織田信長が手掛けた城が時代を追って解説される。信長の城を順に見ていくことで信長の変化、さらには戦国時代の変化が読み取れるのが面白い。武田信玄や朝倉義景など多くの武将が居城を変えなかったのに対して、信長は次々に城を変えた。その時その時の敵国との関係を見ながら、また信長の思い描く理想に近づくために拠点を移した。ただ家臣、特に近習にしてみれば、故郷の尾張に家族を残したまま、城を転々として今でいう単身赴任だったため、不満もあったようだ。
安土城の章では既存の見解に対して、批判的な分析が行われていて読みごたえがあった。滋賀県教育委員会が出している『安土 信長の城と城下町』という調査結果と見比べながら読むとなるほどと考えさせられる。著者はあくまで調査結果に敬意を示しつつ、学術的な批判を行ったとことわりがある。
城郭や縄張り、歴史地理の面が特に詳しく、歴史史料と合わせて解説される。
安土城で家康を饗応した場所はどこだったか。また家康の邸宅はあったのか、御幸の御間はどこだったかなど、調査結果に対して再考を加えて新説を唱えている。三の丸については入口のない石垣の上に建築物があったとして、どのようにつながっていたのか、考察が巡らされている。安土城発掘の前はこの三の丸の南東に斜面路がついていて、そこが出入口と考えられていたが、発掘によって江戸時代に造られたものとわかった。ではどうやってこの三の丸に出入りしたか。四方は高い石垣に囲まれている。三の丸の西側には本丸があったとされる。そこには多くの礎石が見つかっている。三の丸出入口の発見にはこの礎石の位置が関連していた。三の丸の石垣西側の一部に石垣下にピッタリ沿った礎石があった。これは何を意味しているのか。本書によるとこの礎石は懸け造りのためのものだというのだ。安土城は本能寺の変の後、謎の出火によって焼失した。6年かけて築城された安土城はわずか9ヶ月だけこの世に在って消えてしまったのである。木造なので後に残り得ない。しかし礎石の位置がその上にあった構造物の姿を伝えてくれるというのは面白い。懸け造り、つまり土台よりも外に張り出して建築物を建てる場合、石垣に沿わせて斜めに柱を立てる。そして石垣から離れた位置にまた柱を立てて、上の建築物を支えるようだ。天主の南にあった政治の中心としての本丸と、その東にあった閉じられた石垣の上に建つ三の丸は木造の建築物でつながっていた。ちなみに『安土 信長の城と城下町』ではこの本丸が天皇行幸のための「御幸の御間」ではないかと推測。千田氏はそうではなく本丸を政治の場と推測している。
三の丸について、千田氏はさらに『信長公記』の記述からこここそが武田氏討伐後の徳川家康饗応の場だったとしている。江戸時代の「近江蒲生郡安土古城図」では名坂氏屋敷とされているが、千田氏はもっと格式の高い御殿があったと指摘。『信長公記』では天正10年正月、甲賀衆が寒い中、外で待っている時に信長が御殿の中に入って見学するように声をかける。その時、本丸を観てさらに江雲寺御殿まで見学し、そこで狩野永徳の障壁画や見晴らしの良い景色を眺めたという。この記述から千田氏は四方から景色が眺められる江雲寺御殿こそ三の丸ではないかと推測する(他の御殿では北が石垣であったり他の御殿がある)。三の丸は本丸から5メートルも高い位置にあり眺めも良い場所であった。『安土 信長の城と城下町』によれば天主とこの三の丸から瓦が出土していることが示される。当時瓦が使用されるのはごく限られた建築だけだった。(瓦は奈良の職人が焼き、松永久秀の多聞山城や光秀の坂本城でも使用されていた) そして明智光秀が饗応役となって徳川家康をもてなしたのもこの江雲寺御殿だった。周知の通り光秀の饗応役は1日で解かれ中国征伐のため坂本城に軍備に戻り亀山城に移り、中国に向かわず京都にとって返し信長のいる本能寺に向かう。なお『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』(藤田)や『明智光秀 織田政権の司令塔』(福島)によれば光秀が饗応役を解かれたのは、中国攻めで苦戦する秀吉から出陣要請がもたらされたのが5月17日で、その加勢のため光秀も17日に坂本城に戻ったとされる。ちなみに本能寺の変がなぜ6月2日だったかは信長軍による四国長宗我部(光秀家臣斎藤利三縁戚)攻め出陣がまさにその日だった。
安土城は家臣団の屋敷を備えていたが、実際には有力武将は領国を持ち、そこに城もあったため意外にひっそりしていたと指摘される。妻子が安土に置かれるということもなかった。
