初めてロシア革命に関する本を読んだ。
だから、ロシア革命については
「二月革命があって、ロマノフ朝が倒され
その後、レーニンが世界同時革命を夢見て
十月革命を起こして、社会主義国家が誕生した」
というような、お粗末な認識しかなかった。
「ソビエト連邦のような凶悪な国家に発展した革命だから
さぞかし悲惨で、残虐なことが行なわれたんだろうな」
と、想像していたのだが
二月革命の時は、非常に穏やかな革命で
拍子抜けさせられてしまった。
あまり詳しく書くと、著者の営業妨害になるので
少しだけ印象に残ったことを書きたい。
最も驚いたのは、二月革命の段階では
ボリシェヴィキは存在したものの
「専制君主国体制」を終結させ
日本国と同じ、「立憲君主国」へと変貌する可能性があった。
皇帝も、力ずくで帝位から引き摺り下ろされたわけでは無い。
この段階では、臨時政府やドゥーマ、ソヴィエト
その他様々な委員会が乱立し
一体、誰にどんな権限があるのか良く分からないような状態だが
自由主義者と社会主義者が協力して
新しい国家体制を運営している。
この時点でヤバいのは、ボリシェヴィキでは無く
アナーキストくらいのものだった。
そんで、ボリシェヴィキが蜂起する十月革命へと突き進み
その後に起こったことを、ちょこっと書いて終わっている。
面白いのは、本書では
ボリシェヴィキもレーニンも脇役でしかないところだ。
ロシア革命に対して、好意的な評価をしている記述も散見され
あまりにも穏やかな筆致で、淡々と語られているため
「著者の思想信条が、いわゆる左系なのかもしれない」と疑っている。
そんな訳で、ロシア革命については
別の書籍も読む必要があると感じているが
本書は、悪い本ではないよ。
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ロシア革命――破局の8か月 (岩波新書) 新書 – 2017/1/21
池田 嘉郎
(著)
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史上初の社会主義国家樹立の契機となったロシア革命から100年。これまで革命の「最後の障害」とされてきた立憲主義者、自由主義者らの奮闘に光をあて、新たな社会を模索した人びとが当時に賭けた思いや挫折を臨場感あふれる筆致で描き出す。あの時潰え、民衆の間に新たに生まれたものは何だったのか。今日的意味を考える。
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2017/1/21
- 寸法10.7 x 1 x 17.3 cm
- ISBN-104004316375
- ISBN-13978-4004316374
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2017/1/21)
- 発売日 : 2017/1/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 256ページ
- ISBN-10 : 4004316375
- ISBN-13 : 978-4004316374
- 寸法 : 10.7 x 1 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 229,724位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,142位岩波新書
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年11月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2017年5月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
それなりに楽しめましたが、視点が一方からなので、今ひとつでした。
2023年11月22日に日本でレビュー済み
ロシア近現代史専門の東大教授、池田嘉郎(よしろう)さんによる1917年のロシア革命で何が起きたのかをまとめた本です。
