《生活風俗に関する情報は、日本の史料にはあまり記されていない。当時の日本人にとっては、ごくありふれたものだから、わざわざ書きとめておこうという考えが生じにくいのである。だから、異邦人の日本観察日記が大きな価値を持つ。『朝鮮王朝実録』は朝鮮王朝の歴史書(本書255p)だが、日本史を知る上でも必須の史料なのだ》というのはなるほどな、と(p.168)。例えば、中世日本では屋根の下に板で棚をつくり商品を置いているので、朝鮮のように地べたに置いて売るのは不衛生だと「見世棚」を褒めているところや、入浴好きで銭湯が多いことや、農村にも水車があることなども観察されています。
江戸時代だけでなく室町時代にも朝鮮使節使は来日していたのは知らなかったし、屋根の下に棚をつくってそこに商品を並べる日本の市場を清潔だと礼賛する一方、白昼堂々遊女か商売していることや男娼の多さには儒教的に眉を顰めているのも面白かった。江戸時代にやって来た使節の申維翰は、男娼の多さに辟易として「奇怪極まる」と接待役だった雨森芳洲に苦言を呈したが、堅物なイメージの芳洲が「学士はまだその楽しみを知らざるのみ」と男色を礼賛したというのにも驚愕しました(p.169)。
同じように知らなかったのが島津家久(島津貴久の息子、中務の家久)が薩摩~伊勢神宮の参拝道中記『家久君上京日記』。今さら自分の無知には驚きませんが、道中に設けられていた関所にイヤ気がさして家臣たちと打ち壊して進んだり、信長の行進を見物したり、町人と酒を酌み交わしたり楽しい道中は素晴らしい限り。ここでも網野善彦先生の《旅をしている間、とくに神社、寺院への物詣などの場合には、旅人は世俗の縁とは切れているのではないか》という文章を引用し《私は網野の無縁論には批判的だが(『一揆の原理』)、旅が人を自由にするという点は同感である。水戸黄門のドラマが人気を博するのも、旅の本質をついているからではないだろうか》という部分はいいな、と。
これも含めて、意外に思ったのが網野善彦先生への高い評価。[はじめに]でいきなり触れられている『日本の歴史をよみなおす』は付録の「さらに中世を知りたい人のためのブックガイド」でも最初に取り上げられています。網野史観は本流の日本史研究家からは排除されたのではないかと思っていたので《今や中世社会史は網野抜きには語れない》という高評価には驚愕しました(p.241)。
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日本中世への招待 (朝日新書) 新書 – 2020/2/13
呉座勇一
(著)
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購入オプションとあわせ買い
「中世史に詳しい」と自負する歴史ファンにとっての中世とは、
大きな合戦や信長や信玄などの武将を指すのではないだろうか。
中世は戦が相次ぐ時代ではあるが、人々は毎日戦っていたわけではない。
彼らは当然、私たちと同じような日常を送っていたのだ。
それでは、中世に生きる人々の暮らしはどのようなものだったのか? 結婚や離婚、出産や葬儀、遺産相続、さらには旅行や接待、出向まで、
今に繋がる中世日本人の日々の暮らしや習慣を詳細に読み解く初めての一冊。
庶民と酒を酌み交わす殿様もいた!
漢字を書けない鎌倉武士。
居眠りを禁じる武家の道徳教育。
前妻が後妻を襲う「後妻打(うわなりうち)」。
戦ばかりではない、今に繋がる日本人の生活がここにある!
戦の世における、人々の日常生活とは
山伏や陰陽師などにより祈祷が捧げられた出産、
口を開けて舌を出したり、唾を飛ばすことを戒める武家の家訓、
死傷者まで出た、子どもの日の石合戦、
現代と変わらない、年長者による説教と自慢話……。
知られざる、中世日本人の姿に迫る!
