2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ氏は1986年4月26日に起きた未曽有のチェルノブイリ原発事故について、それを外側から見た社会的事象としてではなく、個人の内面から、意味から、深く感じ考えて行く。インタヴューを通して。「芸術は黙示録のリハーサルを何度も繰り返し、科学技術がもたらす終末の諸説を提供して来ました。しかし今現実の方がはるかにファンタスティックであると、私達ははっきり知っている。」と。「普通の日を暮らす普通の人々の心の生活、その感情、思考、言葉の日常性を集め」て行く。このようにしてこの本は20年に渡って書き続けられた。人の心は何と深く豊かに、人間として感ずべきものを感じるものだろうか、と思う。多くの人達の深く共感できる叫びが綴られている。故郷を避難のために去る前、一本一本の樹に挨拶しているおじいさん。病院のあるミンスクから来た人と分かると「うちの子を救ってください!息子をミンスクへ連れて行ってください!」と膝をついて叫ぶ女性。装備なく事故処理に当たった多くの男たちー-夫、息子たち。またウクライナに侵攻を許したロシアのメンタリティーに通じる記述も多くあった。
副題に「未来の物語」とある。未来はあるのか?チェルノブイリに?筆者は言う「ヒロシマ、ナガサキのような軍事的な核の状況なら、おそらく私たち全員が乗り切れたでしょう。もともとその準備をしていましたから。しかし大惨事は非軍事的な核施設で起きました。」と。乗り越えて行くべきものは何なのか?回復していくべきものは何なのか?そもそもこの災いを名付けることが出来るのか?「人類のアーカイブの中に、この扉を開ける鍵は見当たりませんでした。」と著者が言うごとくに。
みな、物理学と数学が与えられなかった答えを探し求め、哲学者となり、教会に再び人々は集まった。そして著者の謎めいた一言が本の最初頃に記されている「自分自身へのインタヴュー」の中にあった。「何より興味深かったのは、老いた農民たちと話をすることでした。彼らはトルストイもドストエフスキーもインターネットもなしで暮らしていますが、彼らの意識は何らかの方法で、新しい世界像を自分のうちに入れることができたのです。崩壊することはありませんでした。」と。ここにのみ、唯一の希望が述べられていた。「自分自身へのインタヴュー」の最後の行に著者が記したごとくに。「時々こんな気がしていました。私は未来のことを記録している、、。」この言葉の投げかけている意味を深く考えさせられる。つまり、光の全く見えない、暗黒でしかない、理解もできない、考えれば気が狂ってしまいそうな、人々がさらされている心の経験、その中から、言い表すことの出来ない仕方で、希望そのものが生じる準備をしているのではないか。そのようにこの言葉を読み、感じた。
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完全版 チェルノブイリの祈り――未来の物語 ハードカバー – 2021/2/18
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ
(著),
松本 妙子
(翻訳)
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一九八六年四月二六日、その事故は起こった。人間の想像力をこえる巨大な惨事に遭遇した人びとが語る個人的な体験、その切なる声と願いを、作家は被災地での丹念な取材により書きとめる。消防士の夫を看取る妻、事故処理にあたる兵士、汚染地に留まりつづける老婆――。旧版より約一・七倍の増補改訂が施された完全版。解説=梨木香歩
- 本の長さ432ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2021/2/18
- 寸法12.9 x 2.9 x 18.8 cm
- ISBN-104000614525
- ISBN-13978-4000614528
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出版社からのコメント
ノーベル文学賞受賞(2015年)
全米批評家協会賞ノンフィクション部門受賞(2005年)
HBOドラマ『チェルノブイリ』(2019年)典拠
全米批評家協会賞ノンフィクション部門受賞(2005年)
HBOドラマ『チェルノブイリ』(2019年)典拠
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2021/2/18)
- 発売日 : 2021/2/18
- 言語 : 日本語
- ハードカバー : 432ページ
- ISBN-10 : 4000614525
- ISBN-13 : 978-4000614528
- 寸法 : 12.9 x 2.9 x 18.8 cm
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