ヨーロッパや日本と比べてもロシアが王制を廃したのが16年も遅かったのは、地理的にもフランス革命の影響が及びにくかったのでしょう。そう考えれば日本が早くも明治維新を成し遂げたのは黒船ショックのおかげだったのでしょうね。
ロシアが革命に向けてもがく間に資本主義によるブルジョワの搾取がヨーロッパで問題となり、理想的な社会としての社会主義の気運がエリート達の間で高まってきたのと、長い間先制国家に搾取されてきた農民や貧しい兵士が第一次世界大戦で今度は兵士として決死の前線に投入されたことで不満が爆発、これがソヴィエト(労働者と兵士の代議員評議会)を誕生させたという歴史的な流れもよく理解できました。
このソヴィエトが理想としての社会主義と合わさったエネルギーが王制を破壊しさらにはヨーロッパ型の自由主義体制とも多数のいざこざを繰り返しながらも勢力を拡大していった様子が記されています。2月革命、10月革命というけれど、2つの大きな事件が起きたというよりは、内乱、内紛に明け暮れた1917年の政権交代という節目という捉え方の方が正しいようです。
今までロシア革命についてじっくり知る機会がなかったので本書をありがたく思う気持ちがある反面、内容が多数の人物の名前と細かなファクトの羅列になっていて、ボルシェビキやソヴィエト、社会主義者の考え方の違いや、事件の背景にある本質的なダイナミズムといったところを池田さんの私観でもよいので語って欲しかったです。細かいファクトはどうせ読後は全部忘れてしまいますが、哲学といったところはずっと記憶に残りますし、歴史を学ぶ上で最も重要な部分かと思います。
現在(2023年11月)、まだウクライナ戦争が続いています(というか膠着状態)が、ロシア革命の時点で既にウクライナはロシアから離脱したがる一方でロシアは引き留めようとする図式が成り立っていたということがわかりました。10月革命ではボルシェビキ新政権が第一次世界大戦からロシアを離脱させるための講和条約でウクライナの離脱を認めたと書かれています。そう考えると現在のプーチンの言い分である「ウクライナは元々ロシアの一部である」というのはロシア革命以前のロシア帝国の状態に戻そうと考えているのでしょうか。長い歴史の因縁を感じさせます。
ヨーロッパや日本と比べてもロシアが王制を廃したのが16年も遅かったのは、地理的にもフランス革命の影響が及びにくかったのでしょう。そう考えれば日本が早くも明治維新を成し遂げたのは黒船ショックのおかげだったのでしょうね。
ロシアが革命に向けてもがく間に資本主義によるブルジョワの搾取がヨーロッパで問題となり、理想的な社会としての社会主義の気運がエリート達の間で高まってきたのと、長い間先制国家に搾取されてきた農民や貧しい兵士が第一次世界大戦で今度は兵士として決死の前線に投入されたことで不満が爆発、これがソヴィエト(労働者と兵士の代議員評議会)を誕生させたという歴史的な流れもよく理解できました。
このソヴィエトが理想としての社会主義と合わさったエネルギーが王制を破壊しさらにはヨーロッパ型の自由主義体制とも多数のいざこざを繰り返しながらも勢力を拡大していった様子が記されています。2月革命、10月革命というけれど、2つの大きな事件が起きたというよりは、内乱、内紛に明け暮れた1917年の政権交代という節目という捉え方の方が正しいようです。
今までロシア革命についてじっくり知る機会がなかったので本書をありがたく思う気持ちがある反面、内容が多数の人物の名前と細かなファクトの羅列になっていて、ボルシェビキやソヴィエト、社会主義者の考え方の違いや、事件の背景にある本質的なダイナミズムといったところを池田さんの私観でもよいので語って欲しかったです。細かいファクトはどうせ読後は全部忘れてしまいますが、哲学といったところはずっと記憶に残りますし、歴史を学ぶ上で最も重要な部分かと思います。