一方、安土城築城には周辺の国々から多くの人が訪れ建築に関わった。巨石一つ運ぶのに一万人を動員したというから、その凄さが伝わってくる。この築城の賑やかさと完成後の静かな姿、あるいは一年も経たずに燃えてしまったことは何を意味しているのだろうか。燃えたのは事象であって意味などないのかもしれない。それでも強いて一考してみると、城は使うことよりも造ることに意味があったのではないかということである。どのように石垣を配置して城のデザインをどうするかなど。意匠はどうするか。装飾はどうするかなど。そこに住む実用性、権威をどう示すか。そういう過程を楽しんでいた、というのは考えられないだろうか。本書を読んでいて、築城の時の無数の人々のエネルギーを感じ、また一方で盛者必衰の理のごとく滅却してまた静かな山に戻った、その対比的な二点から、当時の人の城造りに対する心情に思いを馳せた。
本書は信長好き、城好きの人にとっては絶妙な組み合わせになっている。学術的な批判精神も盛り込まれて読みごたえがある。
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信長の城 (岩波新書) 新書 – 2013/1/23
千田 嘉博
(著)
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信長の天下取りへの道が、その城からわかる! 謎だった信長誕生の城はどこか。築城後、5年で移された小牧山城は仮の城にすぎなかったのか。岐阜城や、壮麗な天主をもった安土城に表れた信長の意思とは。近年とみにすすんだ発掘成果をもとに、絵図や宣教師の手記など文字史料を総合し、楽しく解説する。
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2013/1/23
- 寸法11.5 x 1.2 x 17.5 cm
- ISBN-104004314062
- ISBN-13978-4004314066
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2013/1/23)
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- 言語 : 日本語
- 新書 : 288ページ
- ISBN-10 : 4004314062
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上位レビュー、対象国: 日本
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2021年9月25日に日本でレビュー済み
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2021年7月9日に日本でレビュー済み
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“城マスター”千田嘉博氏が信長の城を個別に検証した著作。
発掘調査に基く考古学視点と文字史料との両側面から丁寧に分析をしているので実証的であり、且つ築城を通して見える信長の革新性に迫っている所が特筆に値する。
本書を読めば、戦国山城の魅力を再認識出来ると同時に、信長の城に対する考え方をも垣間見る事が出来るであろう。
本書で扱うのは、勝幡城、那古野城、清州城、小牧山城、岐阜城、安土城である。
特に、信長が造った城のみならず幼少期を過ごした、或いは織田家に縁のある城をも取り上げている所が興味深い。
因みに、勝幡城については詳しく知らなかったが、信長は室町時代の典型とも言える館型の城で生まれ、京都風の武家儀礼に則った御殿で育ったという…成程、人は生まれ育った環境や価値観からは脱しにくい為、恐らく凡庸な人物であれば古風な伝統に捕らわれたまま終わったであろうが、信長は古式の伝統に倣うよりも合理性を重んじたからこそ、数多ある大名の中でも抜きんでる事が出来たのかもしれない。
また、本書では武家屋敷や城下町全体を含む総合的な都市計画にもかなりの重点を置いて論じているので、当時の町の様子も良く解る。
例えば、近世城下町の源流ともされる小牧山城については、城を中心とした都市構造を詳しく論じているし、同時に鏡石にも言及しているので、城の“権威”について考える事が出来る。
或いは、岐阜城についてはルイス・フロイスの記録を繙きながら紹介しており、城の内部空間や都市全体の構造も臨場感を以て多くを学ぶ事が出来たように思う。
そして安土城…残念ながら現存しないが、この城については発掘調査による再現がある程度可能である事から、恐らく戦国屈指どころか、当時としては常識の範疇を超えた城であった事も良く解ると同時に、信長の朝廷に対する考え方も垣間見られて興味深い。
築城を通して信長の人物像が見えて来ると言っても過言ではなく、実に読み応えがあった。
いつも城に対する熱い思いを語ってくれる千田先生はTV等でもお馴染みだが、本書に於いても実に雄弁、且つ、城郭考古学の醍醐味を教えてくれる。
城ブームが始まって久しい昨今、信長の城は是非とも押さえておきたいポイントでもあるので、城郭の愛好家の方達には自信を以てお薦めしたいと思う。