[目次]
はじめに
【第一部】 人生の歴史学
●中世の家族
女性天皇は中継ぎか?/氏から家へ/中世的「家」は男系継承/中世的「家」は永続が義務「/一夫一婦制」の成立/婿取婚から嫁取婚へ/鎌倉武士は嫁取婚/源義経の嫁取婚/北条政子の「後妻打」/中世百姓の「家」と結婚/中世女性の離婚/離婚・再婚の男女不平等/中世の「妻敵打」/中世の財産相続/中世武士の兄弟関係
●中世の教育
日欧の教育の違い/武家の道徳教育/文武両道の勧め/武家の帝王学/一般武士の識字能力/ 顕密寺院での高等教育/顕密寺院での初等教育/貴族社会での初等教育/禅僧が朱子学を教えた/禅院の実学志向/足利学校の「再興」/足利学校の教育/寺院学校の普及/庶民の教育
●中世の生老病死
中世の産屋/出産は公開されていた?/出産のケガレ/中世の老い/中世の医療/中世の医科/貴族の葬送/庶民の葬送とケガレ
【第二部】 交流の歴史学
中世の宴会/中世の寺社めぐり/中世の誕生日会/中世のお正月/中世の外国人/中世の集団生活/中世の接待/中世の遊戯/中世の手紙/中世の贈答/中世のものまね/中世の旅行案内人/中世の旅行/中世の花まつり/中世のこどもの日/中世の見物/中世の同僚/中世の「出向」/中世のおもてなし/中世の引っ越し/中世の自慢話/中世の悪口/中世の人生相談/中世の対談/中世の読者
【 付録 】 さらに中世を知りたい人のためのブックガイド
網野善彦 『日本の歴史をよみなおす(全)』(ちくま学芸文庫)
藤木久志 『雑兵たちの戦場』(朝日選書)
清水克行 『 世界の辺境とハードボイルド室町時代』(集英社文庫)
ほか
おわりに
大きな合戦や信長や信玄などの武将を指すのではないだろうか。
中世は戦が相次ぐ時代ではあるが、人々は毎日戦っていたわけではない。
彼らは当然、私たちと同じような日常を送っていたのだ。
それでは、中世に生きる人々の暮らしはどのようなものだったのか? 結婚や離婚、出産や葬儀、遺産相続、さらには旅行や接待、出向まで、
今に繋がる中世日本人の日々の暮らしや習慣を詳細に読み解く初めての一冊。
庶民と酒を酌み交わす殿様もいた!
漢字を書けない鎌倉武士。
居眠りを禁じる武家の道徳教育。
前妻が後妻を襲う「後妻打(うわなりうち)」。
戦ばかりではない、今に繋がる日本人の生活がここにある!
戦の世における、人々の日常生活とは
山伏や陰陽師などにより祈祷が捧げられた出産、
口を開けて舌を出したり、唾を飛ばすことを戒める武家の家訓、
死傷者まで出た、子どもの日の石合戦、
現代と変わらない、年長者による説教と自慢話……。
知られざる、中世日本人の姿に迫る!
[目次]
はじめに
【第一部】 人生の歴史学
●中世の家族
女性天皇は中継ぎか?/氏から家へ/中世的「家」は男系継承/中世的「家」は永続が義務「/一夫一婦制」の成立/婿取婚から嫁取婚へ/鎌倉武士は嫁取婚/源義経の嫁取婚/北条政子の「後妻打」/中世百姓の「家」と結婚/中世女性の離婚/離婚・再婚の男女不平等/中世の「妻敵打」/中世の財産相続/中世武士の兄弟関係
●中世の教育
日欧の教育の違い/武家の道徳教育/文武両道の勧め/武家の帝王学/一般武士の識字能力/ 顕密寺院での高等教育/顕密寺院での初等教育/貴族社会での初等教育/禅僧が朱子学を教えた/禅院の実学志向/足利学校の「再興」/足利学校の教育/寺院学校の普及/庶民の教育
●中世の生老病死
中世の産屋/出産は公開されていた?/出産のケガレ/中世の老い/中世の医療/中世の医科/貴族の葬送/庶民の葬送とケガレ
【第二部】 交流の歴史学
中世の宴会/中世の寺社めぐり/中世の誕生日会/中世のお正月/中世の外国人/中世の集団生活/中世の接待/中世の遊戯/中世の手紙/中世の贈答/中世のものまね/中世の旅行案内人/中世の旅行/中世の花まつり/中世のこどもの日/中世の見物/中世の同僚/中世の「出向」/中世のおもてなし/中世の引っ越し/中世の自慢話/中世の悪口/中世の人生相談/中世の対談/中世の読者
【 付録 】 さらに中世を知りたい人のためのブックガイド
網野善彦 『日本の歴史をよみなおす(全)』(ちくま学芸文庫)
藤木久志 『雑兵たちの戦場』(朝日選書)
清水克行 『 世界の辺境とハードボイルド室町時代』(集英社文庫)
ほか
おわりに
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2020/2/13
- 寸法17.2 x 10.7 x 1.4 cm
- ISBN-104022950579
