本書は、ソビエト連邦最後の最高指導者であるミハエル・ゴルバチョフが、東西冷戦終結に向かった当時の国際政治の舞台を振り返り、更に、現在の世界の情勢を踏まえて、次世代へのメッセージを記したものである。原書は2018年に発表され、今般日本語訳が出版された。
ゴルバチョフ(1931年~)は、1985年にソ連の指導者では異例の若さ(54歳)で共産党書記長に就任し、内政では停滞していたソ連の政治・経済の抜本的改革を目指しペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)を断行し、外交では新思考外交に基づき東欧の民主化革命を支持して東西冷戦を終結させた。その功績からノーベル平和賞を受賞し、西側諸国では幅広く評価されているものの、ロシア国内では米国と並ぶ超大国であったソ連の崩壊の責任者と見られ、人気は高くないという。
私は1960年代前半の生まれで、物心がついた時から東西冷戦の構図にあり、世界が東西に分断された状態は未来永劫続くものと、何の疑問も抱かずに思っていたのだが、ゴルバチョフがソ連の最高指導者に就くや、わずか5年ほどの間に、あれほど頑強と思われたソ連が解体し、東欧諸国の民主化が達成されたのだ。。。(あの時点での連邦制の解体はゴルバチョフの望んだものではなかったが、彼のめざした方向性からすればいずれはそうなったと思われる) 当時はニュース等で日々の状況変化を追っていたはずなのだが、後に振り返ると、一夜明けたら世界が一変していたというような劇的な出来事であった。そして、今でも強く思うのは、もしあの時のソ連の最高指導者がゴルバチョフでなかったら、あのタイミングで、あのような未来志向型の冷戦終結は間違いなく起こらなかったということである。
本書でゴルバチョフは、いかなる価値観・信念に基づき、どのような覚悟で、米国のレーガン、ブッシュ両大統領、シュルツ、ベーカー両国務長官、ドイツのコール首相、ゲンシャー外相、フランスのミッテラン大統領、英国のサッチャー首相、メージャー首相らの世界の指導者たちと事を進めていったのか、また、国内において、連邦制の維持に反対する急進的なエリツィン大統領らに対応していったのかを、赤裸々に綴っている。
そして、読了して、ゴルバチョフがいかに普遍的価値観を重視し、その価値観に沿った世界を創るという理想を追い求めていたのかが理解できたし、あの時代にゴルバチョフという政治家が存在したことの意味の大きさを再認識した。
ゴルバチョフは政治家としては理想主義的過ぎる(結局、ソ連邦崩壊、国力弱体化という国益に合わない結果に導いた)という評価もあるが、私はそうした意見には全く与しない。ゴルバチョフは末尾でこう語っている。「1988年12月の国連での演説で、私はこう述べた。<我々の理想は、自らの対外政策活動でも法に従う法治国家による世界共同体である>と。この理想は今日も、まだまだほど遠い。しかし、これは決して、大きな目標と人類の理想を掲げて我々は無邪気な人間だった、ということを意味しない。単に我々は、それがなければ将来への道は克服できないと分かっていた。」と。翻って、今の世界を見ると、「理想」などいうに及ばず、自国民の利益すらそっちのけで、自分の権力維持しか考えない指導者が多く、嘆かわしいばかりであるが、そうした指導者を選んでいるのは外ならぬ我々なのであり、我々一人ひとりが、社会を、国を、ひいては世界をどうしたいのかを真剣に考えることから始めなくてはならないのだと思う。
齢90を目前にした稀代の政治家ゴルバチョフが、次世代の我々に残す遺言ともいえる一冊である。
(2020年8月了)
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ミハイル・ゴルバチョフ 変わりゆく世界の中で 単行本 – 2020/7/20
ミハイル・ゴルバチョフ
(著)