現在(2023年11月)、まだウクライナ戦争が続いています(というか膠着状態)が、ロシア革命の時点で既にウクライナはロシアから離脱したがる一方でロシアは引き留めようとする図式が成り立っていたということがわかりました。10月革命ではボルシェビキ新政権が第一次世界大戦からロシアを離脱させるための講和条約でウクライナの離脱を認めたと書かれています。そう考えると現在のプーチンの言い分である「ウクライナは元々ロシアの一部である」というのはロシア革命以前のロシア帝国の状態に戻そうと考えているのでしょうか。長い歴史の因縁を感じさせます。
2017年2月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これまでは、十月革命中心史観によって語られることが多か
ったロシア革命を、二月革命の顛末を丹念に追うことで、読
み直しに成功している傑作です。
「公衆」を中心とした、この臨時政府の主要閣僚の動向を、
各勢力間のパワーバランスを含めて、詳細に示して行きます。
そしてその背景としての、ロシア特有の「上層」と「下層」
の断絶を浮かび上がらせ、臨時政府の限界を語ります。
西側の援助を当てにしたが故の戦争遂行の推進や、各勢力間
の調整の困難さによるどっち付かずの政策が、臨時政府の求
心力を弱め、「下層」による「街頭の政治」を抑止出来なか
ったことを理解しました。
この臨時政府の崩壊ぶりからは、数年前の民主党政権の迷走
を想起しました。
民主主義は、議会における討議調整能力を持たないと脆いと
いうことでしょうか。
ったロシア革命を、二月革命の顛末を丹念に追うことで、読
み直しに成功している傑作です。
「公衆」を中心とした、この臨時政府の主要閣僚の動向を、
各勢力間のパワーバランスを含めて、詳細に示して行きます。
そしてその背景としての、ロシア特有の「上層」と「下層」
の断絶を浮かび上がらせ、臨時政府の限界を語ります。
西側の援助を当てにしたが故の戦争遂行の推進や、各勢力間
の調整の困難さによるどっち付かずの政策が、臨時政府の求
心力を弱め、「下層」による「街頭の政治」を抑止出来なか
ったことを理解しました。
この臨時政府の崩壊ぶりからは、数年前の民主党政権の迷走
を想起しました。
民主主義は、議会における討議調整能力を持たないと脆いと
いうことでしょうか。
2022年5月15日に日本でレビュー済み
ロシア革命の2月革命と10月革命の間の8カ月をまとめた新書。
ロシア革命は最初に様々な勢力が協力して行った緩やかな革命があり、その政権が8カ月で瓦解して急進的な改革が起きた。新体制から見れば真の市民による蜂起となるだろうが、この本を読むと連立政権が難しい状況で何とか新政権を漕ぎ出そうとしてうまくいかず、極端な主張をする勢力が一気に政権を取ってしまったように感じた(その後は強権を発動して権力を盤石にした)。
特にレーニンは安全な外国から扇動して、最後に国に帰ってきておいしいとこ取りという感じでいい印象がなかった。
私はこれはソ連のつまづきの最初に見えた。今の日本を考える上でも大事なことが書かれていたと思う。
ロシア革命は最初に様々な勢力が協力して行った緩やかな革命があり、その政権が8カ月で瓦解して急進的な改革が起きた。新体制から見れば真の市民による蜂起となるだろうが、この本を読むと連立政権が難しい状況で何とか新政権を漕ぎ出そうとしてうまくいかず、極端な主張をする勢力が一気に政権を取ってしまったように感じた(その後は強権を発動して権力を盤石にした)。
特にレーニンは安全な外国から扇動して、最後に国に帰ってきておいしいとこ取りという感じでいい印象がなかった。
私はこれはソ連のつまづきの最初に見えた。今の日本を考える上でも大事なことが書かれていたと思う。
2017年1月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2月革命から10月革命までの8か月について書かれた新書本(以下本書と略)である。今年はロシア革命100周年である。
本書の特色は、10月革命で打倒されてしまう「臨時政府」の側からロシア革命を見ていることである。すなわち、臨時政府を守るための政治家達の苦闘を描き、それがなぜ挫折したのかを検討する本である。