- ISBN-13978-4022950574
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商品の説明
出版社からのコメント
現代でも話題になる結婚や離婚、
誰もが不安を抱く病気や葬儀、
それに伴う遺産相続、
将来を見据えての教育体制……。
それらは、中世の日本でどのように行われてきたのか?その他、年始の挨拶やお中元、引っ越しから旅行まで、中世の日本人の習慣を詳細に読み解く一冊。
誰もが不安を抱く病気や葬儀、
それに伴う遺産相続、
将来を見据えての教育体制……。
それらは、中世の日本でどのように行われてきたのか?その他、年始の挨拶やお中元、引っ越しから旅行まで、中世の日本人の習慣を詳細に読み解く一冊。
登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2020/2/13)
- 発売日 : 2020/2/13
- 言語 : 日本語
- 新書 : 288ページ
- ISBN-10 : 4022950579
- ISBN-13 : 978-4022950574
- 寸法 : 17.2 x 10.7 x 1.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 207,732位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1980年8月、東京に生まれる。
1999年4月、東京大学教養学部(前期課程)文科Ⅲ類入学。
2001年4月、東京大学文学部歴史文化学科日本史学専修課程進学。
2003年3月、東京大学文学部(歴史文化学科日本史学専修課程)卒業。
2003年4月、東京大学大学院人文社会系研究科(日本文化研究専攻日本史学専門分野)修士課程入学。
2005年3月、東京大学大学院人文社会系研究科(日本文化研究専攻日本史学専門分野)修士課程修了(文学修士)。
2005年4月、東京大学大学院人文社会系研究科(日本文化研究専攻日本史学専門分野)博士課程進学。
2008年3月、東京大学大学院人文社会系研究科(日本文化研究専攻日本史学専門分野)博士課程単位取得満期退学。
2011年6月、東京大学より博士(文学)を授与される。
2005年4月より2008年3月まで、日本学術振興会特別研究員DC。
2008年4月より2011年3月まで、日本学術振興会特別研究員PD。
現在、東京大学大学院人文社会系研究科研究員。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年3月1日に日本でレビュー済み
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2020年2月15日に日本でレビュー済み
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売れっ子の割にやっつけ感のにじむ帯が、微妙な空気を漂わせる。
帯には「庶民と酒を酌み交わす殿様もいた!」とあるが、
これは島津家久の上洛時のエピソードで、本文中では明確に「殿様の弟」と説明されている。
なんだかなあ。
けれども、中身はタイトル通り、魅力的な日本中世への「招待状」となっているのでご安心を。
院政期から戦国期あたりまで、上流階級から庶民までの、暮らしぶりや考え方を、
家族、生老病死、誕生日、宴会、旅行といった身近なテーマを取り上げながら、
史料に即して簡潔に解説していく。
現代との共通点に親近感が湧いたと思ったら、考え方の違いに度肝を抜かれる、
そんな刺激的な中世人との出会いが待っている。
難易度としては、
「『応仁の乱』話題だったから買ったけど、なんだか難しくてよく分からなかったな」
「中世史を勉強してみたいけど何から読んだらいいのかわからない」
というレベルの読者にちょうどよいと思われる。
朝日新聞連載のコラムや市民講座として揉まれているとはいえ、
やはり著者の、噛み砕いて説明する姿勢と能力は、業界的にも貴重だろう。
似たようなコラムに、磯田道史氏の「古今をちこち」(読売新聞)がある。
磯田コラムの魅力は、新史料を発掘して、ばんばんと新解釈を繰り出す、
(そしてそのアヤシサもろとも楽しむ)というところにあるだろう。
本書は、そういう意味では無難なものだ。
本書が依拠するのは、中世史の分野ではよく知られたものが多く、