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核削減に踏み出し、冷戦終結をもたらしたソ連最後の指導者が、いかに西側陣営と渡り合ったか。
歴史の重要な局面をゴルバチョフ氏本人が詳細に語った貴重な一冊にして、遺作。
朝⽇新聞書評 「冷戦終結へ 指導者間の絆と覚悟」
2020年10月24日付掲載/評者:保阪正康氏
〈20世紀の歴史を俯瞰(ふかん)した時、「旧ソ連の社会主義体制の樹立と崩壊」は三本の指に入る史実である。ゴルバチョフはその最終局面を担った指導者だ。すでに回想録は刊行されているが、それとは別にペレストロイカ政策のもと、最高指導者としてどのように東西冷戦を終結させたか、米国を始めとする西側陣営の指導者といかなるやりとりを行い、いかに信頼関係を結んでいったか、そのプロセスを「人物中心」に細部にわたり描写した書である。
とくにアメリカのレーガン元大統領との初会談で、気が合うと感じた。このことを「ヒューマンファクター(人的要因)」の直感が働いたと表現している。二人は共同声明で、〈核戦争は許されない、そこには勝者はいない。ソ連と米国は軍事的優位を志向しない〉との約束を確認する。ゴルバチョフは、このレーガンと、次のブッシュ元大統領とも率直に議論し、妥協点を求め合う。東西冷戦に終止符を打ち、新しい関係を構築していこうという熱意が両者にいかに強かったかがわかる。ゴルバチョフのペレストロイカ政策を支えるのは、「新思考」の理念に基づく外交だと明かしているが、東西冷戦時のステレオタイプの論理はお互いに捨てようという呼び掛けは、西側陣営の指導者たちの目を開かせることにもなった。
1988年12月、ゴルバチョフは国連で演説したが、そこに新テーマをいくつも盛り込んだと明かす。ソ連の兵力と通常兵器の削減のほか、東欧諸国からの六つの戦車師団の撤退・解体も伝えた。自由選挙を認め、それぞれの国が多様性を持つことの重要性も訴えた。米国の外交責任者が、「これは冷戦の終結だ」と考えたのも当然である。しかしソ連の指導者が新しい時代を作ろうとしていることに、当然ながら各国には疑心暗鬼もありえた。ゴルバチョフは西側指導者が国内からそのような圧力を受けるのを払うかのように、積極的に自説を説き、実際に東欧諸国への干渉をやめている。
本書を読んで、この指導者は各国の指導者層とも強い絆をもったことがわかる。特に英国のサッチャーに対する信頼は固く、二人は何度も論議を繰り返した。しかし最後に一致するのは、同じ政治家時代に冷戦を終わらせたとの確認だったという。
マルタ会談での冷戦終結後もソ連内部には曲折はあった。8月クーデターでブッシュが陰に陽にゴルバチョフを支援したこと、仏のミッテランや独のコールとの会話の深さを確かめると、これほど指導者間の意識が高揚したのは、20世紀の課題を、次の世紀に持ち込まないという覚悟が誰の胸にも宿っていたからであろう。〉
【本書解説 「全人類に共通する普遍的価値観」 佐藤優氏】
2020年は広島・長崎への原爆投下から75年、
そして、核不拡散条約(NPT)の発効から50年という節目の年にあたります。
人類が初めて核削減に踏み出し、冷戦終結のきっかけになったのは
ゴルバチョフ氏が尽力した中距離核戦力(INF)全廃条約でした。
しかし2019年8月、米国の離脱によって失効。
「核と人類は共存できるのか」が問われているいまこそ、
世界を核の惨事から救おうとしたゴルバチョフ氏のことばに耳を傾ける絶好の機会です。
世界政治の現場でどんなやりとりが交わされ、冷戦終結へと導かれたのでしょうか。
この本は、ゴルバチョフ氏が「歴史の生き証人」の視点からその問いに応えるものです。
「核戦争からの解放」というモラルに向かって意思疎通を図り、
共通の活路を見いだしていく世界のリーダーたちの深謀遠慮の姿も見えてきます。
それは未来への貴重な遺産であり教訓です。
核軍縮や冷戦終結をもたらした人物がどのように形づくられ、
