ウンベルト・エーコ=ムズカシイ、と勝手に決めてかかって、これまでその著作は遠ざけていました。『小説の森散策』? これなら読めそう、小説に関する随筆だな、うん。
あらぁ、ハーヴァード大学での講義じゃん。経験的読者/モデル読者、経験的作者/モデル作者、テクスト/パラテクスト、解釈、顕現・・・。
正直なところ、途中までは文を追うので精一杯でしたが、辛抱してゆっくり読んでいくとなんとなくわかってくるような気がします。どうせ全部はわかんないしと開き直って読んでいると、ある時からすーっと読みやすくなってきました。どのあたりからかと言われてもよくわからないんですが、文学作品は作者と読者の関係性として成り立っているとふと思ったんですね。
また、“聞く”講義だと後戻りはできませんが、“読む”講義録は何度でも前に出た話を読み返せますし。「小説の森散策」を散策したと言いますか。
カバーに「読者はいかに読むべきか、作者は読者にどう読んでほしいと願っているのか」とありますが、本作ではひとつの作品を巡って読者の立場、作者の立場をあくまでも作品を分析するという形で紐解いていきます。分析というより解析か。そこまで読み込む?というほどに講義の題材に選んだ小説を時系列や場所移動を図示し可視化しての説明もあります。おお、こうやって私は作品にもっていかれるのだなとか、ああ、私は表面的にしか物語を追っていないなとか。
カルトの話、分量としては少ないですが、興味深かったです。カルト=脈絡のなさ。むむ、受け手側の自由度により双方向性が増すということ?とか、うーん、私の意識が新たな物語を作ることもあるなとか。
いろんなことに気付かされます。途中からは学術的な感じは(私の中では)なくなり、書き手/送り手−読み手/受け手に関する物語のように思えてきました。
どなたかが「読書とは対話である」と言っていて、私もそうだなと思っていましたが、本作を読んでその気持ちはさらに強くなってきましたし、そう思う理由も(なんとなくですが)わかってきました。作者と読者との協同作業により作品が完成する。そう考えると、より一層読書が楽しめますね。
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ウンベルト・エーコ 小説の森散策 (岩波文庫) 文庫 – 2013/2/16
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作家であり記号論学者である著者が、読者は小説をいかに読むべきか、作者は読者にどうよんでほしいと願っているのかを、記号論の概念を駆使してユーモアをまじえつつ解説する、ハーヴァード大学ノートン詩学講義(1992─93)の記録。フィクションとは一体何なのか? 虚構の森(=小説)を散策する楽しみはどこにあるのか?
- 本の長さ336ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2013/2/16
- 寸法10.5 x 1.4 x 15 cm
- ISBN-104003271815
- ISBN-13978-4003271810
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2013年9月1日に日本でレビュー済み
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2013年3月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『薔薇の名前』等で著名なU・エーコによる小説論。親本のタイトルは『エーコの文学講義』。
訳者解説によれば、ハーバード大学ノートン詩学講義は元々カルヴィーノが受け持つはずだったが急逝により実現しなかった(講義草稿は『カルヴィーノ アメリカ講義』岩波文庫で読める)。そのためエーコがこの講義を担当することになったという。
冒頭で述べられているように、作家としての二人には通底する問題意識があったようだ。しかしカルヴィーノが作家の立場で小説において重視している価値(「軽さ」「速さ」など)について持論を披瀝しているのに対し、エーコはどちらかというと記号論学者の立場で作者と読者の関係に焦点を当てており、両者の趣はかなり異なる。
日本語版の序文によると、この講義は様々な専攻の学生や研究者が対象であるため、専門的になりすぎないよう配慮したとのこと。確かに雑談風の語り口はとっつきやすいし、引用が豊富なので話の筋道を辿るのもわりと容易なのだが、内容はけっこう高度なものを含んでいる。
別に言及されている作品や理論について隅々まで通暁している必要はないが、ジョイスやプルーストの作品の内容であるとか、小説の表現技巧についての基本的な知識はあるという前提らしい。
まぁハーバードでの講義なので、ヨーロッパの文学史や批評理論について概論程度の知識くらいは持っているよね?ということかと思うが、日本の読者にはなじみにくい部分があるかもしれない。
文学部出身の方はともかく、いまさら文学史だの文学理論の教科書なんぞ読んでられるかという向きには、エーコと同じく作家でもあり学者でもあるD・ロッジの『小説の技巧』あたりの一読を勧めしておきたい。
作家による「文学講義」や「小説論」の類は多いが、エーコやロッジは学者でもあるので、理論的アプローチをとるタイプの典型といえるだろう。記号論のような文学の外部に解釈の枠組みを求めるわけだが、その対極として、ひたすら小説そのものを精密に読み込んでいくタイプの「講義録」もある。同時期に河出文庫から出た『ナボコフの文学講義』はこの後者のタイプに属するものかと思う。
