本書は、超大国アメリカがイラクやアフガニスタンでの戦いに苦しんでいるさまを、ていねいな取材によってレポートしたものです。
「第1章 見えない傷」では、IED(安価なものでは10ドル程度で製造される即席爆破装置。手製の爆弾。反米勢力が道路に仕掛けて、アメリカ軍に打撃を与えたり、テロの効果をねらうもの)によって、帰還兵が後遺症に苦しむ状況を描いています。
「第2章 従軍取材で見た基地の日常」「泥沼化する非対称戦争」では、アフガニスタンでのアメリカ軍に従軍取材した経験が記述されています。著者は、この際に、乗車している装甲車がIEDで爆破される経験をしており、その状況も記述しています。
「第4章 『終わらない戦争』の始まり」では、アメリカ軍が使用している無人の偵察機、爆撃機をどのように運用しているかが書かれています。アメリカ本土からゲーム感覚で操縦し、人を攻撃する様子を読むと、新しい戦争の時代に恐怖を感じます。
新書250ページ余りの分量であるため、もちろんイラク戦争やアフガニスタン戦争の全体を記述するのは無理であり、本書は主に著者が取材し経験し感じたことを中心に書かれています。大所高所からの分析ではなく、新聞記者としてのレポートという感じの本です。
私は、本書を読みながら「ていねいに取材している」と感じました。
まさに「持てる者」と「持たざる者」の間の非対称戦争について考えることができました。また、明確な前線もなく、軍服を着ていない誰が敵かが判断しずらい相手と戦うアメリカの苦悩が、的確に描けていると思います。
きちんと書かれた好著であり、お薦めできる本と思います。
新品:
¥902¥902 税込
お届け日 (配送料: ¥460
):
3月30日 - 4月2日
発送元: 金沢ビーンズ 明文堂書店金沢県庁前本店 販売者: 金沢ビーンズ 明文堂書店金沢県庁前本店
新品:
¥902¥902 税込
お届け日 (配送料: ¥460
):
3月30日 - 4月2日
発送元: 金沢ビーンズ 明文堂書店金沢県庁前本店
販売者: 金沢ビーンズ 明文堂書店金沢県庁前本店
中古品: ¥37
中古品:
¥37

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
勝てないアメリカ――「対テロ戦争」の日常 (岩波新書) 新書 – 2012/9/21
大治 朋子
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥902","priceAmount":902.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"902","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"GwfVAm%2BXwQLeQ1JZ7fkpFodZdlYqBd%2BW65dQHR6zDcOdEgXMJnfZSZSuGsUpo5Ah0mIcUmzp1YsxZfa%2FmiOF12eN0Ri3KiDgSk8q7Eg470yVP%2FAiCIHoH6gY5O3XxlpiYsaC%2BJLCW2%2BncXqT90Ei59Zayc22plTD0a%2B%2B50i2UfYRxZcIWRMJVHOVBka1Jb%2FS","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥37","priceAmount":37.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"37","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"GwfVAm%2BXwQLeQ1JZ7fkpFodZdlYqBd%2BW%2F5HbHWO7RS%2FIl07E5lYpr6Z%2BrIizodeloaRYpmPhqmRYXCnThKheg3rp6i9SLfPgRoT4TI00yFRfk744Vv74jArQAzn002WgZdGv5rJHYNmVgiFxDWufEFEXnht%2FCM6Mn5rNdkBYGAdyElQTFNglKQ%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
圧倒的優位にあるはずの米軍が「弱者」に翻弄される。衛星通信を使った無人の爆撃機や偵察ロボットなどハイテク技術を追求するが、むしろ犠牲者は増え続け、反米感情は高まる。負のスパイラルに墜ちた「オバマの戦争」。従軍取材で爆弾攻撃を受けながら生き延びた気鋭の記者が、綿密な現場取材から、その実像を解き明かす。
- 本の長さ272ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2012/9/21
- ISBN-104004313848
- ISBN-13978-4004313847