どのような思考で行動し、全世界の指導者らとどのように交渉してきたのか。
歴史の重要なトピックとともに展開されるのも読みどころの一つです。
◇
著者:ミハイル・セルゲービッチ・ゴルバチョフ(Михаил Сергеевич Горбачёв)
1931年生まれ。85年、ソ連最高指導者の党中央委員会書記長に。ペレストロイカに着手し冷戦終結へと導いた。90年、ソ連の初代大統領に就任。ノーベル平和賞を受賞した。2022年8月30日死去、享年91。
目次から
【第1章】ペレストロイカ胎動
【第2章】ブレークスルー
【第3章】ベルリンの壁崩壊
【第4章】冷戦終結
【第5章】試練
【第6章】ラストチャンス
【第7章】ソ連崩壊
【第8章】未来に向けて
【付録】ノーベル平和賞受賞演説1991年6月5日、オスロ
解説・佐藤優氏「全人類に共通する普遍的価値観」
歴史の重要な局面をゴルバチョフ氏本人が詳細に語った貴重な一冊にして、遺作。
朝⽇新聞書評 「冷戦終結へ 指導者間の絆と覚悟」
2020年10月24日付掲載/評者:保阪正康氏
〈20世紀の歴史を俯瞰(ふかん)した時、「旧ソ連の社会主義体制の樹立と崩壊」は三本の指に入る史実である。ゴルバチョフはその最終局面を担った指導者だ。すでに回想録は刊行されているが、それとは別にペレストロイカ政策のもと、最高指導者としてどのように東西冷戦を終結させたか、米国を始めとする西側陣営の指導者といかなるやりとりを行い、いかに信頼関係を結んでいったか、そのプロセスを「人物中心」に細部にわたり描写した書である。
とくにアメリカのレーガン元大統領との初会談で、気が合うと感じた。このことを「ヒューマンファクター(人的要因)」の直感が働いたと表現している。二人は共同声明で、〈核戦争は許されない、そこには勝者はいない。ソ連と米国は軍事的優位を志向しない〉との約束を確認する。ゴルバチョフは、このレーガンと、次のブッシュ元大統領とも率直に議論し、妥協点を求め合う。東西冷戦に終止符を打ち、新しい関係を構築していこうという熱意が両者にいかに強かったかがわかる。ゴルバチョフのペレストロイカ政策を支えるのは、「新思考」の理念に基づく外交だと明かしているが、東西冷戦時のステレオタイプの論理はお互いに捨てようという呼び掛けは、西側陣営の指導者たちの目を開かせることにもなった。
1988年12月、ゴルバチョフは国連で演説したが、そこに新テーマをいくつも盛り込んだと明かす。ソ連の兵力と通常兵器の削減のほか、東欧諸国からの六つの戦車師団の撤退・解体も伝えた。自由選挙を認め、それぞれの国が多様性を持つことの重要性も訴えた。米国の外交責任者が、「これは冷戦の終結だ」と考えたのも当然である。しかしソ連の指導者が新しい時代を作ろうとしていることに、当然ながら各国には疑心暗鬼もありえた。ゴルバチョフは西側指導者が国内からそのような圧力を受けるのを払うかのように、積極的に自説を説き、実際に東欧諸国への干渉をやめている。
本書を読んで、この指導者は各国の指導者層とも強い絆をもったことがわかる。特に英国のサッチャーに対する信頼は固く、二人は何度も論議を繰り返した。しかし最後に一致するのは、同じ政治家時代に冷戦を終わらせたとの確認だったという。
マルタ会談での冷戦終結後もソ連内部には曲折はあった。8月クーデターでブッシュが陰に陽にゴルバチョフを支援したこと、仏のミッテランや独のコールとの会話の深さを確かめると、これほど指導者間の意識が高揚したのは、20世紀の課題を、次の世紀に持ち込まないという覚悟が誰の胸にも宿っていたからであろう。〉
【本書解説 「全人類に共通する普遍的価値観」 佐藤優氏】
2020年は広島・長崎への原爆投下から75年、
そして、核不拡散条約(NPT)の発効から50年という節目の年にあたります。
人類が初めて核削減に踏み出し、冷戦終結のきっかけになったのは
ゴルバチョフ氏が尽力した中距離核戦力(INF)全廃条約でした。