著者独自の解釈を披露するというよりも、先行研究を噛み砕いて紹介する趣が強い。
時々入る著者の短評も無難で穏当に思える。
それゆえ、だからこそ、中世を知る「入口」には好適で、安心感があるとも言える。
コラムも良いが、最もおすすめしたいのは最後のブックガイドだ。
紹介されているのは、いずれも中世史学の面白さが煮詰まったような、
解釈の斬新性や論理の明快さが飛び抜けた本ばかりで、
本書を読んでさらに一歩を踏み出すのに格好のものばかりだ。
何より、著者のそれぞれの本との出会いという個人的な経験が綴られているのが面白い。
帯には「庶民と酒を酌み交わす殿様もいた!」とあるが、
これは島津家久の上洛時のエピソードで、本文中では明確に「殿様の弟」と説明されている。
なんだかなあ。
けれども、中身はタイトル通り、魅力的な日本中世への「招待状」となっているのでご安心を。
院政期から戦国期あたりまで、上流階級から庶民までの、暮らしぶりや考え方を、
家族、生老病死、誕生日、宴会、旅行といった身近なテーマを取り上げながら、
史料に即して簡潔に解説していく。
現代との共通点に親近感が湧いたと思ったら、考え方の違いに度肝を抜かれる、
そんな刺激的な中世人との出会いが待っている。
難易度としては、
「『応仁の乱』話題だったから買ったけど、なんだか難しくてよく分からなかったな」
「中世史を勉強してみたいけど何から読んだらいいのかわからない」
というレベルの読者にちょうどよいと思われる。
朝日新聞連載のコラムや市民講座として揉まれているとはいえ、
やはり著者の、噛み砕いて説明する姿勢と能力は、業界的にも貴重だろう。
似たようなコラムに、磯田道史氏の「古今をちこち」(読売新聞)がある。
磯田コラムの魅力は、新史料を発掘して、ばんばんと新解釈を繰り出す、
(そしてそのアヤシサもろとも楽しむ)というところにあるだろう。
本書は、そういう意味では無難なものだ。
本書が依拠するのは、中世史の分野ではよく知られたものが多く、
著者独自の解釈を披露するというよりも、先行研究を噛み砕いて紹介する趣が強い。
時々入る著者の短評も無難で穏当に思える。
それゆえ、だからこそ、中世を知る「入口」には好適で、安心感があるとも言える。
コラムも良いが、最もおすすめしたいのは最後のブックガイドだ。
紹介されているのは、いずれも中世史学の面白さが煮詰まったような、
解釈の斬新性や論理の明快さが飛び抜けた本ばかりで、
本書を読んでさらに一歩を踏み出すのに格好のものばかりだ。
何より、著者のそれぞれの本との出会いという個人的な経験が綴られているのが面白い。
2020年6月8日に日本でレビュー済み
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日本中世への招待 (朝日新書)は、題名通りの、「中世への招待」でした。中世という漠然とした世界へ案内していただけました。歴史に無学・初心のわが身にも、いろいろと得心できました。中世の諸相がよくわかりました。
それらの諸相はいずれも、史料に根拠づけられ、裏づけられており、安心して読むことができました。
ただし、それらのそれ以上の説明・理論がありません。あくまで、表層を撫でただけです。すなわち、古代からの、および近世への、歴史的な連続性がありません。歴史的な必然性に欠けているのです。それを承知なら、この著作は、中世を知る――あくまでその表層だけですが――よき案内書でしょう。
それらの諸相はいずれも、史料に根拠づけられ、裏づけられており、安心して読むことができました。
ただし、それらのそれ以上の説明・理論がありません。あくまで、表層を撫でただけです。すなわち、古代からの、および近世への、歴史的な連続性がありません。歴史的な必然性に欠けているのです。それを承知なら、この著作は、中世を知る――あくまでその表層だけですが――よき案内書でしょう。
2020年3月25日に日本でレビュー済み
タイトルは『日本中世への招待』となっているが、取り扱われるのは「日本中世の風俗史、人々の日常生活の紹介」である。
もともと雑誌に連載していた記事と講演の内容を合わせたものらしい。
そういうつくりだからではあろうが、内容が細切れになっていて、全体としてのつながりはやや弱く感じられる。
一つ一つの話がつまらないわけではない(むしろ興味深い指摘も多い)が、全体としてどこに向かっていくのかわかりにくく、その割に細かいところに突っ込んでいる向きもある。