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2012/9/21)
- 発売日 : 2012/9/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 272ページ
- ISBN-10 : 4004313848
- ISBN-13 : 978-4004313847
- Amazon 売れ筋ランキング: - 828,871位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,995位岩波新書
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2013年4月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新聞で読むニュースのレベルには限度があるが、具体的に現地に赴いて取材した行動には共感がもてる。
但し、オバマ政権の評価と無人機多用を直接結びつけていることには、異論もあり得る。例えば、無人機が
多用される時機とたまたま一致してしまったとも考えられる。TBI = Traumatic Brain Injury というのは勉強
になりました。
但し、オバマ政権の評価と無人機多用を直接結びつけていることには、異論もあり得る。例えば、無人機が
多用される時機とたまたま一致してしまったとも考えられる。TBI = Traumatic Brain Injury というのは勉強
になりました。
2012年11月11日に日本でレビュー済み
文中ではあえて書かれていないが、戦場特有のストレス、病気や怪我、自殺、軍事の民間企業の委譲、無人機の導入といった問題は、日本でも少ない量ではあるが取り上げられている問題であり、今後さらに大きくなる可能性がある。
それにしても、自衛隊の入隊のための個人情報漏洩をスクープした記者が、米軍が人員不足に悩む実態をリポートするというのは、何と言う皮肉なことか。
それはともかく、ブッシュもオバマも悩んだ問題である、
「どうすれば勝てるのか」
あるいは、
「どうすれば終わらせることができるのか」
「どうして戦わなければいけないのか」
という答えを、この本から見出せなかったのは残念だ。
兵員を増やせば良いのか、さらに適当な装備を改良開発すれば良いのか、NATOや日本なり他の国に任せるのか、無人機を使わず暗殺すれば良いのか、そういった短格的な答えを想像する人も出るのではないかと思う。
イラク戦争がベトナム戦争以来の不正規戦争というが、米軍では1980年代から特殊作戦部隊の再編を進めていて、中米などでの活動もある。
MRAPとか「ナイフでスープ」のくだりが出てくるのなら、南アフリカやイギリスの不正規戦争に目が届いてもよかったと思う。
そのあたり、著者の書き方が主観的過ぎるというか、よく言えばアナログ的、悪く言えば幼稚な考えに未熟な内容の本だと思う。
国際政治とか、軍事問題、イラク、アフガン情勢、ジャーナリスムについて既に知識のある人なら、目を通すまでもない本だろう。
メディアを目指す若い人向けの本であれば、従軍記事を中心に、インタビューをまとめただけの簡素な構成にした方が読みやすかったと思う。
それと178ページの「第一次世界大戦」は「朝鮮戦争」の校正ミス(笑
(追記:これについては本書の通りで正しいようです。評者が間違えていました。スミマセン)
出版後のインタビューを見る限りでは、本書を出版することで著者はさらに名声を高めたいところのようだが、
先輩記者が起こした「西山事件」のような事を起こさないことを祈るばかりである。
そのために星を一つ減らして一つにさせて頂いた。
(補記:2015年5月17日)
それにしても、自衛隊の入隊のための個人情報漏洩をスクープした記者が、米軍が人員不足に悩む実態をリポートするというのは、何と言う皮肉なことか。
それはともかく、ブッシュもオバマも悩んだ問題である、
「どうすれば勝てるのか」
あるいは、
「どうすれば終わらせることができるのか」
「どうして戦わなければいけないのか」
という答えを、この本から見出せなかったのは残念だ。
兵員を増やせば良いのか、さらに適当な装備を改良開発すれば良いのか、NATOや日本なり他の国に任せるのか、無人機を使わず暗殺すれば良いのか、そういった短格的な答えを想像する人も出るのではないかと思う。
イラク戦争がベトナム戦争以来の不正規戦争というが、米軍では1980年代から特殊作戦部隊の再編を進めていて、中米などでの活動もある。
MRAPとか「ナイフでスープ」のくだりが出てくるのなら、南アフリカやイギリスの不正規戦争に目が届いてもよかったと思う。
そのあたり、著者の書き方が主観的過ぎるというか、よく言えばアナログ的、悪く言えば幼稚な考えに未熟な内容の本だと思う。
国際政治とか、軍事問題、イラク、アフガン情勢、ジャーナリスムについて既に知識のある人なら、目を通すまでもない本だろう。
