舞台はアメリカ・ボストン。
主人公は、アスペルガー症候群に近い障害を持つ17歳の少年、マルセロ。
弁護士をしている父親から、高校生活最後の学年は、
小学校から通い続けている私立の手厚い養護学校から
公立の普通高校に編入してはどうかと言われ、
心地よい養護学校に通い続ける選択肢をいただく代わりに、
夏休みの間、父親の法律事務所でアルバイトをすることになる。
保護されるばかりの場所にいるだけでなく、
「リアルな世界」を経験してほしいという
父親ならではのぶれない願いは最終的に納得できる。
健常な人々と付き合っていくすべや、
常に自らと折り合うことを養護学校で学んできた彼であったが、
「リアルな世界」は驚くことばかり、
人との摩擦や刺激・試練に出会って
毎日、何十段もの階段を駆け上がるように成長していく。
そればかりか、ある日、事務所で1枚の写真を見つけたところから、
彼自身の精神的自立の歩みを進めていく。
面白くて、一夜で読みきってしまいました。
忠実な心の声に素直に従って行動し、
神や音楽にこだわりを持ちつづけるピュアな彼は、
弁護士として成功している父親の社会的立場も省みず
正義を貫こうとします。
その姿は、主人公の単なる成長にとどまらず
周囲の人々に影響を与え、父親さえ変化させ、社会に訴え、
眠っていた私の根っこの部分をも呼び覚ましてくれました。
ささやかであっても私も「独立した旋律を演奏していきたい」
と希望を抱きました。
母親の誠実な生き方、
神様の話を語り合うラビ・ヘッシェルとのやすらぎの時間、
事務所に勤務する、地に足の付いた素敵な女の子・ジャスミン、
父親にいわせれば未だに「神の仕事(?)をやっている」
ジェリー・ガルシア弁護士、
脇を固める(安心感を与える)大人像も、どこか古典的な児童文学の流れを汲んでいます。
作者は1953年、メキシコ生まれ。大学修了後、ロー・スクールに通い、
弁護士として生計を立てながら、作家になるという夢を追われ、
2000年にデビューされたそうです。
在学中、精神障害者のための社会復帰施設でのアルバイト経験は、
マルセロのリアルな描写に見事に生かされています。
原書は『
Marcelo in the Real World
』。
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マルセロ・イン・ザ・リアルワールド (STAMP BOOKS) 単行本(ソフトカバー) – 2013/3/23
フランシスコ・X.ストーク
(著),
千葉 茂樹
(翻訳)
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購入オプションとあわせ買い
「リアルな世界」を経験してほしいという父親の望みに応え、ひと夏の間、法律事務所で働くことになった、マルセロ。心を揺さぶられる日々のなかで、次第に自らの進むべき道を見いだしていきます。社会に出ていく若者が経験する不安や成長を、発達障害をもつ17歳の少年の内面から描いた、さわやかな青春小説。
- 本の長さ384ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2013/3/23
- ISBN-104001164035
- ISBN-13978-4001164039
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商品の説明
著者について
1953年、メキシコ、モンテレイ生まれ。9歳のときに米国テキサス州に移住。地元の大学で英米文学、哲学を専攻したのち大学院でラテンアメリカ文学を専攻。卒業後さらにロー・スクールに通い、弁護士として20年働いた後、2000年に第一作『The Way of the Jaguar』でデビュー。これまでに4作作品を発表しているが、いずれもヒスパニックを主人公としている。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2013/3/23)
- 発売日 : 2013/3/23
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 384ページ
- ISBN-10 : 4001164035
- ISBN-13 : 978-4001164039
- Amazon 売れ筋ランキング: - 839,154位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年1月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この、岩波文庫のスタンプブックシリーズはとても気になる本がいっぱいあります。
自閉症のような症状を持ち、養護学校に通う男の子の視点で書かれた小説です。
私達が普段する会話は、本音や嘘や建前やごまかしがごちゃまぜです。私達はそれを無意識に使い分けていますが、主人公のマルセロは、その区別がつかない。それを学校で訓練として教わっていますが、ひと夏、父親の要請で、父親の法律事務所で働くことになり、マルセロはいやがおうにも、リアルワールドに入って行くことになります。