しかし2019年8月、米国の離脱によって失効。
「核と人類は共存できるのか」が問われているいまこそ、
世界を核の惨事から救おうとしたゴルバチョフ氏のことばに耳を傾ける絶好の機会です。
世界政治の現場でどんなやりとりが交わされ、冷戦終結へと導かれたのでしょうか。
この本は、ゴルバチョフ氏が「歴史の生き証人」の視点からその問いに応えるものです。
「核戦争からの解放」というモラルに向かって意思疎通を図り、
共通の活路を見いだしていく世界のリーダーたちの深謀遠慮の姿も見えてきます。
それは未来への貴重な遺産であり教訓です。
核軍縮や冷戦終結をもたらした人物がどのように形づくられ、
どのような思考で行動し、全世界の指導者らとどのように交渉してきたのか。
歴史の重要なトピックとともに展開されるのも読みどころの一つです。
◇
著者:ミハイル・セルゲービッチ・ゴルバチョフ(Михаил Сергеевич Горбачёв)
1931年生まれ。85年、ソ連最高指導者の党中央委員会書記長に。ペレストロイカに着手し冷戦終結へと導いた。90年、ソ連の初代大統領に就任。ノーベル平和賞を受賞した。2022年8月30日死去、享年91。
目次から
【第1章】ペレストロイカ胎動
【第2章】ブレークスルー
【第3章】ベルリンの壁崩壊
【第4章】冷戦終結
【第5章】試練
【第6章】ラストチャンス
【第7章】ソ連崩壊
【第8章】未来に向けて
【付録】ノーベル平和賞受賞演説1991年6月5日、オスロ
解説・佐藤優氏「全人類に共通する普遍的価値観」
- 本の長さ368ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2020/7/20
- 寸法18.8 x 12.8 x 2.75 cm
- ISBN-104022516933
- ISBN-13978-4022516930
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商品の説明
出版社からのコメント
2020年は広島・長崎への原爆投下から75年、
そして、核不拡散条約(NPT)の発効から50年という節目の年にあたります。
人類が初めて核削減に踏み出し、冷戦終結のきっかけになったのは
ゴルバチョフ氏が尽力した中距離核戦力(INF)全廃条約でした。
しかし2019年8月、米国の離脱によって失効。
「核と人類は共存できるのか」が問われているいまこそ、
世界を核の惨事から救おうとしたゴルバチョフ氏のことばに耳を傾ける絶好の機会です。
世界政治の現場でどんなやりとりが交わされ、冷戦終結へと導かれたのでしょうか。
この本は、ゴルバチョフ氏が「歴史の生き証人」の視点からその問いに応えるものです。
「核戦争からの解放」というモラルに向かって意思疎通を図り、
共通の活路を見いだしていく世界のリーダーたちの深謀遠慮の姿も見えてきます。
それは未来への貴重な遺産であり教訓です。
核軍縮や冷戦終結をもたらした人物がどのように形づくられ、
どのような思考で行動し、全世界の指導者らとどのように交渉してきたのか。
歴史の重要なトピックとともに展開されるのも読みどころの一つです。
解説・佐藤優氏
目次から
【第1章】ペレストロイカ胎動
【第2章】ブレークスルー
【第3章】ベルリンの壁崩壊
【第4章】冷戦終結
【第5章】試練
【第6章】ラストチャンス
【第7章】ソ連崩壊
【第8章】未来に向けて
【付録】ノーベル平和賞受賞演説1991年6月5日、オスロ
解説・佐藤優氏「全人類に共通する普遍的価値観」
そして、核不拡散条約(NPT)の発効から50年という節目の年にあたります。
人類が初めて核削減に踏み出し、冷戦終結のきっかけになったのは
ゴルバチョフ氏が尽力した中距離核戦力(INF)全廃条約でした。
しかし2019年8月、米国の離脱によって失効。
「核と人類は共存できるのか」が問われているいまこそ、