一般向けロシア革命本として、手もとに、松田道雄「ロシアの革命」(河出書房新社)(以下松田本)、菊地昌典「ロシア革命」(中公新書)(以下菊地本)、和田春樹がロシア革命部分を書いた「ロシア史」(山川出版)(以下和田本)、本書とほぼ同じ時期を扱う。「ペトログラードの市民生活」(中公新書)(以下長谷川本)があるので、比較しつつ、本書の感想を書く。
私的感想
●中公新書は重厚な歴史新書を出し続けているが、岩波新書は比較的、コンパクトな本が多くなった。本書は、ロシア革命50周年として出版された菊地本の半分ぐらいの分量である。熱血の塊のような菊地本に比べると、本書は比較的クールである。
●松田本、菊地本、和田本は、今日的にはボルシェビキ視点と受け取られがちだが、建前としては、そうではなく、「ソヴェト視点」「人民視点」「労働者階級視点」で書かれた本とされている。一方本書は「臨時政府視点」で書かれた本である。敗者のロシア革命史ということになるだろう。
●どういう視点にたっても、歴史的事実そのものは大きくは変わらない。また、ボルシェビキ以外の社会主義者は、臨時政府にもソヴェトにも属していたので、臨時政府とソヴェトが完全に敵対していたとはいえない。しかし、松田本でも、菊地本でも、和田本でも、どうしても臨時政府は、反動的な、打倒されて当然な、ちょっと滑稽な存在にされてしまっていたと思う。本書はそれらとは異なり、臨時政府の苦労への「お・も・い・や・り」の感じられる本である。また、4次の臨時政府(社会主義者なしの最初の臨時政府と、社会主義者を含む1次2次3次の連立政府)に参加した38人の閣僚について、それぞれ最小限の紹介がされ、多くは逸話、写真も付けられて、彼らの人間像、政治思想、閣内バランス、連携対立、宿命等について、適度の共感と適度の批判をちりばめて描かれている。
●本書は、臨時政府の崩壊によって、何が失われ、その後も失われ続けたかを問う本である。その答は略するが、臨時政府の敗因として、一、対ドイツ戦の戦場に行きたくないという民衆の要求を実現できなかった、二、戦争を継続するのなら、徹底的に民衆を抑えるしかないが、それをするのは、臨時政府はあまりに柔和であった、ことを上げている。
●臨時政府の柔和さというのは、要するに、やさしさ、人のよさであり、ボルシェビキを叩きつぶす絶好の機会(7月危機)がありながら、妙な同志意識から、それができなかったたり、監獄から逃げた刑事犯を恩赦して、死刑も廃止して、治安を自ら悪化させ、武器を流出させたり、とボルシェビキの思うつぼにはまっている。これでは、レーニン、トロッキーといった政治軍事の天才には勝てないと、納得させられる一方、妙に同情してしまう。長谷川本には、殺人を含む凶悪犯罪や、民衆による加害者のリンチが、加速度的に増えていく様子が活写されているが、ボルシェビキはこの無政府状態を徹底的に利用した上で、自らが政権を取ると、アナーキスト等を一掃したのである。
●個人的に、本書で一番感動的なのは、次の部分であった。引用する。(220頁)。ココシキンもシンガリョフも元臨時政府閣僚のカデットである。「この日(私注・・1918年1月5日)、・・ココシキンが、収監されていたペテロパウロ要塞からマリヤ監獄病院に移送された。結核を病むココシキンには、要塞の環境は耐えられないからであった。シンガリョフもいっしょに移された。六日から七日にかけての深夜、水兵と赤衛隊員が病院に侵入して、二人を殺した。殺害者はお咎めなしで終わった。ロシアに議会制をうちたてることに熱意を注いだ法学者と、農民の困窮を訴えた元医者の最後であった」
●この事件について、松田本は次の一行で片づけている。「その夜ふたりのカデット代表が水兵によって殺害された」。なお、松田道雄は医者であり、結核の研究者でもあり、松田本は、1970代以後では、もっとも読まれたロシア革命本ではないかと思う。
本書についての疑問
●「フリーメーソン」という言葉が頻出し、閣僚間のフリーメーソンを介してのつながりが重要視されているように感じされる。しかし、フリーメーソンの実体については何も書かれていない
本書の特色は、10月革命で打倒されてしまう「臨時政府」の側からロシア革命を見ていることである。すなわち、臨時政府を守るための政治家達の苦闘を描き、それがなぜ挫折したのかを検討する本である。