発掘調査に基く考古学視点と文字史料との両側面から丁寧に分析をしているので実証的であり、且つ築城を通して見える信長の革新性に迫っている所が特筆に値する。
本書を読めば、戦国山城の魅力を再認識出来ると同時に、信長の城に対する考え方をも垣間見る事が出来るであろう。
本書で扱うのは、勝幡城、那古野城、清州城、小牧山城、岐阜城、安土城である。
特に、信長が造った城のみならず幼少期を過ごした、或いは織田家に縁のある城をも取り上げている所が興味深い。
因みに、勝幡城については詳しく知らなかったが、信長は室町時代の典型とも言える館型の城で生まれ、京都風の武家儀礼に則った御殿で育ったという…成程、人は生まれ育った環境や価値観からは脱しにくい為、恐らく凡庸な人物であれば古風な伝統に捕らわれたまま終わったであろうが、信長は古式の伝統に倣うよりも合理性を重んじたからこそ、数多ある大名の中でも抜きんでる事が出来たのかもしれない。
また、本書では武家屋敷や城下町全体を含む総合的な都市計画にもかなりの重点を置いて論じているので、当時の町の様子も良く解る。
例えば、近世城下町の源流ともされる小牧山城については、城を中心とした都市構造を詳しく論じているし、同時に鏡石にも言及しているので、城の“権威”について考える事が出来る。
或いは、岐阜城についてはルイス・フロイスの記録を繙きながら紹介しており、城の内部空間や都市全体の構造も臨場感を以て多くを学ぶ事が出来たように思う。
そして安土城…残念ながら現存しないが、この城については発掘調査による再現がある程度可能である事から、恐らく戦国屈指どころか、当時としては常識の範疇を超えた城であった事も良く解ると同時に、信長の朝廷に対する考え方も垣間見られて興味深い。
築城を通して信長の人物像が見えて来ると言っても過言ではなく、実に読み応えがあった。
いつも城に対する熱い思いを語ってくれる千田先生はTV等でもお馴染みだが、本書に於いても実に雄弁、且つ、城郭考古学の醍醐味を教えてくれる。
城ブームが始まって久しい昨今、信長の城は是非とも押さえておきたいポイントでもあるので、城郭の愛好家の方達には自信を以てお薦めしたいと思う。
2017年12月12日に日本でレビュー済み
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安土城址でのあらたな発掘の結果、「大手道」や「本丸御殿」の構造をめぐって「滋賀県安土城郭調査研究所」が新奇な解釈をくだしたことがある。問題のふたつの遺構は天皇の行幸を念頭において造られている、というものだった。NHKがCGを使って歴史関係の番組で紹介したことがある(かれこれ10年前か?)ので覚えている方も多かろう。本書はこうした解釈へのいわば挑戦状。行幸を念頭においた「御幸の御間」もあったことは否定しないが、研究所側が考えるような「清涼殿」ではない、ということらしい。京都御所にあるような「清涼殿」は安土にはなかったし、ましてや大手道が中腹まで直線で続くのは天皇を迎え入れるのを意図したわけでもない、という。
ふたつの遺構をめぐる解釈の違いは信長の人物像や彼の政治哲学にも影響してくる。つまり天皇(在来の秩序)を重んずる保守的価値観をあんがい大事にしていたのではないか(研究所)という信長像をめぐる「修整」は、やはり以前からある「旧秩序への挑戦者」としての革新政治家織田信長というところへと振り子が戻ってゆくことになるから。安土城址の発掘解釈をめぐって興味は尽きない。
ふたつの遺構をめぐる解釈の違いは信長の人物像や彼の政治哲学にも影響してくる。つまり天皇(在来の秩序)を重んずる保守的価値観をあんがい大事にしていたのではないか(研究所)という信長像をめぐる「修整」は、やはり以前からある「旧秩序への挑戦者」としての革新政治家織田信長というところへと振り子が戻ってゆくことになるから。安土城址の発掘解釈をめぐって興味は尽きない。
2021年8月9日に日本でレビュー済み
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織田信長の時代の城の様子がよくわかる。特に安土城の発掘調査と文献からの考証による最新の考察は大変勉強になりました。
2015年3月31日に日本でレビュー済み
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知り合いの建築士が、安土城のことを熱く語っていたことがある。
あの時代にあの斬新なデザイン、建築学上も堅牢な構造……
信長は、その点だけでも天才である、と。
本書を読んで、私も改めてそう思った。
いくつかの謎を解き明かしながら、信長の城と、人間信長をあぶり出す。
一級のノンフィクションである。
あの時代にあの斬新なデザイン、建築学上も堅牢な構造……