世界を核の惨事から救おうとしたゴルバチョフ氏のことばに耳を傾ける絶好の機会です。
世界政治の現場でどんなやりとりが交わされ、冷戦終結へと導かれたのでしょうか。
この本は、ゴルバチョフ氏が「歴史の生き証人」の視点からその問いに応えるものです。
「核戦争からの解放」というモラルに向かって意思疎通を図り、
共通の活路を見いだしていく世界のリーダーたちの深謀遠慮の姿も見えてきます。
それは未来への貴重な遺産であり教訓です。
核軍縮や冷戦終結をもたらした人物がどのように形づくられ、
どのような思考で行動し、全世界の指導者らとどのように交渉してきたのか。
歴史の重要なトピックとともに展開されるのも読みどころの一つです。
解説・佐藤優氏
目次から
【第1章】ペレストロイカ胎動
【第2章】ブレークスルー
【第3章】ベルリンの壁崩壊
【第4章】冷戦終結
【第5章】試練
【第6章】ラストチャンス
【第7章】ソ連崩壊
【第8章】未来に向けて
【付録】ノーベル平和賞受賞演説1991年6月5日、オスロ
解説・佐藤優氏「全人類に共通する普遍的価値観」
登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2020/7/20)
- 発売日 : 2020/7/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 368ページ
- ISBN-10 : 4022516933
- ISBN-13 : 978-4022516930
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.75 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 355,774位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年8月7日に日本でレビュー済み
2020年11月15日に日本でレビュー済み
あえて言うならば、本書は「敗軍の将ゴルバチョフは語る」となるのではないか?その行動力、理想主義は偉大であり決して否定できるものではない。この本からも核兵器廃絶に賭けたピュアな本気度が理解できる。しかし、ゴルバチョフが述懐する「連邦崩壊は避けられた」には無理はないか?と思わざるを得ない。「西側の意図もあり連邦は崩壊したのだ」とも言う。確かにそうかもしれないが、しかし、それでも大統領末期のゴルバチョフは優柔不断だったと言わざるを得ない。
確かにソ連を民主化に導いたゴルバチョフの功績は歴史に残る偉業だ。ソ連民主化は偶然ではなく、ゴルバチョフの強い意思によるものだったと理解できる。
もし、あのとき大統領直接選挙に打って出たなら、あるいは一度、大統領の座を投げ出してエリティンに渡していたら....。でも、時計の針は遅れたのかもしれないが、それでも歴史の今に至る必然は変わらなかったのだろう。やはりゴルバチョフは理想主義者だとしか言いようがない。
巻末の佐藤優による解説は相変わらず鋭い。この解説に出てくるエリティン最側近とされるブルブリスの「ソ連帝国は自壊したんだ。政治的チェルノブイリだ。最中心部が炉心融解を起こし、爆発してしまったということ」とのゴルバチョフ政権評にはいつもながら身をつまされる。敗軍の将ゴルバチョフの功績は讃えられてしかるべき。しかし、ソ連を自壊させたのはゴルバチョフ自身だ。このことは大いなる教訓となることだろう。
確かにソ連を民主化に導いたゴルバチョフの功績は歴史に残る偉業だ。ソ連民主化は偶然ではなく、ゴルバチョフの強い意思によるものだったと理解できる。
もし、あのとき大統領直接選挙に打って出たなら、あるいは一度、大統領の座を投げ出してエリティンに渡していたら....。でも、時計の針は遅れたのかもしれないが、それでも歴史の今に至る必然は変わらなかったのだろう。やはりゴルバチョフは理想主義者だとしか言いようがない。