メディアを目指す若い人向けの本であれば、従軍記事を中心に、インタビューをまとめただけの簡素な構成にした方が読みやすかったと思う。
それと178ページの「第一次世界大戦」は「朝鮮戦争」の校正ミス(笑
(追記:これについては本書の通りで正しいようです。評者が間違えていました。スミマセン)
出版後のインタビューを見る限りでは、本書を出版することで著者はさらに名声を高めたいところのようだが、
先輩記者が起こした「西山事件」のような事を起こさないことを祈るばかりである。
そのために星を一つ減らして一つにさせて頂いた。
(補記:2015年5月17日)
2012年10月26日に日本でレビュー済み
著者が毎日新聞のワシントン特派員であった時に、
1.負傷兵へのインタヴューを通じて、外傷性損傷という見えない傷を入り口として
2.従軍取材でみた基地の日常を通じて、メディアがうまく米政府に利用されているのではないか?を問いかけ
3.従軍取材時に即席爆破装置による被爆体験と「持てる者」と「持たざる者」の間で繰り広げられる泥沼化する非対称戦争の問題点の指摘
4.ロボット時代の幕開けにより無人偵察機&爆撃機による戦争の意味の変容が、民主主義では止めようがないほど暴走していることを通して「終わらない戦争」の始まり
などを克明に記述した非常に興味深いルポです。
個人的には、ノーベル平和賞をとったオバマ大統領に対する評価が、軍人であったセオドア・ルーズベルト大統領に近い非常に戦争に積極的である大統領である、との記述によりここ数年来の疑問が解けました。
主にアフガニスタンとの戦争を中心に、イラク戦争、パキスタンへの爆撃についての問題点も的確にまとめられており一読に値する一冊です。
1.負傷兵へのインタヴューを通じて、外傷性損傷という見えない傷を入り口として
2.従軍取材でみた基地の日常を通じて、メディアがうまく米政府に利用されているのではないか?を問いかけ
3.従軍取材時に即席爆破装置による被爆体験と「持てる者」と「持たざる者」の間で繰り広げられる泥沼化する非対称戦争の問題点の指摘
4.ロボット時代の幕開けにより無人偵察機&爆撃機による戦争の意味の変容が、民主主義では止めようがないほど暴走していることを通して「終わらない戦争」の始まり
などを克明に記述した非常に興味深いルポです。
個人的には、ノーベル平和賞をとったオバマ大統領に対する評価が、軍人であったセオドア・ルーズベルト大統領に近い非常に戦争に積極的である大統領である、との記述によりここ数年来の疑問が解けました。
主にアフガニスタンとの戦争を中心に、イラク戦争、パキスタンへの爆撃についての問題点も的確にまとめられており一読に値する一冊です。
2012年11月6日に日本でレビュー済み
著者は大手新聞の新聞記者である。こまめにアメリカ国内の帰還兵や、イラクの米軍基地を見学し、報告していることは分かるが、タイトルの「勝てないアメリカ」の実態報告であり、「なぜ勝てないか?」という疑問には全く答えていない。つまり、「対テロ戦争」に関する先入観があっての取材であり、特にイラク取材に至っては、アメリカの掌での戦争報告である。言い換えると、「攻撃する側」の視点に終始し、「攻撃される側」の視点に乏しい。
本書で触れていないことにこそ、「対テロ戦争」の本質がある。そもそも、「対テロ戦争」のきっかけとなった911の「同時多発テロ」には、米国の一部勢力による自作自演の疑いが持たれており、裏付けとなる証拠も豊富である。また、攻撃される側のアフガニスタンやイラクの事情についての記述はほとんどない(アメリカ軍の死傷者をはるかに上回る人々が犠牲になっていることを、著者はどう考えているのだろうか)。対イラク戦争の口実だった「大量破壊兵器の保有」は全くの出鱈目だったことには言及されてすらいない。「好戦国家アメリカ」を動かしているのは、軍産複合体であり、このことは大統領が交替しても変わらない。しかし、本書の突っ込みは浅い。また、アメリカ軍の兵士として戦地に赴き、死傷したり、幸い無傷で帰国してもPTSDなど後遺症に苦しむのはほとんどが貧困層の若者であり、アメリカの極端な格差社会が「使い捨て」の兵士を生み出していることには著者はあまり批判を持っていないようである。
以上のように、本書は、まるでアメリカ政府公認の記者報告のようであり、ジャーナリズム精神を見出すことは困難である。日本の大手新聞の記者はこんなレベルなのか、いまさらながら悲しくなってしまった。