アダムとイブがエデンで暮らしていたような世界で暮らしていたマルセロの視点を通して、法律事務所という、人間のダークな部分が集まる世界を描く前半、物語に引きこまれました。
その前半と、ドラマが盛り上がっていく中盤を過ぎて、後半は、物語が急速にたたまれていくかのような印象を持ったことはいなめないですが、それにしても、心が洗われる、素敵な小説でした。
主人公の障害の程度はたぶんかなり軽く、主人公がいろんなことができて多くの才能があるのは、綺麗な世界であるティーン文学なのかもしれませんが、それでも主人公が最後、自分の将来について道を決めたのは読んでいて嬉しかった。
これから、主人公が様々な出会う人たちの中で、彼が傷つくことが少なければいい、と願わずにいられません。
ちなみに、この本のタイトルで検索していた時に、この本の担当編集の方のTwitterを見つけて、この本に重版印刷がかかったのを非常に喜んでおられました。いっぱいの人に読んで欲しい、というその方の意見に、私も同意します。わたしも主人公の2倍の年齢ですが、とってもおもしろかったですし、YAだからといわず、是非大人にも子供にも、読んでいただきたい良書だと思います。
自閉症のような症状を持ち、養護学校に通う男の子の視点で書かれた小説です。
私達が普段する会話は、本音や嘘や建前やごまかしがごちゃまぜです。私達はそれを無意識に使い分けていますが、主人公のマルセロは、その区別がつかない。それを学校で訓練として教わっていますが、ひと夏、父親の要請で、父親の法律事務所で働くことになり、マルセロはいやがおうにも、リアルワールドに入って行くことになります。
アダムとイブがエデンで暮らしていたような世界で暮らしていたマルセロの視点を通して、法律事務所という、人間のダークな部分が集まる世界を描く前半、物語に引きこまれました。
その前半と、ドラマが盛り上がっていく中盤を過ぎて、後半は、物語が急速にたたまれていくかのような印象を持ったことはいなめないですが、それにしても、心が洗われる、素敵な小説でした。
主人公の障害の程度はたぶんかなり軽く、主人公がいろんなことができて多くの才能があるのは、綺麗な世界であるティーン文学なのかもしれませんが、それでも主人公が最後、自分の将来について道を決めたのは読んでいて嬉しかった。
これから、主人公が様々な出会う人たちの中で、彼が傷つくことが少なければいい、と願わずにいられません。
ちなみに、この本のタイトルで検索していた時に、この本の担当編集の方のTwitterを見つけて、この本に重版印刷がかかったのを非常に喜んでおられました。いっぱいの人に読んで欲しい、というその方の意見に、私も同意します。わたしも主人公の2倍の年齢ですが、とってもおもしろかったですし、YAだからといわず、是非大人にも子供にも、読んでいただきたい良書だと思います。
2013年4月18日に日本でレビュー済み
“アルペルガー症候群が最も近い”状態の17歳のマルセロ。
居心地のいい養護学校で過ごすはずの夏休みが、一転、
「お前には障害なんてない。リアルな世界を知って欲しいんだ」
と言う父親が経営する法律事務所で働かなければならなくなる。
よくある成長物語かと思うと、全く違う。
一人称で語られるマルセロの視点は普通の人々とは異なり、
当たり前に思ってきたこと、見過ごしてきたことを、
改めて考えさせられる。
そう書くと説教くさい小説に思えるかもしれないが、まったくそんなことはなく、
法律事務所にいるナンパで鼻持ちならない彼とのくだりや、
ジャスミンとの関係、写真の少女についてどうするのか…などなど、
ひと夏の冒険を経験するエンターテイメントとしても非常にハラハラさせられて面白い。
人生は過酷で容赦なく、忙しないけれど、
美しく、優しい側面も持っている。
何かが起きたとき、世界は決して元に戻らないけれど、
捨てるものもあれば、いつまでも保ち続けることができるものもある。
爽やかな読後の感動と共に、背筋を伸ばして前を見つめていきたいと思える。
この本を読み終わる頃には、登場人物だけでなく、読み手の心も成長している。
ヤング・アダルトの域を超えて、多くの大人に読まれてほしい
素晴らしい作品だと思う。
居心地のいい養護学校で過ごすはずの夏休みが、一転、
「お前には障害なんてない。リアルな世界を知って欲しいんだ」
と言う父親が経営する法律事務所で働かなければならなくなる。
よくある成長物語かと思うと、全く違う。
一人称で語られるマルセロの視点は普通の人々とは異なり、
当たり前に思ってきたこと、見過ごしてきたことを、
改めて考えさせられる。
そう書くと説教くさい小説に思えるかもしれないが、まったくそんなことはなく、
法律事務所にいるナンパで鼻持ちならない彼とのくだりや、
ジャスミンとの関係、写真の少女についてどうするのか…などなど、
ひと夏の冒険を経験するエンターテイメントとしても非常にハラハラさせられて面白い。
人生は過酷で容赦なく、忙しないけれど、
美しく、優しい側面も持っている。
何かが起きたとき、世界は決して元に戻らないけれど、
捨てるものもあれば、いつまでも保ち続けることができるものもある。
爽やかな読後の感動と共に、背筋を伸ばして前を見つめていきたいと思える。