巻末の佐藤優による解説は相変わらず鋭い。この解説に出てくるエリティン最側近とされるブルブリスの「ソ連帝国は自壊したんだ。政治的チェルノブイリだ。最中心部が炉心融解を起こし、爆発してしまったということ」とのゴルバチョフ政権評にはいつもながら身をつまされる。敗軍の将ゴルバチョフの功績は讃えられてしかるべき。しかし、ソ連を自壊させたのはゴルバチョフ自身だ。このことは大いなる教訓となることだろう。
2021年11月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本を当時を思い出しながら、興味深く読んだ。当時の印象はすさまじいエネルギーで大きな変革をしている様を見て、すごい人だなと感じていたが、どういう考えが根底にあったのかは分からなかったが、この本でそれを知ることが出来た。当時もそうだったが、今も偉大な人だという印象は変わらないし、より、すごい人だと思えるようになった。結局、思い描いたことは途中のクーデターでついえたが、しかし、彼のやったことは自分では歴史の流れの中で、大きな意義と成果を残しているととらえているが、最後に、「畜生、くそー」と言う思いを吐露している。命を懸け、全エネルギーを使ってやっていたことを、裏切りでとん挫させられたのだから。当然だと思う。
彼はペレストロイカ(変革)とグラスノチ(情報公開)をを「新思考」で進めていた。
それは、色んな内容を含んでいる。第一に、今までは世界の指導者の戦略思考の背景に、常に敵としての対立思考(やっつけてやる、屈服してやる)が続いてきた。事実、軍事力を背景に敵対していた。このような冷戦思考は、辞めなければならないと積極的に動いた。
そこで、彼は、「敵!?。そうではないであろう。全人類を対象に考えれば、敵ではなく、多くの難問を解決していく、お互いが胸襟を開き、お互いの考えや利益を考えながら、その難題を共有し、知恵を出し合いながら、共同してそれらを解決していく対等の関係・パートナーではないか」と言う考えに立っている。それは、衝突して戦争と言う悲劇を起こさないために、経済や環境や技術や資源や文化の発展などなどの分野で、そういう姿勢でやれば何らかの良い解決が出来るという信念に基づいている。
「ソ連の実態はよくない、独裁政治は良くないと」。初めて、人民代議員は選挙で選ぶことを行った。つまり、民主主義をソ連に導入し、理解してもらい、其れで、統治者・国家を実質的に担う人々が、そう言う思考を身に着け、国民も「権力者の指示待ち」ではなく、主体的に政治などに参加して行けるように、時間をかけて、利害を調整し、理解を深めて行く中で、そういう国に変えていきたいという思考であった。
其れには、「モラル」が必要だともしていて、ソ連の現状は「憲法」はまったく無視されている状態で、そうではなく憲法を頂点に法治国家を目指すという事が明確にする。また、すべてが中央集権的で、多くの共和国の自主性を押さえつけ、国民を押さえつけている状態からの転換を明確に目指していたようだ。
更には、経済も、世界とのつながりが限られており、当時西側の国と言われていた国々に比べて、相当隊遅れていた。これを、解決するには個人所有を認め、「市場経済を導入するしかない」という考え方に立っている。しかし、それは、国民の生活をよくすることが目的であって、「金、金」の世界であってはならない。当然、合理的な規制は必要であるし、重要なインフラなどは公営が担うという共同体思考である。個人の利益中心思考のみという事ではなく、すべての個人の幸福が目的であるような仕組みも重要。そういう考えに立っている。
そして、そのためには情報のできるだけの公開が必要であると。それがないと国民は自主的で正確な判断が出来ないが、そうしてこなかったのが今までの状態であり、批判すればすぐ圧力・弾圧される。これではいけない。良いものを作っていくには、国も中間組織も国民も共同して、一致できるものを見つけ、実践していくというスタイルを構築することが必要という強固で柔軟な思考であったようだ。