どちらかというと、日本中世がもともと好きで詳しい人でないならば、「読む事典」のように使うのがいいのかもしれない。
なお、最期の付録のブックガイドは充実しているので役に立つ。
もともと雑誌に連載していた記事と講演の内容を合わせたものらしい。
そういうつくりだからではあろうが、内容が細切れになっていて、全体としてのつながりはやや弱く感じられる。
一つ一つの話がつまらないわけではない(むしろ興味深い指摘も多い)が、全体としてどこに向かっていくのかわかりにくく、その割に細かいところに突っ込んでいる向きもある。
どちらかというと、日本中世がもともと好きで詳しい人でないならば、「読む事典」のように使うのがいいのかもしれない。
なお、最期の付録のブックガイドは充実しているので役に立つ。
2020年4月16日に日本でレビュー済み
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読んで得した気分になる。中世の暮らしや習慣の様々な情報がてんこ盛りで、実に楽しい。様々な研究者の新説なども紹介されている。島津家の四男の旅行記が面白い。信長軍団の目撃譚が載っているなんて凄い。いろんな資料があるのだな。巻末に主な中世史家とその本の紹介もある。網野善彦氏はじめ大御所から中堅まで紹介されている。黒田日出男先生も紹介されてて、ファンの私は嬉しい。
追記:え?H(本郷)教授も紹介されているかって?無いよ(笑)。それどころか、あとがきに「私が著書を世に問う際、「既に類書があるような新味のない本を書かない」、「自著の焼き直し、二番煎じをしない」の二つを心掛けている」と(駄本連発のH教授への)きついイヤミもわすれない(笑)。H教授のお友達の作家の「妄説」も二か所で取り上げられていて(さらしもの)、コテンパンだ(爆笑)。
追記:え?H(本郷)教授も紹介されているかって?無いよ(笑)。それどころか、あとがきに「私が著書を世に問う際、「既に類書があるような新味のない本を書かない」、「自著の焼き直し、二番煎じをしない」の二つを心掛けている」と(駄本連発のH教授への)きついイヤミもわすれない(笑)。H教授のお友達の作家の「妄説」も二か所で取り上げられていて(さらしもの)、コテンパンだ(爆笑)。
2020年2月13日に日本でレビュー済み
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日本中世人の日常生活への招待。著者は『応仁の乱』(2016)の大ヒットで、中世史のスター学者になった呉座勇一氏。今回は政治史抜きで、中世人、中世社会について語ってくれるという。
第一部、第二部、付録からなり、第一部と第二部の目次には事典並みの小項目が並んでいている。一瞬くらっとする。面白そう。
読み終わってから初出の頁(目次の次の頁)に気付いたのだが、これによると、書かれた順序は、第二部→付録→第一部となる。
第二部「交流の歴史学」は朝日新聞土曜別冊の月1回連載で、『応仁の乱』以前の2014年10月に始まり、『応仁の乱』後の2017年3月に終わっている。項目は、宴会、寺社めぐり、誕生日会、お正月、外国人等。2年分25項目。
付録のブックガイドは「交流の歴史学ブックガイド編」として、2017年4月から2018年3月まで連載。12冊を紹介。
第一部「人生の歴史学」は、第二部と付録だけでは本にするには足りなかったので、しっかりとした概説として加筆したもの。2019年2月から3月に全三回朝日カルチャーセンターで講演。テーマは「家族」「教育」「生老病死」。
私的感想
〇百姓、貴族についても書かれてはいるが、基本的に武士、武家の日常生活である。
〇『応仁の乱』は必死に書いていて余裕のない割には、応仁の乱のようにだらだらと長く続く印象もあった。それに比べて、本書第一部は150頁という頁数で、上記の三つのテーマを、知識・論点・事例を取り混ぜて、リズミカルに、簡潔に、的確に論じてくれる。ひと皮むけたというか、すでに大家の風格というか、大変に面白い。
〇たとえば、「家族」には、「女性天皇の意義」に始まり、「家の継承」、「婿取り婚か嫁取り婚か」「後妻打」、「離婚」、「性モラル」、「財産相続」といった興味深い論点がずらずら並ぶ。「教育」「生老病死」も内容豊富で、これだけ読んだだけで、相当に勉強させてもらったという感じ。数カ所で、既存の説に対して喧嘩を売っているのも興味深い。
