に仏教(密教)とのつながりについては興味深く読んだ。仏教関係の本ではゾロアスター教からの影響を指摘しているものが少なくないが、ゾロアスター教の側から見るとやや景色が違って見える。さすが世界最古の宗教だと感じた。ゾロアスターの起源はブッダ誕生より170年以上古い。ただ密教の護摩の起源をゾロアスター教の拝火儀礼とするのはちょっと無理筋のような気もする(と、著者も言っているが)。むしろ牛を神聖視するヒンドゥー教との関連はどうなのだろう。このことについての記述はなかった。神智学にも影響が及んでいるという。初版は1988年と古いが、初めてゾロアスター教について読む人には興味が尽きず面白いかと思う。