とても面白かったです。
学者らしく文献に則っていながら、堅苦しさがなく、ノンフィクションに近いフィクションのようです。
紫式部は見過ごされがちな人の心、感情を源氏物語に書いたのだと感じました。
高貴な人の心から、捨てられても省みられない人の心まで、優しく包み込むように。
これまで「真名かきちらし」云々と清少納言を批評したことで、私は紫式部を好きになれませんでした。
でも、それは、紫式部が作者が漢詩を書いた時の想いを大切にしたからではなかったか。
清少納言を始めとする定子のサロンは、漢詩を知的でお洒落な会話の道具として使った。
紫式部はそんな漢詩の用い方を是としなかったかもしれない。
そう考えると、紫式部のその誠実さが好きになりました。
静かに内にこもって自分自身と対話してきたからこそ、紫式部は源氏物語を書き上げることができた、そんな印象を受けました。

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私が源氏物語を書いたわけ 紫式部ひとり語り 単行本 – 2011/10/21
山本 淳子
(著)
侍女になりたくなかった紫式部が中宮の侍女となった理由、宮中の人付き合いの難しさ、主人中宮彰子への賛嘆、ライバル清少納言への批判……。『源氏物語』の時代の宮廷生活、執筆動機がわかる!
- 本の長さ253ページ
- 言語日本語
- 出版社角川学芸出版
- 発売日2011/10/21
- ISBN-104046532483
- ISBN-13978-4046532480
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商品の説明
著者について
1960年石川県生まれ。京都大学大学院博士課程修了。現在、京都学園大学教授。著書に『紫式部日記 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫)、『源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり』(朝日選書 サントリー学芸賞受賞)、『紫式部集論』(和泉書院)など。
登録情報
- 出版社 : 角川学芸出版 (2011/10/21)
- 発売日 : 2011/10/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 253ページ
- ISBN-10 : 4046532483
- ISBN-13 : 978-4046532480
- Amazon 売れ筋ランキング: - 122,692位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2020年3月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いやあ、面白かった。途中、少々退屈になるところもあったが、後半になって高波が押し寄せてくるのを感じた。「紫式部日記」「紫式部集」—-と引用され、いや紫式部が自己の頭の中、中国の古典等を引き合いに女房として働く我が身を語っている。小説風に読んで頂けるのは嬉しいが、創作でもなければ、小説でもない、学問に裏付けられたものであると述べられている。半世紀近く、実験科学の世界に実を置いた私にとって古典文学とはどんなことをするのか、どんな手法で研究するのかを知ったことは新鮮であった。
2015年3月5日に日本でレビュー済み
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当時の身分制度の辛さとか深い洞察力があって書きたい気持ちに突き動かされたと思います
2013年3月1日に日本でレビュー済み
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見事ですね。式部には三つの作品があります。いうまでもなく源氏物語、紫式部日記、それにあまり知られることのない紫式部集です。この三つを資料としながら、その有機的な関連を探りながら、そこに紫式部の深層に迫ったミステリーといってもいいでしょう。著者には、
紫式部日記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)
という初心者向けの抜粋本もあります。
その中で、娘の存在、道長とのかかわりも探られていきます。しかしながらはっきりと論証できない部分は余韻を醸して読者の想像に任せられています。これが学者としての矜持なのか、それとも「語り手」としての美意識なのかはわかりませんが。
特にその中で重要な役割を果たすのが、紫式部集です。ここに収められている和歌の解釈は式部の人生の時間的な経過に骨格を与えるものです。著者の「歌集を作ろう。そこに再び生き生きと蘇るように。私の人生の形見。その中で、誰もみな、どの思い出たちもすべて、命を超えて生き続けるのだ。」という解釈は美しいな。おそらくこの部分には著者の思いが強く投影されているのでしょうが、最後の歌の解釈はあまりにも現代の「生」への価値観が投影されているような印象が残ります。
それにしても、著者の年齢が、清水好子先生が 紫式部 (岩波新書) を書いた時の年齢と接近しているのは、何か偶然を超えた意味があるのかな。共に50代前半なんですね。