〇第一部は多くがブレイク前の執筆で、一項目に3頁分もらって伸び伸び書いている印象もあるが、あとがきによると、本人は毎回非常に難儀したとのこと。たしかに、この形式だと、だんだんネタに困ってくるのは理解できる。「中世の旅行」では一項目で約15頁も使っており、その全部が島津義久の旅行日記の解説である。目が覚めるように面白いが、新聞連載では、一体どうなっていたのだろう。連載の最後のほうはどんどんマニアックになっていく感じで、「自慢話」「悪口」「人生相談」「対談」と続き、「読者」でネタが尽きる。
〇付録のブックガイド12冊は、ブレイク後の連載で、主に恩師、先輩の本の推奨。なかなかの褒め上手で、あるいはこの付録が一番面白いかもしれない。裏技も使われていて、細川重男の本も村井章介の本も黒田秀男の本もその他数人の本も、本文で詳述して褒めている本とリストに上げている本が違う。
私的結論
〇『応仁の乱』に比べると、おおむね簡潔的確リズミカルで、分かりやすい。
〇あとがきに書かれた決意「金儲け優先の粗製濫造を避ける」には賛否両論あると思うが、・・・まあまあまあ、読者におまかせあれ。
第一部、第二部、付録からなり、第一部と第二部の目次には事典並みの小項目が並んでいている。一瞬くらっとする。面白そう。
読み終わってから初出の頁(目次の次の頁)に気付いたのだが、これによると、書かれた順序は、第二部→付録→第一部となる。
第二部「交流の歴史学」は朝日新聞土曜別冊の月1回連載で、『応仁の乱』以前の2014年10月に始まり、『応仁の乱』後の2017年3月に終わっている。項目は、宴会、寺社めぐり、誕生日会、お正月、外国人等。2年分25項目。
付録のブックガイドは「交流の歴史学ブックガイド編」として、2017年4月から2018年3月まで連載。12冊を紹介。
第一部「人生の歴史学」は、第二部と付録だけでは本にするには足りなかったので、しっかりとした概説として加筆したもの。2019年2月から3月に全三回朝日カルチャーセンターで講演。テーマは「家族」「教育」「生老病死」。
私的感想
〇百姓、貴族についても書かれてはいるが、基本的に武士、武家の日常生活である。
〇『応仁の乱』は必死に書いていて余裕のない割には、応仁の乱のようにだらだらと長く続く印象もあった。それに比べて、本書第一部は150頁という頁数で、上記の三つのテーマを、知識・論点・事例を取り混ぜて、リズミカルに、簡潔に、的確に論じてくれる。ひと皮むけたというか、すでに大家の風格というか、大変に面白い。
〇たとえば、「家族」には、「女性天皇の意義」に始まり、「家の継承」、「婿取り婚か嫁取り婚か」「後妻打」、「離婚」、「性モラル」、「財産相続」といった興味深い論点がずらずら並ぶ。「教育」「生老病死」も内容豊富で、これだけ読んだだけで、相当に勉強させてもらったという感じ。数カ所で、既存の説に対して喧嘩を売っているのも興味深い。
〇第一部は多くがブレイク前の執筆で、一項目に3頁分もらって伸び伸び書いている印象もあるが、あとがきによると、本人は毎回非常に難儀したとのこと。たしかに、この形式だと、だんだんネタに困ってくるのは理解できる。「中世の旅行」では一項目で約15頁も使っており、その全部が島津義久の旅行日記の解説である。目が覚めるように面白いが、新聞連載では、一体どうなっていたのだろう。連載の最後のほうはどんどんマニアックになっていく感じで、「自慢話」「悪口」「人生相談」「対談」と続き、「読者」でネタが尽きる。
〇付録のブックガイド12冊は、ブレイク後の連載で、主に恩師、先輩の本の推奨。なかなかの褒め上手で、あるいはこの付録が一番面白いかもしれない。裏技も使われていて、細川重男の本も村井章介の本も黒田秀男の本もその他数人の本も、本文で詳述して褒めている本とリストに上げている本が違う。
私的結論
〇『応仁の乱』に比べると、おおむね簡潔的確リズミカルで、分かりやすい。
〇あとがきに書かれた決意「金儲け優先の粗製濫造を避ける」には賛否両論あると思うが、・・・まあまあまあ、読者におまかせあれ。
2020年9月30日に日本でレビュー済み
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大学で中世史(と言っても戦国時代中心)を専攻しましたが、20年くらい経ち、改めて学ぼうと思って購入しました。政治や合戦、人物の事績ではなく、中世の人々の暮らしがどうだったか、それが今にどうつながるか、という視点で書いてあり、さらに知識と思考を深めるために著者が読むべきと考える本も紹介されていて、引き続き学ぼうという気になりました。