軍事優先で対決する姿勢から、政治、経済、社会、文化などに力点を移していく必要があると。そのために、まず、核兵器をなくす方向と具体的な削減を実施しなければならないという考えで、アメリカのレーガン、パパ・ブッシュと信頼・信用を作りながら、敵どおしから恐怖心や不信をだんだんとなくし、共同で大きな問題に取り組み、解決するいい方向を見出し、それを実践し合う関係を作り出すことに相当神経と、率直な物言いでお互いの利害や真意を明らかにし、共通する普遍性を見出し、行えることを行えることを具体的に見出し、実践していった。
ゴルバチョフはこのような思いで全力でやってきたが、方向性は共有したが、急進的なエリチィンと、共に変革を志向してきた連中が、保守的な壁を乗り越えれず危機感を持ち、クーデターという裏切りによって「隔離」されるという事態を生んだ。これで、政治的評価として能力なしと、ここぞとばかりエリチィンの急進化が進んで行った。こうなると止めようがなく、混乱の中、どこへ行くか分からない状態を停止、遂にソ連は崩壊した。
ゴルバチョフとしては、国の集合体であったソ連が、極めて中央集権的体制、関係であったものを、主権を持った国の共同・連合体とし、アメリカの様なアメリカ合衆国とそれぞれの主権を持った国としての州との関係のような姿を描いていたようであるが、それはかなわなかった。
彼は「共産党」を解体し、大統領を辞した。その後は、地球環境や食、水、貧困問題に取組んできたようである。そして、今のアメリカのような「欲望の世界」にしたのは、レーガンとサッチャーであり、市場至上主義者でどんどん公共財を「会社化」していった本家であると、明確に述べている。また、イラクへの偽情報を使っての侵略行為、さらにはトランプ大統領の突然の中距離核・ミサイル削減条約から脱退し、歯車を逆回転させ、またもや軍事優先とあくなき欲望の思考に苦言を呈している。
今、中米対立の時代に変わってきているが、米ソの冷戦対決的状態なってきているが、アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席が、ゴルバチョフがやろうとした取り組みを、全地球と全人類のために、敵ではなく意見は違えど大きな問題を一緒に考え、解決していく関係を模索し、つくり上げてもらいたい。
大国のトップリーダーとして全世界・全人類の平和と幸福をもたらすことを唯一の目的とした男が、何をやろうとしていたのかが良く分かる書になっている。
彼はペレストロイカ(変革)とグラスノチ(情報公開)をを「新思考」で進めていた。
それは、色んな内容を含んでいる。第一に、今までは世界の指導者の戦略思考の背景に、常に敵としての対立思考(やっつけてやる、屈服してやる)が続いてきた。事実、軍事力を背景に敵対していた。このような冷戦思考は、辞めなければならないと積極的に動いた。
そこで、彼は、「敵!?。そうではないであろう。全人類を対象に考えれば、敵ではなく、多くの難問を解決していく、お互いが胸襟を開き、お互いの考えや利益を考えながら、その難題を共有し、知恵を出し合いながら、共同してそれらを解決していく対等の関係・パートナーではないか」と言う考えに立っている。それは、衝突して戦争と言う悲劇を起こさないために、経済や環境や技術や資源や文化の発展などなどの分野で、そういう姿勢でやれば何らかの良い解決が出来るという信念に基づいている。
「ソ連の実態はよくない、独裁政治は良くないと」。初めて、人民代議員は選挙で選ぶことを行った。つまり、民主主義をソ連に導入し、理解してもらい、其れで、統治者・国家を実質的に担う人々が、そう言う思考を身に着け、国民も「権力者の指示待ち」ではなく、主体的に政治などに参加して行けるように、時間をかけて、利害を調整し、理解を深めて行く中で、そういう国に変えていきたいという思考であった。