一般向けロシア革命本として、手もとに、松田道雄「ロシアの革命」(河出書房新社)(以下松田本)、菊地昌典「ロシア革命」(中公新書)(以下菊地本)、和田春樹がロシア革命部分を書いた「ロシア史」(山川出版)(以下和田本)、本書とほぼ同じ時期を扱う。「ペトログラードの市民生活」(中公新書)(以下長谷川本)があるので、比較しつつ、本書の感想を書く。
私的感想
●中公新書は重厚な歴史新書を出し続けているが、岩波新書は比較的、コンパクトな本が多くなった。本書は、ロシア革命50周年として出版された菊地本の半分ぐらいの分量である。熱血の塊のような菊地本に比べると、本書は比較的クールである。
●松田本、菊地本、和田本は、今日的にはボルシェビキ視点と受け取られがちだが、建前としては、そうではなく、「ソヴェト視点」「人民視点」「労働者階級視点」で書かれた本とされている。一方本書は「臨時政府視点」で書かれた本である。敗者のロシア革命史ということになるだろう。
●どういう視点にたっても、歴史的事実そのものは大きくは変わらない。また、ボルシェビキ以外の社会主義者は、臨時政府にもソヴェトにも属していたので、臨時政府とソヴェトが完全に敵対していたとはいえない。しかし、松田本でも、菊地本でも、和田本でも、どうしても臨時政府は、反動的な、打倒されて当然な、ちょっと滑稽な存在にされてしまっていたと思う。本書はそれらとは異なり、臨時政府の苦労への「お・も・い・や・り」の感じられる本である。また、4次の臨時政府(社会主義者なしの最初の臨時政府と、社会主義者を含む1次2次3次の連立政府)に参加した38人の閣僚について、それぞれ最小限の紹介がされ、多くは逸話、写真も付けられて、彼らの人間像、政治思想、閣内バランス、連携対立、宿命等について、適度の共感と適度の批判をちりばめて描かれている。
●本書は、臨時政府の崩壊によって、何が失われ、その後も失われ続けたかを問う本である。その答は略するが、臨時政府の敗因として、一、対ドイツ戦の戦場に行きたくないという民衆の要求を実現できなかった、二、戦争を継続するのなら、徹底的に民衆を抑えるしかないが、それをするのは、臨時政府はあまりに柔和であった、ことを上げている。
●臨時政府の柔和さというのは、要するに、やさしさ、人のよさであり、ボルシェビキを叩きつぶす絶好の機会(7月危機)がありながら、妙な同志意識から、それができなかったたり、監獄から逃げた刑事犯を恩赦して、死刑も廃止して、治安を自ら悪化させ、武器を流出させたり、とボルシェビキの思うつぼにはまっている。これでは、レーニン、トロッキーといった政治軍事の天才には勝てないと、納得させられる一方、妙に同情してしまう。長谷川本には、殺人を含む凶悪犯罪や、民衆による加害者のリンチが、加速度的に増えていく様子が活写されているが、ボルシェビキはこの無政府状態を徹底的に利用した上で、自らが政権を取ると、アナーキスト等を一掃したのである。
●個人的に、本書で一番感動的なのは、次の部分であった。引用する。(220頁)。ココシキンもシンガリョフも元臨時政府閣僚のカデットである。「この日(私注・・1918年1月5日)、・・ココシキンが、収監されていたペテロパウロ要塞からマリヤ監獄病院に移送された。結核を病むココシキンには、要塞の環境は耐えられないからであった。シンガリョフもいっしょに移された。六日から七日にかけての深夜、水兵と赤衛隊員が病院に侵入して、二人を殺した。殺害者はお咎めなしで終わった。ロシアに議会制をうちたてることに熱意を注いだ法学者と、農民の困窮を訴えた元医者の最後であった」
●この事件について、松田本は次の一行で片づけている。「その夜ふたりのカデット代表が水兵によって殺害された」。なお、松田道雄は医者であり、結核の研究者でもあり、松田本は、1970代以後では、もっとも読まれたロシア革命本ではないかと思う。
本書についての疑問
●「フリーメーソン」という言葉が頻出し、閣僚間のフリーメーソンを介してのつながりが重要視されているように感じされる。しかし、フリーメーソンの実体については何も書かれていない