全体の1/4ぐらい、第一章のサラブレッドの話が終わるまで、アムールヒョウ大好きだけど悩み惑っている青年飼育員ハル君と高校を出たての「不思議ちゃん」向島さんを中心とする動物園のお話は淡々としていて、「いったいどうなるのよ、この話」といった感じでした。
しかし、中年の雌アジア象と中年の女性飼育員の話から家庭とか出産とかがからんで広がりだし、次のゾウガメ話では老年と人生の思い出についてで盛り上がり、動物園の動物を軸に人間たちの家族への思いが展開しだしてからは、もう本を置けなくなりました。
そして、第四章で、ハル君と向島さんが、共にアムールヒョウに対して特別な繋がりと感情を持っていることが分かり、いろいろなことに辻褄が合って、飼育員の使命、動物と向き合うことの意味を考えつつ、若者たちは未来への方向を見出していきます。もう迷わないで進める!
著者は自分のこれまでの著作の内で一番純粋な「愛についての物語」だと書いていますが、私は「生きることの尊厳」について感じるところがありました。
美奈川さんのいつもの作品のように、ちょっと変わっているが聡明で一途な若い女性と、未熟だけれど彼女に一生懸命対応する男性が、恋愛ではなく各自が心の底から思ってきたものを、悩み戦いながら追い求める構造です。本来野生の生き物を人間に見せながら守っていく動物園という重いテーマですが、読後感はとても爽やかです。
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キーパーズ 碧山動物園日誌 (メディアワークス文庫) 文庫 – 2013/8/24
美奈川護
(著)
- 本の長さ386ページ
- 言語日本語
- 出版社アスキー・メディアワークス
- 発売日2013/8/24
- ISBN-104048919105
- ISBN-13978-4048919104
登録情報
- 出版社 : アスキー・メディアワークス (2013/8/24)
- 発売日 : 2013/8/24
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 386ページ
- ISBN-10 : 4048919105
- ISBN-13 : 978-4048919104
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,824,152位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,830位メディアワークス文庫
- - 43,741位日本文学
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2013年8月26日に日本でレビュー済み
「人に歴史あり」とライトノベルであればモブ扱いされそうな市井の人々の人生に光を当てる美奈川護作品
宅配便、市民オーケストラに続いて今回取り扱うのは動物園に関わる人々の人生。期待を裏切らない新シリーズ開幕です
物語は幼い頃に碧山動物園に飼育されている一頭のアムールヒョウ「ガイア」の姿に心を奪われ、そのまま動物園の飼育員に
なってしまった青年・鳥飼晴樹が「現場から外してほしい」と異動願を提出場面から始まる。老いて死を待つだけになった
「ガイア」を前に飼育員としての動物との向き合い方に迷いを持ってしまった晴樹の前に風変わりな少女、理央が現れる。
彼女は「自分には動物たちの言葉が分かる」と主張し、それを証明するかのごとき動物の扱いを見せるが…
やっぱり美奈川護は期待を裏切らない作家だ。本作でも前作までと変わらず人と動物の交わりを通じて「普通の人々の人生」が
いかに豊かで敬意を払うべきものであるかを描いてくれている。それはベテランの飼育員と彼女以外に懐かない象の女としての人生であったり、
遥か昔に亡くした娘の日記をもとに動物園に通い詰める老人と人より遥かに長生きする陸ガメの存在であったり、対象に対する
執着をベースにした「人生の描き方」が途方もなく巧い。思わず「素晴らしきかな、人生!」と叫びたくなる作風です
これまでの作風を守る一方で新作として語るべきところも多い。「動物園とはいかなる場であるべきか?」、「飼育員は動物の
生死とどのように向き合うべきなのか?」という重いテーマに真正面から組み合った所は大いに賞賛したい。主人公・晴樹や
彼を取り巻く飼育員たちが無理解な世間からは「本来野生に生きるべき動物を見世物にしている」という偏見の中でこれらの問いに
答えは出ないままに誠実に向き合っている姿も好印象
ただ、個人的にはヒロインの理央がやや作品の中で「浮いた」存在になっているのが気になった。彼女の家族とアムールヒョウの
関わり合いを通じて晴樹の迷いに一つの導きを与えるのは分かるけど、理央の能力や独特過ぎるキャラ(慇懃な喋り方がちょっと「化物語」の
八九寺っぽい)がリアルな人々の中でどうにも一人だけライトノベルっぽいというか噛み合わない印象を受けた
ともあれ、人と動物の交わりの中で従来通り「人生の豊かさ」を謳い上げる美奈川節は健在。「ヴァンダル画廊街の奇跡」から続く人生賛歌を
期待する読者の期待にきっちり応えてくれる従来のファンはもちろん、新規の読者の方でも読んで損のない一冊です
宅配便、市民オーケストラに続いて今回取り扱うのは動物園に関わる人々の人生。期待を裏切らない新シリーズ開幕です
物語は幼い頃に碧山動物園に飼育されている一頭のアムールヒョウ「ガイア」の姿に心を奪われ、そのまま動物園の飼育員に
なってしまった青年・鳥飼晴樹が「現場から外してほしい」と異動願を提出場面から始まる。老いて死を待つだけになった
「ガイア」を前に飼育員としての動物との向き合い方に迷いを持ってしまった晴樹の前に風変わりな少女、理央が現れる。
彼女は「自分には動物たちの言葉が分かる」と主張し、それを証明するかのごとき動物の扱いを見せるが…
やっぱり美奈川護は期待を裏切らない作家だ。本作でも前作までと変わらず人と動物の交わりを通じて「普通の人々の人生」が
いかに豊かで敬意を払うべきものであるかを描いてくれている。それはベテランの飼育員と彼女以外に懐かない象の女としての人生であったり、
遥か昔に亡くした娘の日記をもとに動物園に通い詰める老人と人より遥かに長生きする陸ガメの存在であったり、対象に対する
執着をベースにした「人生の描き方」が途方もなく巧い。思わず「素晴らしきかな、人生!」と叫びたくなる作風です
これまでの作風を守る一方で新作として語るべきところも多い。「動物園とはいかなる場であるべきか?」、「飼育員は動物の
生死とどのように向き合うべきなのか?」という重いテーマに真正面から組み合った所は大いに賞賛したい。主人公・晴樹や
彼を取り巻く飼育員たちが無理解な世間からは「本来野生に生きるべき動物を見世物にしている」という偏見の中でこれらの問いに
答えは出ないままに誠実に向き合っている姿も好印象
ただ、個人的にはヒロインの理央がやや作品の中で「浮いた」存在になっているのが気になった。彼女の家族とアムールヒョウの
関わり合いを通じて晴樹の迷いに一つの導きを与えるのは分かるけど、理央の能力や独特過ぎるキャラ(慇懃な喋り方がちょっと「化物語」の
八九寺っぽい)がリアルな人々の中でどうにも一人だけライトノベルっぽいというか噛み合わない印象を受けた
ともあれ、人と動物の交わりの中で従来通り「人生の豊かさ」を謳い上げる美奈川節は健在。「ヴァンダル画廊街の奇跡」から続く人生賛歌を
期待する読者の期待にきっちり応えてくれる従来のファンはもちろん、新規の読者の方でも読んで損のない一冊です
2013年9月6日に日本でレビュー済み
最後まで読んでみて、結局動物と話せる能力は特に必要無かったのでは?と思いました。
動物や人の経歴や記録を見れば予測がつく問題ばかりでした。
動物や人の経歴や記録を見れば予測がつく問題ばかりでした。