その中で、娘の存在、道長とのかかわりも探られていきます。しかしながらはっきりと論証できない部分は余韻を醸して読者の想像に任せられています。これが学者としての矜持なのか、それとも「語り手」としての美意識なのかはわかりませんが。
特にその中で重要な役割を果たすのが、紫式部集です。ここに収められている和歌の解釈は式部の人生の時間的な経過に骨格を与えるものです。著者の「歌集を作ろう。そこに再び生き生きと蘇るように。私の人生の形見。その中で、誰もみな、どの思い出たちもすべて、命を超えて生き続けるのだ。」という解釈は美しいな。おそらくこの部分には著者の思いが強く投影されているのでしょうが、最後の歌の解釈はあまりにも現代の「生」への価値観が投影されているような印象が残ります。
それにしても、著者の年齢が、清水好子先生が 紫式部 (岩波新書) を書いた時の年齢と接近しているのは、何か偶然を超えた意味があるのかな。共に50代前半なんですね。
2011年10月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
紫式部が生きていて、正直に話してくれたら、という本です。『源氏物語の時代』もわくわくして読めましたが、こちらは、やさしく書いてはあるけれど、正統的な本でした。今回は、小説みたいにすらすら読めるのですが、最新の研究成果を踏まえていることが分ります。素晴らしいアイディアだと思います。
2011年12月3日に日本でレビュー済み
紫式部の心情にここまで寄り添って書いていることに尊敬しました。
いかにも零落した貴族のお嬢様らしい矜持やもろもろの不満など、
「たぶんこんな人だったんだろうな、理解できるけどやな女だな」と
大抵の女は共感しながら嫌悪してしまうだろう紫式部の性格を
まるごと飲みこんで自伝風にしたのはすごい。
愛情がなくてはできない作業だと思いました。
そして、本当によく研究されて書かれているんだなと感心しました。
「身」と「世」の考え方が、この本で理解できたような気がします。
清少納言が皇后定子を敬慕の対象として慕っていたのに対し、
紫式部はそれほど……と思っていたのですが、この本で紫式部も
彰子に対し、別の形で尊敬していたのだろうなと感じられて
彰子贔屓としてはなんだか嬉しくなってしまいました。
あまり古典になじみのない人にも読みやすく、かつ
古典好きの人にも納得の一冊ではないでしょうか。
いかにも零落した貴族のお嬢様らしい矜持やもろもろの不満など、
「たぶんこんな人だったんだろうな、理解できるけどやな女だな」と
大抵の女は共感しながら嫌悪してしまうだろう紫式部の性格を
まるごと飲みこんで自伝風にしたのはすごい。
愛情がなくてはできない作業だと思いました。
そして、本当によく研究されて書かれているんだなと感心しました。
「身」と「世」の考え方が、この本で理解できたような気がします。
清少納言が皇后定子を敬慕の対象として慕っていたのに対し、
紫式部はそれほど……と思っていたのですが、この本で紫式部も
彰子に対し、別の形で尊敬していたのだろうなと感じられて
彰子贔屓としてはなんだか嬉しくなってしまいました。
あまり古典になじみのない人にも読みやすく、かつ
古典好きの人にも納得の一冊ではないでしょうか。
2011年12月11日に日本でレビュー済み
“私が・・・わけ”という題名と薄紫っぽい装丁からは、マンガ連載の古典ものの単行本化のように思えるが、中身は本格的な紫式部伝である。
おそらく現在の日本で紫式部のことを最も深く理解していると思われる著者が、紫式部の一人語りの形で、その生い立ち、結婚、死別、女御としての出仕。。。を克明に描き出している。
そこには紫式部の息遣いまで感じられる。
というと難しくなりがちだが、教育者としての経験も十分な著者の配慮で、詩文にはすべて現代語訳がつき、平安期の諸事情もさりげなく解説してあり、私のような素人にも十二分に楽しめた。
特に今まで式部の和歌は華がなく、抑制された感じでもう一つつまらないと感じていたが、その背後に豊かな式部の経験と想いがぎっしりと詰まっていることがわかり、大きな収穫であった。
おそらく現在の日本で紫式部のことを最も深く理解していると思われる著者が、紫式部の一人語りの形で、その生い立ち、結婚、死別、女御としての出仕。。。を克明に描き出している。
そこには紫式部の息遣いまで感じられる。
というと難しくなりがちだが、教育者としての経験も十分な著者の配慮で、詩文にはすべて現代語訳がつき、平安期の諸事情もさりげなく解説してあり、私のような素人にも十二分に楽しめた。
特に今まで式部の和歌は華がなく、抑制された感じでもう一つつまらないと感じていたが、その背後に豊かな式部の経験と想いがぎっしりと詰まっていることがわかり、大きな収穫であった。
2012年2月17日に日本でレビュー済み
紫式部の一人語りの体裁になっている。紫式部のことは「源氏物語」、「紫式部日記」、「紫式部集」を中心として「御堂関白日記」、「日本紀略」、「古今集」などをもとに詳細な生涯を再構成している。本物の紫式部の話を聞いているような感じに打たれた。式部の考えや感情が多くの式部作の短歌によって彩が付けられ楽しい歌物語になっている。これほど鮮やかに1000年前に存在した作家を記録にそって浮かびあがらせることが出来るという事実に日本の文化の厚みと深さを実感した。この本で紫式部は1000年後の現代においても魅力的な人物との印象をもつことが出来た。平家物語はよく読んでいたが源氏物語はとっつきにくいと思っていた。源氏物語と紫式部を持てた日本人はなんと幸せなことかと思った。