信長は、その点だけでも天才である、と。
本書を読んで、私も改めてそう思った。
いくつかの謎を解き明かしながら、信長の城と、人間信長をあぶり出す。
一級のノンフィクションである。
2013年4月29日に日本でレビュー済み
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発掘調査結果に基づいての城郭構造の見方に目からウロコが落ちる思いで一気に読破しました。信長の城が極めて合理的な発想で構築されていたことは予想はしていたのですが、ここまでとは思いませんでした。いままで、あいまいに見過ごされてきた信長の城の全てに、統一的な考えからで迫ったすばらしい著作だと思います。でき得れば、信長の斬新で合理的な考え方と、過去から引きずる呪術的な要素、たとえば鬼門の扱い方などの関係がどうなのか、があればもっとよかったと思います。
2013年4月21日に日本でレビュー済み
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織田信長という一人の人物が作った城にだけスポットを当て、信長の持つ世界観を城郭構造から再検証するといった新しい試みも交えながら、「信長の城」に対し、明解に一本の筋を通しています。発掘成果から推察する岐阜の信長館や安土城天守の姿なども、実に斬新で説得力があります。紹介されたお城の多くは既に訪ねたことがあるのですが、この本にある解釈を知ったうえで、改めて行ってみたくなりました。
2013年4月7日に日本でレビュー済み
本書は、タイトルどおり、信長が築いた城を年代順に解説した本です。
第1章は勝幡城(信長誕生の城)、那古野城、清州城、第2章は小牧山城、第3章は岐阜城、第4章は安土城、そして終章は「信長の城とは何であったのか」です。
この本は、中学生の頃から城が大好きであった著者らしく、著者自身の現地検分、発掘の成果、歴史的文献資料、先人の研究成果などを踏まえて、これらの城を解説しています。
写真や地図も豊富(写真が白黒でやや小さいのが残念)で、「なるほど、信長の城はこういう構造だったのか」と、とても興味深く読めます。
この本を読んで、(a) 城(家臣の屋敷や城下町を含む)の構造は、権力者と家臣、商人たちとの関係を反映していること、そして、(b) たった50年間の短い生涯の間に、家臣との並立的な関係から信長が絶対的な権力を持つ関係に変化していること、(c) 信長は城づくりを通じても意図的にそのような関係性を構築しようとしていることが理解できて、信長の先見性と歴史の急激な動きに感慨を抱きます。
安直なドラマや小説より、信長像をイメージできるすばらしい本と思います。
また、(d) 岐阜城や安土城の意外な構造(立体的で連続性をもった構造、「懸け造り」構造など)や、(e) 安土城が意外に使われずさびしい城だったことなど、「ほう、そうなのか」と思わせる情報もたくさんあります。
多くの情報を盛り込んだ本であり、地図と文章を参照しながら読む必要があるなど、少し根気が必要な本ですが、読む価値のある本です。これだけ充実した内容の本は、昨今の粗製乱造の新書が多い中でとても評価に値すると思います。
お薦めします。
第1章は勝幡城(信長誕生の城)、那古野城、清州城、第2章は小牧山城、第3章は岐阜城、第4章は安土城、そして終章は「信長の城とは何であったのか」です。
この本は、中学生の頃から城が大好きであった著者らしく、著者自身の現地検分、発掘の成果、歴史的文献資料、先人の研究成果などを踏まえて、これらの城を解説しています。
写真や地図も豊富(写真が白黒でやや小さいのが残念)で、「なるほど、信長の城はこういう構造だったのか」と、とても興味深く読めます。
この本を読んで、(a) 城(家臣の屋敷や城下町を含む)の構造は、権力者と家臣、商人たちとの関係を反映していること、そして、(b) たった50年間の短い生涯の間に、家臣との並立的な関係から信長が絶対的な権力を持つ関係に変化していること、(c) 信長は城づくりを通じても意図的にそのような関係性を構築しようとしていることが理解できて、信長の先見性と歴史の急激な動きに感慨を抱きます。
安直なドラマや小説より、信長像をイメージできるすばらしい本と思います。
また、(d) 岐阜城や安土城の意外な構造(立体的で連続性をもった構造、「懸け造り」構造など)や、(e) 安土城が意外に使われずさびしい城だったことなど、「ほう、そうなのか」と思わせる情報もたくさんあります。
多くの情報を盛り込んだ本であり、地図と文章を参照しながら読む必要があるなど、少し根気が必要な本ですが、読む価値のある本です。これだけ充実した内容の本は、昨今の粗製乱造の新書が多い中でとても評価に値すると思います。
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