日本の古代史に於いて「遷都」という事が盛んに行なわれた事は、誰しも日本史の授業等を通じて記憶の片隅に残っているであろう。
私が覚えていた都と言えば、平城京、平安京…後は飛鳥、難波、藤原、長岡京くらいだろうか。
だが、本書を読むと自分の知識のなさが恥ずかしくなる。
「そう言えばそんな名前の都があったっけ」というものもあれば、全く記憶のないものまで。
それもその筈、嘗ては「大王の宮」が代わる度に遷都(遷宮ーここに飛鳥の宮も含まれる)が行われたというのだから、実にめまぐるしく中心地が変わっていたのだという事を思い知らされるのだ。
「動く都」から「動かない都」へ…それが本書の主題である。
本書は古代の資料や現代の調査に基く研究結果を軸に遷都の歴史を丁寧に辿っている。
そして、その理由や背景を探る事に依って、正しくその名の通り「都は何故移るのか」という事を考察しているのだ。
冒頭に「日本史の授業を通して」と書いたが、恐らく殆どの学校では詳しくは教わらないであろう都についても時代を追って纏められているので、とにかく「新たな発見」の連続であった。
「遷都の通史」とも言えるべき著書であり、日本の古代史をお浚いする上でも非常に価値が高いと思われる。
遷都の歴史に関心がある方は必読。
但し、本書は遷都の歴史を学術的に淡々と述べているので、やや面白味に欠ける所は難点と言えるかもしれない。
「何故移るのか」という事を冷静に論じてはいるものの、例えば誰もが思い浮かべるであろう、長岡京遷都にまつわる種継暗殺事件、それに伴う早良親王の憤死等といったエピソードには一切触れていない。
あくまでも「遷都の歴史」という史実のみに焦点を絞っているのだ。
また、「動かない都」を終着点にしているのでやむを得ない気もするが、やはり「遷都の歴史」を追うならば、その「動かない」筈の都を動かそうとして失敗に終わった福原遷都についても多少は触れて頂きたかったように思う。
遷都の歴史を理解する上では非常に有用である一方、私のように「読み物としての面白さ」も求めてしまう輩にはやや不向きかもしれない。
決して難解という訳ではないので誰でも理解し易いとは思うが、目的意識に依って評価が分かれてしまう著書だと思うので、内容が非常に学術的だという事を留意してからの御購入をお勧めしたいと思う。
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都はなぜ移るのか: 遷都の古代史 (歴史文化ライブラリー 333) 単行本 – 2011/11/21
仁藤 敦史
(著)
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- 本の長さ246ページ
- 言語日本語
- 出版社吉川弘文館
- 発売日2011/11/21
- ISBN-104642057331
- ISBN-13978-4642057332
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登録情報
- 出版社 : 吉川弘文館 (2011/11/21)
- 発売日 : 2011/11/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 246ページ
- ISBN-10 : 4642057331
- ISBN-13 : 978-4642057332
- Amazon 売れ筋ランキング: - 690,360位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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