中学生の時から付き合い始めてそのまま結婚した冬乃と佐々井。夫婦円満でやってきたがすきま風が吹きだした。佐々井が浮気をしているわけではない。身を粉にして働き、職場の後輩の面倒見もいい。自然にエールを送ってしまうような主人公2人だ。
「食事の用意をすることでしか私は夫と繋がれないような気がしていた」(本書200~201ページ)から、冬乃は彼のために料理を作り続ける。お弁当を作り続ける(佐々井の後輩川崎君の分も)。たとえ妹の菫が経営するカフェの厨房に立ち続けているときでも。そんな冬乃だから、2人がめずらしくお互いの不満をぶちまけ、別れ話まででたときに一番カチンときたのは、佐々井が勤め先を辞めたことを冬乃に言い、これからはもう僕の食事のことは気を遣わなくていいから、と宣言したときだった。
それでも読者は、そこに至るまでの描写で2人の仲はこわれることはないと十二分に確信できる。夫婦ゲンカの数日後、妹に裏切られ、言葉巧みにカフェをクビにされた冬乃は、どんな仕事でもチャレンジしてみよう、自分は生まれ変わったと感じ帰宅した。家では佐々井が、挽き肉と豆のカレーを久しぶりに作って待っていた。佐々井が食事を用意して妻と繋がろうとしていた。本書の中で評者が一番好きなシーンだ。
「私は生まれてこの方恋愛らしい恋愛をしてこなかったし、これから先もしないと思う」(本書190ページ)と冬乃は心の中でつぶやく。安定した男女関係と恋愛は両立しないのだろうか。たしかに、同じ著者による『恋愛中毒』では両立していなかった。でも、「恋愛」は当事者2人だけのものであってステレオタイプ化できるものではないはずだ。
私はもう以前の私じゃないと覚醒した冬乃は、両親との悪しき慣行にもついにケリをつけた。あとは自分の恋愛観からも早く抜け出してほしい。抜群の安定感を誇る2人の恋愛。そのことに早く気づいてほしい。いや、冬乃は生まれ変わったのだから、きっともう気づいているだろう。
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なぎさ (角川文庫) 文庫 – 2016/6/18
山本 文緒
(著)
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購入オプションとあわせ買い
故郷を飛び出し、静かに暮らす同窓生夫婦。夫は毎日妻の弁当を食べ、出社せず釣り三昧。行動を共にする後輩は、勤め先がブラック企業だと気づいていた。家事だけが取り柄の妻は、妹に誘われカフェを始めるが。
- 本の長さ400ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA/角川書店
- 発売日2016/6/18
- 寸法10.7 x 1.5 x 15 cm
- ISBN-104041039894
- ISBN-13978-4041039892
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商品の説明
著者について
●山本 文緒:1962年11月13日横浜生まれ。 神奈川大学卒業後、OL生活を経て、87年「プレミアム・プールの日々」でコバルト・ノベル大賞、佳作受賞。 99年「恋愛中毒」で第20回吉川英治文学新人賞、 2001年「プラナリア」で第124回直木賞受賞。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA/角川書店; 一般文庫版 (2016/6/18)
- 発売日 : 2016/6/18
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 400ページ
- ISBN-10 : 4041039894
- ISBN-13 : 978-4041039892
- 寸法 : 10.7 x 1.5 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 288,012位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1962年神奈川県生まれ。OL生活を経て、人間関係の繊細なずれから生じる喪失、慈しみをテーマに作家活動を続け、現在に至る。『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞を、『プラナリア』で第124回直木賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 再婚生活 私のうつ闘病日記 (ISBN-13: 978-4041970164)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年8月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「小説野性時代」に連載中の時、毎月楽しみにしていた作品です。
特に大きなことが起こるでもない(登場人物にとっては大きなことかもしれませんが)、誰にでも起こりうる日常のお話ですが、主人公やその周りの気持ちの揺れや葛藤が事細かに見事に描かれていて、様々な登場人物の心の中を覗き見させてもらっている気分でした。
少し前、たまたま横須賀の方に行く用事があったので、舞台となった久里浜にも行ってみました。
冬乃がカフェを開いたのはこの辺かなあ、ああイオンが本当にある、佐々井君と川崎君がさぼっていた港はこのあたりかなあ(本当にこの二人のようなサラリーマンが釣りをしていて笑ってしまいました)、などと思いを巡らせながら車でまわってみました。
初めて行ったのに、懐かしくなりました。
特に大きなことが起こるでもない(登場人物にとっては大きなことかもしれませんが)、誰にでも起こりうる日常のお話ですが、主人公やその周りの気持ちの揺れや葛藤が事細かに見事に描かれていて、様々な登場人物の心の中を覗き見させてもらっている気分でした。
少し前、たまたま横須賀の方に行く用事があったので、舞台となった久里浜にも行ってみました。