この本を読み終わる頃には、登場人物だけでなく、読み手の心も成長している。
ヤング・アダルトの域を超えて、多くの大人に読まれてほしい
素晴らしい作品だと思う。
2017年8月31日に日本でレビュー済み
満点の星空の下で手をつなぐ少年と少女。装丁に惹かれて手にした本書。
アスペルガー症候群のマルセロが、「リアル・ワールド」を体験することで世界と関わっていくという成長物語。
誰かと関わりたいと願うことは、まるで満天の星たちの声なき声を聞こうと耳をそばだてる行為に似ているのかもしれない。
光が届くまでに何百年もかかり、それでも人は孤独と不安に震えながら、誰かと交信したいと願う生き物なのだ。
だってその世界はこんなにも残酷で、だけれども美しいのだから。星空の下に佇むマルセロが、愛おしい。
アスペルガー症候群のマルセロが、「リアル・ワールド」を体験することで世界と関わっていくという成長物語。
誰かと関わりたいと願うことは、まるで満天の星たちの声なき声を聞こうと耳をそばだてる行為に似ているのかもしれない。
光が届くまでに何百年もかかり、それでも人は孤独と不安に震えながら、誰かと交信したいと願う生き物なのだ。
だってその世界はこんなにも残酷で、だけれども美しいのだから。星空の下に佇むマルセロが、愛おしい。
2014年9月10日に日本でレビュー済み
スタンプブックス、素晴らしいです。オーツの作品を取り上げたことにも注目しましたが。
この本の素晴らしさを感じると同時に、日本にはなぜこういった作品が皆無なのか、と落胆しました。
やはりヤングアダルトと言えば、アメリカが先進国なんですかね。
日本でこういう作品は見たことがありません。ティーン向けにはスポーツものか動物もの読ませとけ、とでも出版業界ぐるみで考えられているんでしょうかね。
最後まで一気に読みました。マルセロが心ならずも父親によって飛び込まされた「リアルワールド」でリアルを見つけていく物語です。自分の今いる立場で何度も読み返すことのできる本を良書と思っていますが、それはまさにそんな一冊。
是非子供たちにも読んでほしい。
この本の素晴らしさを感じると同時に、日本にはなぜこういった作品が皆無なのか、と落胆しました。
やはりヤングアダルトと言えば、アメリカが先進国なんですかね。
日本でこういう作品は見たことがありません。ティーン向けにはスポーツものか動物もの読ませとけ、とでも出版業界ぐるみで考えられているんでしょうかね。
最後まで一気に読みました。マルセロが心ならずも父親によって飛び込まされた「リアルワールド」でリアルを見つけていく物語です。自分の今いる立場で何度も読み返すことのできる本を良書と思っていますが、それはまさにそんな一冊。
是非子供たちにも読んでほしい。
2013年4月6日に日本でレビュー済み
再起動した岩波YA小説シリーズ第二回配本作品です。
アスペルガー症候群に近い症状を持つマルセロが、父親によって彼の法律事務所で夏休みに働かされることになります。彼のペースを考えてくれる守られた学校から現実世界に放り込まれ、そこで何を感じ、何を学習し、どう動いたか?
マルセロはその症状により、相手への質問や、自分の考えていることの表明はストレートで裏はありません。しかしリアルな世界は、裏があり、言葉は語られた通りではなく、時に皮肉や反対の意味を帯びますが、彼にはそれがわかりません。それは、逆に言えば、とても正直で隠し事のない思考回路でもあります。例えば愛と、邪悪な愛とセックスの重なるところ、違うところなど、彼は質問し、一つ一つを裏のない言葉へと変換していきます。一方、リアルワールドでは、彼の正直な思考回路ではコミュニケーションに支障が来すこともあります。
物語は、この入り組んでしまった世界を、マルセロの視点を使って新たに読み返していくのです。
マルセロの視点は、昔は「子ども」の視点として物語に使われていた、隠し事なく真っ直ぐに物事を見る物に近いですが、現代の情報社会のリアルな子ども像ではそれは難しい。
この物語の新しさはそこにあります。
アスペルガー症候群に近い症状を持つマルセロが、父親によって彼の法律事務所で夏休みに働かされることになります。彼のペースを考えてくれる守られた学校から現実世界に放り込まれ、そこで何を感じ、何を学習し、どう動いたか?
マルセロはその症状により、相手への質問や、自分の考えていることの表明はストレートで裏はありません。しかしリアルな世界は、裏があり、言葉は語られた通りではなく、時に皮肉や反対の意味を帯びますが、彼にはそれがわかりません。それは、逆に言えば、とても正直で隠し事のない思考回路でもあります。例えば愛と、邪悪な愛とセックスの重なるところ、違うところなど、彼は質問し、一つ一つを裏のない言葉へと変換していきます。一方、リアルワールドでは、彼の正直な思考回路ではコミュニケーションに支障が来すこともあります。
物語は、この入り組んでしまった世界を、マルセロの視点を使って新たに読み返していくのです。
マルセロの視点は、昔は「子ども」の視点として物語に使われていた、隠し事なく真っ直ぐに物事を見る物に近いですが、現代の情報社会のリアルな子ども像ではそれは難しい。
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