本書で触れていないことにこそ、「対テロ戦争」の本質がある。そもそも、「対テロ戦争」のきっかけとなった911の「同時多発テロ」には、米国の一部勢力による自作自演の疑いが持たれており、裏付けとなる証拠も豊富である。また、攻撃される側のアフガニスタンやイラクの事情についての記述はほとんどない(アメリカ軍の死傷者をはるかに上回る人々が犠牲になっていることを、著者はどう考えているのだろうか)。対イラク戦争の口実だった「大量破壊兵器の保有」は全くの出鱈目だったことには言及されてすらいない。「好戦国家アメリカ」を動かしているのは、軍産複合体であり、このことは大統領が交替しても変わらない。しかし、本書の突っ込みは浅い。また、アメリカ軍の兵士として戦地に赴き、死傷したり、幸い無傷で帰国してもPTSDなど後遺症に苦しむのはほとんどが貧困層の若者であり、アメリカの極端な格差社会が「使い捨て」の兵士を生み出していることには著者はあまり批判を持っていないようである。
以上のように、本書は、まるでアメリカ政府公認の記者報告のようであり、ジャーナリズム精神を見出すことは困難である。日本の大手新聞の記者はこんなレベルなのか、いまさらながら悲しくなってしまった。
2012年10月27日に日本でレビュー済み
日本の国際記者最高の栄誉であるボーン上田賞を受賞した新聞連載を再構成した。巨象とアリというほどの圧倒的な優位に立つ米軍が、アフガニスタンでタリバンなどの武装勢力掃討に悪戦苦闘する姿を、1ヶ月の従軍取材も含め、丹念な現地取材で描いている。当時、たまに目にしては読み「よく取材されているなあ」と思ったが、新書化されて改めて通読すると、取材密度の濃さに驚かされる。
万を超す米兵が、10ドルで作れる手製爆弾(IED)に被弾し、爆風で脳を損傷している。記憶障害や頭痛、光過敏になり、社会復帰が困難になっているという。米軍・政府は治療に極めて冷淡で、それどころかイラク・アフガンに再召集されている帰還兵もいる。米政府は6年以上IED後遺症を放置し、著者が取材を始めた頃からようやく本格的な治療対策に乗り出した。ようやく5年前から、IEDへの切り札として1台60万ドルの大型装甲車を投入した。10ドルの兵器から守るために60万ドルをつぎ込む。バカバカしいことだが、そうしないと米兵を守れない。本書のハイライトといえる、著者自身がIED攻撃を受けた時の描写に戦慄を覚える。爆弾があるかもしれないし、立ち往生した地点で銃撃されるかもしれない……だから何時間も動けない。そしてポツリと漏らす米兵の「周りのアフガン人を撃ってやりたい」という言葉が痛々しい。
新聞協会賞を2度受賞した著者だけあって、本書の取材の質も視点も優れている。イラク・アフガン戦争は開戦当初は洪水のような報道量だったが、取材しつくされ記者は消えた。戦争は今も厳然として続き、様々な問題がなおざりになっている。「IED後遺症」という、決して小さくないが、戦争全体から見るとごく小さい問題だ。だが、そこから人的被害や人員不足、そして非人間化、ゲーム感覚で人が殺される戦場、というとてつもなく大きな課題へ読者を導いている。何より数字は雄弁に物語る。「対テロ戦争」を掲げ、この10年で300兆円、数千人の人命をつぎ込んだにも関わらず、今も爆弾テロの6割はイラク・アフガン・パキスタンで起きる。そしてアフガン政府はいまだ首都周辺しか掌握していないし、アメリカは中東での支持を完全に失った。米国民の関心も薄れた。オバマはイラク・アフガンからの撤収を訴えたが、それはもはや「見切られた戦争」だからではないか、と感じた。
万を超す米兵が、10ドルで作れる手製爆弾(IED)に被弾し、爆風で脳を損傷している。記憶障害や頭痛、光過敏になり、社会復帰が困難になっているという。米軍・政府は治療に極めて冷淡で、それどころかイラク・アフガンに再召集されている帰還兵もいる。米政府は6年以上IED後遺症を放置し、著者が取材を始めた頃からようやく本格的な治療対策に乗り出した。ようやく5年前から、IEDへの切り札として1台60万ドルの大型装甲車を投入した。10ドルの兵器から守るために60万ドルをつぎ込む。バカバカしいことだが、そうしないと米兵を守れない。本書のハイライトといえる、著者自身がIED攻撃を受けた時の描写に戦慄を覚える。爆弾があるかもしれないし、立ち往生した地点で銃撃されるかもしれない……だから何時間も動けない。そしてポツリと漏らす米兵の「周りのアフガン人を撃ってやりたい」という言葉が痛々しい。
新聞協会賞を2度受賞した著者だけあって、本書の取材の質も視点も優れている。イラク・アフガン戦争は開戦当初は洪水のような報道量だったが、取材しつくされ記者は消えた。戦争は今も厳然として続き、様々な問題がなおざりになっている。「IED後遺症」という、決して小さくないが、戦争全体から見るとごく小さい問題だ。だが、そこから人的被害や人員不足、そして非人間化、ゲーム感覚で人が殺される戦場、というとてつもなく大きな課題へ読者を導いている。何より数字は雄弁に物語る。「対テロ戦争」を掲げ、この10年で300兆円、数千人の人命をつぎ込んだにも関わらず、今も爆弾テロの6割はイラク・アフガン・パキスタンで起きる。そしてアフガン政府はいまだ首都周辺しか掌握していないし、アメリカは中東での支持を完全に失った。米国民の関心も薄れた。オバマはイラク・アフガンからの撤収を訴えたが、それはもはや「見切られた戦争」だからではないか、と感じた。