其れには、「モラル」が必要だともしていて、ソ連の現状は「憲法」はまったく無視されている状態で、そうではなく憲法を頂点に法治国家を目指すという事が明確にする。また、すべてが中央集権的で、多くの共和国の自主性を押さえつけ、国民を押さえつけている状態からの転換を明確に目指していたようだ。
更には、経済も、世界とのつながりが限られており、当時西側の国と言われていた国々に比べて、相当隊遅れていた。これを、解決するには個人所有を認め、「市場経済を導入するしかない」という考え方に立っている。しかし、それは、国民の生活をよくすることが目的であって、「金、金」の世界であってはならない。当然、合理的な規制は必要であるし、重要なインフラなどは公営が担うという共同体思考である。個人の利益中心思考のみという事ではなく、すべての個人の幸福が目的であるような仕組みも重要。そういう考えに立っている。
そして、そのためには情報のできるだけの公開が必要であると。それがないと国民は自主的で正確な判断が出来ないが、そうしてこなかったのが今までの状態であり、批判すればすぐ圧力・弾圧される。これではいけない。良いものを作っていくには、国も中間組織も国民も共同して、一致できるものを見つけ、実践していくというスタイルを構築することが必要という強固で柔軟な思考であったようだ。
軍事優先で対決する姿勢から、政治、経済、社会、文化などに力点を移していく必要があると。そのために、まず、核兵器をなくす方向と具体的な削減を実施しなければならないという考えで、アメリカのレーガン、パパ・ブッシュと信頼・信用を作りながら、敵どおしから恐怖心や不信をだんだんとなくし、共同で大きな問題に取り組み、解決するいい方向を見出し、それを実践し合う関係を作り出すことに相当神経と、率直な物言いでお互いの利害や真意を明らかにし、共通する普遍性を見出し、行えることを行えることを具体的に見出し、実践していった。
ゴルバチョフはこのような思いで全力でやってきたが、方向性は共有したが、急進的なエリチィンと、共に変革を志向してきた連中が、保守的な壁を乗り越えれず危機感を持ち、クーデターという裏切りによって「隔離」されるという事態を生んだ。これで、政治的評価として能力なしと、ここぞとばかりエリチィンの急進化が進んで行った。こうなると止めようがなく、混乱の中、どこへ行くか分からない状態を停止、遂にソ連は崩壊した。
ゴルバチョフとしては、国の集合体であったソ連が、極めて中央集権的体制、関係であったものを、主権を持った国の共同・連合体とし、アメリカの様なアメリカ合衆国とそれぞれの主権を持った国としての州との関係のような姿を描いていたようであるが、それはかなわなかった。
彼は「共産党」を解体し、大統領を辞した。その後は、地球環境や食、水、貧困問題に取組んできたようである。そして、今のアメリカのような「欲望の世界」にしたのは、レーガンとサッチャーであり、市場至上主義者でどんどん公共財を「会社化」していった本家であると、明確に述べている。また、イラクへの偽情報を使っての侵略行為、さらにはトランプ大統領の突然の中距離核・ミサイル削減条約から脱退し、歯車を逆回転させ、またもや軍事優先とあくなき欲望の思考に苦言を呈している。
今、中米対立の時代に変わってきているが、米ソの冷戦対決的状態なってきているが、アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席が、ゴルバチョフがやろうとした取り組みを、全地球と全人類のために、敵ではなく意見は違えど大きな問題を一緒に考え、解決していく関係を模索し、つくり上げてもらいたい。
大国のトップリーダーとして全世界・全人類の平和と幸福をもたらすことを唯一の目的とした男が、何をやろうとしていたのかが良く分かる書になっている。