冬乃がカフェを開いたのはこの辺かなあ、ああイオンが本当にある、佐々井君と川崎君がさぼっていた港はこのあたりかなあ(本当にこの二人のようなサラリーマンが釣りをしていて笑ってしまいました)、などと思いを巡らせながら車でまわってみました。
初めて行ったのに、懐かしくなりました。
2021年12月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容が自分に合わなかったので、途中で読むのを中断しました。他の作品、恋愛中毒やプラナリアは好きでした。
2016年12月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ブラック企業を辞められない男達、居候の妹の知り合いが住み込んでも何も言わない夫婦、生活保護を受けている親に送金を続ける娘、妹の勢いに押されてカフェを始めちゃう姉さん、気まぐれな男に振り回されてカッコよく生きている気になっている馬鹿女。芸人目指していたことにすがって生きている自分に甘い馬鹿。
結構どうしようもない人達のオンパレード。血のつながりなんか大した問題じゃない、気の合う人達と楽しく人生を謳歌した方がいいんじゃない。
最後、「これで終わりなの?」と言いたくなるような終わり方だったけど、それまでは楽しく読めました。
結構どうしようもない人達のオンパレード。血のつながりなんか大した問題じゃない、気の合う人達と楽しく人生を謳歌した方がいいんじゃない。
最後、「これで終わりなの?」と言いたくなるような終わり方だったけど、それまでは楽しく読めました。
2023年1月13日に日本でレビュー済み
物語の舞台となるエリアは私の出身地なので、興味深く本を手に取った。
主人公の冬乃は、あまりにも私と同じ思考回路で驚いた。この人、私?と思った。結婚して子供がいなくて仕事もなくて、幸せに暮らしてるはずなのに未来を諦めてる感じがすごく似ていた。
雪乃には、カフェを開いたり所さんにお世話になる転換点が生まれて、急に人生を責の姿勢で突き進もうというスイッチが入る。性格が生まれ変わったのだ。
私にもそんな日が、そんな出来事が起こったらいいのになあ。
著者山本文緒さんが亡くなってショックでした。
これから過去の作品を全部総ざらいしようと思います。
主人公の冬乃は、あまりにも私と同じ思考回路で驚いた。この人、私?と思った。結婚して子供がいなくて仕事もなくて、幸せに暮らしてるはずなのに未来を諦めてる感じがすごく似ていた。
雪乃には、カフェを開いたり所さんにお世話になる転換点が生まれて、急に人生を責の姿勢で突き進もうというスイッチが入る。性格が生まれ変わったのだ。
私にもそんな日が、そんな出来事が起こったらいいのになあ。
著者山本文緒さんが亡くなってショックでした。
これから過去の作品を全部総ざらいしようと思います。
2015年3月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
久しぶりに彼女の作品を読みました。
感想は・・・なんだかみんな微妙にいい子ちゃんばっかりでちょっと物足りませんでした。
以前の彼女の作品に出てきたような、本能の赴くままに生きる鬼畜のような人間がもっと活躍してもいいと思いました。
唯一どろどろした熱い気持ちをもてたのは、主人公姉妹の両親が出てきた最後の数ページくらいでした。
「なぎさ」・・・確かにタイトルは爽やかですし、作品にあっているかもしれませんけどね。
山本文緒氏もやはり作家として落ち着く年代に差し掛かったということでしょうか。
でもファンとしては物足りないです。もっと毒があってもいいです。
読んでいるこちらが怒髪天を突くくらい強烈な登場人物の再登場を望みます。
感想は・・・なんだかみんな微妙にいい子ちゃんばっかりでちょっと物足りませんでした。
以前の彼女の作品に出てきたような、本能の赴くままに生きる鬼畜のような人間がもっと活躍してもいいと思いました。
唯一どろどろした熱い気持ちをもてたのは、主人公姉妹の両親が出てきた最後の数ページくらいでした。
「なぎさ」・・・確かにタイトルは爽やかですし、作品にあっているかもしれませんけどね。
山本文緒氏もやはり作家として落ち着く年代に差し掛かったということでしょうか。
でもファンとしては物足りないです。もっと毒があってもいいです。
読んでいるこちらが怒髪天を突くくらい強烈な登場人物の再登場を望みます。
2017年12月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
登場人物のそれぞれが自分の身近に居そうなタイプで、つい感情移入してしまう。
痛快とは程遠い、どちらかと言えば暗いドラマなのに、どこか爽やかな読み心地で引き込まれて行く。
痛快とは程遠い、どちらかと言えば暗いドラマなのに、どこか爽やかな読み心地で引き込まれて行く。
2022年5月15日に日本でレビュー済み
10代の頃に山本文緒の小説を好んで読んでいたが、当時は青春時代特有の鬱々した暗い想いを言葉に表してくれる存在として好きな作品も多かったが、自我がはっきりしてから久しぶりに読むと何故出てくる登場人物が本音を出さないのか分からない。
自分が可愛く、プライドが高く、人のせいにしてこんなはずじゃなかったと生きていく。
全く共感を得ないが、もしかすると世の中の大半はそう言う人が多いのかと、そういう意味で勉強になる。
良い意味で山本文緒を卒業できたのかもしれない。
語り手が変わっていくのが読みにくく、テクニックが追いついていない気がする。
改めて恋愛中毒を読み返したが、あちらは今でも傑作だと思う。
自分が可愛く、プライドが高く、人のせいにしてこんなはずじゃなかったと生きていく。
全く共感を得ないが、もしかすると世の中の大半はそう言う人が多いのかと、そういう意味で勉強になる。
良い意味で山本文緒を卒業できたのかもしれない。
語り手が変わっていくのが読みにくく、テクニックが追いついていない気がする。
改めて恋愛中毒を読み返したが、あちらは今でも傑作だと思う。