物書きを生業としている方は別かもしれないが、一読者の立場からすればどちらの読み方が正しいとか間違っているという性質のものでもない。作家の文学観なり小説観が著作にどう表れてくるか?という視点で読み比べてみれば、小説を読む楽しみがいっそう増すのではないだろうか。
訳者解説によれば、ハーバード大学ノートン詩学講義は元々カルヴィーノが受け持つはずだったが急逝により実現しなかった(講義草稿は『カルヴィーノ アメリカ講義』岩波文庫で読める)。そのためエーコがこの講義を担当することになったという。
冒頭で述べられているように、作家としての二人には通底する問題意識があったようだ。しかしカルヴィーノが作家の立場で小説において重視している価値(「軽さ」「速さ」など)について持論を披瀝しているのに対し、エーコはどちらかというと記号論学者の立場で作者と読者の関係に焦点を当てており、両者の趣はかなり異なる。
日本語版の序文によると、この講義は様々な専攻の学生や研究者が対象であるため、専門的になりすぎないよう配慮したとのこと。確かに雑談風の語り口はとっつきやすいし、引用が豊富なので話の筋道を辿るのもわりと容易なのだが、内容はけっこう高度なものを含んでいる。
別に言及されている作品や理論について隅々まで通暁している必要はないが、ジョイスやプルーストの作品の内容であるとか、小説の表現技巧についての基本的な知識はあるという前提らしい。
まぁハーバードでの講義なので、ヨーロッパの文学史や批評理論について概論程度の知識くらいは持っているよね?ということかと思うが、日本の読者にはなじみにくい部分があるかもしれない。
文学部出身の方はともかく、いまさら文学史だの文学理論の教科書なんぞ読んでられるかという向きには、エーコと同じく作家でもあり学者でもあるD・ロッジの『小説の技巧』あたりの一読を勧めしておきたい。
作家による「文学講義」や「小説論」の類は多いが、エーコやロッジは学者でもあるので、理論的アプローチをとるタイプの典型といえるだろう。記号論のような文学の外部に解釈の枠組みを求めるわけだが、その対極として、ひたすら小説そのものを精密に読み込んでいくタイプの「講義録」もある。同時期に河出文庫から出た『ナボコフの文学講義』はこの後者のタイプに属するものかと思う。
物書きを生業としている方は別かもしれないが、一読者の立場からすればどちらの読み方が正しいとか間違っているという性質のものでもない。作家の文学観なり小説観が著作にどう表れてくるか?という視点で読み比べてみれば、小説を読む楽しみがいっそう増すのではないだろうか。
2015年2月16日に日本でレビュー済み
結構引用が多い本。
作者の該博な知識の一端が垣間見える。
体系的ではないが、テキストというものへの基本的な知識をちょこっと手に入れるには手頃な本だ。
参考になる小ネタがいくつか見つかるかもしれない。
私が面白いと思ったのは、ハムレットが名作といえるのはなぜなのかということ。
それは実は、ストーリがにバラバラで纏まりに欠けるからだという。
語り手のメタ構造とか、筋とか、描写の細かさとか、小説というもののスタンダードな枠組みを解説している。
作者の該博な知識の一端が垣間見える。
体系的ではないが、テキストというものへの基本的な知識をちょこっと手に入れるには手頃な本だ。
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それは実は、ストーリがにバラバラで纏まりに欠けるからだという。
語り手のメタ構造とか、筋とか、描写の細かさとか、小説というもののスタンダードな枠組みを解説している。
2014年10月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とっても感動しました。やすがです。こうした良書が日本語で読むことできるのに感謝です。岩波文庫ならでは・・・・。ありがとう。
2016年7月20日に日本でレビュー済み
ノーベル文学賞候補と噂されつつ今年(2016年)2月に亡くなった、エーコのハーバード大学での講義録。(少なくとも私には)耳慣れない、小説家カルヴィーノの作品についてかなりの時間(ページ)を割いて言及していると思ったら、同じハーバードの特別講義をやるはずだったカルヴィーノ(エーコの友人でもあった)へのオマージュであるらしい。
「モデル読者、経験的読者」の概念は面白そうだと読み進めたが、途中から未定義の「モデル作者」という言葉が出て来てよくわからなくなった。このことも含め、この本全体が、どちらかというと理解するのに少々努力と苦労を強いるものではある。
とはいえ、「高級」文学と「低級」文学の差異など、純文学の定義づけ(?)風のことに言及したり、物語の治癒機能、混沌とした現実の経験にかたちをあたえる機能について説明したりと興味を引く話題を散りばめてある。あるいは、二人の作家による同じような(虐殺)の場面描写があっても、読者に速く読ませるように書いてあるか、ゆっくり読ませるよう書いてあるか、テクストが読者に命じる「歩調(ペース)」が違うことを、例を引いて紹介するなど楽しい趣向を盛り込み、読者に損はさせない。
「モデル読者、経験的読者」の概念は面白そうだと読み進めたが、途中から未定義の「モデル作者」という言葉が出て来てよくわからなくなった。このことも含め、この本全体が、どちらかというと理解するのに少々努力と苦労を強いるものではある。
とはいえ、「高級」文学と「低級」文学の差異など、純文学の定義づけ(?)風のことに言及したり、物語の治癒機能、混沌とした現実の経験にかたちをあたえる機能について説明したりと興味を引く話題を散りばめてある。あるいは、二人の作家による同じような(虐殺)の場面描写があっても、読者に速く読ませるように書いてあるか、ゆっくり読ませるよう書いてあるか、テクストが読者に命じる「歩調(ペース)」が違うことを、例を引いて紹介するなど楽しい趣向を盛り込み、読者に損はさせない。